ヒトが優占する年代であるアンスロポセン( Anthropocene)の複合的環境改変がもたらす生物多様性・生態系変化の監視においては、共生的生物間相互作用ネットワーク(共生ネットワーク)のモニタリングが重要であると考えられる。本研究では、市民科学プログラムによって東京のチョウと植物の共生ネットワークをモニタリングする可能性を、すでに収集されたデータの分析によって検討した。用いたデータは、生活協同組合「パルシステム東京」および保全生態学(中央大学理工学部)ならびに情報工学(東京大学生産技術研究所)の研究室が協働で進めている市民科学プログラム「市民参加の生き物モニタリング調査」により公開されているものである。 2015-2017年に報告された利用可能なチョウの写真データのうち、訪花もしくは樹液吸汁の対象植物の同定が可能なデータ( 4,401件)を用いて、チョウと植物の共生ネットワークを階層型クラスタリングとネットワーク図化によって分析した。チョウは利用植物群の類似性から 6グループに分けられ、そのうち 4グループは特定の植物グループ利用のギルド、残りの 2つのうち一方はジェネラリストの範疇に入る植物利用を特徴とするグループであり、他はそれらに含まれない植物との関係がいっそう多様な種を含むグループであると解釈できた。市民科学プログラムによるモニタリングの可能性が確認され、今後のモニタリングのベースラインとなるネットワーク情報が整理された。
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