園芸学研究
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14 巻, 4 号
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原著論文
育種・遺伝資源
  • 髙取 由佳, 櫟本 裕太郎, 清水 圭一, 橋本 文雄
    2015 年 14 巻 4 号 p. 341-348
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    トルコギキョウの自殖と他殖後代を調査し,一重咲き,二重咲きおよび八重咲きの花形に関する花冠形質の遺伝様式について検討した.八重咲きと一重咲きの交雑後代において明解な分離が認められ,二重咲きの花形は八重咲きと野生種由来または野生種の一重咲きとヘテロ遺伝子型を形成することによってのみ遺伝されることが明らかとなった.野生種を含む固定系統の交雑後代(F1)およびその自殖後代(F2)965個体のデータの調査から,この3種の花冠形質の遺伝は複対立する遺伝子座で制御されると推測された.3種の花形の分離パターンから,トルコギキョウの花における3つの対立遺伝子DDDSおよびDWの存在を説明することが可能である.すなわち,花形の表現型は,DDDDのホモ型およびDDDSのヘテロ型が八重咲き,DDDWのヘテロ型が二重咲き,DSDSのホモ型,DWDWのホモ型およびDSDWのヘテロ型が一重咲きであり,二重咲きに関与する対立遺伝子DWは野生種トルコギキョウに起源すると推定した.
土壌管理・施肥・灌水
  • 峯 洋子, 髙畑 健
    2015 年 14 巻 4 号 p. 349-356
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    メタン発酵消化液の肥料としての適用場面拡大を図るために,水耕での利用を検討した.消化液はアンモニア態窒素を多く含むため,そのまま水耕に用いると作物にアンモニア害,亜硝酸害を引き起しかねない.そこで循環型養液栽培で一部導入されている除菌用砂フィルターの硝化能を活用することを試みた.消化液を砂フィルターで循環ろ過させたとき,ろ過面積0.0079 m2の熟成フィルターの硝化速度は1日当たり約180 mgNとなった.フィルターに流入させるアンモニア態窒素の濃度が高いと,硝化の中間産物である亜硝酸態窒素が蓄積しやすかった.硝酸態まで完全硝化させた消化液を用いてコマツナの湛液水耕を行ったところ,リン酸と微量要素を補うことで,地上部新鮮重が慣行とほぼ同等となった.さらに,砂フィルター付きNFT栽培システムにおいて,消化液原液で追肥しながらコマツナを栽培した結果,地上部新鮮重は慣行と同等となったが,草丈は慣行よりも低くなった.消化液に多く含まれるK,Na,Clなどが栽培期間中に培養液へ蓄積していったことが,草丈低下の原因と考えられた.実用的な利用のためには,これら過剰成分蓄積への対策を含め,今後,さらなる検討が必要である.
栽培管理・作型
  • 林田 大志, 名田 和義, 平塚 伸
    2015 年 14 巻 4 号 p. 357-363
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    数種の重金属は‘幸水’の単為結果を誘起し,着果率も20~30%であることから,摘果作業時間を大幅に短縮できる可能性がある.本研究では,開花前の‘幸水’花蕾に銅イオンを含むボルドー液と硫酸鉄(FeSO4)処理を行い,長果枝と短果枝における着果誘起効果の違い,果実へのGA処理による肥大促進効果ならびにそれら果実を果そうに複数着果させた場合の果実肥大を明らかにするとともに規模を拡大した実証試験を行った.ボルドー液による着果誘起は短果枝と長果枝で同様に生じ,また,得られた幼果にGAペースト処理する(ボルドー + GA)と十分に可販果となりうること,収量確保のために1果そうに2果以上を着果させることは不適切であることを明らかにした.次に,‘幸水’樹を網室で覆い,ボルドー + GAおよびFeSO4 + GA区で得られた果重分布,収穫時期の分布,収量について2年間にわたって調査した.その結果,果実サイズと収量は他家受粉区(マルハナバチ放飼による受粉)とほぼ同程度であり,加えて収穫期が大幅に早まることが明らかとなった.また,受粉・摘果関連作業時間は,慣行栽培と比較して大幅に短縮されることが示された.
  • 梶原 真二, 石倉 聡, 福島 啓吾, 道園 美弦
    2015 年 14 巻 4 号 p. 365-369
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    高温環境下における夜間の冷房温度,あるいは冷房時間帯がバラの切り花収量および形質に及ぼす影響について調査した.日没から4時間の18°C,あるいは21°Cの冷房処理によって,バラ‘アプラディール’の到花日数や切り花本数に差はなかったが,花冠長および花弁数が大きくなった.冷房処理温度が24°Cでの切り花形質は,無処理と差がなかった.日没から夜明けまでの冷房処理時間帯は,バラ‘サムライ08’の到花日数および切り花収量に影響しなかった.日没後4時間,夜明け前4時間および終夜21°Cの冷房処理による切り花長および乾物重は,同等であり,無処理と比較して大きかった.終夜冷房を100%とした消費電力量は,日没後4時間冷房が58%,夜明け前4時間冷房が31%であり,いずれも効率が高い夜間冷房方法であった.
