園芸学研究
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13 巻, 3 号
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総説
原著論文
育種・遺伝資源
  • 佐藤 守, 竹澤 邦夫
    2014 年 13 巻 3 号 p. 193-201
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    気象要因による生育予測法により四倍体無核ブドウ‘あづましずく’の発育特性について検討した.発芽期から着色開始期までは日平均気温で予測モデルに係らず実用的な予測が可能であった.発芽については,‘あづましずく’は‘巨峰’よりも自発休眠覚醒に要する低温要求量が少ないものと推察された.開花期は展葉期よりも発芽期を起算日とした場合が,年による予測誤差が少なかった.有効積算温度法の発育零点は開花期までは0°C,着色開始期では5°Cで予測精度が高かった.
  • 佐藤 守, 竹澤 邦夫
    2014 年 13 巻 3 号 p. 203-211
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    気象要因による生育予測法により四倍体無核ブドウ‘あづましずく’の成熟特性について検討した.収穫盛期の糖度は成熟期の積算日照時間と収量により高度に有意な重回帰式が得られた.収穫盛期の酒石酸含量は着色開始後3~17日間の平均気温と有意な相関が認められた.糖酸比35到達日はノンパラメトリックDVR法による日射量DVR関数で予測精度が高かった.このことから,‘あづましずく’は着色開始期からは日射量の影響を強く受けて成熟するものと結論づけられた.
  • 小笠原 利恵, 落合 正樹, 西川 和男, 福井 博一
    2014 年 13 巻 3 号 p. 213-219
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    スパティフィラムは濃緑色の葉と白色の仏炎苞のコントラストが高く評価される室内観賞植物であるが,仏炎苞が白色で変異に乏しく,新たな育種を進めるためには野生種の活用が有効である.四倍体の育成は,交雑が困難な種間や属間交雑個体の育成において有用な育種手法である.そこで本研究では,効率的な四倍体の育成方法の開発を目的として,in vitroでのコルヒチン処理を検討した.スパティフィラム‘New merry’を用い,殺菌処理前の未展開葉の除去数,摘出する茎頂分裂組織の葉原基数,倍数化処理期間および処理方法を検討した.雑菌汚染を回避するために,殺菌処理前の未展開葉の除去数を多くし,さらに摘出した茎頂分裂組織を小さくした場合には,次亜塩素酸ナトリウムとコルヒチンによる障害のため,生存率が著しく低下した.これらの障害を回避するために,4~5枚の未展開葉を持つ供試材料を表面殺菌し,3~4個の葉原基を持つ茎頂分裂組織を摘出した結果,生存率が上昇した.倍数化個体の獲得率は,摘出した茎頂分裂組織を0.1 µM NAAと10 µM BAPを含むMS培地で1か月間初代培養した後に,コルヒチンを含むMS培地で14日間処理した場合に高くなり,0.01%区で31.3%と最も高くなった.得られた四倍体の葉は二倍体に対して幅広の形態を示し,仏炎苞は二倍体に対してやや小さかった.
土壌管理・施肥・灌水
  • 田川 愛, 柳井 洋介, 中島 寿亀, 浦上 敦子
    2014 年 13 巻 3 号 p. 221-227
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    アスパラガスの連作障害回避を目的として佐賀県内で行った「湛水太陽熱処理」実証ほの土壌を用いて,アスパラガスの生育阻害要因を調査した.アスパラガスの幼苗検定により,処理後の土壌において草丈および地下部新鮮重は処理前の土壌における値より有意に大きくなり,本処理によるアスパラガスの生育改善効果が示された.レタスを用いた生物検定でも,処理前の土壌より処理後の土壌で,幼根が長く伸び,アレロパシー活性の低減が示された.さらに,アスパラガスの主要病原菌であるF. oxysporumの菌密度も,本処理後に検出限界以下となった.深さ15~30 cmの土壌中のpH,EC,NO3-N,トルオーグリン酸含量は湛水太陽熱処理により有意に減少したが,交換性陽イオン濃度(Ca2+, Mg2+, K+),塩基飽和度およびアンモニウム態窒素濃度には有意な変化が認められなかった.本結果から,高いアレロパシー活性と病原菌密度が,改植前の土壌におけるアスパラガスの生育不良要因となり得ることが例示された.湛水太陽熱処理は,これら要因を効果的に除外できる可能性があり,アスパラガスの連作障害回避に有効な技術のひとつと考えられた.
