保全生態学研究
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巻頭言
  • 小池 文人
    2019 年 24 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー
    本学術雑誌の印刷冊子から電子媒体への移行を検討するため、本誌の購読者と非購読の生態学会会員に対して、様々な形態で提供されている学術雑誌の利用状況に関するアンケートを行った。最も多く利用されていたのは利用者個人の手続きなしで利用できる雑誌であり(機関契約のセット購読やオープンアクセスジャーナル等)、次に利用されていたのは印刷冊子であった。多くの学会で行われているような個人のパスワードでアクセスする雑誌の利用は3誌以下で全く利用しない回答者も多く、都度払いのpay per viewはほとんど利用されていなかった。本誌の移行に関しては、だれでも自由にアクセスできる形態か多数の雑誌のセット購読など、利用者個人の手続きなしで利用できる形態が最も望ましく、次は現在と同じく印刷媒体での提供であり、個人のパスワードでアクセスする形態はサーキュレーションの低下をもたらす可能性がある
原著
  • 小林 春毅, 冨士田 裕子
    2019 年 24 巻 1 号 p. 11-30
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー
    湿地は人間活動によって消失や劣化、生態系の攪乱などが急速に進行し、危機的な状況に置かれている。地球上の湿地の64%から71%は20世紀に失われたと推定され、現在でも世界各地で消失と劣化が続いている。しかし、多くの国々では湿地目録さえ整備されておらず、目録が存在しても不正確で、湿地の面積や現状、そして変化を把握することができないことが多い。本研究は、日本の湿地面積の大部分を占める北海道において、2016年時点の現存する湿地を掲載した北海道湿地目録を作成し、それを基に、湿地の現況と分布、湿地とその周辺の土地利用基本計画から判定した湿地劣化の潜在的リスク、そして法制度による湿地の保護状況を明らかにした。北海道湿地目録2016には、北海道内の面積1 ha以上の湿地を180箇所掲載し、うち山地湿地が61箇所、低地湿地は119箇所だった。その面積は、陸域が55,074.7 ha、水域が45,577.7 haだった。第4次北海道土地利用基本計画によると、山地湿地では陸域面積の90.2%が自然環境の保護・保全を考慮した土地利用が計画されおり、湿地周辺でも同様に自然環境を考慮した利用が優先されていた。一方、低地湿地では陸域の27.5%が人間活動を優先する都市地域と農業地域に含まれており、北海道の湿地は低地を中心に潜在的な劣化リスクを抱えていることが明らかになった。湿地の保護状況を総合的に判断するため、個別の保護制度を湿地保護の観点から強度別に5段階に分類し、総合的に判定した。その結果、湿地の陸域面積を見ると、山地湿地では96.2%が法的な規制を伴う保護区分に含まれるものの、低地湿地では63.5%に留まり、低地湿地で法的な保護規制がかかる割合が低いことが明らかになった。これらのことより、北海道の湿地をより適切に保護・保全していくためには、潜在的な劣化リスクを抱える低地湿地で、法的な規制を伴う保護制度の指定を検討する必要があると考えられた。
  • 澤邊 久美子, 夏原 由博
    2019 年 24 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー
    カヤネズミMicromys minutus (Pallas, 1771)は、イネ科の高茎草地を生息地とする草地性生物の一種であり、7月から10月ごろの繁殖期にイネ科またはカヤツリグサ科の草本など多様な単子葉草本の茎葉を利用し、地上部約1 m前後の高さに球状の巣を作る。一方、本種は冬季には地上付近に巣を作ると言われているが、冬季の生態についてはまだ明らかになっていない。本研究では本種の冬季の営巣環境において、冬季植生の存在の影響と営巣の位置について明らかにした。2014年-2015年の2年間の繁殖期に継続して生息が確認されていた11地点と生息が確認できていなかった9地点の計20地点で、2016年冬季に越冬巣の調査を行った。巣ごとに巣高、営巣植物種、営巣植物高、群落高を記録し、より広域の環境要因として草地ごとに、冬季の全面刈取りの有無、カヤネズミの移動を想定した隣接する森林・水田の有無、冬季全植被率、冬季茎葉層植被率(10 cm以上)、ススキとチガヤの植被率合計を記録した。越冬巣は9地点(12巣)で確認され、越冬巣の巣高は群落高に関わらず平均28.92 cm(SD=13.12)であった。これは繁殖期の巣高より低く、越冬巣は草高にかかわらず一定の高さであった。草地における越冬巣の有無は過去2年間の繁殖期の営巣の有無とほぼ対応していた。冬季の茎葉層植被率、全植被率またはススキとチガヤの植被率が高いと越冬巣が有意に多く、冬期の全面刈取りがあると越冬巣が有意に少なかった。カヤネズミの移動を想定した森林・水田の隣接については関連が見られなかった。本研究で対象とした小規模な半自然草地における本種の冬季の営巣環境としては、特に越冬巣が多く見られた30 cm程度の位置に植物体が存在することが重要であり、全面刈り取りを避けることが重要であると示唆された。
  • 三浦 一輝, 石山 信雄, 川尻 啓太, 渥美 圭佑, 長坂 有, 折戸 聖, 町田 善康, 臼井 平, Gao Yiyang, 能瀬 晴菜 ...
