園芸学研究
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17 巻, 1 号
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原著論文
土壌管理・施肥・灌水
  • 島田 温史, 冨永 茂人, 山本 雅史
    2018 年 17 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    土壌の過湿および乾燥が,パッションフルーツの樹体生育および果実品質に及ぼす影響について検討した.湿潤区(pF 1.3~1.9)では,樹体生育が抑制され結実率が低下した.光合成速度は7月以降に著しく低下し,葉の黄化や根腐れが発生した.その結果,根のデンプン含量が低下した.果実の成熟日数はいずれの処理区よりも短くなった.乾燥区(pF 2.1~2.8)では樹体生育や花芽分化を抑制し,果実の成熟を遅延させた.果実は小さく,糖度が低かった.乾燥ストレスを付与する時期によっても植物体の反応が異なり,栽培前期(着果後約20日まで)では,花, 子房および果実が小さくなるが,SPAD値や結実率は向上した.栽培後期(着果後約30日以降)では,樹体生育,花芽形成や光合成速度が抑制され植物体のデンプン含量が低下するが,果皮の着色は良好であった.以上のことから,パッションフルーツ栽培では,土壌の過湿あるいは乾燥は樹体生育および果実品質を抑制するが,一時的な乾燥ストレスは結実率や果皮の着色を向上させることがわかった.

栽培管理・作型
  • 川口 岳芳, 房尾 一宏, 尾崎 行生
    2018 年 17 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    ワケギ鱗茎の従来の貯蔵方法である軒下での吊り下げ貯蔵中の品質低下が問題となっていることから,鱗茎の低温貯蔵とその後の予措方法が貯蔵中の鱗茎の品質,ならびに定植後の生育と鱗葉形成に及ぼす影響を調査した.鱗茎を掘り上げ後,低温貯蔵することにより,慣行と比較して,貯蔵中の品質低下を抑制でき,その効果は貯蔵期間が長いほど大きかった.7月中旬から5°Cで貯蔵することで,年末の定植時の鱗茎の軟化率が慣行の約45%から15%以下に軽減された.鱗茎の低温貯蔵により,定植後の鱗葉の発生が見られたが,発生軽減には低温貯蔵後,定植前のなりゆきおよび25°C予措が有効であった.25°C予措,ならびに長期間のなりゆき予措では,予措中の鱗茎の軟化が顕著であったことから,早くとも定植60日前の10月下旬まで低温貯蔵し,その後,なりゆきで予措することが適切であると考えられた.

  • 鈴木 哲也, 新川 猛
    2018 年 17 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    ‘早秋’は極早生の完全甘ガキであること,果皮色は赤く,良食味であることから,高い市場評価を得ている.しかし,生理落果の発生が多く,結実が安定しないことが課題であった.そこで,本研究では,人工受粉ならびに受粉用品種の高接ぎが‘早秋’の生理落果に及ぼす影響を検討した.‘早秋’の人工受粉に適した花粉用品種は開花期の合った‘サエフジ’であった.‘サエフジ’の純花粉による人工受粉や高接ぎは,年次変動によって効果に差を生じるが,生理落果防止にある程度の効果が認められた.そこで,より安定した生理落果防止を図るために,主枝先端新梢長と生理落果との関係を調査した.弱剪定によって主枝先端の新梢長が短い樹の状態を保つことによって,6月の生理落果を抑えることはできるが,その後,生理落果率が上昇した.以上のことから,‘早秋’の生理落果防止に向けて,純花粉による人工受粉,受粉用品種の高接ぎおよび弱剪定によって主枝先端の新梢長が短い樹の状態を保つことがポイントになることが明らかになった.今後,これらの方法を組み合わせるとともに,年次変動に対応できる生理落果防止技術を開発することが重要である.

  • 早川 隆宏, 松田 賢一, 玉村 壮太, 中野 眞一, 中村 史也
    2018 年 17 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    ブドウ‘ルビーロマン’における花冠取り器による花かすの除去およびジベレリン処理方法が裂果発生に及ぼす影響を検討した.満開日に子房から花冠を完全に取り除いた処理区のさび果および裂果の発生率は無処理区に比べて明らかに低かった.花冠を取り除く程度は,完全に取り除いた処理区と花冠取り器を10往復程度使用し花冠を取り除く処理区でさび果および裂果の発生率に差が認められなかった.このことから,花冠取り器を10往復程度使用し花冠を取り除く省力的な方法により裂果発生を十分に軽減できると考えられた.