栽培管理・作型
  • 戸谷 智明, 加藤 修, 藤井 義晴
    2014 年 13 巻 3 号 p. 229-234
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    ニホンナシでは,いや地現象の発生によって改植した若木の生育が不良になることが多い.そこで,改植時に客土,活性炭および活性炭フロアブル剤を施用して,いや地現象の軽減効果を検討した.その結果,客土区における若木の生育は,定植1,2年目の新梢伸長量が無処理区に比べて有意に大きくなり,2年目の生体重が無処理区の1.7倍となった.一方,活性炭区およびフロアブル区の若木の生育は,無処理区と比べ有意な差が認められなかった.さらに,客土に加えて定植後に若木の主幹を中心とした地表面をマルチ処理することによって,定植1,2年目ともに新梢の発生本数が客土区より多くなり,若木の生育がさらに促進された.これらのことから,改植ほ場において,客土はいや地現象の軽減に効果があることが明らかになった.さらに,客土とマルチ処理を併用することで,若木の生育がより促進され,早期成園化が図れるものと判断された.
  • 龍 勝利, 井手 治
    2014 年 13 巻 3 号 p. 235-240
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    網入り果は果実の外側から維管束が透けて見える症状の果実であり,特有の網模様を呈して外観が優れず,果実硬度が低いため商品価値が低い.本実験では,網入り果発生に及ぼす昼温の影響について検討した.夜温を8°C一定に制御した場合,昼温20°Cでは網入り症状が強く現れたのに対し,昼温24°Cおよび昼温28°Cでは症状が軽減された.さらに,促成トマト栽培において開花前から開花期の加温機の設定を日中20°Cとした場合,対照区(加温機の設定を日中8°Cにした場合)に比べて網入り果の発生を抑制できることが明らかとなった.これによって,果皮が薄いといった形態的な異常が軽減され,果実硬度が高まった.
  • 白山 竜次, 永吉 実孝, 郡山 啓作
    2014 年 13 巻 3 号 p. 241-248
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    キク電照栽培における電照中断が花芽形成に及ぼす影響を中断処理による葉数の変化で評価した.秋ギク‘新神2’および夏秋ギク‘岩の白扇’を供試して,作型や中断時期が展開葉数に及ぼす影響を調査した.秋ギク‘新神2’の12月開花における定植22日後からの電照中断処理では,電照中断3日間以上で展開葉数が有意に減少し,花芽形成に影響が現れたが,定植36日後からの電照中断では4日間以上の処理で花芽形成への影響が生じた.‘新神2’の3月開花栽培では電照中断5日間以内の処理では,花芽形成に影響が認められなかった.夏秋ギク‘岩の白扇’の7月開花では,電照中断4日間以上,8月開花では3日間,9月開花では2日間以上で花芽形成に明確な影響が認められた.この電照中断日数の変動の要因については処理前後の気温などの環境要因や品種の持つ幼若性が影響している可能性が考えられる.秋ギク3品種,夏秋ギク2品種を供試して,中断日数および中断時期が花芽形成に及ぼす影響を調査した.中断日数はわずか1日で影響を受ける品種から3日間では影響しない品種まで分かれた.中断時期は,定植から中断処理までの期間が長くなるほど,花芽形成への影響が大きくなる傾向が認められた.これまで電照中断日数は1~2日は問題ないとされてきたが,本試験の結果から電照中断日数と花芽形成の関係は品種や作型,気象要因,中断時期などで異なることが示された.
発育制御
  • 水島 智史
    2014 年 13 巻 3 号 p. 249-254
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    ウワバミソウの珠芽の休眠打破および苗の生育に対するジベレリン(GA)およびベンジルアミノプリン(BAP)処理の影響について検討した.珠芽に対してGAを0,100および500 ppmで処理した結果,最終の出芽率は100 ppmで84%と最も高かったが,500 ppmでは34%と低く,0 ppmでは全く出芽しなかった.さらに珠芽に対してGAの0,10,50および100 ppmとBAPの0,1および10 ppmを組み合わせ処理した結果,休眠打破の効果は,GAの場合では10~100 ppmで濃度が高まるほど高かったが,BAPにはいずれの濃度にも休眠を打破する効果は認められなかった.しかし,GAとBAPの組み合わせ処理によって,GAが10および50 ppmの場合ではGA単独処理と比較して休眠打破効果を高め,出すくみ率を低下させる作用が認められた.また,苗に対して25および100 ppmの濃度のGAおよびBAP溶液を散布により2回処理した.GA処理は対照区と比較して節間伸長により主枝長を有意に伸長させた.BAP処理は対照区と比較して側枝数を有意に増加させた.
