本研究は,定植後に速やかに生育するトルコギキョウ苗を人工光利用の閉鎖型育苗環境で育てることを意図し,育苗開始から5週間の温度条件を明らかにしようとした.いずれの実験においても,明期を18時間,PPFDを125 μmol・m–2・s–1とした.暗期が18°C条件において,明期が30°Cおよび27.5°Cと比較して,25°Cおよび22.5°Cにおいて発芽の開始が遅れ,35°Cでは育苗開始14日後の発芽率が有意に低下した.また,32.5°Cでは,27.5°Cと同等の大きさの苗であったが,定植後の生育が遅延した.明期が27.5°Cにおいて,暗期を26°Cに高めることで,明/暗期が30/18°Cと比較して,発芽勢は同等に改善された.また,定植苗の本葉3節の葉身長が大きく,定植から抽苔,発蕾および開花までの日数は少なくなった.日平均気温が27.5°Cとなる明/暗期温度が異なる32/14°C,30/20°C,28/26°Cおよび27.5/27.5°Cにおいて,明期と暗期の温度差は発芽に影響を及ぼさなかった.しかしながら,32/14°Cは他3区と比較して定植苗の本葉3節の葉身長が小さく,30/20°Cは28/26°Cおよび27.5/27.5°Cと比較して定植後の抽苔,発蕾および開花までの日数が多くなった.これらの結果から,育苗開始から5週間の温度を27.5°C一定で管理することにより,定植後に速やかに生育する苗を生産できることが明らかになった.
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