    2019 年 24 巻 1 号 p. 39-48
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー
    北海道における希少淡水二枚貝カワシンジュガイ属2種(カワシンジュガイMargaritifera laevis、コガタカワシンジュガイM. togakushiensis)が同河川区間(<100 m区間内)に生息する潜在性の高い地域を広く示すために、北海道内の計31水系53河川から本属を採集し、mtDNAの16S rRNA領域におけるPCR増幅断片長を比較する手法を用いて種同定を行った。種同定結果を元に10 × 10 kmメッシュ地図に地図化した。結果、カワシンジュガイが23水系39河川、コガタカワシンジュガイが25水系40河川から確認された。全調査河川のうち、49%の17水系26河川から2種が同河川区間から確認され、各地域の全調査河川に対する確認調査河川の割合が道東地域で68%と最も高かった。また、全38調査メッシュのうち、50%の19メッシュから2種が同河川区間から確認された。地域別に見ると、各地域の全調査メッシュに対する確認調査メッシュの割合が道東地域で67%と最も高かった。本研究では、カワシンジュガイ属2種の遺伝分析を行い、本属2種が同河川区間に生息する河川およびその潜在性が高い地域を示すことができた。本結果は、今後、北海道に生息するカワシンジュガイ属の調査や保全策立案に重要な情報を提供できると考えられる。
  • 渡辺 黎也, 日下石 碧, 横井 智之
    2019 年 24 巻 1 号 p. 49-60
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー
    コウチュウ目やカメムシ目などの水生昆虫は、水田やため池を主な生息場所としているが、圃場整備や近代農法への転換によって生息環境が改変され、全国的に減少傾向にある。そのため近年では慣行農法の水田に対し、殺虫剤や除草剤の使用を抑えた環境保全型農業の水田を推進する動きが高まっている。水生昆虫群集の動態に影響を与える要因としては、農法以外にも水田内外における生息環境に関わる複数の要因が挙げられるが、それら要因についての知見は少なく総合的な解決が求められている。本研究では、水田内の環境要因および景観要素が水生昆虫群集(コウチュウ目、カメムシ目)に与える影響について調査した。  調査は2017年4月から9月に、茨城県つくば市近郊の5地域から環境保全型水田と慣行水田を1組以上、計16枚を対象に行なった。タモ網を用いた掬い取りを行ない、水生昆虫と餌生物(両生類幼生、ユスリカ科、カ科等)の個体数を種もしくは分類群ごとに記録した。水田内の環境要因として、調査地ごとに水質(水温、水深、電気伝導度、pH)と水田内に生育する植物の植被率、薬剤使用の有無、湛水日数を調査した。また地理情報システム(GIS)を用いて、調査水田を中心としてバッファー(半径500、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000 m)を発生させ、各バッファーに占める景観要素(水田、その他の水域、森林、人工物、その他)の面積の割合を算出した。  調査の結果、水生昆虫の群集組成は農法によって異なっており、水田内の要因のうち湛水日数と餌個体数、水温が群集組成に影響を与えていた。さらに各要因の効果として、分類群数に対しては餌個体数と水温が正の効果を与えていた。また、慣行農法は水生昆虫の分類群数と個体数の双方に負の効果を与えていた。分類群数および個体数の決定に有効な空間スケールはそれぞれ水田周囲の半径3,000 mと2,000 mであり、その他の水域や森林が分類群数や個体数に正の効果を与えていた。以上より、水生昆虫の分類群数や個体数の維持には環境保全型農業の推進に加え、水田内への安定した餌生物の供給や、半径2,000または3,000 m内にその他の水域や森林など様々な環境が存在することが重要であることが示された。
  • 鵜野-小野寺 レイナ, 山田 孝樹, 大井 徹, 玉手 英利
    2019 年 24 巻 1 号 p. 61-69
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー
    絶滅が危惧される四国のツキノワグマの繁殖状況を把握するため、2005年から2017年までに捕獲された13頭の血縁解析を行った。19種類のマイクロサテライト遺伝子座を用いて親子判定を行った結果、4組の母子ペア、5組の父子ペアが確認された。繁殖が確認された個体はメス4頭、オス2頭で、少数のオスの繁殖への参加が確認された。血縁解析の結果から、繁殖オスは同胞兄弟である可能性が高いと考えられる。アリル多様度は他の地域個体群よりも低い傾向がある一方で、ヘテロ接合度の観察値が期待値よりも有意に高いことから、繁殖個体数が極めて少ない可能性が考えられる。血縁解析の結果に基づきCreel and Rosenblattの方法で算出した推定個体数は約16-24頭となった。
  • 今村 彰生, 速水 花奈, 坂田 雅之, 源 利文
    2019 年 24 巻 1 号 p. 71-81
