園芸学研究
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10 巻 , 2 号
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原著論文
育種・遺伝資源
  • 室 崇人, 嘉見 大助, 杉山 慶太
    2011 年 10 巻 2 号 p. 139-142
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    タマネギの剥皮加工における歩留まりに関連する球形質を明らかにすることを目的に,様々な形状のタマネギを材料に用いて,実験室規模で剥皮加工試験を行った.計測したタマネギ球の形質間では,球重と調製重および歩留まりと球高は強い正の相関を示したが,剥皮加工に要する作業時間については,重さや大きさに関連する形質と有意な関係はなかった.タマネギ剥皮加工の作業効率を時間あたりの加工量と定義した場合,大きくて重い球の利用によって作業効率は向上すると考えられた.剥皮加工歩留まりと球高との関係について,球重に代わり体積の近似値を用いてモデル解析を試みた.回転楕円体の公式により体積の近似値(V1)として“V1 = (4πa2b)/3,π:円周率,a:横半径,b:縦半径”を用いた場合,球の上下をそれぞれx mm切り落としたときの剥皮加工歩留まり(R)は“R = d(3 - d2)/2,ただしc = b - x,d = c/b”で表されることから,剥皮加工歩留まりの変動要因は球高のみであることが明らかとなった.よって,タマネギの剥皮加工における歩留まりは,球高の高い球を用いることで改善されると考えられた.剥皮加工歩留まり予測式より得られた予測値は実測値と良く適合したことから,国内のタマネギ品種・系統の剥皮加工における歩留まり評価に利用できると考えられた.
  • 村松 昇, 山ノ内 宏昭, 伊藤 祐司, 増田 哲男, 吉岡 照高, 武弓 利雄
    2011 年 10 巻 2 号 p. 143-149
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    放射線育種場のガンマーフィールドで緩照射を行ったニホンナシ‘おさゴールド’において,葉色変異が認められた.変異した枝の部分を切り取り,一般圃場に植栽された実生台木に接ぎ木して養成した結果,全体が黄色~黄緑色(黄緑色型)の葉および斑入りの葉(周縁黄緑色型)を持つ2種類が主に確認された.2004年と2009年の調査比較により,黄緑色変異は非常に安定と考えられた.一方,変異葉の着生程度などにより斑入り変異枝からは5種の枝の変異が認められた.これは斑入り変異が不安定のようであるが,SAM構造は比較的安定と考えられた.“twin sector”(緑色の黄色の斑が並んでいるもの)の存在,光学顕微鏡による葉身横断面の観察結果および後代実生の葉色から,この葉色変異は半優性で遺伝的にヘテロであり,茎頂分裂組織のL2に分布していると考えられた.さらに,得られた変異体の利用法について論議した.
  • 太田 智, 村上 覚, 勝木 俊雄, 石井 ちか子, 稲葉 善太郎, 山本 俊哉
    2011 年 10 巻 2 号 p. 151-159
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    伊豆地域で観光資源として利用されているサクラの多くは,雑種個体と推定されている.本研究では,核の9つのSSR座および葉緑体DNAの2領域を分析し,伊豆地域のサクラの由来や類縁関係について調べた.核のSSR座の比較により親子関係を推定したところ,‘カワヅザクラ’の実生や‘カワヅザクラ’と非常に近縁と考えられる個体を推定することができた.核のSSR座に基づく遺伝的類似度によると,供試した個体は2つのグループに大別された.一方はオオシマザクラと類似度の高いグループ,もう一方はカンヒザクラと類似度の高いグループであった.葉緑体の解析では,多くの雑種個体は,カンヒザクラにみられた配列を示した.本研究の結果から,伊豆地域では,オオシマザクラとカンヒザクラの雑種個体群の中で頻繁に交雑が起きていることが示唆された.このことから,伊豆地域の品種・系統の由来について,オオシマザクラやカンヒザクラが主に植栽されている人里近くで誕生したという仮説を立てることができた.また,それらの雑種個体は,オオシマザクラ由来の大きな花弁やカンヒザクラ由来の濃い紅色の花弁など,優れた特徴を併せ持つ品種の育成にも有効な遺伝資源と考えられた.さらに,‘ミナトザクラ’の由来については,4倍体のシナミザクラの関与が示唆された.
