ホソカワ粉体工学振興財団年報
Online ISSN : 2189-4663
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令和3年度 研究助成成果報告
  • 石神 徹
    2024 年 31 巻 p. 27-33
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    本研究では,フェイスマスク微細構造内におけるサブミクロンサイズの粒子挙動を明らかにするために,実際のフェイスマスクのX線CT画像を連携した数値シミュレーションモデルを開発した.微細構造内部に大きな細孔が存在すると,当該部近傍で流線が湾曲し,その流れに同伴する粒子が細孔表面で捕集されやすくなることがわかった.細孔の存在は,圧力損失と捕集率の低下をもたらすものの,上記の効果により捕集率の低下が抑制されるため,フェイスマスクの性能(quality factor)を向上させることがわかった.

    Editor's pick

    本研究ではフェイスマスク微細構造内におけるサブミクロン粒子の捕集挙動を数値的に検討した.市販のフェイスマスクをX線CTを用いた画像解析により3次元的な構造を得た後,この数値的に得られた微細構造にエアロゾルを供給するシミュレーションを行った.その結果,微細構造内に局所的な粗密性があり,大きな貫通孔が存在すると,その細孔表面で粒子が捕集されやすくなり,quality factorが高くなることがわかった.

  • 石川 善恵
    2024 年 31 巻 p. 34-38
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    我々が開発してきた粒子合成法である液中レーザー溶融法を用い,ZnOとMgOまたはMg(OH)2の混合粒子からZn1–xMgxO粒子の合成を試みたところ,合金化反応が起こることが明らかとなった.ZnO中へのMgの固溶量xはZnO粒子とMgOまたはMg(OH)2の混合方法に依存し,機械攪拌法ではx = 0.09,共沈法ではx = 0.20のZn1–xMgxO球状粒子が得られた.共沈法では生成するMg(OH)2粒子が小さく,さらに機械攪拌法と比べてZnOとMg(OH)2が高い頻度で接触した状態の混合粒子が得られるためと考えられる.様々な比率のZnOとMgOまたはMg(OH)2の混合原料粒子に対する照射試験を実施ししたところ,本手法におけるウルツ鉱型ZnOへのMgの固溶限界は0.20と0.24の間にあることが明らかとなり,従来の一般的なセラミックスの固相反応で報告されているMg固溶限界量であるx = 0.2と同程度の結果が得られた.

  • 伊藤 貴章
    2024 年 31 巻 p. 39-45
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    吸入剤のうち吸入粉末剤(DPI)は,粉末粒子を肺深部に到達するために,空気力学的粒子径を1~6 μmに制御する必要がある.しかし,シングル・ミクロンの粒子は付着凝集性が高いため,吸入デバイスからの放出が難しい.加えて,既存のDPI調製法は,通常,高温処理が必要で,熱に弱い薬剤に適用することができない.本研究では,溶液を室温でナノファイバーとして粉末固化できる電界紡糸法に着目した.ナノファイバー・マットの繊維構造を維持しつつ粉砕微粒子化することで,DPIに最適な中空多孔粒子を調製した.繊維マットを凍結粉砕することで幾何学的粒子径10~35 μmの微粒子を調製することに成功した.カスケード・インパクターを用いたin vitro肺送達性試験の結果,空気力学的粒子径は幾何学的粒子径よりも小さく(5.9 μm),DPIに適した空気力学的粒子径を有していた.粉砕による一部失活は認められたものの,タンパク質の活性を維持しつつDPI製剤化に成功した.

    Graphical Abstract Fullsize Image
    Scanning electron micrographs of the electrospun nanofiber mats and milled nanofiber mats. (a) A polyvinyl alcohol (PVA) nanofiber mat prepared using the electrospinning technique. (b) A PVA nanofiber mat milled by cryo-milling (freezing: 30 min, milling: 3 min).
  • 梅本 和輝
    2024 年 31 巻 p. 46-51
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    ペロブスカイト量子ドットは,優れた発光特性を有し広色域ディスプレイの発光体として期待されているが,工業的実用性のある合成法の開発には課題を残している.微粒子の合成法として,実績のある粉砕法が有望であるが,粉砕経過に伴う粒子の凝集と融着による量子ドットのサイズ単分散化が困難であった.本研究では,申請者等が独自に考案した「超音波」と「ビーズ粉砕」を組み合わせた「超音波ビーズミル法」を適用する.超音波照射により,粒子の凝集と融着を抑制することで,粒子の分散状態を維持したまま粉砕できる.これにより,サイズ単分散量子ドットの合成を達成し,さらに発光デバイスに展開できる.本研究では,粉砕条件の検討による発光特性の向上と,シミュレーションによる粉砕メカニズムの解明,発光デバイスの作製・評価を一貫して実施することで,超音波ビーズミル法の高い優位性を明らかにした.