    一方,ジベレリン処理方法による裂果発生の関係を検討した結果,裂果の発生を軽減する効果は判然としなかった.しかし, ‘ルビーロマン’ の生産上問題となっている果皮ひび割れ症状については,ジベレリン2回処理法における第2回ジベレリン処理時期が早い処理区は,遅い処理区に比べて果皮ひび割れ症状の発生率が明らかに低かった.また,ジベレリン1回処理法の果皮ひび割れ症状の発生率はジベレリン2回処理法に比べて明らかに低かった.

    これらの結果から, ‘ルビーロマン’における花冠取り器による花かすの除去は裂果の軽減に有効であること,ジベレリン1回処理法は果皮ひび割れ症状が軽減できることが明らかとなった.

  • 熊谷 初美, 村上 政伸, 小森 貞男, 壽松木 章, 渡邉 学
    2018 年 17 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    ハイブッシュブルーベリーの夏秋季開花を夏秋季採りもしくは二季採りに応用することを目的とし,ハイブッシュブルーベリー78品種について,夏秋季開花の発生時期およびその程度を調査した.‘Bluetta’, ‘Puru’ および‘Bluecrisp’では調査期間内の発生数が多かったことから,夏秋季開花しやすい品種と考えられた.また,7月中下旬~11月上中旬に夏秋季開花が見られ,70~100 cm程度の新梢の先端で開花した.‘Bluetta’, ‘Patriot’ および‘Spartan’ではシュートおよびサッカーで,‘Bluecrisp’ ではシュートのみで夏秋季開花が発生した.夏秋季に開花した花序は,春季開花とは異なり,花房を形成せず,当年に伸長した新梢の先端部の各葉腋に1つずつ小花をつけた.また,新梢当たりの小花数は3.9~4.8個であった.2014年および2015年と比較して,夏秋季開花の発生数が多かった2013年の7月は,日中の気温がやや低く,寡日照であり,9, 10月は高温であったことから,夏秋季開花の発生と気象条件の関連が示唆された.

  • 濱野 惠, 木村 文彦
    2018 年 17 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    イチゴ種子繁殖型品種‘よつぼし’を北東北で夏秋どりに適用するため,4月下旬定植・無加温栽培を行って播種日,播種時のセルトレイの大きさ,および花成促進目的の長日処理について検討した.播種時期について,1月27日播種は5月中旬頃に頂花房が分化し,1か月おきの長日処理(24時間日長,2週間)時期に応じて累積花房数が無処理より増加したが,8月処理による花成促進効果が現れる時期は想定する作型には遅いと考えられた.2月27日播種苗は5月の長日処理にはほとんど感応せず,幼若性が推察された.6月, 7月処理で累積花房数が増加したが,収益性を考慮すると播種時期は1月中が適すると思われた.次に,セルトレイの大きさと9月以降の増収を目的とする長日処理の影響を調査するため,1月13日にセルトレイ200穴および406穴に播種し,6月, 7月, 6月 + 7月に長日処理(24時間日長,2週間)を行った.セルトレイによる定植時生育,頂花房分化時期,同じ長日処理間の花房数や収量性にはほとんど差がなかった.6月処理で9月に,7月および6月 + 7月処理で10, 11月に無処理に対して増収効果が確認されたが,長日処理の適正な時期・回数については今後さらなる検討が必要と思われた.