  • 小野崎 隆, 八木 雅史, 藤田 祐一, 棚瀬 幸司
    2011 年 10 巻 2 号 p. 161-172
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    早生性,高生産性でかつ花持ち性の優れるカーネーション育種素材を開発するため,花持ち性の優れるカーネーション系統とカワラナデシコとの種間交雑および戻し交雑を試みた.カーネーションとカワラナデシコとの種間交雑和合性は低かったが,試験管内培養技術によらない通常の交配により,15個体のF1実生が得られた.SSRマーカー解析により,得られた個体は種間雑種であることが確認された.その種間雑種を用いた花持ち性の優れるカーネーション系統との戻し交雑では,種間雑種を種子親,花粉親のいずれに用いても稔性を有し,容易に交雑して後代が得られ,交雑和合性は改善することがわかった.集団全体の花持ち日数は,F1世代の7.0日からBC1世代では8.7日,BC2世代では14.7日へと,2世代で7.7日の増加を示した.カワラナデシコの育種素材としての利用は早生化に有効で,F1世代では全個体の平均到花日数が135日と極早生性を示し,BC1,BC2世代でも早生性個体の分離がみられた.花持ち性と早生性は遺伝的に連鎖関係になく,独立して改良可能であることが示唆された.従って,カワラナデシコのような花持ち性の劣る育種素材を用いる場合でも,花持ち性の優れるカーネーション選抜系統を交配の片親に用いた交配と選抜を繰り返すことにより,早生性と生産性に優れ,かつ優れた花持ち性を有する系統の獲得が可能であった.
繁殖・育苗
  • 濱野 惠, 山崎 浩道, 森下 昌三, 今田 成雄
    2011 年 10 巻 2 号 p. 173-181
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    四季成り性イチゴ品種‘なつあかり’,‘デコルージュ’を効率的に増殖するために,ランナー発生に関する諸条件を調べた.両品種において,ランナー発生には1,000時間以上の低温(5℃以下)に遭遇することを要し,低温遭遇後の株が短日条件に置かれた場合には,ランナー発生に必要な低温遭遇時間が長日条件下におかれた場合より長かった.低温遭遇時間が長いほどランナー数は増加する傾向を示し,2,000時間では低温遭遇後に短日条件下に置かれた場合の方が多い傾向がみられた.十分な低温を経た‘なつあかり’越年株は,短日(10時間)条件下でランナー数が少なかった.これに対し,‘デコルージュ’越年苗はむしろ長日(13~16時間日長)でランナー発生数が少なく,供試した四季成り性品種では日長が長くてもランナー数が増加しない場合があることが示された.冷蔵処理(−2℃;約90日間)により自然低温に遭遇するより早期に低温充足してランナー発生を早める試みにおいて,‘なつあかり’では7月採苗苗の方が5月採苗苗よりランナーが多く,‘デコルージュ’でも7月採苗苗のランナー数は5月採苗苗と同等以上で,両品種とも苗数が多く確保できる7月採苗苗を次年度の親株として利用することは,苗の増殖率の面で不利ではなかった.冷蔵処理開始時期については,‘なつあかり’で12月開始,‘デコルージュ’で11および12月開始で7月までの総ランナー数が多かった.