  • 大熊 学
    2024 年 31 巻 p. 52-57
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    常圧焼結では大きな亀裂状欠陥は収縮せず,むしろ,わずかに成長する.理論的にも,小さな空隙や欠陥は収縮するが,成形段階で形成された粗大欠陥を常圧焼結で除去することは困難である.一方,ホットプレス(HP)や放電プラズマ焼結(SPS)等の加圧焼結では,比較的低温で,緻密な微細組織を有する高強度・高信頼性セラミック部材が製造でき,また内部欠陥の除去により透明セラミックスの製造も可能となる.ただし,加圧焼結では高圧力が必要で,比較的小型の単純形状部材しか製造できないという問題がある.このため,複雑形状大型部材の製造に適した常圧焼結では粉体成形プロセス中に形成される欠陥寸法を抑制し焼結中に除去することが,また,加圧焼結では大型部材製造のために,より低い圧力でも欠陥除去ができるように,3次元マルチスケールでの欠陥消失過程の解明が求められる.本研究ではSPS中にどのように気孔と欠陥の形状が変化・消失していくかを観察する.

    Editor's pick

    複雑形状大型部材の製造に適した常圧焼結では粉体成形プロセス中に形成される欠陥寸法を抑制し焼結中に除去することが,また,加圧焼結では大型部材製造のために,より低い圧力でも欠陥除去ができるように,3次元マルチスケールでの欠陥消失過程の解明が求められる.本研究ではSPS中にどのように気孔と欠陥の形状が変化・消失していくかを観察する.

  • 大崎 修司
    2024 年 31 巻 p. 58-64
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    全固体リチウムイオン二次電池は,その優れた安全性などから次世代の二次電池として期待されている.その製造工程で,粒子間の接触界面を大きくし,粒子の流動性を向上させる必要がある.また,固体電解質の粒子形状は,接触界面の増大と流動性向上で重要な役割を果たす.Li3PS4(LPS)は固相反応だけでなく,液相で合成されることから高い生産性という利点を有する.しかし,粒子サイズと形状を制御するメカニズムはまだ明らかにされていない.本研究では,ホットスターラーと超音波ホモジナイザーを用いて液相中でLPS粒子を合成し,反応温度と衝撃力が反応時間と粒子形状に及ぼす影響を検討した.ホットスターラーを利用し,イオン伝導度が1.3 × 10–4 S/cmと高いLPS粒子を67°Cで60分かけて合成できることが示された.この合成法は,従来の液相振とう法(6時間)よりも大幅に高速であった.また,LPSの粒子形状は,反応過程における衝撃エネルギーによって決定されることを見い出した.さらに,異なる合成法を組み合わせることにより,高いイオン伝導性を有する形状制御粒子の合成に成功した.本研究で得られた結果は,特定の粒子形状と粒子サイズを得るために合成条件を最適化するための貴重な知見である.

    Graphical Abstract Fullsize Image
    SEM images of LPS synthesized by combinations of (a) hot stirrer and liquid-phase shaking method and (b) hot stirring and an ultrasonic homogenizer.
    Editor's pick

    全固体電池において,固体電解質の粒子形状は,接触界面の増大と流動性向上で重要な役割を果たす.本研究では,Li3PS4(LPS)粒子の液相合成において,反応温度と衝撃力が反応時間と粒子形状に及ぼす影響を検討した.ホットスターラーを利用することで,従来の合成法よりも高速でLPS粒子の合成に成功した.さらに,LPS の粒子形状は,反応過程における衝撃エネルギーによって決定されることを明らかにした.

  • 尾関 哲也
    2024 年 31 巻 p. 65-68
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    mRNA封入脂質ナノ粒子(mRNA-LNPs)はmRNA医薬のための基盤技術であり,mRNAワクチンにも既に応用されている.mRNA-LNPsの吸入剤への応用は効果的な呼吸器感染症ワクチンの開発において有用な戦略である.そこで,本研究ではmRNA-LNPsの粉末吸入製剤化に取り組んだ.スプレフリーズードライ(SFD)法により粉末製剤化し,粉体特性および,培養細胞におる機能評価を行った.その結果,吸入剤に適した粉体が得られ,ある程度の機能は保持されていた.一方で,凍結時の氷晶によりmRNAのLNPsからの漏出が起こり,機能低下を起こしていることが示唆された.そのため今後は,mRNA-LNPsの構造を保持したまま粉末製剤化する技術の開発が期待される.

