ヘルスプロモーション理学療法研究
Online ISSN : 2187-3305
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6 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • ―転倒予防の観点から―
    相馬 正之
    2016 年6 巻1 号 p. 1-7
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー

    要旨:歩行運動は,自動的な側面を持つことに加え,加齢の影響を受ける。そのため,転倒を引き起こす何らかの影響を受けることが推察され,研究がされてきた。つまずきによる転倒の原因と考えられていたToe clearance(以下TC)は,高齢者では常に低下しているわけではなく,体幹動揺や歩行遊期中の膝・足関節角度のばらつきがTC のばらつきを生じさせ,TC が低い歩行周期中に偶発的に転倒に結びついている可能性がある。そのTC は,無意識かつ受動的に作られるため,遊脚期中に下肢筋活動の再現性を高めることが重要になる。その方法として,直接的に体幹を安定させることもあるが,遊脚期側下肢を支える立脚期,特に立脚中期から前遊脚期にかけての土台である足部・足趾機能の向上も選択肢の1つとなる。この足部・足趾機能を代表するものに足趾把持力があり,姿勢制御,前方への推進力の作用もあると推測されている。足趾把持力は,足趾屈筋のみならず,足部の柔軟性や下腿筋の同時収縮,特に前脛骨筋の筋活動量が重要である。このように歩行時の下肢末梢部の作用・機能は,転倒防止やバランス機能,運動制御の観点からも重要であるため,着目していく必要がある。

原著
  • 中江 秀幸, 村田 伸, 甲斐 義浩, 相馬 正之, 佐藤 洋介
    2016 年6 巻1 号 p. 9-15
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー

    健常女性を対象に最速と至適の速度条件で,速度,立脚時間,歩幅,歩隔,足角の歩行パラメータと,身体機能として大腿四頭筋,ハムストリングス,腓腹筋の筋力,そして足趾把持力や最大一歩幅を測定し,速度条件間の歩行パラメータ,歩行パラメータと身体機能との関連性を検討した。その結果,最速歩行と至適歩行間に速度,立脚時間,歩幅,足角に有意差を認めたが,歩隔では有意差を認めなかった。歩行パラメータ間の関連性では,最速歩行の歩隔と立脚時間,至適歩行では足角と歩隔に有意な相関を認めた。歩行パラメータと身体機能では,最速歩行で腓腹筋筋力と歩隔,至適歩行では大腿四頭筋とハムストリングス筋力が立脚時間と有意な相関を認めた。最速歩行と至適歩行ともに歩隔と最大一歩幅との間に有意な相関を認めた。本結果から,歩隔は腓腹筋や最大一歩幅との関連性が示唆され,足角は速度条件や大腿四頭筋筋力に影響される指標であることが示唆された。

  • 阿波 邦彦, 村田 伸, 岩瀬 弘明, 政所 和也, 八谷 瑞紀, 久保 温子, 伊藤 健一, 上城 憲司, 堀江 淳
    2016 年6 巻1 号 p. 17-22
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー

    【はじめに】本研究の目的は,地域在住高齢者における閉塞性換気障害と拘束性換 気障害の有症率を明らかにし,正常群を含む3群間の身体機能を比較検証することとした。 【方法】地域在住高齢者128名(年齢75.5±6.1歳)に対し,呼吸機能検査や身体機能を評価し,換気障害別の各測定項目を比較した。3群間の比較は年齢を共変量とする一元配置共分散分析で解析し,各群における呼吸機能と各測定項目の関係をPearson の相関分析を用いて検討した。 【結果】正常群は80名(68.4%),閉塞性換気障害群は14名(12.0%),拘束性換気障害群は23名(19.6%)であった。正常群,閉塞性換気障害群,拘束性換気障害群の3群間を比較したところ,呼吸機能に有意差を認めたが,すべての身体機能に有意差は認められなかった。ただし,閉塞性換気障害群のみ,呼吸機能と各測定項目に有意な相関を認めた。 【結論】換気障害の差異で身体機能に有意差は認めないが,閉塞性換気障害群は呼吸機能の低下に伴い,筋力が低下する可能性が示された。

  • 吉永 龍史
    2016 年6 巻1 号 p. 23-28
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー

