早生性,高生産性でかつ花持ち性の優れるカーネーション育種素材を開発するため,花持ち性の優れるカーネーション系統とカワラナデシコとの種間交雑および戻し交雑を試みた.カーネーションとカワラナデシコとの種間交雑和合性は低かったが,試験管内培養技術によらない通常の交配により,15個体のF
1実生が得られた.SSRマーカー解析により,得られた個体は種間雑種であることが確認された.その種間雑種を用いた花持ち性の優れるカーネーション系統との戻し交雑では,種間雑種を種子親,花粉親のいずれに用いても稔性を有し,容易に交雑して後代が得られ,交雑和合性は改善することがわかった.集団全体の花持ち日数は,F
1世代の7.0日からBC
1世代では8.7日,BC
2世代では14.7日へと,2世代で7.7日の増加を示した.カワラナデシコの育種素材としての利用は早生化に有効で,F
1世代では全個体の平均到花日数が135日と極早生性を示し,BC
1,BC
2世代でも早生性個体の分離がみられた.花持ち性と早生性は遺伝的に連鎖関係になく,独立して改良可能であることが示唆された.従って,カワラナデシコのような花持ち性の劣る育種素材を用いる場合でも,花持ち性の優れるカーネーション選抜系統を交配の片親に用いた交配と選抜を繰り返すことにより,早生性と生産性に優れ,かつ優れた花持ち性を有する系統の獲得が可能であった.
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