園芸学研究
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12 巻, 2 号
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原著論文
育種・遺伝資源
  • 栁下 良美, 原 靖英, 中山 真義
    2013 年 12 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/03
    ジャーナル フリー
    日本で施設切り花栽培に用いられる日長反応が中性のスイートピーの冬咲き性品種は,花色などの多様性がヨーロッパで利用されている長日性の夏咲き性品種に比較して小さい.我々は冬咲き性品種の多様性を拡大するために,夏咲き性品種に特有の花弁に斑の入る形質の導入を試みた.最初のステップとして斑入り形質の遺伝様式と着色性や開花習性との連鎖について検討した.斑入り花と全着色花,全白色花との交雑による後代での花弁着色の表現型の分離比から,斑入り形質は劣性の1遺伝子により制御されており,斑入りの表現型は着色性を制御する遺伝子により劣性上位で抑制されていることを明らかにした.また既存の報告と同様に,現在日本で栽培されている冬咲き性も1つの劣性遺伝子により制御されていることを明らかにした.さらに斑入り形質,着色性および開花習性は互いに独立して分離していることを示した.これらのことから,冬咲き性は表現型が発現した世代で固定が完了する一方で,斑入り形質はその自殖後代で全白色花が現れない世代で固定が完了すると考えられる.
繁殖・育苗
  • 伴 琢也, 串崎 可奈恵, 足立 文彦, 石橋 美保子, 武田 久男, 小林 伸雄, 浅尾 俊樹
    2013 年 12 巻 2 号 p. 131-134
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/03
    ジャーナル フリー
    籾殻を含有するブルーベリーの挿し木繁殖用培養土を開発することを目的とし,培養土に対する籾殻の添加がブルーベリーの挿し穂の根系発達に及ぼす影響を調査した.培養土における籾殻の割合が50%の時,挿し穂の生存率と挿し穂から発生した不定根の乾物重が最大になった.挿し穂から発生した不定根の総根長は培養土における籾殻の割合が25%の時に最大になった.挿し穂から発生した不定根の成長と培養土における籾殻の割合の間には統計的に有意な相関があった.培養土における籾殻の割合が約40%の時,ブルーベリーの挿し穂の根系発達は最大になるものと予想できる.本研究の結果より,籾殻はブルーベリーの挿し木繁殖用培養土として十分利用できると結論した.
栽培管理・作型
  • 郝 青, 劉 政安, 青木 宣明
    2013 年 12 巻 2 号 p. 135-140
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/03
    ジャーナル フリー
    同一地区内に植栽されている株分け後の年生が異なるボタン樹(5,10,15,20,25,30年生)‘洛陽紅(Luo Yang Hong)’を供試し,樹体変化および葉における可溶性タンパク質含量(以下タンパク質含量),スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性ならびにマロンジアルデヒド(MDA)含量を測定し,樹体の老化現象を明らかにした.新梢の長さ,葉の長さおよび着蕾数は,5~15年生樹までは増加し,20年生以後の樹からは減少傾向を示した.特に,新梢の長さは加齢とともに著しく短くなった.また,タンパク質含量は15年目までは増加し,その後は年生とともに減少した.SOD活性は年生とともに減少する負の相関を,さらにMDA含量は年生とともに増加する正の相関を示した.
  • 片岡 圭子, 西川 浩次, 滝澤 理仁, 札埜 高志, 池永 和義
    2013 年 12 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/03
    ジャーナル フリー
    単為結果性トマト品種‘京てまり’の冬季無加温栽培の収量と品質の向上を目的に,新たに開発されたポリビニールアルコールフィルムとポリクロスを貼り合わせた厚さ25 μmのフィルム(以下PVAとする)を用い,無加温プラスティックフィルムハウス内にトンネル状に被覆して,果実生産に及ぼす影響を2011年10月~2012年3月まで調査した.トンネルの被覆資材の対照として,市販の塩化ビニールフィルム(以下PVCとする)を用いた.PVAは,PVCと比較して,2,500~25,000 nmの赤外線域の光線透過率が低く,保温性が高いと考えられた.PVAおよびPVCによるトンネル被覆によって0.5~2.8℃気温が上昇し,5℃以下の低温遭遇時間はPVAの被覆によってより短くなった.PVAの被覆ではPVCよりもトンネル内の相対湿度が低く,日最高気温が低いなどの特徴がみられた.PVA被覆によって収穫果数は増加し,特に3月の収穫果数の増加が顕著だったが,小さい果実の占める割合が高くなった.糖度は,PVAによって被覆するとPVCによる被覆よりも,どの月でも有意に高かった.これらの結果から,この新たに開発されたフィルムによるトンネル被覆は,トマト‘京てまり’の冬季無加温栽培における収穫果数および品質の向上に有効であると考えられた.
