園芸学研究
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14 巻, 2 号
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原著論文
育種・遺伝資源
  • 岡安 浩次, 肖 秋濱, 太田 惣介, 山田 祐彰, 及川 洋征, 山田 哲也, 金勝 一樹, 荻原 勲
    2015 年 14 巻 2 号 p. 111-119
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    ハカラシナとムラサキキャベツの種間接木キメラがin vitro接木によって作製された.接木によって得られた個体から,腋芽培養で増殖した植物体は葉の形態調査によってHHR型またはHRR型周縁キメラであることが確認された.また,PCRによる多型解析からもキメラ性が確認された.周縁キメラの葉や花の形態的特性を解析することで,アブラナ属植物においてLIは毛茸形成と萼色に,LIIは鋸歯縁小葉の形成,花弁状雄蕊の形成および花柄色に関与することがわかった.さらに,腋芽培養と水耕栽培を組み合わせることで周縁キメラの増殖栽培ができた.
  • 梶田 啓, 赤木 剛士, 山根 久代, 田尾 龍太郎, 米森 敬三
    2015 年 14 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    カキの性表現様式は雌雄混株であり,多くの栽培品種は雄花非着生形質を示し交雑育種の制限要素となっている.これまでに,カキの雌雄性の遺伝的機構は解明されていないが,最近,カキの近縁二倍体野生種であるマメガキにおいて,雄性形質連鎖領域DlSx-AF4Sが同定された.そこで本研究では,多くのカキ品種を供試して,DlSx-AF4Sとカキの雄花着生特性との関連性を検証した.3品種を除くすべての雄花着生品種でDlSx-AF4Sが検出されたことから,マメガキとカキの性決定に関与する遺伝制御因子が共通であることが示唆された.一方,雄花非着生品種の17%でマーカーが検出された.カキの性表現はマメガキと比較して環境要因や栄養状態,樹齢の影響を受けやすいことから,カキでは雄性決定因子をもっていても雄性形質を発現できない可能性が考えられた.また,マメガキで示されたように,カキ属の性決定はXY型であることが予想されるが,高次倍数性のカキでは,MSY上の雄性決定遺伝子の遺伝子量に多様性が生じる可能性があり,そのことが複雑な性表現様式に影響している可能性もある.今後は,DlSx-AF4Sに連鎖する雄性決定因子をカキより同定し解析することで,カキの複雑な性表現様式が解明されることが期待される.
  • 二宮 泰造, 島田 武彦, 遠藤 朋子, 野中 圭介, 大村 三男, 藤井 浩
    2015 年 14 巻 2 号 p. 127-133
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    生産者や育成者権の保護に向けてカンキツの品種識別技術の確立が求められている.信頼度の高い科学的手法であるDNAマーカーによる品種識別技術の開発は,正確なカンキツの品種識別のために必須である.そこで,簡易な方法での品種識別が可能なCAPSマーカーによるカンキツの品種識別技術の確立をめざした.その結果,9種類のCAPSマーカーを33品種・系統に適用した遺伝子型を整理したCAPS遺伝子型データが得られた.このデータは,国内のカンキツの品種識別のための基盤的な情報となる.また,CAPS遺伝子型データから,最少マーカーセットを検出した結果,8種類のCAPSマーカーで33品種・系統のすべてを識別できることが判明した.さらに,遺伝子型データを利用して7種類の育成品種について,親子鑑定を行った.その結果,‘甘平’の花粉親は‘不知火’ではないことが明らかとなった.さらに解析を進めたところ,‘甘平’の花粉親はポンカンであることが強く推察された.
繁殖・育苗
  • 水島 智史
    2015 年 14 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    ウワバミソウの挿し芽苗の生育に及ぼすポット育苗における培養土の窒素施肥量および水耕における培養液濃度の影響を調査した.バーミキュライトを用いて1 L当たり窒素施肥量を0,200,400および800 mgとした培養土を作成し,発根したウワバミソウの挿し穂を鉢上げした.鉢上げ21日後では各施肥量とも生育に差は認められなかったが,鉢上げ42日後では窒素施肥量が400 mg・L−1の培養土で最も生育が促進された.さらに,濃度を0.25,0.5および1単位とした園試処方培養液に,発根したウワバミソウの挿し穂を移植して水耕した.濃度が0.5および1単位では枯死や葉先枯れが認められたが,0.25単位の濃度では枯死や葉先枯れは観察されず,生育が優れた.
  • 椿 信一, 篠田 光江, 三浦 一将, 佐野 広伸, 佐藤 孝夫
    2015 年 14 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    ‘あきたおにしぼり’は,在来品種‘松館しぼり’の自殖固定系統間のF1品種であるが,交配親の自殖系統と比較して葉重,根重およびT-R率といった収量特性においてヘテロシスを示す.一方,形態特性,根内部の特性および成分特性(イソチオシアネート含量,糖含量)ではヘテロシス効果は認められず,優性効果または相加効果が認められた.‘あきたおにしぼり’は,原品種‘松館しぼり’と比較して,形態特性および根内部の特性における均一性だけでなく,イソチオシアネートや糖の含量および組成といった成分特性でも均一性が高いことが確認され,‘松館しぼり’の商品化を図る上でF1化が有効であることが示唆された.他方,在来品種‘松館しぼり’は遺伝資源の多様性を内在しており,その維持保存を継続する必要がある.