発育制御
  • 宮前 治加, 島 浩二, 西谷 年生, 山田 真, 石渡 正紀, 住友 克彦, 久松 完
    2015 年 14 巻 4 号 p. 371-379
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    ストックにおいて赤色(R:600~699 nm)光から遠赤色(FR:700~799 nm)光の領域における光質が生育・開花に及ぼす影響を調査した.実験1では‘雪波’および‘ホワイトアイアン’を供試し,R光およびFR光のLEDを用いた混合照射によってR光とFR光の割合(R/FR)を0.02~277として終夜照射した.両品種においてほとんどの光照射区で茎伸長および花成が促進され,‘雪波’ではFR光の割合がR光よりも高い区(R/FR 0.02~0.7)で茎伸長および花成が顕著に促進された.‘ホワイトアイアン’では,FR光のLEDのみの照射(R/FR 0.02)よりも,R光とFR光の両方を含み,FR光の割合が高い場合(R/FR 0.15~0.7)に最も強く花成が促進された.実験2および3では‘ホワイトアイアン’を供試し,ピーク波長が628~742 nmの7種のLED電球を用いて終夜照射した.ほとんどの光照射区で茎伸長および花成が促進され,709,725,742 nm区で特に強く促進された.これら3つのLED処理区の中では,709 nmのLEDを処理した区において着花節位が最も低くなり,花芽分化が最も早くなることが示唆された.また,照射光の波長分布が異なる場合でも,茎伸長および花成への影響はフィトクローム平衡値との関連が見られた.
収穫後の貯蔵・流通
  • 文室 政彦, 佐々木 勝昭, 櫻井 直樹
    2015 年 14 巻 4 号 p. 381-390
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    本研究は,多汁で肉質の柔らかいマンゴー‘愛紅’果実の日持ち性の向上を目的として,収穫時期と貯蔵温度が弾性指標および果実品質に及ぼす影響を検討した.果実は個々にポリエチレンフィルムでラップして貯蔵試験に使用した.自然落果前と自然落果後に収穫した‘アーウィン’と‘愛紅’果実を25°Cで保持したところ,‘アーウィン’の弾性指標は両収穫時期とも貯蔵2日後に80 × 105前後,貯蔵10日後には72~75 × 105に低下した.一方,‘愛紅’は,両収穫時期とも‘アーウィン’より減少程度が大きく,貯蔵10日後には43~46 × 105まで低下した.‘愛紅’では,弾性指標は果実熟度が進むほど低下し,果実の大きさに影響されなかった.20°Cで0~10日間貯蔵したところ,弾性指標は両収穫時期も貯蔵期間が長くなるにつれて低下し,貯蔵10日後には51~52 × 105まで低下した.果肉硬度についても貯蔵期間が長くなるにつれて低下し,弾性指標と密接に同調した推移を示した.自然落果前果実を15~25°Cで貯蔵したところ,弾性指標は急速に減少したが,10°Cで貯蔵すると減少程度が緩やかであり,貯蔵4日以降,他の温度よりも有意に高く推移した.次いで,自然落果後果実の10°Cで高く推移した.果皮色a値は自然落果前果実の10°Cで低く推移した.55°Cでの10あるいは15分間の温湯処理は弾性指標と果実品質に影響しなかった.弾性指標と果肉硬度の数値との間に比較的高い正の相関が認められた.以上の結果,‘愛紅’果実の日持ち性の向上のためには,自然落果が予想される2~3日前に収穫し,15~20°Cで追熟して着色を確保し,10°Cで貯蔵することが有効であると考えられた.また,多汁で肉質の柔らかいマンゴー果実の果肉硬度の評価に弾性指標が適用できることが明らかになった.
  • 永田 雅靖, 吉田 千恵, 松永 啓
    2015 年 14 巻 4 号 p. 391-396
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    カラーピーマン果実の着色に伴うカロテノイド生合成関連遺伝子の発現と,収穫した果実に対する光照射処理の影響を調べた.成熟が開始した果実を収穫して,光合成光量子束密度が100 μmol・m−2・s−1の光を照射した.1日間の光照射で,phytoene synthase(Psy),β-carotene hydroxylase(CrtZ-2)とcapsanthin/capsorubin synthase(Ccs)は顕著に遺伝子発現量が増加した.それぞれの発現量は,対照の暗黒処理よりも207倍,8倍と6倍多く発現していた.他のカロテノイド生合成関連遺伝子,phytoene desaturase(Pds),ζ-carotene desaturase(Zds),lycopene β-cyclase(LcyB),zeaxanthin epoxidase(Ze),violaxanthin de-epoxidase(Vde)も,それぞれ暗黒の対照に比べて2~3倍高かった.光照射した果実は,5日間で全体が赤くなった.これらの結果から,収穫した果実に対する光照射処理がPsyとともに,CrtZ-2, Ccsなど他のカロテノイド生合成関連遺伝子の発現を増大させ,capsanthinの蓄積を促進するものと考えられた.
