園芸学研究
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2 巻, 4 号
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総説
原著論文
育種・遺伝資源
  • 田尾 龍太郎, 難波 梓, 山根 久代, 冬廣 吉朗, 渡邊 毅, 羽生 剛, 杉浦 明
    2003 年 2 巻 4 号 p. 237-240
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    ウメ(Prunus mume Sieb. et Zucc.)の大多数の栽培品種は,S-RNaseが関与する配偶体型自家不和合性を示す.ウメには,自家和合性品種も存在しており,これらの自家和合性品種は自家和合性形質の分子マーカーとして利用可能なS-RNase遺伝子(Sf-RNase遺伝子)を持つことが報告されている.本研究では,このSf-RNase遺伝子を特異的にPCR増幅するためのプライマーセットを開発した.‘剣先’からSf-RNase遺伝子の部分配列をPCRクローニングし,その塩基配列を決定した.Sf-RNase遺伝子のイントロン部位の塩基配列よりセンスプライマー(Ken2)およびアンチセンスプライマー(PM-R)を設計し,いくつかのウメ品種を用いてその有効性を検討したところ,Sf-RNase遺伝子をもつ品種でのみ増幅がみられた.今後このプライマーセットをウメの自家和合性品種の育種に利用することによって,育種にかかる時間と労力を大幅に軽減できると思われる.
  • 新野 孝男, 高野 純一, 須永 哲央, 小林 光子
    2003 年 2 巻 4 号 p. 241-245
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    ネギニラ‘なかみどり’の培養茎頂の超低温保存法を検討した.ガラス化法では,5℃,14日間ハードニングしたシュートから切り取った茎頂(長さ1 mm,直径1~1.5 mm)を0.3 Mショ糖の添加したMS培地上で5℃,1日間,前培養し,LS液で25℃,20分間処理する.その後,茎頂をPVS2液で25℃,40分間浸透脱水し,LN保存することにより,再生後80%の生存率が得られた.ビーズガラス化法においても,ビーズ作成後,PVS2液で25℃,120分間浸透脱水し,LN保存することにより,再生後80%の生存率が得られた.これらの両方法を実施するにあたり,材料の大きさ,状態を画一にすることが高い生存率を得る必須条件であった.
  • 八幡 昌紀, 岡 信孝, 國武 久登, 山口 清二, 小松 春喜
    2003 年 2 巻 4 号 p. 247-252
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    ‘晩白柚’を用いた三倍体育種を効率的に進めるために,二倍体と四倍体間での正逆交雑から得られた種子の重さとその倍数性との関係を調査した.
    ‘晩白柚’に四倍体ユズまたは四倍体ナツダイダイを交雑したところ,完全種子出現率が対照区(放任受粉果)と比較してそれぞれ48.0%と8.4%まで減少した.それらの実生の倍数性を調査した結果,三倍体と四倍体が確認され,前者の組合せからは六倍体が1個体得られた.‘晩白柚’ × 四倍体ユズでは三倍体の発生率が高く(88.0%),‘晩白柚’ × 四倍体ナツダイダイでは低かった(30.2%).二倍体 × 四倍体の両組合せから得られた三倍体と四倍体の平均種子重は,三倍体が四倍体より有意に軽いことが明らかとなった.さらに,これらの組合せから得られた不完全種子を培養した結果,得られた実生はすべて三倍体であった.
    一方,四倍体ユズおよび四倍体ナツダイダイに‘晩白柚’を交雑した結果,放任受粉果と比較して,それぞれの完全種子出現率には大きな差異は観察されなかったものの,種子重は有意に減少した.三倍体は,珠心胚由来と考えられる四倍体に混じって,それぞれの組合せで約50%の頻度で得られた.三倍体が発生した種子とそれ以外の種子の重さには有意な差異は観察されなかった.