  • 末貞 辰朗, 臼木 一英, 室 崇人, 東野 裕広, 川城 英夫, 森田 直彦, 森永 靖武
    2018 年 17 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    温暖地におけるタマネギの直播栽培の播種時期や施肥条件の違いが収量に及ぼす影響について明らかにすることを目的として,葉数を指標に用いて生育や収量に及ぼす影響を解析した.タマネギ品種‘ターザン’を用いて播種時期と直下施肥を組合わせて直播栽培を移植栽培と比較し,温暖地における直播栽培の成立要件について検討した.その結果,倒伏期の葉数と球重との間に有意な相関が認められた.そこで,直播栽培において安定的に移植と同等の収量を得るためには,倒伏期に移植栽培と同等の葉数を確保する必要があると考え,生育期別の葉数と播種後の積算温度との間に有意な相関が認められた回帰式を用いて播種期を推定した.播種が遅れると展開葉数の減少に伴って球重が小さくなり低収になることから早晩性が‘ターザン’程度の品種では9月下旬までに播種する必要性が認められた.以上から虫害防除と窒素追肥を十分に行うことを前提に,温暖地においても移植栽培と同等の収量を得る秋播き作型の直播栽培が可能であると判断できた.また,リン酸の直下施肥の収量に及ぼす効果は,温暖地の土壌リン酸が生育の制限となりにくい褐色低地土の圃場では小さいと考えられた.

発育制御
  • 田附 明夫, 木下 嗣基
    2018 年 17 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    既報(Tazukeら, 2015)においてキュウリ植物体を暗期延長条件に置いた時に見られた果実の呼吸速度の低下のパターンは果柄部を熱環状除皮した場合のそれと類似するように思われたので,果実への光合成産物の転流の停止が生じている可能性が示唆された.本報ではこの仮説を検証するために暗期延長処理,全摘葉処理,果柄部の切断および熱環状除皮処理を行った後の果実の呼吸速度を詳細に検討した.キュウリ品種‘ときわ’および‘ときわ光3号A型’の呼吸を25°Cの環境制御室で測定した.暗期延長処理では暗期開始約12時間後に果実の呼吸速度が低下し始め,若干の移行期間の後,呼吸速度は式:y = a exp(–bt) + cによく当てはまった.ここで, tは時間, yは呼吸速度, a, b, cは定数である.他の処理でも,果実の呼吸速度は処理後若干の移行期間の後この式によく当てはまった.定数bは減衰定数であるが,暗期延長処理と全摘葉処理では約0.003 min–1で,果柄部切断と熱環状除皮処理では約0.007 min–1だった.bの値の違いは有意だった(P < 0.01).暗期延長処理と全摘葉処理のbの値がほぼ等しかったことは暗期延長処理において果実への光合成産物の転流が停止したとする見方を支持した.果柄部切断処理および熱環状除皮処理のいずれにおいても,処理後短時間で糖飢餓マーカー候補遺伝子であるCsSEF1, アスパラギン合成酵素遺伝子,CsFDI1の発現が高まった.

  • 松田 健太郎, 石井 ちか子, 馬場 富二夫, 稲葉 善太郎
    2018 年 17 巻 1 号 p. 61-72
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    ‘伊豆土肥’および土肥桜白花系統に対するシアナミド剤の効果を明らかにするために,シアナミド剤散布が開花,展葉,観賞期間および花の形質に及ぼす影響について検討した.実験1では亜主枝を用いてシアナミド剤散布時期について検討し,11月11日の濃度1%散布で‘伊豆土肥’,土肥桜白花系統ともに35日の開花促進効果が認められた.また,観賞期間についてはシアナミド剤散布の有無による差は認められなかった.実験2では立木への全面散布による開花促進効果を検討し,‘伊豆土肥’は44日,土肥桜白花系統は38日の開花促進効果が確認された.その他の結果についても亜主枝への散布とほぼ同等の効果が得られることが見いだされた.また,花の形質について検討した結果,シアナミド剤の散布により,花径には有意差は認められなかったが,花色には一部有意差が認められた.これらのことから,‘伊豆土肥’および土肥桜白花系統への11月中旬のシアナミド剤の散布により,開花促進による年内開花が可能となった.