    Graphical Abstract Fullsize Image
    Schematic illustration of the preparation of powdered mRNA-LNPs.
  • 加藤 邦彦
    2024 年 31 巻 p. 69-75
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    半導体光触媒の反応効率を向上させるためには,化学組成制御・異種物質複合化による近赤外光域までの応答性拡張及び光励起キャリアの再結合抑制が極めて有効である.本研究では,2.45 GHzマイクロ波プラズマが誘起する反応場を利用した新規手法により,市販の酸化タングステン(WO3)ナノ粒子/ポリスチレン(PS)粒子を原料としてWO2.72/カーボン複合粒子のin-situ合成に成功した.得られた複合粒子は300–800 nmの範囲でブロードな光吸収能を示すとともに,処理前と比較して優れた電気的特性を示すことが明らかとなった(電荷移動抵抗:1/4低下,電子寿命:約7倍増,電子移動数:2倍増,有効反応面積:約2倍増).さらに,近赤外照射下におけるローダミンBの光触媒分解反応において,マイクロ波処理により活性を飛躍的に向上させることに成功し,PS非混合の合成粒子と比較しても40倍程度の活性向上が確認された(反応速度:最大6.6 × 10−3 min−1.原料は不活性,反応速度:<1.0 × 10–5 min–1).また,いずれの励起キャリア(e, h+)も酸化還元反応を介して強い酸化力を有する·O2/·OHを生成させ光触媒分解に顕著に寄与していることが確認された.さらに,近赤外光照射下における電子移動速度は約9倍増加するとともに,光電流値が2桁以上増加したことが明らかとなった.

  • 北村 研太
    2024 年 31 巻 p. 76-81
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    スラリーを利用した製造プロセスでは粒子の分散制御が製品特性の最適化において重要である.しかしこの分散制御には様々なパラメーターがあることから調製は容易でない.本研究では分散制御の指針を示すため,分散技術の一つである“固練り(高粒子濃度で練った後,希釈することでスラリーを調製する方法)”に着目し,固練り条件が粒子の分散状態,とりわけその均質性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし研究をおこなった.実験では大小二種類の粒子を用い,固練り時の粒子濃度をパラメーターとしてスラリーを調製,流動特性や粒子径分布測定によりスラリーを評価した.その結果,固練り時粒子濃度の増加に伴い粒子の分散が促進し,分布がシャープになる一方で,閾値を超えるとその効果が低くなることが分かった.この結果から固練り時の粒子濃度を適切に調整することで均質な分散状態を作り出すことができる可能性が示唆された.

  • 久志本 築
    2024 年 31 巻 p. 82-85
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    ボールミル中の媒体ボールや粉砕容器壁面に砕料粒子が強く凝集する固着は,その発生の予測が難しく,ボールミルによる粉砕の制御の実現を妨げる主な要因の一つとなっていた.こうした現状の背景には,ボールミル中の砕料粒子が固着する挙動を実験的に解析することが難しいことがあった.一方,実験では解析困難な現象に対しシミュレーションによる解析が近年に盛んに行われており,固着の発生メカニズムを解析できる可能性があった.しかしながら,ボールミル中の砕料粒子の運動,破壊,凝集挙動を表現可能なシミュレーションモデルは確立されておらず,固着挙動の解析はシミュレーションを用いても難しかった.そこで本研究では,ボールミル中の砕料粒子の運動,破壊,凝集挙動を表現するシミュレーションモデルを新規に構築した.

    Graphical Abstract Fullsize Image
    Comparison of particle behavior with and without adhesion when a grinding ball collides.
  • 河府 賢治
    2024 年 31 巻 p. 86-92
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    本研究において,閉空間における超音波振動による音響流と粒子挙動の変化を明らかにし,さらに流れ場における流れの変化についても明らかにした.閉空間ではレイノルズ数により音響流の渦数が変化し,高レイノルズ数では,非対称の渦が発生することがわかった.そして粒子挙動シミュレーションの結果,直径1 μmの粒子は音響流とともに動き,20 μmの粒子は音響放射力により節に移動することがわかった.これは,粒子挙動に対して支配する要因が粒子径に依存することを意味する.また流れ場では,流速1 m/sでは振動振幅を8 μmにしても流れは変化しないが,流速0.15 m/sでは正弦波のように流れが変化した.これは,流速や振動条件を変えることで流れを制御できることを意味する.

