園芸学研究
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1 巻, 2 号
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育種・遺伝資源
  • 西村 秀洋, 渥美 茂明
    2002 年 1 巻 2 号 p. 93-96
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    5地方,12府県から採集した18系統のササユリを無菌培養し,得られた132個の小球を5年間栽培した.和歌山県由来の1系統(MHN)は第1作期で開花したが,府県および地方間の到花年数の差異は認められなかった.ササユリ分布の南寄り地域にある宮崎,徳島,和歌山および奈良県に由来する6系統は他の系統に比べ,第5作期における花数が多かった.これら多花性の系統間で,第5作期終了時の球重に差があり,奈良県由来の系統(KYY)は重く,徳島県由来の系統(BNK)は他の系統に比べ軽かった.一方,この第5作期終了時の球重は第1作期における植え付け時球重に対する増加球重の比率と相関が認められた.すなわち,球根の肥大に基づく選抜は小型の球根が遺伝資源として園芸品種に寄与しうる可能性を消失させるであろう.
  • 鈴木 誠一, 金浜 耕基
    2002 年 1 巻 2 号 p. 97-101
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    シンテッポウユリを種子親,ヒメサユリを花粉親とした交雑で育成されたユリの新品種‘杜の乙女’,‘杜の精’,‘杜のロマン’の花芽分化と休眠覚醒の時期について調べた.無加温パイプハウス内で栽培した場合,新球根の形成時期は三品種とも親球根の開花直前であった.供試した三品種とも,花芽の分化はヒメサユリと同様に萌芽前の新球根内で開始したが,花芽の分化開始時期は11月1日頃で,ヒメサユリよりも遅かった.供試した三品種の新球根からの萌芽時期はいずれも12月1日頃で,ヒメサユリよりも早かった.供試した三品種には,萌芽前の新球根内で花芽が分化するというヒメサユリの特性と休眠が浅いというシンテッポウユリの特性が導入されていた.新球根を掘り上げて昼温20℃/夜温16℃で育てると,7月3日までに掘り上げた場合に花芽は分化しなかったが,8月1日以降に掘り上げた場合は花芽を分化した.新球根の休眠は浅く,11月1日以降には三品種とも萌芽した.
  • 谷本 秀夫, 中曽根 渡
    2002 年 1 巻 2 号 p. 103-106
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    ‘DMP’の青枯病抵抗性についての知見を得るため,‘水ナス’と‘DMP’とのF1, F2およびBC1の青枯病抵抗性について検定を行った.
    1.F2集団の数が青枯病抵抗性に対し正規分布していることから,‘DMP’の青枯病抵抗性は多数の遺伝子に支配されていることが推察された.
    2.F1およびF2の青枯病抵抗性検定で,正逆の交雑による有意差がないことから,‘DMP’の青枯病抵抗性が主に核遺伝子に支配されていることが推察された.
  • 太田 勝巳, 豊田 賢司, 細木 高志
    2002 年 1 巻 2 号 p. 107-110
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    トマト(Lycopersicon esculentum Mill.)の乱形果発生の品種間差異を‘大型福寿’および‘旭光’を供試して検討した.苗を夜温10℃以下で生育させた場合,‘大型福寿’では乱形果の発生が多かったが,‘旭光’では少なかった.両品種ともに低夜温によって第1果房までの葉数および茎長は有意に低下した.一方,低夜温によって子室数は有意に増加した.
    低真空型走査型電子顕微鏡により観察した結果,‘大型福寿’における花芽の形成は‘旭光’と比較した場合,心皮がより不規則で変形していたことが認められた.
栽培管理・作型
  • 小野 俊朗, 那須 英夫
    2002 年 1 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    12月収穫を目指した‘ピオーネ’の夏季せん定後の展葉期から約80日間,植物育成用ランプで電照の時間帯を変えて,日長時間と暗期中断処理が新梢生長と果実品質に及ぼす影響を検討した.14時間日長区,16時間日長区および23~1時までの暗期中断処理のうち,暗期中断区の副梢葉数が最も多く,次いで16時間日長区で,14時間日長区と自然日長区には差がなかった.収穫果実の果粒は副梢葉数が多い順に大きかったが,暗期中断区では果汁の糖度が低かった.なお,果皮の着色にはいずれの区間にも差がなかった.電照の時間帯を変えて,20時,23時,2時からそれぞれ2時間の暗期中断処理を行ったところ,いずれの区も自然日長区より新梢および果実生長が優れた.暗期中断区のうち,23時から処理した区の新梢生長が最も優れ,新梢の登熟も遅れた.収穫果実の果粒重,果汁糖度,果皮着色には,暗期中断処理した区間には差がなかった.
  • 猪俣 雄司, 工藤 和典, 和田 雅人, 増田 哲男, 鈴木 邦彦
    2002 年 1 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    マルバカイドウ台木に接ぎ木したカラムナータイプ系統とM.9EMLA台木に接ぎ木した普通タイプ品種を用いて,3年生樹の着葉,樹冠内の相対日射量,物質生産量,並びに3~6年生樹の葉面積と相対光量子量の高さ別分布について比較検討した.
    3年生樹の総葉面積は,カラムナータイプ7系統が0.7~2.2 m2,普通タイプ6品種が1.0~2.1 m2で,カラムナータイプ7系統と普通タイプ6品種にそれぞれ個体差が認められた.栽植面積当たりの葉面積指数と平均葉面積は,カラムナータイプ系統の方が普通タイプ品種より大きく,新梢の葉の面積分布は,カラムナータイプ系統が普通タイプ品種に比べてばらつきが大きかった.1年枝の平均節間長は,カラムナータイプ系統が1.3~1.8 cm,普通タイプ品種が2.7~3.0 cmで,カラムナータイプ系統が明らかに短かった.
