鳥類の移入により生じる問題を整理し,対策を検討した.19世紀〜20世紀前半にかけて多くの鳥類が愛玩,狩猟,食料,生物的防除などの目的で移入され,野外へ放された.最近はペットとして輸入された鳥類が事故的な逸出,ないしは意図的な放出により野外に定着する例が増加している.移入鳥類の定着,個体数増加によって,生態系の破壊,在来生物群集の撹乱,在来鳥類種の衰退(捕食,托卵,病気,交雑などが原因),農作物等への被害などの弊害が生ずることがある.草食獣や小型肉食獣に比べると生態系や生物群集に与える損害の規模は小さく,このため移入鳥類問題への一般の関心が低い.世界的には生物移入の規制の方向へ向かっているが,国内への生物移入を包括的に規制している国はほとんどない.輸入規制の強化,飼育鳥類の登録制の実施,逸出定着個体の根絶・抑制,移入鳥類の実態調査,移入鳥類問題の教育,宣伝を骨子とした対策を提言した.
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