  • 井上 栄一, 原 弘道, 阮 樹安, 佐野 真実, 月橋 輝男
    2003 年 2 巻 4 号 p. 253-257
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    中華人民共和国で生産されたニホングリはそのほとんどがおもに加工用としてわが国へ輸出されている.しかしながら,中国で育種および栽培されているニホングリ品種についてはほとんど報告されていない.本研究では,中国で育種,栽培されているニホングリ品種の来歴を報告するとともに,遺伝子マーカーを用いて中国で育種または栽培されている品種の識別を試み,その遺伝的背景について考察した.合計8種類のプライマーを用いてRAPD分析を行った結果,合計162種類の増幅断片が増幅された.これらのRAPDを用いることによってすべての品種を識別することが可能であった.日本から中国に導入されたとみられるニホングリ5品種のうち4品種は日本で保存されている同名品種と近かったが,実生による繁殖の可能性が示唆された.さらに‘森早生’では,日本で保存されている同名品種と系統樹上で同じグループに属していたものの類似度が顕著に低かった.このことから,‘森早生’が民間交流によって中国に伝播する過程で何らかの取り違いが生じたか実生で伝播した可能性が示唆された.一方,中国で偶発実生から育成されたニホングリ5品種はいずれも日本育成の古い品種に対して遺伝的な類似度が高かった.
  • 黄 建成, 田辺 賢二, 板井 章浩
    2003 年 2 巻 4 号 p. 259-264
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    アジアハス(Nelumbo nucifera),アメリカハス(Nelumbo pentapetala)ならびに種間の雑種を含むハス85品種を供試して,品種識別法としてISSRマーカーによるハス品種のDNAフィンガープリントを行った.5種類のISSRプライマー(UBC811,818,840,855,857)から品種間の多数なバンドパターンが得られた.黄花色系をもつアメリカハスはアジアハスに比べて独特な多型バンドを示し,または中国からの紅蓮および日本由来の品種も多型バンドが存在することが示唆された.さらに85品種を識別できる最少のISSRプライマーのセットを選んだ.その結果,5種類のプライマーから得られた20本のISSRマーカーを用いて85品種の識別が可能となり,各品種に特異的なDNAフィンガープリントが得られた.
  • 小林 伸雄, 森中 洋一, 半田 高, 高柳 謙治, 有隅 健一
    2003 年 2 巻 4 号 p. 265-268
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    九州霧島山系の標高別野生ツツジ集団について,形態調査で得られたデータをクラスター分析と主成分分析を用いて客観的に評価し,DNA分析の結果を重ね合わせることによって,霧島山系における標高別野生ツツジ集団の構造をより明らかにした.
    1.クラスター分析により,霧島山系の野生ツツジ集団はミヤマキリシマ,ヤマツツジおよび中間帯の自然雑種集団を中心にした3つのクラスターを形成した.葉緑体DNAパターンの分布は,ミヤマキリシマとヤマツツジのクラスターはそれぞれ両種のパターンで占められており,自然雑種のクラスターでは両種のパターンが混在した.
    2.主成分分析では,高い寄与率を示す第1主成分のみで霧島山系における野生ツツジ集団の形態的特性を表すことができ,標高別に配置すると,高山域のミヤマキリシマから中間帯の自然雑種集団,そして山麓域のヤマツツジにかけて連続的にこの第1主成分得点が増加した.また,葉緑体DNAパターンの分布から,第1主成分と葉緑体DNAの変異の関連性が示唆された.
繁殖・育苗
  • 近藤 哲也, 高橋 孔明, 深井 誠一, 石本 里美, 下村 孝
    2003 年 2 巻 4 号 p. 269-274
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    グランドカバー植物として有望なノシランの種子発芽特性,貯蔵方法および実生の初期生育に及ぼす施肥量の効果を検討した.ノシラン種子は,12月末の種皮が緑色の時期でも翌年1月の青色の時期でも,光の有無にかかわらず10 ℃と35 ℃ではほとんど発芽せず,20~30℃で高い発芽率を示した.そのために,冬期に成熟した種子を取り播きしても気温が上昇する6月頃までは出芽しなかった.無剥皮種子は剥皮した種子に比べて出芽速度がやや遅れ,出芽率も84 %に低下したが,実用上は問題ないと思われた.4 ℃で高湿度条件に貯蔵しておけば,剥皮種子なら6か月間,無剥皮種子でも1か月間は,発芽率を維持できた.湿ったミズゴケに包んで4 ℃に貯蔵しておいた剥皮種子を適温に近い6月上旬に播種すると7月中旬から一斉に出芽した.2月に15 ℃以上に加温した条件下で播種すると出芽が早まり,5月に実生を移植して一株当たり窒素で約50 mg以上の施肥を行うことで12月には出荷可能な大きさの苗を育成できることが示された.