  • 中島 拓, 後藤 丹十郎
    2018 年 17 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    エラチオール・ベゴニア ‘ネティア’への間欠冷蔵処理が開花および生育に及ぼす影響について調査した.処理は7.5 m径ポットで育苗した苗を対象に2012年と2013年の8月上旬~9月上旬にかけて50%遮光したガラス温室および冷蔵施設において行った.ガラス温室の環境条件は日平均気温23~32°C,日長12時間37分~13時間57分であった.冷蔵処理サイクルおよび冷蔵処理回数については,10°C,暗黒の冷蔵処理を2日間行った後に栽培施設下で2日間管理するサイクルを8回(2D/2D × 8), もしくは4日間行った後に栽培施設下で4日間管理するサイクルを4回(4D/4D × 4)繰り返すことで慣行栽培に比べ着花節位が低下し,3~14日早く開花することが明らかとなった.冷蔵処理温度については,冷蔵処理サイクルおよび冷蔵処理回数を4D/4D × 4とすると,10°C, 12.5°Cおよび15°Cの範囲ではどの温度でも慣行栽培に比べ着花節位が低下し,早期に開花することが明らかとなった.また,冷蔵処理温度10~15°Cの範囲では温度が高いほど開花が早くなった.草丈については,10°Cおよび12.5°Cでは草丈伸長が抑制された.

  • 福島 啓吾, 梶原 真二, 石倉 聡, 後藤 丹十郎
    2018 年 17 巻 1 号 p. 79-85
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,トルコギキョウ種子へのプライミングおよび種子低温処理が生育および切り花形質に及ぼす影響を明らかにしようとした.実験には‘レイナホワイト’のプライミング種子および無処理種子を用い,これらの種子をセル成型トレーに播種した後に10°Cの暗黒条件で0,1,3,5,7および9週間処理した.処理終了日の2012年8月8日から定植日の9月6日までなりゆきの温度条件(日最高気温は34.0~38.0°C,日最低気温は24.0~26.0°Cの範囲で推移)で育苗した.プライミング種子の発芽率は,種子低温処理5週において無処理種子と比較して高かった.プライミング種子の出芽率は,種子低温処理7および9週が0~5週と比較して同等か低かった.プライミング種子における定植時の苗の本葉2節葉身長は,無処理種子と比較して大きかった.定植から翌年3月31日まで栽培を行い,生育調査および切り花の形質調査を実施した.プライミング種子の抽苔率,発蕾率および開花率は,種子低温処理0および1週において無処理種子と比較して高く,1週以上で90%以上となった.プライミング種子に由来する苗の定植後の生育は,種子低温処理3,5,7および9週で差は見られなかったが,1週は同等かやや遅れた.プライミングに関わらず切り花形質は,種子低温処理3週以上で差がなかった.これらの結果から,トルコギキョウにおいてプライミング種子への種子低温処理は3~5週が適切であることが明らかになった.

  • 佐野 大樹, 飛川 光治, 今西 俊介
    2018 年 17 巻 1 号 p. 87-93
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    雨除け栽培トマトの放射状裂果軽減のためのCPPU 20 ppmの1果房1回散布の適期を明らかにするため,散布時における果実発達の程度と放射状裂果の軽減効果の関係を検討した.その結果,直径1.5~6.4 cmの時期にCPPUを散布した果実は,収穫時の放射状裂果の発生が無処理に比べて有意に小さかった.果房内における最大果の直径が3.0 cmをやや上回る時期には,最小果もCPPUによる放射状裂果の軽減効果の明瞭な直径1.5 cm以上に肥大するため,1回散布の適期と考えられた.実際に開花期,果房内における最大果の直径1.0~2.9 cm期,同5.0~6.9 cm期あるいは同6.0~7.9 cm期にCPPUを果房散布しても放射状裂果の発生の減少は明瞭ではなかったが,同3.0~4.9 cm期の散布により明瞭な軽減効果が認められ,くず放射状裂果発生率が平均29%から19%に低下した.果房内における最大果の直径3.0~4.9 cm期の散布処理による収穫果実数,平均果重および総収量への影響は認められなかったが,可販収量が約1割増加した.CPPU散布による放射状裂果の軽減は,表皮付近の細胞数の増加が一因と考えられた.本散布処理による開花から収穫までの日数の変化は小さく,果実の形状や食味に関する品質は同等であった.