  • 鈴木 克己, 水上 宏二, 土屋 和, 安場 健一郎, 中野 有加, 高市 益行
    2011 年 10 巻 2 号 p. 183-189
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    トマト低段密植栽培において,年間収量を高めるためには作付け回数を増やすことが重要であり,できるだけ狭い面積で,効率的に生育ステージの進んだ苗を徒長させず生産する必要がある.草丈の異なる苗の細胞長について調査した結果,密植した苗は,昼間より夜間に伸長していた.節間長と表皮細胞の縦方向の長さとの間には,正の相関がみられた.根域制限養液栽培システムで二次育苗を行った結果,定量の肥料を数回分施する量管理および夜間の給液停止により,苗の草丈は通常の濃度管理で育苗した苗より抑制され,乾物率および茎葉に対する根の割合は高くなった.量管理および量管理と夜間の給液を停止して育苗した苗と,低密度で濃度管理して育苗した苗の低段密植NFT栽培での収量には,有意な差異はみられなかった.以上のように,二次育苗時に量管理および夜間の給液を制御することにより苗の徒長抑制が可能であり,低段密植NFT栽培では,濃度管理により低密度で育苗した苗と同程度の株あたり収量を得られることが示された.
土壌管理・施肥・灌水
  • 岩崎 光徳, 深町 浩, 今井 篤, 野中 圭介
    2011 年 10 巻 2 号 p. 191-196
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    中晩生カンキツ‘はれひめ’について,夏~収穫期までの水ストレスが果実品質に及ぼす影響を研究した.8月中旬~収穫期まで,葉内最大水ポテンシャルで−0.7~−1.2 MPaの水ストレスを付与した乾燥区は,付与していない湿潤区に比べ,収穫時の果汁内Brixは約3%高く,果実横径は1.3 mm小さくなった.特にBrixは,10月上旬までに2.9%の差がみられたことから,8~9月の水ストレスが果実内Brixの上昇に対して影響が大きいと思われる.収穫時の果実品質について,乾燥区は果実重で約1割低く,果皮色は紅色が濃くなった.果汁内の糖は,処理区間で成分比に変化はなかったが,全糖量は乾燥区が湿潤区に比べ約1.6倍であった.果汁内の有機酸については,乾燥区のクエン酸は湿潤区に比べ約1.3倍であったが,リンゴ酸は約0.7倍であった.果汁内のアミノ酸は,乾燥区が湿潤区に比べ9種類のアミノ酸で濃度が高く,アスパラギン酸は約3倍,グルタミン酸は約2.1倍となった.全アミノ酸含量は,乾燥区が湿潤区に比べ約1.7倍であった.以上のことから,夏以降の水ストレスにより果実はやや小玉になるが,果汁成分は濃厚となり,商品性の高い果実が生産できると考えられる.
栽培管理・作型
  • 木下 貴文, 桝田 正治
    2011 年 10 巻 2 号 p. 197-202
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    促成トマトの防根給水ひも栽培において,培地の種類が生育および収量に及ぼす影響について三相分布および培地溶液の無機成分の比較から検討した.培地の種類によって三相分布は大きく異なり,栽培の前後でも粉砕籾殻,混合培地(田土:バーク堆肥:ピートモス:パーライト = 2 : 4 : 1 : 1),籾殻燻炭およびバーク堆肥では,その分布が大きく変化した.可販果収量には培地間で大きな違いが見られ,混合培地で最も高く,粉砕籾殻で最も低かった.果実糖度は,培地間で有意差が認められなかった.栽培前後の培地の液相率および気相率と可販果収量との関係をみると,気相率よりも液相率の方が,また栽培後より栽培前の値の方が相関は高かった.また,バーク堆肥および粉砕籾殻において,培地溶液のECおよびPO43を除く無機成分濃度が他の培地よりも高くなる時期があったが,養分の過剰や欠乏の症状は特にみられなかったことから,培地溶液の無機成分濃度が収量に及ぼす影響は小さいと考えられた.以上から,促成トマトの防根給水ひも栽培における培地選択の際には,栽培前の混合培地の液相率を指標にすることができ,本手法では,液相率が45~55%の範囲に入るよう設定すれば適当と判断され,この点で,上記の混合培地は本手法に適しているものと考えられた.