栽培管理・作型
  • 小泉 丈晴, 剣持 伊佐男, 町田 安雄
    2003 年 2 巻 4 号 p. 275-278
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    アスパラガス‘グリーンタワー’の1年生株を用いた養成時の生育と促成栽培における若茎の収穫量および品質の雌雄間差を検討した.
    1.アスパラガスの養成株における雌雄間の形態的な差異として,雌株は雄株に比べて草丈および第1側枝の位置が高い傾向がみられた.雌の1年生株は,果実の着生が少なく,雌雄間での発生茎数の差がなく,雌株は雄株に比べて茎径が太く成育が旺盛であった.
    2.1年生株の促成栽培では,若茎発生数には雌雄間差はなく,雌株は1本重が重いL規格の発生数が多く,若茎重の合計で雄株より優った.
    3.雌株が雄株に比べ若茎頭部のしまりが良く,りん片葉のアントシアニン発生が少なかった.
    4.以上のことから,1年生株を用いた促成栽培では,雌株を判別して用いた方が有利であると判断された.
  • 奥田 均, 米本 仁己, 高原 利雄
    2003 年 2 巻 4 号 p. 279-281
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    樹別交互結実栽培における遊休年のせん定時期を明らかにするため,‘原口早生’を供試して2月中旬あるいはほう芽期の3月中旬に樹冠全面の1年生枝をすべて間引き2,3年生株を設定し,発芽率ならびに生育を無せん定樹と比較した.その結果,せん定は発芽を著しく増加させ,ほう芽期の3月せん定は無せん定の7倍以上に相当する発芽をもたらした.春枝の長さ,葉色には処理間に差がなかったことから,ほう芽期のせん定がこの結実管理法には適当と判断された.また,発芽前後の処理枝皮質内の成分を比較したところ,せん定は時期に依存してデンプンの著しい減少,スクロースの減少ならびに発芽前の窒素濃度の増加をもたらし,発芽に向けた準備の様相が示唆された.
  • 平間 信夫, 水澤 秀雅, 松浦 誠司
    2003 年 2 巻 4 号 p. 283-287
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    ハウス内の温度と湿度がキュウリの生育に及ぼす影響を明らかにすることを目的として,午前中を中心に昼の温度と相対湿度を30 ℃・60 %と25 ℃・40 %の2処理区を設けて抑制栽培を行った.さらに,摘心栽培,摘心摘花栽培およびつる下ろし栽培においては,30 ℃・60 %区で初期の果実肥大が促進され,第3次以降の側枝の発生が抑制された.一方,25℃・40 %区では果実肥大が緩慢となり,側枝の発生が促進され,その結果として全期間合計の収穫果実本数が増加した.しかし,生育後半の低温期において果実の上物率が低下した.
  • 本間 英治, 遠藤 正昭, 高橋 秀典, 平 智
    2003 年 2 巻 4 号 p. 289-292
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    雌雄異株で受粉が必要なために,収量が安定しないヤマブドウの安定生産を目指して,花粉を有機溶媒の中に貯蔵して翌年の人口受粉に利用する方法を検討した.
    採取時の発芽率が50.6 %の花粉を−20℃の低温下と2種類の有機溶媒中に貯蔵した.低温下では貯蔵後189日,アセトン貯蔵区では117日で花粉の発芽力がほぼ失われたが,ジエチルエーテル貯蔵区では貯蔵1年後でも22.8 %の発芽率を保持した.
    ジエチルエーテル中に貯蔵した花粉と当年に採種した新鮮な花粉をそれぞれ人工受粉し,結実率と果実品質に及ぼす影響を比較した結果,ジエチルエーテル貯蔵区の結実率は新鮮花粉受粉区に比べてやや劣ったが,十分な結実率が得られた.また,収穫時の果実品質には差が認められなかった.
  • 中島 譲, 森田 隆史, 片岡 圭子, 札埜 高志, 河瀬 晃四郎
    2003 年 2 巻 4 号 p. 293-296
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    栽植密度の高い葉根菜栽培にマルチを摘用するため,マルチの設置と播種作業を同時に行うことができるシードテープと紙マルチを組み合わせた資材の使用を試みた.試作紙マルチを用いた栽培によってコマツナおよびカブでは90 %を超える出芽率が得られ,ハツカダイコンおよびニンジンでも80 %以上の出芽率が得られた.また,試作紙マルチを用いたコマツナ栽培では,シードテープを用いて播種した無マルチ区に比べて生育が促進され,収量も増加する傾向にあった.さらにこのマルチを用いた栽培により,除草作業に要する時間は約1/10にまで短縮された.