  • 田村 史人, 村谷 恵子, 藤井 雄一郎, 久保田 尚浩, 森永 邦久
    2013 年 12 巻 2 号 p. 147-154
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/03
    ジャーナル フリー
    夏季施肥および夏季剪定が12月加温のブドウ‘マスカット・オブ・アレキサンドリア’の溢泌液および葉柄中の無機態の窒素濃度に及ぼす影響を検討した.養液栽培したブドウ9樹に3水準の施肥と3種類の剪定手順を組み合わせた処理を行った.すなわち,夏季剪定して冬季に5芽で剪定した樹,夏季剪定して冬季に1芽で剪定した樹および夏季剪定しない慣行の枝管理樹について,収穫後夏季(6~7月)に3水準(窒素施肥量で15,10および5 g・m−2),秋季(9~10月)には一定量(窒素量で12 g・m2)の化学肥料を施用し,12月から加温栽培を行い,溢泌液中および葉柄中の無機窒素レベルを測定した.その結果,溢泌液中の無機窒素濃度に及ぼす夏季施肥および夏季剪定の影響は判然としなかった.結実期の葉柄中の硝酸態窒素濃度は,10および15 gN・m2を前年夏季に施用した樹が5 gN・m2施用樹より高く,夏季施肥は翌年の樹体内無機窒素濃度に影響を及ぼすと考えられた.さらに,夏季剪定も葉柄中の窒素濃度に影響を及ぼし,夏季剪定によって結実期の葉柄中の硝酸態窒素濃度が高まった.しかし,冬季剪定の剪定強度は葉柄中の窒素濃度に影響を与えなかった.
  • 持田 圭介, 牧 慎也, 大西 彩貴, 内田 吉紀, 倉橋 孝夫
    2013 年 12 巻 2 号 p. 155-163
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/03
    ジャーナル フリー
    ブドウ‘シャインマスカット’における,CPPUの処理時期および濃度の違いが果実品質に及ぼす影響を検討した.2 ppmの開花前CPPU処理や,満開期のGA3 25 ppm + CPPU 10 ppm花穂浸漬処理は,房しまりを有意に高め,カスリ症の発生を抑制する傾向が認められた.果実の官能評価から,2 ppmの開花前CPPU処理と満開期GA3 25 ppm + CPPU 10 ppm花房浸漬処理の併用により,果肉は軟らかく,果皮は硬くなり食感の評価を低下させた.また,2 ppmの開花前CPPU処理と満開10~15日後のGA3 25 ppm + CPPU 10 ppm果房浸漬処理の併用により,果皮は明らかに硬く評価された.2 ppmの開花前CPPU処理により,表皮および亜表皮細胞層が有意に厚くなった.ブドウ‘シャインマスカット’の商品性向上には,島根県における慣行の植調剤処理(満開期のGA3 25 ppmとCPPU 3 ppmの混合溶液,満開10~15日後のGA3 25 ppm溶液の各果房浸漬処理)に対し,満開期のGA3 25 ppmに混用するCPPUの濃度を3 ppmから5 ppmに高め,さらに2 ppmの開花前CPPU処理を追加する方法が有効であると考えられた.
発育制御
  • 後藤 領太, 渡邉 学, 村上 政伸, 佐川 了, 小森 貞男, 壽松木 章
    2013 年 12 巻 2 号 p. 165-171
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/03
    ジャーナル フリー
    ブルーベリー果実の発育における植物生長調節物質の役割を明らかにするために,ハイブッシュブルーベリー‘バークレー’を用いて果実の結実後~成熟までのIAA,ABA濃度とエチレン生成量を調査した.また,ハイブッシュブルーベリー‘アーリーブルー’,‘バークレー’と‘ジャージー’を用いて果実の着色ステージごとのABA濃度およびエチレン生成量を調査した.IAA濃度は種子径が増大する時期に急増した.成熟期では,ABA濃度とエチレン生成量はほぼ同様の変化を示し,エチレン生成量が最大となる時期は,ABA濃度や呼吸活性が最大になる時期とほぼ同等か,早めとなることが明らかになった.品種別にみると,‘アーリーブルー’および‘バークレー’ではエチレン生成量とABA濃度はほぼ同時に増加し,‘ジャージー’ではエチレン生成量がABA濃度より早く増加した.また,ABA濃度と呼吸活性でそれぞれが最大となる着色ステージの早晩は,品種により異なっていた.成熟期におけるABA濃度と果実の着色程度の変化については,品種ごとに進み方が異なっていたが,ABA濃度の変化は可溶性固形物含量と果実硬度の変化と同時に進むことが明らかになった.
