ホソカワ粉体工学振興財団年報
Online ISSN : 2189-4663
ISSN-L : 2189-4663
24 巻
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前付け
平成26年度 研究助成成果報告
  • 飯島 志行
    2016 年 24 巻 p. 19-23
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    本研究では多成分系原料微粒子の分散状態や集合構造制御を実現する新規な濃厚系金属ペーストの設計法の構築に向けて,トルエンなどの非水系溶剤中で金属微粒子(Ni)上に無機ナノ粒子(SiO2)を湿式複合化させながら,金属微粒子の溶剤中での分散安定性も同時に向上させる新しいプロセスの設計を検討した.機能性ナノ粒子のモデルとしてSiO2ナノ粒子を用い,まず,ナノ粒子表面に各種材質の機能性ナノ粒子に対する高い吸着性と非水系溶媒中における分散安定化の実現が期待されているポリエチレンイミン(PEI)とオレイン酸(OA)の会合体(PEI-OA)を高分子分散剤として飽和吸着させた.続いて,PEI-OAを修飾した機能性ナノ粒子のトルエン分散体に,表面未修飾の金属(Ni)微粒子を懸濁させた.これらの簡便な混合プロセスを経ることにより,PEI-OAで修飾したSiO2ナノ粒子のPEI-OAを介したNi微粒子上への固定化が実現するとともに,得られたNi/SiO2複合粒子が高濃度条件下でもトルエン中で分散安定化できることを明らかにした.

  • 尾形 公一郎
    2016 年 24 巻 p. 24-29
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    本研究では,空気流による加圧噴出法を用いた付着性粉体の噴出実験を行って粉体の流動評価を行った.実験条件として3種類の消石灰を用い,粉体に作用させる空隙流体圧と粉体層の初期空隙率を変化させた.噴出実験結果から,空気流による3種類の消石灰の噴出開始に及ぼす空隙流体圧や初期空隙率の影響を調査し,付着性の影響や流動評価を検討した.その結果,次の成果が得られた.(1)本装置を用いた場合の粉体の噴出状態を噴出可能条件,遷移条件と不可能条件に分類して粉体の流動評価に適用することができた.(2)粉体に作用する付着力と重力の比を用いて3種類の消石灰に働く付着性の影響が明らかとなった.(3)付着力と重力の比の結果から,消石灰C<消石灰B<消石灰Aの順に付着性の影響を受けやすく,この結果から消石灰A<消石灰B<消石灰Cの順に流動性が高いと推測される.

  • 荻野 千秋
    2016 年 24 巻 p. 30-34
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    本研究では,過酸化水素を吸蔵しているPAATiOxを過酸化水素の代替として用いることで,放射線との併用による抗腫瘍効果を引き出すこと検討した.まず,ポリアクリル酸を修飾した過酸化チタンナノ粒子(PAATiOx)の体内分布及び急性毒性を健常マウスや担ガンしたマウスを用いて調査した.結果的に,PAATiOx,PAATiO2をMIAPaCa-2の担癌を行ったヌードマウスの尾静脈および腫瘍に直接投与し,臓器に蓄積したTi4+イオンを定量した.局所注射および尾静脈注射のどちらの場合においても,PAATiOxの約10%程度がEPR効果を通じて腫瘍を標的化できていることが明らかになった.次に,EGFRに対して特異的に結合するラクダ由来一本鎖抗体(1a)と過酸化チタンナノ粒子(PAATiOx)の複合体(PAATiOx/1a)を用いてEGFR発現細胞に特異的に放射線増感治療効果を発現させることを検討した.その結果,PAATiOx/1aはEGFR発現細胞や担癌マウスの腫瘍部に特異的に送達され,抗腫瘍効果を発現させることに成功した.

  • 柿本 健一
    2016 年 24 巻 p. 35-39
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    (Li, Na, K)NbO3(LNKN)を主成分とするアルカリニオブ酸系セラミックスは高いキュリー温度をもち,優れた圧電特性を示すため,無鉛圧電セラミックスの研究開発において有力な候補材料となっている.将来的な応用を目指して,高負荷耐性に適した合成プロセスの開発や微細構造の制御が望まれているが,これらに関する報告例が乏しい.本研究では,Nb2O5原料のファイン化を検討したところ,LNKNセラミックスを低温焼結できる可能性を見出し,さらに高密度セラミックスも得られたことから,電界負荷時のドメイン構造の変化を精密に捉えることに成功した.これらの成果は,高負荷耐性に優れるLNKNセラミックスの合成に関する重要な知見となった.