  • 永谷 工, 高田 純子, 志村 華子, 幸田 泰則
    2015 年 14 巻 2 号 p. 147-155
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    絶滅危惧植物の代表とされるレブンアツモリソウを無菌発芽法および共生発芽法によって人工的に増殖して鉢上げし,得られた栽培株の生育と開花・結実に至るまでの生育状況を観察した.無菌発芽株は共生発芽株に比べて鉢上げから4年目までの生存率が低く,鉢上げ後の生体重増加が緩慢であった.また,無菌発芽株では共生発芽株に比べて開花率も低かった.開花能力に関連する生育指標を調べたところ,レブンアツモリソウは,一定の大きさ(生体重10 g前後)になると開花能力を有するようになり,そのような株ではシュート当たりの葉の枚数3~4枚,最大葉長100~120 mm,シュート長120 mm以上といった生育特徴をもつことが明らかになった.このことから,レブンアツモリソウは,株の齢によって開花能力が決定されるのではなく,個体サイズに依存して開花が決定される「サイズ依存型」であることが判明した.培養苗由来の種子を用いてさらに株を増殖することも可能であり,礼文島自生地に全く依存しない自家採種によるレブンアツモリソウの完全人工増殖が可能となった.
土壌管理・施肥・灌水
  • 臼木 一英, 室 崇人, 辻 博之, 竹中 眞
    2015 年 14 巻 2 号 p. 157-161
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    リン酸肥料を局所施肥する効果的な方法を開発するために過リン酸石灰を用いて種子から施肥位置までの垂直方向への距離および局所施肥した施肥量が直播タマネギの出芽や生育に及ぼす影響について黒ボク土を充填したポット実験によって検討を行った.淡色黒ボク土における直播タマネギへの過リン酸石灰の局所施用は,慣行の全層施肥に比べて初期生育を促進する可能性が認められた.特に局所施用の位置としては種子の下方0 cmから4 cmへの施肥による生育促進効果は高く,土壌からのリン供給量および土壌EC値により異なると考えられるが,リン酸として30もしくは45 kg・10 a−1を施用することで効果が高まることが示唆された.また,本実験における施用量内での種子直下への局所施肥では過リン酸石灰によるEC値の上昇がタマネギの発芽や出芽へ影響を及ぼすとは考えられなかった.
栽培管理・作型
  • 金子 壮, 東出 忠桐, 安場 健一郎, 大森 弘美, 中野 明正
    2015 年 14 巻 2 号 p. 163-170
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    トマト低段栽培において,異なる栽植密度および定植時の苗ステージが収量に及ぼす影響を明らかにするため,定植後の生育および乾物生産について収量構成要素の解析を行った.定植時の苗の生育ステージの異なる4処理区:①二次育苗を行わず直接定植を行う直接定植区,②第1花房1番花のガク片が離れ始める開花直前に定植する開花直前区,③1番花のガク片が完全に開いてから定植する1番花開花区,④3番花のガク片が完全に開いてから定植する3番花開花区,および栽植密度の異なる2処理区:①2.6株・m−2(株間30 cm),②3.9株・m−2(株間20 cm),を組み合わせた8処理区を設けた.播種より110日間の試験の結果,処理区によって,葉面積指数(LAI)や茎長に有意な差があり,積算受光量にも違いがみられた.栽植密度が小さく,定植時の苗ステージが早いほど,単位面積当たりの果実新鮮重(FW)およびLAIが大きかった.しかし,受光量当たりの地上部総乾物生産量(TDM),すなわち,光利用効率(LUE)には処理区による有意な差はみられなかった.従って,栽植密度や定植時の苗ステージが異なっても,LUEには影響がないことが示唆された.収量構成要素間の相関関係をみると,果実FWの処理区間の差は果実乾物重(DW)の違いによるものであった.また,果実DWとTDMとの間,TDMと積算受光量との間,積算受光量とLAIとの間には,それぞれ有意な相関がみられたことから,処理による果実FWの差はLAIの差により生じたものと考えられた.以上の結果より,定植時の苗ステージや栽植密度を変えても,LUEには違いがみられないことが明らかになり,低段栽培において果実FWを増加させるためには,十分なLAIを確保し,群落受光量を増加させることが重要であると考えられた.