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー
    サケ科イワナ属のオショロコマ(Salvelinus malma malma)は、国内では降海しない陸封型が北海道にのみ生息し、環境省レッドデータブックの絶滅危惧Ⅱ類(VU)に選定されている。一般に河川最上流域に生息し、オショロコマより下流には同属のエゾイワナ(S. leucomaenis leucomaenis)が分布するとされている。これらは、人工的河川横断構造物と外来種のニジマス(Oncorhynchus mykiss)の定着によって個体数が減少している可能性がある。そこで、環境DNA分析手法を用いて年間を通したサンプリングを行い、オショロコマ、エゾイワナ、およびニジマスそれぞれの生息の有無とその季節変化を調べた。大雪山系周辺の石狩川水系支流の支流系1、ピウケナイ川、オサラッペ川を調査地とし、構造物の上下での採水を含め、計16地点で採水を行った。その結果、支流系1流域ではオショロコマが最上流域、エゾイワナが中上流域で検出され、ニジマスは下流域でのみ検出された。ピウケナイ川流域ではオショロコマとニジマスが全地点で検出され、エゾイワナは検出されなかった。一方、オサラッペ川では3種いずれも検出率が低かった。調査地点ごとの検出の有無について一般化線形混合モデルによる解析を実施したところ、移動の時期や方向性および構造物の障壁としての機能などは明確にできなかったが、オショロコマが上流に多いのに対して、エゾイワナとニジマスは下流に多い傾向を示し、しかもオショロコマとニジマスについては排他的ではない可能性が示された。しかし、これはニジマスによる競争排除が無いことを保証せず、有効性が示された環境DNA分析を駆使し、継続的なモニタリングを行い定量的な把握を目指す必要があるだろう。
  • 高原 輝彦, 藤田 大登, 吉田 真明, 秋吉 英雄
    2019 年 24 巻 1 号 p. 83-93
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー
    隠岐諸島の島後に生息するオキサンショウウオHynobius okiensisにおいて、野外における孵化個体の新規加入や変態個体の上陸の時期、捕食者などの基礎生態についてはよくわかっていない。本研究では、河川の上流域や渓流、沢における幼生の採集調査、および、潜在的な天敵による捕食実験を行い、本種の分布要因の一端を明らかにすることを試みた。島後の集水域4箇所でそれぞれ2地点ずつの調査場所において幼生採集調査を行ったところ、2016年4月に、体サイズの大きな越冬幼生のみ確認されていたが、5月になると、越冬幼生に加えて、それらに比べて顕著に小さい当年幼生が同所的に確認された。越冬幼生と当年幼生の同所的生息は8月まで確認されたが、9月に入ると越冬幼生の生息が確認されなくなった。ハゼ科の底生魚が確認された調査地点ではオキサンショウウオの生息がほとんどみられなかった。室内実験では、越冬幼生とハゼ科底生魚による当年幼生の捕食が確かめられた。以上のことから、オキサンショウウオは、4月から5月頃に当年幼生が新規加入し、越冬幼生は8月までに変態・上陸すると考えられた。さらに、越冬幼生は捕食者として、春先に加入した当年幼生の死亡要因の一つである可能性が示された。また、はまり石の下などの微生息場所がオキサンショウウオ幼生と重複するハゼ科底生魚の在不在が、野外におけるオキサンショウウオの分布に影響を及ぼしていると考えられた。
総説
  • 大澤 隆文, 古田 尚也, 中村 太士, 角谷 拓, 中静 透
    2019 年 24 巻 1 号 p. 95-107
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー
    生物多様性条約では、生物多様性の保全や持続可能な利用全般について2020年までに各国が取り組むべき事項を愛知目標としている。2020年に開催される予定の同条約締約国会議(COP15)では、2020年以降の目標(ポスト愛知目標又はポスト2020目標)を決定することが見込まれ、海外では愛知目標に係る効果や課題を考察した学術研究も多く出版されている。本稿では、パリ協定等の生物多様性分野以外の諸分野から参考になる考え方・概念も引用しつつ、SMART等の、愛知目標に続く次期目標の検討にあたり考慮し得る視点やアプローチを詳細に整理した。また、自然保護区等に関する愛知目標11等を事例として、地球規模又は各国の規模で2020年以降の目標設定にあたり考慮すべき課題や概念、抜本的な目標の見直しに係る提案等の特徴や課題について、日本における状況も紹介しつつ議論した。これらを通じ、厳正的な自然保護の拡充を誘導する目標設定に加え、それ以外の地域・分野についても、自然と共生を進める諸アプローチの効果評価や目標設定を追求する余地があることを提案した。
  • 岡部 貴美子, 亘 悠哉, 矢野 泰弘, 前田 健, 五箇 公一
    2019 年 24 巻 1 号 p. 109-124