  • 海保 ひとみ, 鈴木 亮子, 生方 雅男
    2011 年 10 巻 2 号 p. 203-207
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    シネンシス系ハイブリッドスターチス(Limonium sinense hybrid)における開花や切り花品質に対する遮光(弱光)処理の有効性を確認するとともに,その処理時期について検討した.処理時期の検討については,人工気象室におけるポット試験で定植時期別に個体を標準区(光合成有効光量子束密度(PPFD)359 μmol・m2・s1)から弱光区(163 μmol・m2・s1)へ移動して4週間栽培する弱光処理を行った.その結果,弱光処理開始時期が抽苔前16日に相当する定植後21日区,および抽苔前6日に相当する定植後28日区では切り花長が長く,抽苔~採花までの日数が長かった.花茎が伸長する期間に光強度が弱くなることで開花が遅延し,その間に花茎が伸長して切り花長が伸びたと考えられる.次に,圃場段階における遮光処理の有効性を確認した.遮光率50%の資材を用いた遮光処理を抽苔前2日に相当する定植後32日,および抽苔前5日に相当する定植後30日から4週間行うことで,抽苔~到花までの日数が長くなり,切り花長が長くなる傾向がみられた.以上の結果から,遮光処理はシネンシス系ハイブリッドスターチスの秋期の切り花品質を向上させるための有効な手段の1つであり,遮光開始時期は抽苔前5~15日が適当であると考えられる.
  • 福田 文夫, 今任 公象, 久保田 尚浩
    2011 年 10 巻 2 号 p. 209-215
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    モモの生理的落果の抑制に対するジベレリン(GA)処理の有効性を検討するため,‘清水白桃’を材料に果実へのGA処理(50 ppm溶液に浸漬)と種子への傷害処理(SI)を組み合わせた実験を行った.果実発育第1期の満開後30日(G30区)または50日(G50区)にGA処理したところ(実験1),G50区はG30区に比べて果実側径の肥大が旺盛となり,核割れ果の発生が多かった.G30区ではみられなかった胚の成長抑制と種皮の褐変が,G50区では認められた.しかしG30,G50区ともに生理的落果の発生を抑制した.無処理区,G30区およびG50区の果実に対し,発育第2期の満開後55日(SI55)および65日(SI65)にSI処理を行った(実験2).その結果,G30 + SI65区とG50 + SI55区では無処理区のSI処理と同様に急速な落果が認められたが,G30 + SI55区とG50 + SI65区では落果が遅れた.次に,果実発育第2期の満開後70日にSI処理した果実(SI70)に対し,その1日後(SI70 + G71)または3日後(SI70 + G73)にGA処理を行った(実験3).SI70区に比べてSI70 + G71区とSI70 + G73区の落果の発生は一時的に抑制され,その効果はSI70 + G73区のほうが高い傾向であった.また,満開後75日における活性型GA含量は,果肉ではSI70 + G71区よりSI70 + G73区で高かったのに対し,種子では両者の間に違いが認められなかった.このことから,種子が傷つけられると果肉のGA含量が低下し,落果抑制効果を持続しなくなると考えられた.以上より,モモ‘清水白桃’において,果実発育第1期後半のGA処理は落果の発生抑制に有効であると考えられた.