  • 白山 竜次, 永吉 実孝
    2013 年 12 巻 2 号 p. 173-178
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/03
    ジャーナル フリー
    秋輪ギク‘新神2’および夏秋輪ギク‘岩の白扇’を用いて,花芽分化抑制における光源の波長と抑制効果について検証を行った.光源は電球形LEDランプを用いて,光源ピーク波長実測値516,593,630,663,684および705 nmの6種類を供試した.その結果,‘新神2’および‘岩の白扇’ともにピーク波長593,630および663 nmが抑制効果が認められ,最も抑制効果が高かったのは‘新神2’では630 nm,‘岩の白扇’では,593および630 nmであった.
    また‘新神2’および‘岩の白扇’を用いて,暗期中断光源をR光単照射とR光 + FR光の混合光とで花芽分化抑制効果を比較したところ,‘新神2’ではR単色光とR光 + FR光の混合光に花芽分化抑制効果の差は認められなかったが,‘岩の白扇’ではR単色光よりもR光 + FR光の混合光が抑制効果が高かった.
  • 黒木 克翁, 竹村 圭弘, 松本 和浩, 武田 誠, 冨山 政之, 田村 文男
    2013 年 12 巻 2 号 p. 179-185
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/03
    ジャーナル フリー
    ニホンナシ‘幸水’および‘ゴールド二十世紀’の休眠期の枝に0.5および1.0%シアナミドならびに2.5および10.0%過酸化水素水溶液を浸漬処理し,腋花芽の萌芽に及ぼす影響を調べた.萌芽の促進に対する両処理の影響は,それぞれの濃度および処理時期に依存したが,シアナミドが過酸化水素よりも萌芽を促進した.特に,Chill Unit(CU.)600での1.0%シアナミド処理が,全処理区内で最も休眠打破効果が高かった.次に,シアナミドの処理時期および濃度の違いが自発休眠打破ならびに春季の発育に及ぼす影響を調査するために‘幸水’,‘豊水’,‘ゴールド二十世紀’および‘新高’の成木にCU. 300,CU. 600,CU. 900およびCU. 1,500時に0.5および1.0%シアナミドを処理し,その後の萌芽率,花粉発育および開花期を観察した.腋花芽における休眠打破の反応は,品種ごとに異なり,‘幸水’および‘ゴールド二十世紀’ではCU. 600,‘豊水’ではCU. 600~900,‘新高’ではCU. 900に行った処理が効果的であった.また,処理濃度は1.0%が効果的であることが明らかとなった.一方,いずれの時期および濃度であってもシアナミド処理を行った樹体の花粉発育,萌芽および開花は無処理区より早くなった.
  • 佐々木 厚, 吉村 正久, 鈴木 誠一, 森山 厳與, 金浜 耕基
    2013 年 12 巻 2 号 p. 187-194
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/03
    ジャーナル フリー
    赤色電球形蛍光ランプによる暗期中断時間と光強度がスプレーギクの開花と花房の形状に及ぼす影響について,秋ギク‘ゴールドストックダークリネカー’および夏秋ギク‘コイアローム’を用いて調べた.光源として,市販の白熱電球(対照光源,75 W)および660 nmの波長をピークにもち,赤色光を多く含む赤色電球形蛍光ランプ(21 W,試作品)を用いた.その結果,いずれの品種とも,商品価値の高い整った花房の形状を示す花芽分化抑制可能な光合成有効光量子束密度(PPFD)の下限値は,同じ暗期中断時間で比較すると,赤色電球形蛍光ランプを使用した場合に白熱電球を使用した場合より低かった.秋ギク品種では,赤色電球形蛍光ランプを使用して1時間の暗期中断を行った場合,花芽分化抑制可能なPPFDの下限値が示されたが,白熱電球を使用した場合では示されなかった.さらに,いずれの品種においても,赤色電球形蛍光ランプを使用した場合の花芽分化抑制可能なPPFDの下限値と,これに対応する暗期中断時間の積の値がほぼ一定になったことから,花芽分化抑制可能なPPFDの下限値と暗期中断時間は反比例の関係にあり,ブンセン-ロスコーの相反則が成り立っていると考えられた.
