本研究ではフェイスマスク微細構造内におけるサブミクロン粒子の捕集挙動を数値的に検討した.市販のフェイスマスクをX線CTを用いた画像解析により3次元的な構造を得た後,この数値的に得られた微細構造にエアロゾルを供給するシミュレーションを行った.その結果,微細構造内に局所的な粗密性があり,大きな貫通孔が存在すると,その細孔表面で粒子が捕集されやすくなり,quality factorが高くなることがわかった.
複雑形状大型部材の製造に適した常圧焼結では粉体成形プロセス中に形成される欠陥寸法を抑制し焼結中に除去することが,また,加圧焼結では大型部材製造のために,より低い圧力でも欠陥除去ができるように,3次元マルチスケールでの欠陥消失過程の解明が求められる.本研究ではSPS中にどのように気孔と欠陥の形状が変化・消失していくかを観察する.
全固体電池において,固体電解質の粒子形状は,接触界面の増大と流動性向上で重要な役割を果たす.本研究では,Li3PS4(LPS)粒子の液相合成において,反応温度と衝撃力が反応時間と粒子形状に及ぼす影響を検討した.ホットスターラーを利用することで,従来の合成法よりも高速でLPS粒子の合成に成功した.さらに,LPS の粒子形状は,反応過程における衝撃エネルギーによって決定されることを明らかにした.
三元触媒(TWC)のガス浄化効率を向上させるために,ポリマーテンプレート粒子(ポリスチレンラテックス)を使用したエアロゾルプロセスにより,マクロポーラス構造を持つTWC微粒子を合成した.その結果,マクロ孔が存在しないTWC微粒子と比較して,マクロ孔を持つTWC微粒子は,粒子構造内のガス拡散が促進し,触媒性能(CO酸化反応)の向上へと繋がった.
構造柔軟性を有する多孔性配位錯体(MOF)は,その高い吸着性能から,吸着分離プロセスへの応用が期待されている.吸着カラム内での使用を見据えると,粉末材料であるMOFは何かしらの成形が必要だが,ガス吸着時に粉末の体積膨張を伴うため,成形体が粉末とは異なる挙動を示す.本研究では,吸着時の体積膨張率に注目して,体積膨張率の異なる二種類のMOFを成形し,その吸着挙動を比較した.
Agクラスターは特異な触媒特性により注目されている.しかしAgは他の貴金属より熱的安定性に乏しいため容易に凝集するという問題があった.本研究では,燃焼反応場で誘起されたAg-TiO2間の金属-担体間の相互作用を利用することで,TiO2表面にAgクラスター(1~2 nm)が安定化されることを見出した.この相互作用を利用することで,20wt%Ag/TiO2におけるAgクラスターが,少なくとも350○Cで2時間は安定であることを報告した.
ナノ粒子の最も簡便な細胞毒性試験として,赤血球を用いた溶血性試験が広く用いられている.しかし,ナノ粒子の溶血作用メカニズムは未だによく理解されていない.本研究では,シリカ粒子物性(サイズと表面官能基)および曝露環境(溶液温度とタンパク質の添加)に着目して,赤血球に対する粒子付着数の測定,溶血性試験,および赤血球の凝集・分散性の評価が行われ,シリカ粒子の溶血作用メカニズムの全体像が明らかにされた.
これまでGaborホログラフィによる微粒子計測は,測定原理に起因する双画像問題とオンライン測定が困難になる長い3次元数値計算時間の問題があり,研究室の利用に留まっていた.そこで,GPU (Graphics Processing Unit)搭載シングルボードコンピュータを用いた位相回復ホログラフィ微粒子計測モジュールを開発することで,粉体生産工程のインライン・オンライン測定に利用できることを示した.
機械学習を用いた粉体材料の構造と機能の分類には精度向上に寄与する因子の“見える化”が重要である.昆虫の糞を対象とし,マハラノビス-タグチ(MT)法の原因分析を用い,雌雄分類精度向上に寄与する糞形状が表面粗さ由来であることを明らかにした.雌の糞には雄の糞よりバインダー成分が多いため変形しやすいと推測される.MT 法は、個体差によるばらつきを除外し粉体材料の構造と機能の分類精度向上への展開が期待できる.
Si–Si単結合の柔軟性を活用し,3量体,4量体の環状芳香族分子を合成し,温度変化による構造と物性の連動変化と機能性分子への展開について報告しています.