  • 川上 亘作
    2016 年 24 巻 p. 40-44
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    リン脂質は,その生体安全性から医薬品や化粧品の添加剤として広く利用されており,特に閉鎖小胞体であるリポソームは代表的DDS(Drug Delivery System)担体である.しかしながら,非平衡構造体であるリポソームの工業的な製造や品質管理は決して容易とは言えず,またリポソーム製剤が顕著な効果を発揮してきたのは液剤,とくに注射剤に限定されてきた.我々はリン脂質を用い,多孔性固体粒子(Mesoporous Phospholipid Particle, MPP)を調製する技術を開発した.MPPの調製プロセスは極めて簡便であり,工業化は容易と考えられる.MPPは各種固形製剤に適用可能であるが,本稿では難水溶性薬物のための経口製剤キャリアとしての機能を紹介する.MPPは全く新しいタイプのDDSプラットホームキャリアとして,今後の発展が期待される.

  • 菊池 将一
    2016 年 24 巻 p. 45-48
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    本研究では,高延性の粗大粒の周りに高強度の微細粒をネットワーク状に配置した「調和組織チタン合金」を作製した.具体的には,メカニカルミリングにより合金粉末の表面のみの結晶粒を微細化した後,それらを焼結することにより「調和組織チタン合金」の創製を達成した.また,作製した「調和組織チタン合金」の力学特性および疲労特性について検討を加えた.引張試験を行った結果,「調和組織チタン合金」は,粗大粒組織を有する初期粉末焼結体と比較して高強度かつ高延性を示した.さらに,4点曲げ疲労試験を行った結果,「調和組織チタン合金」は高い疲労限度を有することを明らかとした.微視構造分析結果と併せて破壊メカニズムについても検討を加え,調和組織チタン合金の破壊起点部は,調和組織内の粗大結晶粒組織であることを明らかとした.

  • 菰田 悦之
    2016 年 24 巻 p. 49-55
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    高濃度マイクロ粒子スラリーに対してナノ粒子を微量添加したときのレオロジー変化について研究した.マイクロシリカ粒子が凝集している場合,その凝集構造がレオロジーを支配し,ナノ粒子添加効果は見られない.これに対して,高分散マイクロシリカ粒子スラリーに対してアルミナナノ粒子を添加すると,マイクロ粒子間隙部をナノ粒子凝集体が閉塞し,スラリーはゲル化した.この現象は粒子濃度が高いほど顕著に見られ,50 vol%では僅か0.01 vol%のナノ粒子によってゲル化することを明らかにした.これに対して,シリカナノ粒子はマイクロシリカ粒子表面に吸着するので粘度増大効果は見られないが,高せん断域でナノ粒子が離脱しクラスターを形成すると,一時的に粘度が急増する断続的シアシックニング挙動を発現することを見出した.

  • 四反田 功
    2016 年 24 巻 p. 56-60
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    本研究は,体液などを燃料とし,ウェアラブル電源として用いることを想定した高出力薄膜型バイオ燃料電池アレイを開発することを目的とした.出力向上のために,電極構造の検討,基板および多孔質炭素電極の検討,および燃料供給方法の検討を行った.これらの検討から,紙を基板としたバイオ燃料電池アレイを設計・作製し,電気化学的測定法により評価した.MgO鋳型炭素を用いて作製した多孔質炭素電極を適用することで最も大きな電流値を得た.本電極をアノード・カソードに用いて,直列に4つ,並列に4つセルを並べたバイオ燃料電池アレイを作製し,最高出力で約1 mWを得た.

  • 竹内 伸太郎
    2016 年 24 巻 p. 61-65
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    有限サイズ粒子を含む流れの中における特徴的な粒子運動およびそれに伴う熱輸送に対する効果のモデリングに対する研究を実施した.物性の異なる粒子と周囲流体の界面における熱輸送をEuler系で解く方法を発展させて粒子間の接触伝熱を解析する手法を提案した.粒子運動に伴う熱輸送について解析するため高濃度粒子混相中の熱輸送解析へ適用し,粒子数密度が高い領域で複数の粒子間を接触面を介して伝熱する様子を確かめ,そこでの熱伝達モードの貢献を調べた.また,いくつかのレイリー数,粒子数密度および粒子熱伝導率の組み合わせの場合に,粒子による熱輸送のうち伝導と対流による貢献を調べたところ,粒子数密度および粒子熱伝導率に依存して主要熱伝達モードの遷移が顕れ,それに伴って特徴的な粒子運動が発生していることを見出した.