  • 大和 陽一, 壇 和弘
    2015 年 14 巻 2 号 p. 171-177
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    ニホンカボチャ‘シマカボチャ’を台木とした接ぎ木がセイヨウカボチャ‘黒皮デリシャス’の高温条件下での生育および収量,根圧による出液速度,ならびに葉の相対含水率に及ぼす影響について検討した.7月上旬にガラス室内に定植した場合(平均気温29.1°C),‘シマカボチャ’を台木とした‘黒皮デリシャス’の接ぎ木植物では,穂木と同じ‘黒皮デリシャス’を台木とした接ぎ木植物に比較して,主枝の伸長,ならびに葉の展開が促進された.個体当たりの収穫果実重は,‘黒皮デリシャス’を台木とした接ぎ木植物より‘シマカボチャ’を台木とした接ぎ木植物で有意に大きかった.8月下旬からガラス室内で11日間(平均気温28.5°C)ポット栽培した,‘シマカボチャ’を台木とした接ぎ木植物では,‘黒皮デリシャス’を台木とした接ぎ木植物より根の乾物重当たりの出液速度が高く,根系の生理的活性は高いと考えられた.35/30°C(明/暗期)で4日間生育させた,‘黒皮デリシャス’を台木とした接ぎ木植物の相対含水率は,25/20°Cで生育させた場合より有意に低下したのに対し,‘シマカボチャ’を台木とした接ぎ木植物では,25/20°Cでの値との有意差はなく,‘黒皮デリシャス’を台木とした接ぎ木植物より有意に高かった.以上のことから,‘シマカボチャ’を台木として接ぎ木した‘黒皮デリシャス’では,高温条件下での台木の根系の生理的活性,ならびに穂木の葉の相対含水率が高く,光合成速度の低下が抑えられることが,生育促進および収量の増加に関係すると考えられた.
  • 河原林 和一郎
    2015 年 14 巻 2 号 p. 179-189
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    マドンナリリーを我が国の生産園芸品目のひとつとすることを目的に研究を開始した.本報では,種子発芽と実生苗の球根生育に及ぼす温度や成長調節物質の影響について検討するとともに球根の生育過程を調査し,以下の結果を得た.種子の発芽から実生苗および一作球根の生育をとおして,15°C,19°Cが適し,27°C以上の高温は適さなかった.種子のABA処理は適温での発芽にほとんど影響なく,一方,高温での発芽阻害の回復に対し,フルリドン処理は有効であったがGA3処理は効果を示さなかった.開花済み親球根(第1世代)の茎軸基部で肥大中の子球根(第2世代)の成長点は,りん片から続いて普通葉の原基を継続して分化しつつ,9月中下旬には伸長を開始し,第2世代球根の茎軸が形成された.11月頃,第2世代茎軸の基部に孫球根(第3世代)の成長点が分化した.翌年3月,第2世代茎軸は急速に伸長し,球根から出現してくる頃には茎軸の頂端成長点で花芽分化が始まった.開花は5月下旬から6月上旬となった.この間,第3世代成長点では,りん片原基の分化とその肥大が続き,第1世代の球根りん片が消耗・消失する8月頃まで3世代のりん片が球根内に共存することになった.このように,球根の生育経過はテッポウユリと類似したものであった.しかし,マドンナリリーでは,球根内の成長点での葉原基の分化のみならず,常時,新葉(りん片葉)の伸長も継続し根生葉が存在することから,テッポウユリのような明らかな休眠状態は認められなかった.
  • 古賀 武, 下村 克己, 井上 惠子, 浜地 勇次
    2015 年 14 巻 2 号 p. 191-195
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    単為結果性ナス‘省太’の収量向上を目的として,側枝整枝法の違いが生育および収量に及ぼす影響について検討した.3種類の整枝法を比較した結果,側枝の第1花より上の葉を2枚残して摘心した区(2葉区)では,第1花より上の葉を1枚もしくは0枚残して摘心した区(それぞれ1葉区,0葉区)に比べて,主枝の伸長が速かった.全期間の商品果数および商品果収量は,0葉区に比べて,2および1葉区において多かった.4~6月における商品果数および商品果収量は2葉区で最大であった.単為結果性ナス‘省太’は側枝の第1花より上の葉を2枚残して摘心することにより,非単為結果性ナス‘筑陽’の慣行栽培よりも合計収量が高くなった.
新技術
  • 細見 彰洋, 三輪 由佳, 磯部 武志
    2015 年 14 巻 2 号 p. 197-203
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/30
    ジャーナル フリー
    イチジク株枯病抵抗性を有する‘Ischia Black’や‘Negronne’台木とした,イチジク‘桝井ドーフィン’の接ぎ木苗を,緑枝接ぎを使って1年で育成することを目的に本研究を実施した.両台木品種の挿し木の生育は,挿し穂の採取時期(12月,3月)よりも採取部位の影響が大きく,前年枝の比較的基部を挿し穂とすれば,展葉は遅れるものの発根は速やかに進行し,結果として緑枝接ぎ可能な台木苗を早く準備できた.一方,両品種の台木と穂木品種‘桝井ドーフィン’の緑枝接ぎでは,接ぎ木が遅いと接ぎ穂自体は生存しても年内の接ぎ木活着率は低かった.また接ぎ穂は,登熟が始まっている部位より,未登熟部を利用した方が展葉開始が早く,初期に障害葉を生じ易いものの,穂木生存率が高かった.以上から,緑枝接ぎによる当年育成の生育良好な苗を得るには,なるべく基部由来の挿し穂を用いて台木の挿し木苗を養成し,接ぎ木をできるだけ早く,穂木品種の未登熟部分を利用して行うことが望ましいと考えられた.
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