  • 窪田 聡, 村松 嘉幸, 大島 秋穂, 小田部 桃子, 菅田 悠斗, 腰岡 政二
    2018 年 17 巻 1 号 p. 95-103
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    住宅用床暖房パネルと空気熱源式ヒートポンプ冷温水システムおよび発泡スチロール製の断熱鉢トレイを組み合わせて新しい根域温度制御装置(N.RECS)を開発した.N.RECSは根域の加温と冷却の2つのモードを持っている.加温モードでは,気温が10°Cを下回っても根域温度を約25°Cに維持することが可能で,冷却モードでは気温が40°Cを上回っても約23°Cに冷却することが可能であった.冬季に矮性ダリアの生育・開花に及ぼす根域加温の影響について検討した.根域加温を行わずに最低気温を15°C設定にした対照区に比べて,最低気温を12°C設定または無加温として根域を24°C加温した12°C/24°C区と無加温/24°C区では生育が促進された.また,12°C/24°C区と無加温/24°C区のエネルギー消費量は,対照区に比べて金額ベースで34%と69%それぞれ削減された.夏季にフクシアの生育に及ぼす根域冷却の影響について検討した.根域冷却を行わない対照区では48%の株が枯死したが,20°Cまたは23°Cに根域を冷却するとすべての株が健全に生育した.これらのことから,N.RECSは通年にわたって花苗の生育制御に活用できることが示された.

新品種
  • 仲 照史, 廣岡 健司, 辻本 直樹, 角川 由加, 虎太 有里, 後藤 丹十郎
    2018 年 17 巻 1 号 p. 105-114
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    8月上旬出荷の小ギク生産では近年,開花期の年次変動と開花期間の長さが問題となっている.そこで,開花期の年次安定性と開花斉一性の向上を目的に,8月上旬咲きの新品種‘春日の紅’を育成した.‘春日の紅’は無加温ハウスと露地における開花日の差が5日以内となることを条件に選抜された.2010~2013年の4か年に露地条件とハウス条件で栽培した‘春日の紅’は,年次と栽培条件によらず概ね8月上旬に開花した.10,15,20および25°Cの一定温度で栽培した場合,‘春日の紅’は対照品種の‘広島紅’よりも10~15°Cで展葉が遅く,花芽分化しにくい特徴が見られた.また,栄養成長期から生殖成長期のうち2週間における±3.5°Cの温度処理が,開花に及ぼす影響を調査した.栄養成長期では,対照品種‘広島紅’に比べてより高い17~25°Cの温度域で,高温ほど花芽分化節数が少なくなった.生殖成長期では,対照品種と同じ22~29°Cの範囲で高温ほど開花が遅延したが,その遅延程度は小さかった.また開花斉一性について,‘春日の紅’は8月2~5日の開花盛期の開花茎率が高く,開花始めから開花終わりまでの期間も短かった.

  • 松本 和浩, 藤田 知道, 佐藤 早希, 五十嵐 恵, 初山 慶道, 林田 大志, 塩崎 雄之輔
    2018 年 17 巻 1 号 p. 115-122
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル フリー

    省力化栽培可能な黄色い果皮で貯蔵性が良く,甘みの強い品種である‘HFF63’を育成した.DNAマーカーを利用した遺伝子型解析の結果,本品種の両親はどちらが花粉親,種子親かは明らかにできないものの,‘ふじ’および‘東光’の組み合わせであると考えられた.育成地での収穫期は11月上~中旬で,樹姿は‘ふじ’と似ており,同様の樹体管理が可能である.また,1-MCP処理を行わなくても貯蔵150日後までは1-MCP処理果実と同程度の果実品質を示し,極めて高い貯蔵能力を有することが明らかとなった.これは,果実内のエチレン濃度が低く保たれたことによる.果実の糖組成はスクロースの割合が高いことが濃厚な甘みの一因となっている.果実新鮮重は350 g程度であり,糖度は15°,酸度は0.3%前後で,貯蔵中も高い果肉硬度が維持される.品種名である‘HFF63’とは別に一定の品質を満たした果実に「きみと」の登録商標を利用する予定である.今後,省力栽培可能な高品質果実として贈答用途としての利用が期待される.

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