  • 大谷 義夫, 竹澤 雅子, 八巻 良和
    2011 年 10 巻 2 号 p. 217-224
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    ニホンナシ‘幸水’の盛土式根圏制御栽培において,初期導入経費削減の可能性を探るため底面給水の導入を試み,給水水位と給水マットの幅が樹体生育,収量および果実品質に及ぼす影響を検討した.給水水位を催芽期以降地面から−2 cm,−5 cm,−8 cmに一定にしたところ,−5 cmおよび−8 cmは生育半ばから樹体の吸水量が減少し,−8 cmでは満開後91日以降−2 cmの1/2以下の吸水量となり,葉のしおれが観察された.−2 cmは吸水量が多く収量,果実品質が優れた.また,給水水位を−2 cmとし,給水マットの幅を20 cm,50 cm,100 cmとしたところ,50 cmおよび20 cmは生育半ばから樹体の吸水量が減少し,20 cm区は満開後91日以降100 cmの1/2以下の給水量となり,葉のしおれが観察された.100 cm区は吸水量が多く,10 a換算収量6.1 t,果重373 g,糖度12.7%と慣行栽培の2倍程度の多収となったうえ,高品質となることが明らかとなった.さらに,満開後91日から15日間給水水位を−8 cmに下げて盛土をpF2.6程度に乾燥させた後,給水水位を−2 cmにもどして,樹体の必要量相当の給水とすることで,果重を低下させることなく糖度を向上させることができた.底面給水法は点滴灌水法にくらべ,導入時の灌水関係経費を36%程度に抑えることができると試算される.
  • 新川 猛, 鈴木 哲也, 尾関 健, 三宅 紀子, 倉田 忠男
    2011 年 10 巻 2 号 p. 225-231
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    カキの主要品種を含む完全甘ガキ(PCNA)22品種,および非完全甘ガキ(non-PCNA)9品種についてビタミンC含量の品種間差異と果実発育ならびに成熟に伴う変化を明らかにした.併せて,栽培法によるビタミンC含量の増強について検討した.PCNA品種のビタミンC含量の平均値は,果皮で218 mg・100 g−1FW,果肉で84 mg・100 g1FWであった.non-PCNA品種の平均値は,果皮で125 mg・100 g1 FW,果肉で47 mg・100 g1FWであり,PCNA品種の平均値が果皮ならびに果肉とも有意に高かった.また,ビタミンCに占めるデヒドロアスコルビン酸の比率は,non-PCNA品種の方が高かった.果実発育と成熟に伴うビタミンC含量の変化は,‘富有’,‘早秋’,‘刀根早生’とも幼果の時期をピークとして成熟期になるまで減少していったが,減少量は品種によって差が認められた.‘富有’の樹冠下に非透水性マルチを被覆するとビタミンC含量の増加が認められ,収穫時の果肉中のビタミンC含量は2007,2008の両年とも約134 mg・100 g1FWとなり,無処理区の117 mg・100 g1FW,111 mg・100 g1FWより高くなった.この要因としては,濃縮効果以外に水分ストレスによるビタミンC生合成の活性化の可能性が示唆された.
  • 大谷 義夫, 八巻 良和
    2011 年 10 巻 2 号 p. 233-240
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    ニホンナシ‘幸水’の盛土式根圏制御栽培(培土量150 L)におけるY字仕立て密植栽培(Y字根圏区)が,樹体生育,収量および果実品質に及ぼす影響を,地植Y字仕立て(Y字地植区)および慣行の平棚地植栽培4本主枝仕立て(平棚地植区)と比較検討した.Y字根圏区の10 a換算収量は,植付け2年目から‘幸水’で1.8 tとなり,平棚地植区,Y字地植区より早期多収であった.収量はその後も着果数の増加とともに増加し,植付け5年目が6.1 t,5年間の累積収量は15.1 tと,平棚地植区の8.5倍と極めて多収となった.品質においては,果重が大きく果実糖度も高く推移した.樹体生育をみると,Y字根圏区は2年目から花芽着生が良好な側枝が多く確保され,葉数の増加も大きく,植付け3年目にはLAIが3を上回った.このように,Y字根圏区で早期多収が可能となった要因は,根域制限により樹体がコンパクトになり密植が可能なこと,樹体の吸水量にあった灌水管理により花芽数の多い側枝が多く確保できること,Y字仕立てにより棚面積の拡大が図られ早期の葉数増加が多くなることがあげられる.