    3年生樹の樹冠内における新梢の短果枝上の葉面の相対積算日射量は,カラムナータイプ7系統の方が‘ふじ’より少なかった.
    3~6年生樹のカラムナータイプ樹7系統と‘ふじ’の樹冠内では,樹齢が進むにつれて葉面積量が増加し,相対光量子量は低下したが,その傾向はカラムナータイプ7系統で著しかった.
    3年生樹の年間乾物生産量は,カラムナータイプ7系統で212~743 g,普通タイプ6品種で429~812 gであった.単位葉重当たりの乾物生産量は,カラムナータイプ系統が2.7~3.1,普通タイプ品種が2.7~3.9で両者間に差はなかった.
発育制御
  • 今村 耕平, 田辺 賢二, 田村 文男
    2002 年 1 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    露地条件下において,ハナショウブの開花調節の方法を開発する目的で,ジベレリンA3およびジベレリン生合成阻害剤が開花に及ぼす影響を調査した.
    1.中生品種‘千早城’の第1花の開花は,4月中旬にGA3を250 ppmの濃度で葉面散布処理することで,4日促進された.また5月上旬にウニコナゾールPを25 ppmの濃度で葉面散布処理することにより,第2花の開花が7日遅延したが,花茎の伸長も著しく抑制された.品質を低下させないためには,10 ppm処理が望ましいと思われる.この場合,第2花において4日開花が遅延した.
    2.GA3およびウニコナゾールPの開花期に及ぼす影響について品種間差異を調査したところ,品種による差が認められた.GA3処理区では第1花の平均開花日が極早生品種の‘八ヶ岳’では差が認められなかったのに対して,中生品種の‘千早城’では3日開花が促進された.ウニコナゾールP処理区では第2花の平均開花日が極早生品種の‘八ヶ岳’では差が認められなかったのに対して,晩生品種の‘舞扇’では3日遅延した.
    3.パクロブトラゾール処理区とウニコナゾールPの25 ppm処理区では,開花と花茎の伸長を抑制した.これに対し,クロルメコート処理は開花を遅延させるものの,花茎の伸長に及ぼす影響は低かった.
  • 勝谷 範敏, 梶原 真二, 原 敬和
    2002 年 1 巻 2 号 p. 129-132
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    エラータム系デルフィニウムのロゼット化を防止するための長日処理の効果について検討した.
    1.抽台は18時間以上の日長によって著しく促進された.
    2.抽台に対する4時間の暗期中断処理の効果は品種によって異なったが,16時間日長処理の効果と同じ程度と低かった.
    3.ロゼット化しやすい品種では,昼間が高温であっても夜間の気温が20℃以下になると,15時間日長ではロゼット化する株が一部で認められた.
    以上の結果,デルフィニウムのロゼット化防止には,夜間の気温が20℃以下となる前に18時間以上の長日処理を開始すると有効であることが明らかになった.
  • 佐々木 英和, 今田 成雄, 小田 雅行
    2002 年 1 巻 2 号 p. 133-136
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    冬のキャベツは,日射などの条件によって一時的に気温より高温になることがあり,脱順化している可能性が認められた.そこで,遮光による脱順化防止について検討するために,外葉は遮光せずに結球部分のみ遮光して葉温と耐凍性に及ぼす影響について調べた.晴天時に,無処理区では葉温が最高で28℃以上にまで上昇したが,遮光処理区の葉温は,日中には気温以下で推移した.耐凍性は,遮光処理区では,無処理区のようには低下せず,脱順化が抑制されていることが明らかとなった.さらに,寒冷紗浮き掛けにより6日間連続で遮光処理(遮光率約69%)すると,無処理のキャベツに比べて,耐凍性の向上がうかがわれた.以上の結果から,晴天時の日射による葉温上昇が引き起こす短期間の脱順化は,一時的な遮光によって抑制されることが示唆された.
作物保護
  • 宮田 明義, 岡崎 芳夫
    2002 年 1 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 2002年
    公開日: 2007/11/30
    ジャーナル フリー
    夏季せん定をともなう‘青島温州’の交互結実栽培において,ネオニコチノイド系殺虫剤を利用したミカンハモグリガの省力防除方法を検討し,以下の結果を得た.
    主幹部への薬剤散布による防除効果は,イミダクロプリドよりアセタミプリドにおいて高かった.有効な処理濃度は1%から2%であり,溶剤として酢酸ビニル系エマルジョンあるいはジエチレングリコールモノエチルエーテルを使った場合には,アセタミプリド単用に比べて防除効果が向上した.また,防除効果は夏季せん定当日処理より,10日前処理において高かった.
    土壌潅注処理による防除効果は,アセタミプリドよりイミダクロプリドにおいて高かった.10年生樹における有効な処理量は,成分量として1樹当たり0.5 g程度であり,処理時期としては夏季せん定10日前および当日処理が適当である.
    主幹部散布および土壌潅注処理による有効防除期間は,いずれも処理後10週間程度であった.また,ミカンハモグリガの防除に必要な時間は,慣行防除に対して土壌潅注処理が約65%,主幹部散布では30%程度となり,大幅な省力効果が認められた.
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