    本研究は変形性膝関節症(膝OA)患者の運動機能改善の指標を明らかにするために,骨盤運動戦略およびHead・Arm・Trunk(HAT)運動戦略と骨盤周囲筋力の関係を検討した。対象は,膝OA 外来患者14名で,11名は両肢を3名は片肢を評価した。方法は,片脚立位動作を前額面上の写真から肩峰,体幹傾斜および股関節内転角度で骨盤運動とHAT 運動戦略に分類し,中殿筋,大殿筋および股関節内転筋の最大等尺性収縮を比較した。その結果,HAT 運動戦略は,立脚肢の中殿筋の筋力が有意に低下していること,体幹および肩峰傾斜角度と中殿筋の間に負の相関を認めた。歩容でHAT 運動戦略がみられた場合は,片脚立位の評価を加えることで,中殿筋の弱化傾向を推測できる可能性がある。

  • 古後 晴基, 村田 潤, 東 登志夫, 村田 伸, 鳥山 海樹, 山下 裕, 今村 純平
    2016 年6 巻1 号 p. 29-33
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,浮腫における圧痕深度計測法の妥当性と圧痕性浮腫の判別が可能な評価法であるかを明らかにすることである。22名44肢の浮腫有と診断された患者と,30名60肢の地域在住の健常高齢者を対象とした。被験者の足底を床面に付けた端座位とし,第3中足骨骨頭の足背部の圧痕深度をエデゲー?にて計測した。また,同一部位の皮下軟部組織厚を超音波画像診断装置にて計測した。統計解析には,圧痕深度値と皮下軟部組織厚値をPearson の相関係数にて分析した。また,圧痕深度値は,対応のないt 検定を用いて患者と健常者間で比較した。その結果,圧痕深度値と皮下軟部組織厚値との間に,極めて強い相関関係を示した。また,患者群は健常者群と比較して圧痕深度値が有意に高値を示した。本研究より,圧痕深度計測法は妥当性ある評価法であり,圧痕性浮腫の有無を判別可能な評価法である可能性が認められ,圧痕性浮腫における有用な評価法であることが示唆された。

短報
  • 中村 葵, 村田 伸, 飯田 康平, 井内 敏揮, 鈴木 景太, 中島 彩, 中嶋 大喜, 白岩 加代子, 安彦 鉄平, 阿波 邦彦, 窓場 ...
    2016 年6 巻1 号 p. 35-39
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,歩行中のスマートフォンの操作が歩行に及ぼす影響を明らかにすることである。対象は,健常成人28名(男性16名,女性12名)とした。方法は,通常歩行と歩きスマホの2条件下にて,屋内で約20m の歩行路を歩いてもらい,そのうちの2.4mを測定区間とした。なお,測定機器には,歩行分析装置ウォークWay を用い,歩行パラメータ(歩行速度,歩幅,重複歩長,立脚時間,両脚支持時間,歩隔,足角)を比較した。その結果,歩きスマホは通常歩行に比べて,歩行速度,歩幅,重複歩長が有意に減少,立脚時間と両脚支持時間は有意に増加,歩隔は増加傾向を示した。以上のことから,歩きスマホでは,歩幅や重複歩長が短縮し,立脚時間や両脚支持時間は延長することで,歩行速度が低下することが明らかとなった。

実践報告
  • 相原 一貴, 小野 武也, 石倉 英樹, 佐藤 勇太, 松本 智博, 田坂 厚志, 梅井 凡子, 積山 和加子, 沖 貞明
    2016 年6 巻1 号 p. 41-44
    発行日: 2016/04/30
    公開日: 2016/07/29
    ジャーナル フリー

    [目的]本研究は身体の柔軟性の評価である指床間距離(Finger-Floor Distance:以下FFD)を用いて,睡眠前後でのFFD の変化を明らかにするために行った。[対象と方法]健常大学生34名(男性14名,女性20名)を対象とした。朝と夜のFFD と睡眠時間を3日間測定した。なおFFD は,①夜の入浴前と②朝の起床後に測定した。[結果]FFD の値は朝の方が夜よりも有意に高値であった。[結語]睡眠後に身体の柔軟性が低下していることが明らかとなった。

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