  • 竹岡 敬和
    2016 年 24 巻 p. 66-69
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    一般には,構造発色性材料は,光を照射する方向や見る方向によって,その色相を変えるというイメージがある.研究代表者は,角度依存性のない様々な色相の構造発色性材料を白と黒の材料から調製できることを世界に先駆けて見出した.材料としては,シリカ,酸化チタン,マグネタイト,高分子などが使用できる.環境や人にやさしい安価な材料を利用できるので,従来用いられていた環境や人にリスクの高いと思われる色素や顔料に変わって,毒性が少なく,かつ,非退色性の色材を低コストで調製することが可能になるだろう.また,黒色の材料には,導電性,磁性,光応答性など,様々な機能を示す材料が多いことから,これらの機能を利用した機能性色材が得られるかもしれない.

  • 辻 佳子
    2016 年 24 巻 p. 70-73
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    現在,低分子有機分子半導体材料の精製は昇華精製によって行うのが最も一般的である.需要に対する生産量確保およびコスト削減のためには,昇華精製における速度の向上,歩留まりの向上が期待されている.一度に大量の粉体原料を昇華精製する際,真空での粉体層の熱伝導率はきわめて悪いため,層内温度についての非定常過程が無視できない.本研究では,定常過程における昇華速度を評価するためのモデル物質としてペンタセンを,非定常過程における昇華速度を評価するためのモデル物質としてアントラセンを用いて,縦型管状炉での昇華速度を実験的に求めると同時に,円柱形の原料層の内部の物質移動,熱移動を考慮した昇華精製数理モデルを作成した.このモデルでは,原料層内の物質・熱の時間変化は拡散項と昇華・析出項の和で表されるとした.昇華精製速度は,実験的検討と数理モデル検討両者から,温度定常状態では層高に依存しないが,温度非定常状態では層高の増大にともなって低下する結果が得られた.これは,温度非定常状態では原料層内の物質移動・伝熱が律速になっているからと考えられる.

  • 渡慶次 学
    2016 年 24 巻 p. 74-78
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    マイクロ流体デバイスによる脂質ナノ粒子の作製法は,従来法と比較すると,粒子サイズと粒径分布の制御,簡便,作製時間など多くの利点を持っている.しかし,流路内で形成される粒子の形成メカニズムが明らかになっていない.脂質ナノ粒子の形成メカニズムを解明することにより,粒子サイズおよび粒径分布を精密に制御できるようになることが期待される.本研究では,マイクロミキサーを組み込んだマイクロ流体デバイスを作製し,原料溶液(脂質/エタノール溶液と生理食塩水)の混合状態の観察および作製された脂質ナノ粒子の粒径および粒径分布の測定を行った.これらの結果より,マイクロ流路内で作製される脂質ナノ粒子の形成には,溶液同士の完全混合よりも,エタノールを一定の濃度まで急激に希釈することが重要であることを明らかにした.

  • 野田 直希
    2016 年 24 巻 p. 79-84
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    電気集塵装置は,圧力損失が低く,スケールアップが容易であり,集塵性能が高いことから,小容量から大容量までの集塵技術として広く利用されている.近年,大気中PM2.5等の微小粒子の環境影響が注目される中,電気集塵装置の微小粒子除去性能の向上が求められている.電気集塵装置の集塵特性は,捕集粒子の粒子径や電気抵抗率などの電気的特性等の影響を受ける.そこで本研究では,微粉炭火力用の電気集塵装置を対象に,その微小粒子の除去特性を把握すると共に,気流制御の観点から微小粒子の集塵効率向上策の検討を行った.その結果,整流板の設置や最適な荷電条件の選定等によって,電気集塵装置内部の気流の乱れを抑制することで微小粒子の集塵性能を効果的に向上できることを明らかにした.

  • 古川 太一
    2016 年 24 巻 p. 85-91
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    電子線で蛍光体を励起することで生じるカソードルミネッセンス(CL)を用いたバイオイメージング法は,ナノスケールの空間分解能と分子種識別能を併せ持つイメージング手法である.この手法の実現のために最も重要なのが,タンパク質一分子と同程度のサイズかつ高い電子線発光輝度を持つ蛍光体の作製である.本研究では,レーザーアブレーション法と均一沈殿法を用いてCLバイオイメージングのための蛍光体を作製した.レーザーアブレーション法によって作製した蛍光体は,粒径のコントロールが困難で,数十nm程度のサイズを持つ蛍光体のCL輝度もイメージングに不十分であった.一方,均一沈殿法では,沈殿剤の尿素を高濃度に用いた場合(720 mg/mL),40 nm程度の均一な粒径を持つ蛍光体の作製に成功し,単一粒子のCLイメージングに成功した.更に,添加希土類元素濃度,焼成温度,共添加元素を制御することで,より高輝度な蛍光体が作製可能であることを示した.