  • 関本 敦
    2024 年 31 巻 p. 93-98
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    正方形ダクト乱流における平均二次流れは断面内の熱物質輸送を担うため,その制御は高効率な熱交換器や管路内での連続化学反応や粒子分離などの応用が期待できる.これまでに,低レイノルズ数においてダクトの下壁面を加熱することで慣性力と浮力が同程度となり,平均二次流れのパターンが大きく変化することが知られていたが,それらを制御する手法については,これまで議論されていなかった.本研究では,数値シミュレーションを用いてダクト流路の下壁面の加熱制御を検討し,流路内二次流れを大幅にコントロールできるパラメタ―範囲を特定した.さらに,強化学習を用いた能動加熱制御手法を開発し,より安定的に二次流れを制御可能であることを示した.この流動制御技術を粒子分離装置へと応用するために,数値シミュレーションを行いダクト乱流中の粒子挙動について解析した.これらの結果は,矩形流路を利用した連続化学反応や連続粒子分離装置への応用が期待できる.

    Graphical Abstract Fullsize Image
    The effect of gravity on the preferential location of particles.
  • 高井 千加
    2024 年 31 巻 p. 99-102
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    ナノ粒子/ポリマー複合フィルムが断熱性,光散乱性など特異的機能を発現するためには,機能に特化した粒子の設計・ナノスケールにおける分散のみならず,粒子/ポリマー界面の分子レベルでの複合化が重要である.用途に応じポリマー自身も硬化方法も多様化するため,粒子,ポリマー両者の特性を知る評価手法を提案した.時間領域核磁気共鳴(TD-NMR)は液中分散体表面の物性を緩和時間として表すことができる.得られた緩和時間変化を,汎用的な評価手法とともに分析したので報告する.

    Graphical Abstract Fullsize Image
    Change in the relaxation time (T2) as a function of CNF concentration.
  • 劒 隼人
    2024 年 31 巻 p. 103-106
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    複数の金属イオンと架橋元素から構成される多核金属錯体は,ナノスケールの無機材料として,その合成法の開発と触媒や材料としての応用に関する研究が盛んに行われている.中でも複数の鉄イオンと架橋オキソ配位子を含む多核鉄錯体は,ナノスケールオーダーとした酸化鉄のナノ粒子であり,その触媒特性や磁性などの諸性質に注目が集まっている.本研究では,3価の鉄錯体に対して紫色~青色光を照射すると,鉄周囲の配位子が解離して光還元が進行する性質を活用し,様々な核数の多核鉄錯体を与える反応条件下でのカルボン酸の変換に関わる光触媒特性を見出した.特に鉄塩とカルボン酸から生じるカルボキシラート配位子を有するオキソ架橋多核鉄錯体が光触媒反応における触媒活性種となり,光照射によりカルボン酸が脱炭酸を起こし,生じる有機ラジカルが不飽和炭化水素に対して付加反応を起こすことで,新たな有機合成反応に展開できることを明らかにした.

    Graphical Abstract Fullsize Image
    Reaction set-up for photo-catalytic decarboxylative alkylation of carboxylic acids with electron-deficient alkenes.
  • 冨樫 貴成
    2024 年 31 巻 p. 107-111
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    有機分子により被覆された無機ナノ粒子はサイズ・形状に依存したユニークな物性を発現する.さらに,溶媒に分散可能であり,医療・工学的用途が多数報告されている.これまで,サイズ制御は金属イオン濃度が希薄な液相法で行われている.結果,ナノ粒子合成量の増加に伴い廃液量が増加し,環境面の課題が残る.現在,我々はアルキルアミン融合シュウ酸錯体を原料として用いたナノ粒子合成法を研究している.この手法では,溶媒を用いることなく,少量の配位子中でサイズが均一な単分散ナノ粒子の合成・予測可能なサイズ制御までも可能としている.その一方で,合成実績は少なく,汎用性の向上には新たな金属種での錯体の合成が必須である.本研究では,新たにニッケル,コバルト,スズ,バナジウムを金属イオンにもつアルキルアミン融合シュウ酸錯体の合成を試みた.得られた金属錯体の構造・物性はX線回折,赤外分光法,熱重量測定装置により評価した.

    Graphical Abstract Fullsize Image
    The formation of alkylamine-coordinated oxalate complex via mixing oxalate complex and alkylamine.
  • 中澤 光
    2024 年 31 巻 p. 112-116
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    バイオリファイナリー社会を実現するためには,結晶構造を有する難分解な植物セルロースを,有用物質生産の起点となるグルコースへと酵素によって変換する必要がある.しかし,変換効率が低いため,酵素反応槽へ外部から加熱するなどのエネルギーの大量投入を余儀なくされている.筆者は,難分解性の物質であっても,エネルギー生産するために,エネルギーを投じることはナンセンスであると考えており,時間をかけても,極力追加のエネルギーの投入なく,かつ環境負荷の低い方法を考えていくことが必要であると考える.本研究では,太陽光を熱に変換する性質を持つ星形金ナノ粒子の表面へ,独自の酵素クラスター化設計を反映させつつ耐熱性のセルロース分解酵素(セルラーゼ)を固定化することで,太陽光により,光応答的に粒子表面の局所反応場の温度を向上させ,ボイラーを使わずに効率のよい酵素糖化を達成する方法を開発した.