  • 竹村 圭弘, 黒木 克翁, 間 奈月, 前田 香那子, 岸本 真幸, 田村 文男
    2014 年 13 巻 3 号 p. 255-260
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    明期終了時の短時間遠赤色光照射(EOD-FR)処理および短時間昇温(EOD-heating)処理が春出しトルコギキョウ栽培の生育に及ぼす影響について検討した.10月29日定植の直後から行ったEOD-heating処理とEOD-FR処理により,主茎伸長と節数増加に伴う着蕾率の増加が確認された.5月13日に測定した上位葉のSPAD値と葉の窒素含有量は,発蕾率が高かった両処理の併用区であるEOD-heating・FR区で発蕾前の区に比べて高かった.一方,根の窒素含有量はEOD-heating・FR区が最も少なかった.生育初期の光合成産物の分配について調査を行った結果,13C atom% excessの値は,葉と茎では18°C管理下においてFR処理ありが処理なしに比べて有意に高く,根ではEOD-heating区が18°C管理の区に比べて有意に高かった.以上より,冬期寡日照地域における春出し栽培では,13°C管理でのEOD-FR処理とEOD-heating処理の併用で18°C管理に比べて茎伸長と生育促進が可能であること,生育初期の光合成産物の総量の違いにEOD-FR処理およびEOD-heating処理のそれぞれが影響することが明らかになった.
  • 荒川 修, 徐 剣波, 浅田 武典
    2014 年 13 巻 3 号 p. 261-265
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    リンゴ栽培において,新植後の新梢の発生は初期の果実生産に影響を及ぼすために重要である.そこで,定植時期の違いと根の切除による根量が,切り返し剪定した1年生‘ふじ/マルバカイドウ’リンゴ樹の新梢成長に及ぼす影響について比較検討した.苗木の春季定植区と秋季定植区では上部の3~4本の新梢はそれより下部の新梢より強勢に成長した.一方,前年に切り接ぎして定植した場合では新梢成長が全体的に旺盛で,上部の新梢長は長かったが,下部の新梢の成長も良好で段階的に短くなった.前年切り接ぎ定植区において切り返し時に根を半分切除すると,上部の2本の新梢は優勢に成長したが,それより下の新梢長は極端に短くなり,春季あるいは秋季定植区の新梢成長に類似した.これらのことから,苗木定植後の新梢の成長には根の状態や根量が影響し,それには貯蔵養分,特に窒素が大きく影響していることが推察された.
  • 新川 猛, 加藤 雅也, 鈴木 哲也, 生駒 吉識
    2014 年 13 巻 3 号 p. 267-274
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    近年頻発するカキ‘富有’の着色遅延や着色不良に対応するため,天然型アブシシン酸含有肥料の果実散布による着色向上効果について検討した.250~500倍のアブシシン酸含有肥料をへた中心に果実全体に散布すると,無散布に比べてカラーチャート値で1.0高く,収穫期では1週間から10日前進化した.効果を示す散布時期は,9月~10月初旬の着色開始期直前であり,着色開始期以降の効果は認められなかった.また,着色の向上は果実散布後10日ほど経過した後に認められるが,無散布の着色が始まる時期になるとカラーチャート値の差は一定のまま収穫期まで推移した.これらのことから,アブシシン酸含有肥料の散布による着色向上は,着色開始期に移行する時期を早めることによってもたらされているものと推察した.
収穫後の貯蔵・流通
  • 鈴木 哲也, 新川 猛, 櫻井 直樹
    2014 年 13 巻 3 号 p. 275-282
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/30
    ジャーナル フリー
    AMC(Acoustic Measurement of Crispness)法によって,‘太秋’における食感の定量評価および食感の保持について検討した.食感は周波数帯域6,400~25,600 Hzのエネルギー食感指標によって,高い精度で定量評価できることが明らかになった.ポリエチレン包装すると,無処理(食感保持日数が収穫後約9日)よりも約2~6日長く,収穫後約11~15日まで食感を保持することができた.また,1-MCP処理後にポリエチレン包装を行うと,ポリエチレン包装のみよりも約10~14日長く,収穫後約25日まで食感を安定して保持することができた.なお,収穫後25日まで食感を保持しても,果皮色(カラーチャート値)は4.2前後であり,実用上問題はなかった.
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