ミニニンジン(以下,ミニ)は五寸ニンジンに比べて栽培期間が短く,単位面積当たりの出荷数量も見込めるため,大都市近郊農業で導入する有望品目として期待されている.ミニの収量性や収益性などをさらに高めるには,最適な栽植密度について検討する必要がある.本研究では,試験1として,国内各地においてニンジンの形態調査を行った.市場で流通しているミニの形態を調査した結果,ミニを栽培し収穫する際の形態の上限の目安となる値を得た.続いて試験2として,異なる栽培期間および栽植密度におけるミニの特性を明らかにするため,ミニ品種の ‘アムス’ を用い,栽培期間および栽植密度を慣行の70日および3条(125,000株・10 a–1)に対し,栽培期間を90日,110日と延長するとともに,栽植密度を6条(250,000・10 a–1),9条(375,000株・10 a–1)と高め,収量,形態,β-カロテン含量および糖度を比較検討した.その結果,慣行の70日では,収量,形態および品質のほとんどの項目において栽植密度による影響が認められなかった.栽培期間を90および110日に延長すると,3条では最大根径が長くなりミニの形態としては低評価となったが,6および9条ではミニの形態を維持しつつ,収量,糖度およびβ-カロテン含量が増加した.そのため,密植栽培は,栽培期間を延長した際に有効である可能性が示唆された.
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