  • 中島 佑樹
    2024 年 31 巻 p. 117-121
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    セラミック粒子へのポリマー被覆は,粉体の均一・高分散性に寄与し,その特性向上を可能とする.現行のポリマー被覆技術は,精緻な構造・組成制御ができるものの,その工程が煩雑であることが課題となっている.そこで,粒子の破壊や昇温を伴わない機械的処理(摩砕)が引き起こす粒子極表面のラジカルを最大限利用した粒子表面での選択的なポリマー形成技術を開発した.本研究では,モデル材料としてシリカを母粒子として表面ラジカルとスチレンとを反応させることで,ポリスチレンの被覆を行った.パラメータとして,処理時間,スチレンの添加量,母粒子の材質を検討し,ポリスチレンの形成機構に関して調査した.今後はこれらの結果を基に研究を進め,摩砕によるポリマーの形成機構を明らかとする予定である.

    Graphical Abstract Fullsize Image
    TEM and SEM images of prepared particle.
  • 根岸 淳
    2024 年 31 巻 p. 122-126
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    組織再生や細胞機能の解析に向けて,組織や臓器の細胞外マトリックス(ECM)を再現した足場材料が必要とされている.ヒトや動物の組織から免疫原である細胞を除去した脱細胞化組織が移植材料として利用されているが,細胞が浸潤しにくいため細胞培養用の足場材料への応用は困難である.本研究では,脱細胞化組織粉末を加圧成型したECMブロックの作製法の開発,およびECMブロックの多孔質化と細胞培養基材としての有用性の解明に取り組んだ.冷間等方圧(CIP)印加により高強度のECMブロックが作製可能なことを明らかにし,また,脱細胞化組織粉末の原料によってECMブロックの特性が変化することを見い出した.さらに,NaClとタンパク質架橋酵素を用いたブロックの多孔質化を行い,多孔質ECMブロックに細胞が接着可能なことを明らかにした.本研究により,CIP成型を用いた動物組織のECM組成を有する新たな足場材料の作製基盤が確立された.

  • 橋本 雅彦
    2024 年 31 巻 p. 127-133
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    本研究では,乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)ナノ粒子の用時調製技術の開発を試みた.ポリジメチルシロキサン(PDMS)製のポンプレスマイクロ流体チップに独自の吸引アクチュエータを導入し,高粘度高分子ポリマー溶液を効果的に制御してPLGAナノ粒子を生成することに成功した.連続相としての水相に溶解させたポリビニルアルコール(PVA)が,水中油滴の安定的な生成に重要な役割を果たすことが示唆された.また,マイクロ流体チップ内の水中油滴回収リザーバにおいて,油相と水相の相互溶解に基づくPLGAの結晶化プロセスが確認された.真空パックされた脱気済みPDMSマイクロ流体チップを長期保存してもその性能が維持されることが実証されていることから,本法を用いることによってPLGAナノ粒子の用時調製が可能であることが示唆された.

  • 堀口 元規
    2024 年 31 巻 p. 134-139
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    高温場における灰粒子の付着は,燃焼プラントの高効率かつ安定的な運転を阻害する問題である.高温付着性の主たる要因は,灰中のアルカリ金属が形成する低融点成分の溶融である.付着抑制のための手法として薬剤の添加があり,これは灰の化学組成を調整することで溶融を抑制することを狙っている.ただし,灰の組成は多様であり,組成調整のみに依存した付着抑制手法には限界がある.本研究では,灰粉体層中に空隙を形成することで物理的に灰付着層の強度を低下させられる点に着目し,組成調整と空隙形成の双方の効果を有する薬剤を開発することを目指した.薬剤成分として,アルカリ金属由来の低融点成分形成の抑制に有効なアルミニウムを選定した.さらに,ガス発生による空隙形成が期待できるアルミニウム塩として,硫酸アルミニウム水和物を選定した.硫酸アルミニウム添加により,900°Cにおける粉体層強度を最大69%減少させることに成功した.