  • 前田 和彦
    2016 年 24 巻 p. 92-97
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    TiO2は太陽光の大部分を占める可視光に応答しないため,太陽光エネルギー変換型光触媒としては適さない.本研究では,異種元素の共ドーピングおよび遷移金属種による表面修飾という二通りのアプローチにより,ルチル型TiO2の可視光応答化を試みた.TaとNを共ドーピングしたルチル型TiO2が,可視光照射下で水を酸化して酸素を生成する光触媒となることを見出した.このTiO2:Ta/Nを酸素生成光触媒とすることで,Fe3+/Fe2+レドックス対存在下,SrTiO3:Rh光触媒との組み合わせにより擬似太陽光照射下での水の完全分解に成功した.また,ルチル型TiO2上へ含浸法を用いて水酸化コバルトを担持することで,可視光に応答して硝酸銀水溶液から酸素を触媒的に生成できることを見出した.本系は,半導体光触媒により,850 nmまでの広域可視光を用いて水を酸化した最初の例である.

  • 丸山 達生
    2016 年 24 巻 p. 98-102
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    ナノテクノロジーの発展のなかで,半導体量子ドット(QDs)と呼ばれる2~10 nm程度の半導体ナノ粒子は,サイズにより発光波長,色をデザインできるといった他のナノ材料にない特徴的な物性を持つため注目を集めてきた.量子ドット合成に関する研究報告は多数あるが,工業的にスケールアップ可能な分離手法に関する報告例は極めて少なかった.そこで本研究では逆ミセル液液抽出法により,量子ドットをその表面物性とサイズによって抽出分離する方法を開発した.本手法では,逆ミセルサイズにより量子ドットサイズを選択し,さらに量子ドット表面にDNAを結合させ,我々が独自に開発したDNA界面活性剤を用いることで選択性の極めて高い量子ドットの分離を実現した.本手法は様々なナノ材料の分離に応用可能かつスケールアップ可能な,実用性の高い方法であるといえる.

  • 馬渡 佳秀
    2016 年 24 巻 p. 103-108
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    振動場における微粉体の移動特性について実験的に検討した.本研究では平均粒径8.2 μmの球状のジルコニア粒子(密度5680 kg/m3)を使用し,ガス通気量と振動パラメーターを変化させ,発現した粒子移動パターンを実験的に観察・分類した.振動付加により発生する粒子移動速度は振動振幅の増加と共に増加したが,層の圧力損失値は減少する傾向が得られた.粉体層へのガス通気の無い条件において振動付加が粉体層内の粒子に規則的な移動状態(対流状態)を誘起することが経験的に知られており,これは比較的粗な粒子で構成される粉体層に限られていたが,本研究で用いた粒子間の相互作用の影響が大きく凝集性を強く示す微粒子で構成された粉体層に,ガス通気状態で鉛直方向の振動を適切な条件で付加することで規則的な粒子の移動・対流パターンが得られることを明らかにした.

  • 三木 寛之
    2016 年 24 巻 p. 109-114
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    平板金型の間に充填した金属粉末に圧縮荷重とせん断変形を与え,常温大気雰囲気中で薄板状に粉末を固化成形する常温圧縮せん断法では,粉末を直接成形することが可能であり,結晶粒の微細化あるいは粗大化の抑制によって成形材の強度を溶解材に比べて向上することができる.この手法においては,粉体は強制的な塑性流動によって結合され,固化に際して加熱を必要としない特徴がある.粉末材料からの直接成形は生産性向上の観点から工業的にも有効な手法である.本研究では常温圧縮せん断法を用いた異種金属複合材料の成形を目的として,銅(Cu),アルミニウム(Al)および亜鉛(Zn)の複合材料を成形し,成形された材料の組織ならびに機械的特性を評価することによって,常温圧縮せん断法による異種金属間の接合と接合材の機械部品適用の可能性を検討した.

  • 森 昌司
    2016 年 24 巻 p. 115-118
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    炉心溶融を伴う過酷事故時に原子炉容器外部を冠水させる新しい原子炉冷却システムとして注目されており,4 MW/m2級の高熱流束除熱が望まれている.しかし,水の限界熱流束は大気圧,飽和状態で約1 MW/m2であり,限界熱流束の向上が必要である.これまでの研究により,ハニカム多孔質体を伝熱面に装着することで,パッシブに限界熱流束が裸面の場合の2倍以上に向上することを確認した.この向上要因として,毛管力による伝熱面への液供給,蒸気排出孔に直接流入する液供給,蒸気排出孔からの蒸気排出の3つの効果が考えられている.一方でナノ流体(ナノメートルサイズの微粒子懸濁液)による限界熱流束の向上が数多く報告されており,その機構は伝熱面に形成されるナノ粒子層が重要な役割を果たしている.そこで本報では,ハニカム多孔質体とナノ流体を組み合わせることによる限界熱流束向上効果について実験的に検討した結果について述べる.