  • 岩﨑 泰永, 吉田 千恵, 松嶋 卯月, 伊吹 竜太
    2011 年 10 巻 2 号 p. 241-247
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    イチゴやシュンギクなどの低温期の保温に広く利用されているウォーターカーテンを用い,イチゴ夏秋どり栽培に応用した場合の施設内環境および果実収量に及ぼす影響について,2008および2009年に調査した.2008年はウォーターカーテン区(WC区)と対照区(CNT区)を設定し,2009年はウォーターカーテン区(WC区),遮光区(SHADE区),対照区(CNT区)を設けた.WC区では,日射量を大きく減じることなく葉温および培地温の昇温が抑制され,商品果収量はCNT区の13~14%増加した.一方,SHADE区では日射量は64%に減少したが,葉温や培地温の昇温抑制効果は小さく,果実収量はCNT区よりも低下した.以上のことから,高温期にウォーターカーテンを利用することによって,果実収量を増加させることが可能であることが明らかとなった.
  • 西川 豊, 冨森 聰子, 輪田 健二, 近藤 宏哉
    2011 年 10 巻 2 号 p. 249-253
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    三重県で栽培されている生食用ブドウ品種について,収穫後の紫外線照射,着果部位の光量,有袋と除袋および収穫時期などが果皮中のレスベラトロール含量に及ぼす影響を検討した.‘巨峰’では紫外線照射で,‘安芸クイーン’では着果部位の光量が多いとレスベラトロール含量が高かった.また,‘安芸クイーン’および‘マスカット・ベーリーA’では収穫期の果実袋の除去が,‘巨峰’および‘マスカット・ベーリーA’では収穫時期を遅らせることが,それぞれレスベラトロール含量を有意に増加させた.以上のことから,収穫期の果実への光量を増やす栽培管理により,レスベラトロール高含有のブドウが生産できることが示された.
収穫後の貯蔵・流通
  • 前澤 重禮, 渡邉 和俊, 中野 浩平, 西津 貴久, 後藤 清和
    2011 年 10 巻 2 号 p. 255-259
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    収穫後青果物のエチレン処理が貯蔵中の高温耐性に及ぼす影響を議論するため,制御された環境で栽培されたリョクトウモヤシ葉部をエチレン処理した後に高温処理し,外観と生理的特性の変化を調べた.エチレン濃度50 ppmで3日間前処理すると,高温ストレス環境(50℃,120分)曝露後の葉部における壊死発生(外観品質の低下)の遅延と軽減が誘導された.さらに,エチレン処理することによって,50℃,60分の高温ストレス環境下におけるイオン漏出割合(イオンの膜透過性)の抑制が観察された.一方,呼吸速度や膜脂質の過酸化程度には,エチレン前処理の影響は見いだされなかった.これらの結果は,リョクトウモヤシに対する収穫後のエチレン処理によって,高温ストレス耐性が誘起されることを示しており,エチレンには高温障害に関連する膜損傷を軽減する作用があることが示唆された.以上の知見は,収穫後青果物の高温障害の抑制に対するエチレンの効用を検討することの重要性を示唆している.
  • 浅尾 浩史, 西本 登志, 間島 いつか, 奥田 まみ子, 鷲田 和人, 野本 享資
    2011 年 10 巻 2 号 p. 261-265
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    ‘大和マナ’の異なる生育時期,大きさ,部位および調理法におけるアンジオテンシンI変換酵素(ACE)阻害活性と食味に影響する糖含量について調査した.生育時期が異なってもACE阻害活性は変わらなかったが,葉身のACE阻害活性は葉柄の2倍程度高かった.また,同じ植物体であっても葉齢が進むに従って,葉身と葉柄のACE阻害活性は高まった.さらに,花蕾は葉身と同程度のACE阻害活性を示した.調理法の違いによるACE阻害活性を調べたところ,調理前と比較して,ACE阻害活性は蒸しと煮浸しで高まり,ゆでで低くなり,塩漬けと調味漬けではほとんど変化がなかった.一方,生育時期に長期間低温にさらされた収穫区で高い糖含量を示し,葉身と葉柄の糖含量は葉齢が進む程減少した.また,蒸しでの糖残存率は高く,蒸しがACE阻害活性を高めることを考え合わせると,‘大和マナ’の調理法としては蒸しが適していると考えられた.これまで利用されていなかった大株や花器部において,ACE阻害活性と糖含量が葉身や葉柄と同程度であったことは,新たな商品開発において有用な情報になるであろう.
