リンゴ褐斑病に対する抵抗性育種を推進するための知見を得るため,褐斑病菌の接種による抵抗性程度の評価指標作成とともに,リンゴ品種,台木,リンゴ属植物における抵抗性程度の評価を試みた.‘ふじ’,‘つがる’などリンゴ栽培品種,‘M. 9EMLA’などリンゴわい性台木,マルバカイドウ,ミツバカイドウを供試して,自然感染による褐斑病の発病程度を調査したところ,栽培品種における発病程度は高く,マルバカイドウの発病程度は栽培品種より低く,ミツバカイドウでは発病が認められなかった.リンゴ品種,台木に褐斑病菌を接種したときの発病率,発病指数,落葉率の各指標の中で,自然感染による発病程度と相関関係の強かった指標は発病指数と落葉率であり,これらは褐斑病抵抗性程度を評価識別する際の指標として有効であると考えられた.70種類のリンゴ品種,台木,リンゴ属植物に褐斑病菌を接種して,各個体の発病程度を評価したところ,各個体の発病程度と落葉率は,低い群(発病指数 < 0.3,落葉率 < 0.1),中程度の群(0.3 ≦ 発病指数 < 0.6,0.1 ≦ 落葉率 < 0.4),高い群(0.6 ≦ 発病指数,0.4 ≦ 落葉率)の3群に区別できたことから,発病指数で褐斑病抵抗性程度を識別する場合は,抵抗性 < 0.3,0.3 ≦ 中度抵抗性 < 0.6,0.6 ≦ 罹病性,と判別できるとともに,落葉率によって抵抗性程度を識別する場合は,抵抗性 < 0.1,0.1 ≦ 中度抵抗性 < 0.4,0.4 ≦ 罹病性,と判別できた.上記の指標を基にリンゴ品種,台木,リンゴ属植物における褐斑病抵抗性程度を判定した結果,タレハナカイドウ(Malus halliana),ミツバカイドウ‘サナシ61’,‘サナシ63’ (Malus sieboldii),ニッコウズミ(Malus baccata),Bracteata(Malus coronaria),Malus angustifolia(Malus angustifolia),Malus ioensis(Malus ioensis)は抵抗性,マルバカイドウ,Malus platycarpa(Malus platycarpa),Malus pratii(Malus pratii),Malus sieversii(Malus sieversii),Malus florentina(Malus florentina),M. honanensis(Malus honanensis)は中度抵抗性と判定されたのに対して,リンゴ栽培品種や‘Florina’,‘Freedom’,‘Remo’,‘Retina’などの黒星病抵抗性品種,わい性台木の‘M.9E’,‘M.26E’,‘JM1’,‘JM7’は罹病性であった.
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