  • 松岡 光昭
    2024 年 31 巻 p. 140-145
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    石炭火力発電所からの産業副産物であるフライアッシュを用いたジオポリマーは,硬化過程において重金属を固定化する働きがあり,環境浄化分野での活用が期待される.フライアッシュの反応性が低く,硬化には長時間の加熱養生が必要なことが実用上の課題である.本研究では,フライアッシュ粒子に対して機械的処理を施して緩和な養生条件でジオポリマーを作製し,Pb2+固定化能におよぼすフライアッシュへの機械的処理の影響を検討した.機械的処理により微細化されたフライアッシュは比表面積の増大と結晶性の低下により,ジオポリマーの硬化に必要なAl3+およびSi4+イオンの溶出性が促進された.これにより,ジオポリマーが室温かつ短時間で硬化でき,室温養生であっても加熱養生と同等の高いPb2+固定化能を示した.フライアッシュ粒子への機械的処理がジオポリマーの硬化反応性だけでなく,重金属固定化能にも寄与することが示唆された.

    Graphical Abstract Fullsize Image
    SEM images and specific surface area of coal fly ash milled by various comminution time.
  • 鱒渕 友治
    2024 年 31 巻 p. 146-150
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    ペロブスカイト型酸窒化物BaTaO2Nは可視光応答光触媒として応用が期待される化合物である.本研究では,酸窒化物の微粒子化と結晶性向上を目的に窒素含有BaCN2フラックスを用いた酸窒化物微粒子の合成条件と結晶性および微細組織の関係を検討した.BaCN2とTa2O5の混合粉をN2雰囲気中750°C以上の温度で加熱することで,BaTaO2Nを得た.BaTaO2N単一相を得るにはBa過剰のBaCN2/Ta2O5組成の原料が必要だった.NH3を用いた合成手法では結晶子径が40 nmだったBaTaO2Nは,BaCN2を用いた本研究の手法では結晶子径が100 nmまで増加し,結晶性の向上が確認できた.また生成物にはペロブスカイト型構造の(111)面と(100)面が発達した切頂八面体型の粒子が得られた.BaCN2フラックスを用いることで,特定の結晶面が発達した高結晶性の酸窒化物微粒子の合成に成功した.

  • 松井 淳
    2024 年 31 巻 p. 151-155
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    高分子微粒子は塗料,電子,医療部材など多様な分野で応用される材料である.一般的に形成される高分子微粒子はもっとも表面自由エネルギーの小さな球状からなる.本研究ではこのような背景において,加湿下において主鎖と側鎖の相分離“ナノ相分離”によりラメラ構造を形成するドデシルアクリルアミド高分子(pDDA)が微粒子状から板状へと自己組織的に構造変化を引き起こす事を示す.フラッシュナノ沈殿(Flash NanoPrecipitation, FNP)法を用いて作製したpDDAのナノ粒子は50 nm程度の球状形状となった.このナノ粒子を加湿下でアニールしたところ,球状構造が板状へと構造変化することを見いだした.これはナノ粒子の状態においてランダム鎖を形成していた高分子鎖が加湿アニールによりラメラへとスタックしたためと考えられる.すなわち高分子一本鎖の構造変化により,その集合体である粒子のマクロ構造まで変化させる事に成功した.

  • 村田 秀信
    2024 年 31 巻 p. 156-160
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    離散要素法(DEM)は粉体関連の問題を解決できる手法として期待されているが,正確なシミュレーションを行うには扱う粉体に合わせて多くの入力パラメータを調整する必要があり,普及の妨げとなっている.そこで本研究では,機械学習を用いて粉体特性からDEM用の入力パラメータを逆推定することを試みた.粉体として最も単純なモデルである付着性のない粉体を扱い,粉体特性として流出速度,ゆるめかさ密度,安息角を採用した.DEM用の入力パラメータである摩擦係数,反発係数,ばね定数,形状パラメータを750通りの組み合わせに変化させて各粉体特性のDEMシミュレーションを実施し,機械学習用データベースを構築した.サポートベクター回帰により,粉体特性からDEM用の入力パラメータを逆推定する機械学習モデルを構築したところ,いずれのDEM用の入力パラメータについても実用的な精度で逆推定することに成功した.

  • 渡邉 貴一
    2024 年 31 巻 p. 161-165
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    コアシェル型微粒子は,複数の異なる物性を共存させることが可能であり,形態や粒径を制御することによって,光学材料,診断薬,フィラーなど,多岐にわたる製品に応用されている.コアシェル型高分子微粒子は,シード粒子の調製後にシェル材料を重合させるという多段階プロセスを経て製造される.しかしながら,この製造プロセスは時間がかかる上,操作も複雑である.本研究では,マイクロフロー・プロセスにおいてスラグ流を重合場とした,コアシェル型微粒子の高速かつ連続的な合成技術を開発した.本報告では,Water-in-Oil型スラグ流を反応場としたSoap-free乳化重合により流路の閉塞を起こすことなく,粒径が均一なコアシェル型高分子微粒子を連続的に合成した事例を報告する.