普及・教育・利用
  • 前田 隆昭, 吉仲 由之, 米本 仁巳, 樋口 浩和, 北林 利樹, 服部 一成
    2011 年 10 巻 2 号 p. 267-272
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    ブドウサンショウの利用性,および健康食品としての可能性に関する基礎的情報を得る目的で,抗ウイルス活性をもつ物質を探索した.ブドウサンショウの各部位の抽出液から疎水性クロマトグラフィーで部分精製したプロアントシアニジン(PANs)が,抗SARS-CoV活性を示した.この抗ウイルス活性は,PANsによる細胞内抗酸化因子,Mn-SODの誘導によるものであると考えられた.さらに,ブドウサンショウの果皮に比較的多量に含まれるPANsは,抗SARS-CoV活性のみならず,今後インフルエンザウイルスに対する感染予防対策として,より幅広い健康食品などへ利用される可能性が示唆される.
  • 宮城 淳, 家壽多 正樹, 日坂 弘行, 本居 聡子, 若生 忠幸
    2011 年 10 巻 2 号 p. 273-282
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    一般消費者(833名)および外食産業(143店舗)を対象に,食味に着目したネギの嗜好性調査を行った.一般消費者を対象にした調査では,生ネギでは香りは「強い」方が,煮ネギでは「甘み」は強く「柔らかい」方が,焼きネギでは「甘み」が強い方が好まれた.一方,生ネギの「辛み」,焼きネギの「硬さ」は,属性(性別,年齢層)によって嗜好性は異なった.外食産業を対象にした調査では,「辛み」は弱い方が,「甘み」は強い方が好まれたが,「香り」および「硬さ」は,外食産業によって嗜好性が異なった.重視する項目では,外食産業によらず,「鮮度」「国内産であること」を重視する店舗割合が高かった.また,「懐石・和食料理店」では,「味」,「香り」を重視する傾向があったが,その他の外食産業では価格,外観(長さや太さ)を重視する傾向が強かった.ネギに対する要望では,「懐石・和食料理店」では,特徴あるネギ品種の開発を望む声が多かったのに対し,その他の外食産業では,外観・形状の改善や価格安定,品質安定などを望む声が多かった.これらの調査結果は,ニーズにあったネギの販売戦略やネギ品種の開発の一助になると考えられた.
新品種
  • 間藤 正美, 佐藤 孝夫, 山形 敦子, 工藤 寛子, 浅利 幸男, 檜森 靖則, 加賀屋 博行, 柴田 浩
    2011 年 10 巻 2 号 p. 283-288
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/18
    ジャーナル フリー
    ‘こまちホワイトドレス’は,白花一重咲き系統を種子親に,白花奇形八重咲き系統を花粉親にして交雑されたトルコギキョウの一代雑種品種である.花は白色で,フリンジが弱く出る八重咲きである.‘こまちホワイトドレス’は,シェード栽培と第1~2側花の摘蕾を組合せることにより,10月上旬~11月上旬に切り花長80 cmを確保できる.第1~2側花を摘蕾しても,葉が摘蕾した上部まで着生するため,止葉と花蕾との間に空間が見られなかった.また,摘蕾する蕾の数により,8月の旧盆や9月の彼岸など,物日需要や10~11月のブライダル需要など目的とする収穫期に調整しやすい.これらの栽培方法や作型の組合せにより,秋田県で出荷可能な期間は7月下旬~11月上旬と長期にわたる.さらに,花蕾が上部に揃い蕾が丸く大きいので,収穫後の花房の調製が省力的な品種である.
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