  • 山崎 博子, 庭田 英子, 矢野 孝喜, 長菅 香織, 稲本 勝彦
    2015 年 14 巻 4 号 p. 397-402
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    ニンニクの周年出荷は−2°Cで長期貯蔵したりん茎を利用して行われる.市場では貯蔵終了後の根の伸長によって商品価値が低下する場合があることから,これを抑制する技術が求められている.本研究では,−2°C貯蔵終了後の根の伸長抑制に適する高温処理条件を時期別に明らかにすることを試みた.収穫・乾燥後の8月から−2°Cで貯蔵したりん茎を10~6月に約1か月間隔で出庫し,39,41,43°C・12時間の高温処理を行い,15°Cで4週間保管後の根の伸長を調査した.根の伸長は39°C区では12月以降,41,43°C区では10月以降のすべての処理月で抑制された.実用的に十分な効果(処理4週間後の根長1 mm未満)は39°C区では2月以降,41°C区では11月以降,43°C区では10月以降のすべての処理月で認められた.39,41°C区の効果は2月頃まで処理時期が遅くなるほど高まったが,43°C区の効果は11~6月処理より10月処理の方が高かった.根の伸長抑制効果および処理コストの点から,処理温度には10,11月は43°C,12,1月は41°C,2月以降は39°Cが適すると考えられた.10,11月の43°C処理では9時間まで,12,1月の41°C処理および2月以降の39°C処理では6時間まで処理時間の短縮が可能であった.選定した12月以降の高温処理条件は概ね芽の伸長抑制にも有効であった.
新品種
  • 古谷 規行, 小川 昂志, 三村 裕, 山崎 むつみ
    2015 年 14 巻 4 号 p. 403-408
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    丹波黒大豆系エダマメ新品種‘紫ずきん3号’は‘紫ずきん’と‘紫ずきん2号’の交配後代から得られたダイズモザイクウイルス(SMV)抵抗性を持つエダマメ専用品種である.開花期,収穫期,主茎長などの生育特性は‘紫ずきん’と同程度である.また,糖やアミノ酸含量,および物性評価では,いずれも‘紫ずきん’と同等の結果を得ている.官能評価も同等以上である.また,SMVのA,A2,C,D系統に対して抵抗性を有することから,‘紫ずきん’で問題となっている莢茶しみ症が発生しない優良品種である.‘紫ずきん3号’は,平成28年度から‘紫ずきん’と完全切り替えを行い現地生産,市場出荷が始まる予定である.
  • 森 利樹, 小堀 純奈, 北村 八祥, 井口 工, 加藤 伊知郎, 曽根 一純, 石川 正美, 前田 ふみ, 深見 正信, 磯部 祥子, 佐 ...
    2015 年 14 巻 4 号 p. 409-418
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    三重県,香川県,千葉県と国立研究開発法人農業・食品産業総合研究機構の共同育種により種子繁殖型品種‘よつぼし’を開発した.‘よつぼし’は,‘三重母本1号’を母系親,‘A8S4-147’を父系親とするF1品種で,鮮やかな赤色の形の良い果実で,高い収量性があり,安定して糖度が高く,酸味もあって,食味に優れる.また,早生性と長日性を併せ持つ特異な花成特性を示す.この品種の品種識別では,既報のマーカーのうち,23種のCAPSマーカーと45種のSSRマーカーを用いることができる.今後,広く国内への普及が期待できる.
新技術
  • 佐藤 景子, 生駒 吉識, 松本 光, 中嶋 直子
    2015 年 14 巻 4 号 p. 419-426
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    ウンシュウミカンの浮き皮軽減には,ジベレリン(GA)とプロヒドロジャスモン(PDJ)を混合して散布する方法が有効であるが,2010年に登録されたジベレリン濃度(3.3~5 ppm)では,着色が遅延するという問題がある.そこで本研究では,ウンシュウミカンの浮き皮と着色に及ぼすGAとPDJの散布濃度・時期の影響について検討した.‘シルバーヒル温州’を用いて,異なる濃度のGAとPDJの混合液を8月下旬から9月上旬に散布した.その結果,1 ppmのGAと50 ppmのPDJの混合散布区,3.3 ppmのGAと50 ppmのPDJの混合散布区,3.3 ppmのGAと25 ppmのPDJの混合散布区では,いずれも浮き皮が強く軽減されたが,着色遅延は1週間以上となった.1 ppmのGAと25 ppmのPDJの混合散布区では,浮き皮は軽減され,着色遅延は1週間以内と推定された.さらに,3品種(極早生の‘岩崎早生’,早生の‘興津早生’,中生の‘シルバーヒル温州’)を用いて,8月から10月までの異なる時期に,5 ppmのGAと50 ppmのPDJの混合液を散布したところ,‘岩崎早生’では8月中旬から9月下旬,‘興津早生’と‘シルバーヒル温州’では9月上旬から下旬の散布で浮き皮軽減効果があったが,着色は遅延した.
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