  • マクナミー キャシー エリザベス
    2024 年 31 巻 p. 166-170
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    オレイン酸でコーティングされたFe3O4ナノ粒子(NP)のラングミュア膜を基板に累積することによりFe3O4薄膜を調製した.膜中のNPのパッキング状態は,ラングミュア膜の形成に使用した展開溶液中のNP濃度によって制御した.NP濃度を低くすると,細いワイヤーのネットワークのようなフィルムが得られた.対照的に,NP濃度が高い展開溶液を使用した場合は,不規則な形と厚みのワイヤー状の構造が得られた.高NP濃度で観察された不規則なNPパッキングは,気・水界面におけるNP凝集によって説明される.この凝集は,NPに吸着したオレイン酸分子による粒子間疎水力によって引き起こされている.Fe3O4 NP膜に帯電したSiO2 NPを添加すると,膜中のNP凝集が減少することが判明した.SiO2 NPは膜に静電反発力を導入し,NP凝集を減少させるためと考えられる.凝集が無く制御されたナノ粒子薄膜を形成する能力は,ナノおよびバイオテクノロジー分野における応用範囲を広げることが期待される。

令和4年度 研究者育成のための援助成果報告
  • 有馬 誉, 渡邉 哲
    2024 年 31 巻 p. 172-176
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    構造柔軟性を有する多孔性錯体(MOF)は,骨格構造の体積膨張を伴うステップ状の吸着挙動を示す.MOFは粉末試料であるため,工業利用には何かしらの成形が必要だが,高分子バインダーを用いてペレット化すると,ステップ挙動が緩慢になることが報告されている.この原因は,高分子によってMOFの体積膨張が阻害されるためだと考えられる.本研究では,体積膨張率の異なるMOFをペレット化し,吸着挙動の比較を行った.

    Graphical Abstract Fullsize Image
    Mechanism of the first and second CO2 adsorption/desorption cycles on MOFs with different volume expansion ratios.
    Editor's pick

    構造柔軟性を有する多孔性配位錯体(MOF)は,その高い吸着性能から,吸着分離プロセスへの応用が期待されている.吸着カラム内での使用を見据えると,粉末材料であるMOFは何かしらの成形が必要だが,ガス吸着時に粉末の体積膨張を伴うため,成形体が粉末とは異なる挙動を示す.本研究では,吸着時の体積膨張率に注目して,体積膨張率の異なる二種類のMOFを成形し,その吸着挙動を比較した.

  • 巌 元志, 仲村 英也
    2024 年 31 巻 p. 177-180
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    我々はこれまで,全固体電池の正極材料複合化のための硫黄/多孔質炭素溶融混練プロセスを提案した.本研究では,得られる複合粒子構造を制御する因子を調べるとともに,複合粒子構造と電池性能の関係を調査した.硫黄と多孔質炭素の配合割合を制御することで,複合粒子中の硫黄の存在場所を多孔質炭素の細孔内から細孔内外に制御できることが分かった.硫黄の一部が細孔外にも存在する複合粒子が高い充放電サイクル特性を示した.

  • 大毛 瑞貴, 松井 淳
    2024 年 31 巻 p. 181-186
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    ブロック共重合体(BCP)は異種ブロック間のミクロ相分離によってlamellar構造やcylinder構造を形成する.本研究では機能性分子として知られるcatecholのみからなるBCPの合成を目的とし,catechol誘導体であるdopamine acrylamide(DOPAm)の無保護可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合により,マクロ連鎖移動剤であるpDOPAm-CTAの合成を達成した.さらに,保護DOPAmを伸長させることで,p(DOPAm-b-protected-DOPAm)の合成を達成した.

  • 大島 一輝, 大崎 修司
    2024 年 31 巻 p. 187-191
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    多孔性錯体微粒子(MOF)の薬物キャリア能にとって肝要な薬物包接は液相吸着で行われるものの,MOF–薬物–溶媒間相互作用と包接能との関係は未解明である.本研究では,溶媒とMOFの官能基を切り口に,実験的/数値解析的にMOFへの薬物包接機構を検討した.実験的に溶媒の極性と官能基の電子供与/求引性が薬物包接能に重要な因子であることが見出された.さらに,数値解析ではMOF–薬物–溶媒間親和性のバランスが薬物包接能に大きく寄与することを明らかにした.