  • 白山 竜次, 永吉 実孝, 郡山 啓作
    2013 年 12 巻 2 号 p. 195-200
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/03
    ジャーナル フリー
    夏秋ギク‘岩の白扇’および秋ギク‘神馬’を用いて,電照期間と花芽分化抑制に必要な放射照度との関係について試験を行った.電照期間は定植から20~60日までの5区(‘神馬’は70日までの6区)を設置し,各区における光源からの距離と光量減衰を利用して放射照度ごとに展開葉数の調査を行った.展開葉数が増加から一定値へと変化する放射照度の閾値の推定は,2本の直線による折れ線回帰分析を用いた.‘岩の白扇’では,電照期間が長くなるにつれて,花芽分化抑制に必要な放射照度の閾値が高くなったが,電照期間50日以降は閾値が急激に高くなり,電照直下付近の放射照度180~261 mW・m−2でも,電照中から花芽分化が開始された.一方,‘神馬’も電照期間が長くなるにつれて,花芽分化抑制に必要な放射照度の閾値が高くなったが,その程度は緩やかで,電照期間70日でも110 mW・m2以上の放射照度で十分に花芽分化が抑制された.以上のことから,キクでは電照期間が長くなると花芽分化抑制に必要な放射照度の閾値が高くなることが明らかとなった.その程度には品種間差があり,‘神馬’に比較して‘岩の白扇’で顕著であった.
収穫後の貯蔵・流通
  • 渡邉 祐輔, 宮島 利功, 野水 利和, 中野 優, 市村 一雄
    2013 年 12 巻 2 号 p. 201-207
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/03
    ジャーナル フリー
    消費者が観賞段階で切り花に糖質を連続的に処理することを想定し,異なる濃度のグルコース,スクロース,フルクトースおよびトレハロースを用いた連続処理が,チューリップ切り花の品質保持に及ぼす影響を調査した.‘イルデフランス’切り花を用いた実験では,いずれの糖質にも品質保持期間の延長効果が認められた.これらの糖質の中では,グルコース,フルクトースおよびスクロースの効果が高かった.しかしながら,1%グルコース以外の処理区では葉に障害が生じた.1%グルコースを用いた連続処理により,調査した12品種のすべてにおいて切り花の相対新鮮重が増加し,また,9品種において切り花の品質保持期間が有意に延長された.一方,生産者が出荷前に切り花に糖質を短期的に処理することを想定し,グルコースが‘イルデフランス’切り花の品質保持に及ぼす影響を調査したが,効果はみられなかった.以上の結果から,チューリップ切り花の品質保持には,1%グルコースを用いた連続処理が有効であると結論した.
  • 安藤 秀樹, 馬場 正, 山口 正己
    2013 年 12 巻 2 号 p. 209-213
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/07/03
    ジャーナル フリー
    オオバ(Perilla frutescens L.)生葉は,棚持ち期間が短く,早いものでは数日で褐変し商品性を失う.本研究では,オオバ生葉の褐変発生における活性酸素種の役割を明らかにするため,葉中の過酸化水素量の測定を行った.また外観的変化に先立って起こる光化学系の劣化を評価できる遅延発光量を測定した.低湿度下3℃で貯蔵した場合,1日当たりの葉重減耗率は25%に達し,褐変発生より先に激しく萎れて商品性を失った.高湿度下3℃での貯蔵では,褐変発生は速いもので4日後,遅いもので8日後と葉ごとに遅速があった.しかし褐変発生時の葉重減耗率は26.3 ± 1.1%で,葉ごとのばらつきは非常に少なかった.そこで葉重減耗率10%ごとに過酸化水素量を測定したところ,褐変がみられた葉重減耗率20~30%でそれまでの2倍以上に増加していた.このことから,乾燥ストレスに伴う過酸化水素の急激な増加が,褐変を誘導していると思われた.葉ごとの葉重減耗率は,遅延発光量と5%水準で有意な相関がみられた(r = 0.67).遅延発光量は,秒単位で測定できるので,葉ごとの老化速度の違いを見極める非破壊指標になると思われた.
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