  • 森貞 真太郎
    2016 年 24 巻 p. 119-124
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    ある種の高分子微粒子は界面活性を示すことから,界面活性剤よりもハンドリングの容易な界面活性材料であるといえる.そこで本研究では,poly(N-isopropylacrylamide)(PNIPAM)を用いることで温度応答性を有する界面活性マイクロゲルの開発を試みた.懸滴法によってPNIPAMマイクロゲル分散液の表面張力測定を行ったところ,25°CにおいてPNIPAMマイクロゲル分散液の表面張力は水よりも低いこと,すなわち界面活性を示すことが分かった.次に,PNIPAMマイクロゲル分散液に窒素を通気することで発生する泡の安定性を検討した結果,25°Cでは安定な泡が発生するが,60°Cでは泡は発生しなかった.さらに,25°Cで発生した泡は60°Cにすると直ちに消泡することも確認された.これより,PNIPAMマイクロゲルは温度応答型の界面活性能を有することが明らかとなった.

  • 森部 久仁一
    2016 年 24 巻 p. 125-128
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    本研究では,probucol(PBC),hypromellose(HPMC),sodium dodecyl sulfate(SDS)を用い,これら3成分噴霧乾燥物(SPD)を水に分散することで薬物ナノ懸濁液を調製した.原子間力顕微鏡(AFM)を用いた液中ナノ粒子の形状像解析及びフォースカーブ測定により,薬物ナノ粒子の凝集挙動及び力学的特性を評価した.SPD中の薬物の非晶質化は固体NMR測定により確認した.SPDを水に分散することで,粒子径約25 nmの薬物粒子が形成した.溶液1H NMR測定の結果より,一部のHPMCは水に分散直後PBCと共存していた.また,懸濁液の粒子径は経時的に増大した.AFMを用いることで水中でのナノ粒子の形態変化や凝集挙動を直接観察できた.とくに経時的な粒子の硬さの増大は,PBCの非晶質から結晶への変化に起因すると推察された.

  • 山下 誠司
    2016 年 24 巻 p. 129-132
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    粘土鉱物などに代表される層状金属水酸化物粒子は,その結晶構造に由来した特異的な電荷構造を有しており,水溶液中でpHなどの条件により結晶面によって異なる電荷を持つことから通常の粒子とは異なる凝集構造を形成することが知られている.本研究では,特異な表面電荷を利用し層状金属水酸化物粒子の異なる結晶面に金属酸化物微粒子を部分的に吸着させることで得られるヘテロ凝集体を作製し,それらの充填層について評価を行った.本研究室で新規化学蓄熱材料として合成しているMg系層状水酸化物粒子を用いて,Al2O3微粒子とヘテロ凝集体を作製した複合粒子について化学蓄熱システムへの適用を想定し,充填層における脱水-水和反応性について評価を行うことで,部分的ヘテロ凝集構造を用いた充填層の優位性を明らかにした.

  • 山本 真平
    2016 年 24 巻 p. 133-137
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/06/10
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    一酸化窒素(NO)は免疫・呼吸器・循環器系等の多くの生体システムの制御に重要な役割を果たす生理活性物質として知られる反面,有毒ガスとしても認知されており,作用させるタイミングや暴露量を誤れば重大な副作用をもたらす.いわば「諸刃の剣」であるNOの医科学的な利活用には,「必要な時」に「必要な分量」だけNOを作用させるNOの制御放出技術の確立が必要となる.本研究は,非侵襲的に生体透過能の優れる磁場の特長を活かした全く新しいNO制御放出技術として,熱分解してNOを放出する化合物と磁性ナノ粒子を均一に複合化・適度な大きさとしたナノ複合体から,外部磁場をトリガーとしてNOを放出させる技術の開発をめざした.NO放出化合物のスクリーニング,溶媒蒸発法を用いたナノ複合体合成,NO制御放出実験,および細胞毒性評価試験を行うことにより,交番磁場の印加時のみにNOを放出する低細胞毒性なNO放出ナノ複合体の合成に成功した.

平成27年度 研究者育成のための援助成果報告
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