  • 大津 智隆, 仲村 英也
    2024 年 31 巻 p. 192-196
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    湿潤粉体流れのDEM計算手法は多岐にわたっているが,その統一的な評価はなされていない.本研究では,既往の架橋形成距離と粒子接触時の液架橋力の計算手法を評価した.それぞれ2つの計算手法を組み合わせた4つの計算手法を転動ドラム型混合器に適用した.計算結果の比較から,湿潤粉体の計算手法は結果に影響すること,実験結果の比較から高液体量条件では液膜接触モデルが実験結果をより適切に表現することがわかった.

  • 黒田 啓真, 多々見 純一
    2024 年 31 巻 p. 197-201
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    セラミックスの湿式成形ではスラリーの乾燥過程における割れや変形が問題である.本研究では,不透明な物体の内部を観察可能なOCTと微小領域の力学特性を測定可能なナノインデンターを用い,乾燥挙動の理解に必要な,乾燥過程におけるスラリーの内部構造変化と,乾燥体の力学特性を観測する手法を確立した.添加バインダーの種類に起因した乾燥過程の内部構造変化の差異に依存し,乾燥体の力学特性も異なることを明らかにした.

  • 七條 慶太, 嶌越 恒
    2024 年 31 巻 p. 202-206
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    持続可能な社会の実現に向けて,天然由来材料を利用した光駆動型の物質変換反応を開発する事は重要な研究領域である.そこで本研究では,天然由来金属錯体の「ビタミンB12」と可視光応答性半導体光触媒の「金属イオン修飾酸化チタン」を組み合わせたハイブリッド触媒を開発し,光駆動型の物質変換反応を実現する事を目指した.具体的には,ハイブリッド触媒への光照射で生じるCo(I)種の反応性を利用したCO2還元反応を検討した.

  • 山野井 慶彦, 飯島 志行
    2024 年 31 巻 p. 207-211
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    本研究では,高気孔率多孔質シリカ部材の高速製造プロセスの構築に向けて,ナノ粒子を用いた粒子間光架橋性ピッカリングエマルションスラリーを設計した.本スラリーへの光照射により鋳型形状を転写した光硬化体が得られた.また,1000°Cでの脱脂・焼成操作により,成形体中の多孔質構造を維持したまま粒子間にネックを形成させることで,従来法と比較して高い気孔率を有する複雑形状多孔質シリカ部材の高速製造に成功した.

  • Phong Hoai LE, 荻 崇
    2024 年 31 巻 p. 212-216
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    微粒子の多孔質構造化は,環境触媒の開発においても重要である.本研究では,マクロポーラス構造を持つ三元触媒(ポーラスTWC)粒子の合成を検討した.ポーラスTWC粒子は,TWCナノ粒子と造孔材粒子を噴霧乾燥することで合成した.ポーラスTWC粒子と造孔材を用いずに合成したTWC凝集体粒子のCO酸化性能を評価した結果,ポーラスTWC粒子はTWC凝集体粒子の構造と比較して,COの酸化効率が50%向上した.これは,微粒子内に連通孔を有した多孔質構造により,粒子内部の対流拡散が促進されたためだと考えられる.この研究成果は,環境触媒の機能向上のための重要な知見となると考えている.

    Editor's pick

    三元触媒(TWC)のガス浄化効率を向上させるために,ポリマーテンプレート粒子(ポリスチレンラテックス)を使用したエアロゾルプロセスにより,マクロポーラス構造を持つTWC微粒子を合成した.その結果,マクロ孔が存在しないTWC微粒子と比較して,マクロ孔を持つTWC微粒子は,粒子構造内のガス拡散が促進し,触媒性能(CO酸化反応)の向上へと繋がった.

  • Eka Lutfi SEPTIANI, 荻 崇
    2024 年 31 巻 p. 217-222
    発行日: 2024/05/31
    公開日: 2024/05/31
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    デジタル技術は,世界の持続可能な開発目標(SDGs)に不可欠である.これらの機器や機械には,高性能の粉末磁性コア・インダクタが必要である.本研究では,サブミクロンサイズのシリカ被覆FeNi(FeNi@SiO2)粒子を組み込むことで,この部品の磁気特性を向上させることに成功した.FeNi@SiO2粒子の効率的な一段階合成を達成するために,スワラー支援噴霧熱分解法を用いた.高いコーティング品質を持つ粒子を得るために,FeNiエアロゾルとHMDSO蒸気を分散させる旋回流を供給するための追加ガス流量(Qa)の効果を調べた.最適なQaは,直径353 nm,シェル厚さ25 nm,高コーティング率(96%),低いSiO2ナノ粒子不純物のFeNi@SiO2粒子をもたらした.

令和4年度 シンポジウム等の開催援助成果報告
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