医薬品の個別化製造を将来的に達成するには,製造工程を可能な限り高効率化する必要がある.我々はろ過・乾燥機能に加え粉体加工操作をハイブリッド化したワンポット型加工装置を開発した.卓上サイズの本装置は,ろ過・乾燥・粉体混合・湿式造粒の全工程を一括処理できる.
離散要素法(DEM)では,剛性を低減させたモデル粒子を用いてオリジナル粒子のバルク挙動を模擬する方法がしばしば用いられる.本方法を付着性粒子のシミュレーションに適用する場合には,剛性低減による接触時間の増加に伴う過剰なエネルギー散逸を防ぐ必要がある.この記事では,粒子剛性低減率に合わせて粘性減衰係数をスケーリングすることで,粒子の静的状態と動的な挙動を同時に模擬可能であることを報告している.
表面増強ラマン散乱(SERS)は,単一分子レベルの超高感度検出が実現可能な手法として,分析化学やバイオ,ナノテクノロジーなど,様々な分野での応用が検討されている.本研究では,SERS効果の発現に重要となる,貴金属ナノ粒子の凝集状態の制御をエアロゾル手法によって実現し,凝集粒子を構成する一次粒子間の結合が極めて高いラマン散乱増幅効果を発現することを明らかにした.
燃料電池の触媒層を想定してカーボンブラック (CB) およびアイオノマーを用いた多孔質膜の性能の制御を検討した.CB およびアイオノマーを分散させたスラリーをドクターブレードで基板上に塗布したのち,基板側から加熱することで多孔質膜を得た.比表面積が異なる CB から得た膜の透過率を測定したところ,透過率は CB の比表面積が大きな場合には膜厚に対して一定であったのに対して,比表面積が小さい場合には膜厚と共に増加した.
電場と紫外線の利用により,機械的外力や流体力を用いずに,粒子の帯電と運動を同時に制御して堆積粒子を除去することができる.この記事では,絶縁板に堆積させた誘電性粒子を上向きの静電場と紫外線照射によって帯電・ 浮揚させる方法を提案し,紫外線照射によって粒子から放出される光電子が浮揚粒子のフラックスと運動に与える影響について説明している.
粒子径が小さい粒子の流動性向上方法の1つに微小粒子添加法がある.本方法では,微小粒子被覆による主粒子間付着力の低下が主な原因だと考えられているが,被覆主粒子接点で力が不均一となることも原因の1つである可能性が考えられる.この記事では,DEMシミュレーションにおいて,異なる表面付着力分布モデルでのオリフィスからの粒子流出速度を求めた結果,表面付着力分布は流動性向上に寄与することを報告している.
薬物や核酸を目的の臓器や細胞に送達するためのナノ粒子製剤が世界中で注目されています.ナノ粒子の粒径は,生体内分布や薬効に影響を与えることが報告されており,ナノ粒子製剤の粒径の精密制御技術が強く求められています.この記事では,マイクロ流体デバイスを用いて,生分解性ポリマーの1つである,Poly lactic-co-glycolicacid(PLGA)ナノ粒子の粒径を精密に制御する技術と抗がん剤を搭載した粒子作製への応用について報告しています.
有機溶媒を用いた微粒子分散系は多くの工業プロセスで用いられていますが,その分散挙動の理解は水系のそれよりもはるかに遅れています.この研究では,分散・凝集の支配要因である有機溶媒中の固体表面間力を,原子間力顕微鏡を用いて直接測定し,表面官能基と溶媒分子の親和性という観点から表面間力の作用メカニズムを解明しています.この結果は,有機溶媒中での分散評価の体系化に大きく資することが期待されます.
世界が掲げるカーボンニュートラルや脱炭素社会を実現するために,化石燃料に代わるクリーンなエネルギー源の開発が重要な課題となっている.現在,半導体光触媒を用いて太陽光下で水を分解する技術が解決策の一つとして期待されている.本研究では,半導体のpn接合という概念を用いて,可視光下でも効率の高い光触媒の有効性を提案した.具体的には,n型のBiVO4とp型のBiOX半導体をナノレベルで組み合わせることによってそれぞれの半導体単体よりも光触媒効率を大幅に改善することを明らかにした.
酸化鉄磁性粒子は優れた磁性を示す一方で,黒褐色の材料です.このため,酸化鉄磁性粒子を基盤としたカラー磁性粒子の作製は困難でした.この記事では,ランタノイド元素の中で最も磁気モーメントの高いホルミウムを複合した高分子を利用することで作製された,無着色ならびに任意の色で鮮やかに着色されたカラー磁性粒子の特徴について説明しています.