絶滅危惧植物フジバカマEupatorium fortunei Turcz.と河原への侵入の著しい外来種セイタカアワダチソウSolidago altissima L.の成長におよぼす夏季の撹乱の影響を,地上部刈り取り実験によって比較した.4月に出芽した直後のフジバカマとセイタカアワダチソウのシュート(地上部10-15cm,地下茎8-13cm)を競争が起こらないように40cm間隔で植え付けた.うち,刈り取り処理個体では7月に地上10cmの高さで地上部を刈り取って,刈り取り2週間後,5週間後,および地上部枯死時に回収し,バイオマスとその各器官への分配を測定した.刈り取りを行わない無処理個体は盛夏,花期および地上部枯死時に回収して各器官のバイオマスを測定した.刈り取り処理の5週間後の地上部バイオマスは,フジバカマでは刈り取り前の63%にまで回復していたが,セイタカアワダチソウでは刈り取り前の35%まで回復しただけであった.また,刈り取りにより,セイタカアワダチソウでは翌年に持ち越される地下部バイオマスおよび地下茎の数や長さが無処理個体に比べて有意に減少したが,フジバカマではむしろ,有意に増加した.フジバカマは夏季に地上部を失うことに対して,セイタカアワダチソウよりも大きな抵抗性をもっていることが示唆された.フジバカマの無処理個体では,7月中旬以降も,地上部/地下部比が漸増したが,セイタカアワダチソウでは漸減した.一方,7月中旬に刈り取りを行ったフジバカマでは,その年の開花は見られなかった.これらのことから,フジバカマの開花を妨げずにセイタカアワダチソウの繁茂を抑制するためには,初夏(5月上旬-7月上旬)までに行う草刈りが効果的であると推測される.
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