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー
    現代の新興感染症の75%は野生動物由来と推測され、西日本で患者数が増加している重症熱性血小板減少症候群(SFTS)への懸念が広がる現状から、マダニ媒介感染症対策を視野に入れた野生動物管理について、国内外の研究および関連制度の動向についてレビューした。マダニの多くは宿主範囲が広く、感染した野生動物宿主から病原体を得て、唾液腺を介して吸血初期からヒトへと病原体を媒介していることが明らかになってきた。また国外の研究では、宿主の種の多様性が高いと、希釈効果によって感染症リスクが低下する可能性が示唆されている。しかし感染症拡大には単一の要因ではなく、気候変動、都市化、ライフスタイルの変化など様々な要因が関与していると考えられる。これらに対応することを目的として国際的にワンヘルスなどの学際的な取り組みが実施されているが、必ずしも有効な野生動物管理手法の開発に至っていない。今後は、異なるセクターの協働により、科学的知見に基づく取り組みを進めることが必要である。
実践報告
  • 大澤 剛士, 川野 智美
    2019 年 24 巻 1 号 p. 125-134
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー
    外来生物の管理を効率的に行うために、管理計画を地図化することは有効である。しかし、地図を作成する際に、対象とする空間的な広がりと、扱う空間解像度が持つ意味を考え、スケールごとに明確な目標を設定しなければ、有効な計画にならない可能性がある。本研究は、大分県玖珠郡九重町におけるオオハンゴンソウ(Rudbeckia laciniata L.)を対象に、現地における駆除管理活動に貢献することを目指し、広域スケールでは基本方針の立案を、詳細スケールでは駆除活動を行う地点の優先付けを行い、これらを一貫して提示するというマルチスケールの管理計画を提案した。具体的には、1)対象地の分布域全域を5 kmメッシュに区切り、駆除を推奨する地域、抑制を推奨する地域、監視する地域という3つのカテゴリにゾーニングした「管理方針地図」(:広域スケールの基本方針)と、2)駆除を推奨するひとつの5 kmメッシュにおいて、生育地点を単位に、駆除の優先付けをするための数値指標を複数付与し、現場で判断する材料を提示した「作業計画地図」(:詳細スケールの優先付け)の両方を作成し、これらをまとめて計画から実践までを一連できる「管理計画地図」とした。管理計画地図を行政等の計画立案者、ボランティアや事業者等の実務者に適切に提供することで、効率的な駆除の推進への貢献が期待できる。
解説
  • 大澤 剛士, 天野 達也, 大澤 隆文, 高橋 康夫, 櫻井 玄, 西田 貴明, 江成 広斗
    2019 年 24 巻 1 号 p. 135-149
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/01
    ジャーナル フリー
    生物多様性に関わる様々な課題は、今や生物学者だけのものではなく、人類全てに関連しうる社会的な課題となった。防災・減災、社会経済資本、資源の持続的利用といった、人間生活により身近な社会問題についても、生物多様性が極めて重要な役割を持つことが認識されるようになりつつある。これら社会情勢の変化を受け、生物多様性に関わる研究者には、これまで以上に政策とのつながりが求められている。しかし現状では、研究成果が実社会において活用されないという問題が、生物多様性に関係する研究者、行政をはじめとする実務者の双方に認識されている。これを“研究と実践の隔たり(Research-implementation gap)”と呼ぶ。そもそも、社会的課題の解決のために研究者の誰もが実施できる最も重要なことは、解決に必要な科学的知見を研究によって得て、論文の形で公表することである。そのためには、社会的に重要な課題を把握し、それに関する研究成果を適切なタイミングで社会に提供できなくてはならない。これらが容易になることは、研究と実践の隔たりを埋めることに貢献するだろう。そこで本稿は、そのための取り組みの先駆的な実例として「legislative scan」を紹介する。これは、イギリス生態学会が実施している、生態学者や保全生物学者にとって重要な法的、政策的課題を概観する取り組みである。さらにlegislative scanを参考に、生態学の研究者が関わりうる政策トピックの概要を紹介することで、研究者が能動的に研究と実践の隔たりを埋めていくためのヒントを提供する。具体的な政策トピックとして、「生物多様性条約(CBD)」、「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」、「地球温暖化適応(IPCCの主要課題)」、「グリーンインフラストラクチャー」、「鳥獣対策」について概要を紹介する。最後に、研究と実践の隔たりの解消に向けて、研究者及び研究者コミュニティが積極的に働きかける重要性と意義について議論する。
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