  • 安藤 愛, 和田 光生, 平井 宏昭, 阿部 一博
    2003 年 2 巻 4 号 p. 297-301
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    ロックウール栽培トマトにおいて,ポットサイズごとの最適育苗日数を明らかにするとともに,最適育苗日数を決定している要因を調べるために,10 cm角で高さ5 cm(大),5 cm角で高さ10 cm(縦長),5 cm角で高さ5 cm(小)のサイズの異なる3種類のロックウールポットを用いて育苗した.苗の生育は,大ポットで最もよく,縦長ポットでは生育が抑制された.最適と考えられた育苗日数は,ポットサイズにより異なり,大ポットおよび縦長ポットでは24日,小ポットでは14日あるいはそれより短いと考えられた.最適育苗日数を決定する要因として,根の活性は関与しておらず,ポット内根密度が強く関与していることが示唆された.
  • 稲葉 善太郎, 大城 美由紀
    2003 年 2 巻 4 号 p. 303-306
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    キンギョソウ品種‘メリーランドピンク’と‘ライトピンクバタフライII’を10月に播種し,定植後から加温開始時期と夜温を組み合わせて栽培した.‘メリーランドピンク’では同一夜温において加温開始を早めることで開花が早くなった.切り花品質からみて,‘メリーランドピンク’では11月中旬からの夜温11℃が適していた.‘ライトピンクバタフライII’では11月中旬から加温を開始して夜温16℃とすることで開花が早くなった.いずれの品種も夜温が高いほど開花が早くなった.いずれの品種も夜温が高いほど開花が早くなった.‘メリーランドピンク’と‘ライトピンクバタフライII’ともに夜温が低いほど開花時の草丈が高くなった.
  • 浜本 浩, 嶋津 光鑑, 池田 敬
    2003 年 2 巻 4 号 p. 307-310
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    1~2日間隔の暗期中断が数種の葉菜類の生育に及ぼす影響について検討した.実験1では,ホウレンソウに対して0.4~1.2 μmol・m−2・s1の白熱灯による深夜の暗期中断を毎日51分(毎日処理)か,月,水,金曜日に2時間(間隔処理)行った.実験2では,ホウレンソウとコマツナを白熱灯を用い1.0~1.5 μmol・m2・s1の強度で間隔処理を行った.実験3では,ホウレンソウ,サラダナ,コマツナに対して,LEDを用いて0.5~1.8 μmol・m2・s1の強度で間隔処理を行った.
    実験1では処理26日目で毎日処理区の22 %の株に抽だいを確認したが,間隔処理区では確認できなかった.実験2と3では,白熱灯およびLEDによる間隔処理でホウレンソウの生育が抽だいを抑えつつ促進され,無処理の対照区に比べて草丈,葉数,地上部乾物重が大きくなった.しかし,サラダナおよびコマツナに対しては,間隔処理による生育促進はみられなかった.
  • 大川 浩司, 菅原 眞治, 大竹 良知
    2003 年 2 巻 4 号 p. 311-314
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    ブルームレスキャベツ品種‘優緑’の生育,収穫物特性,および葉面の可視特性,物理的性質,微細構造をブルームを生じる一般的な品種‘錦秋’と比較検討した.
    走査型電子顕微鏡で観察した結球葉面は,‘錦秋’が層状の結晶状物質で覆われていたのに対し,‘優緑’は非常に滑らかで結晶状物質はほとんど見られなかった.外葉および結球表面葉の葉色は,‘優緑’が‘錦秋’と比べてL*値(明度)とa*値(色相)が小さく,b*値(彩度)が大きかった.結球葉の葉色には,差異はみられなかった.外葉,結球葉の光沢度(GS75˚)は表裏とも‘優緑’が‘錦秋’と比べて高かった.水滴滴下による外葉,結球葉の接触角θは,‘優緑’が91~104˚と‘錦秋’が130˚前後であるのに比べて小さかった.なお,‘優緑’の結球重は‘錦秋’と比べてやや軽かったが,その他の生育,収穫物特性,病害虫の発生に大きな差異はなかった.‘優緑’のこの葉面の特性は,色と光沢による差別化が図れ,農薬散布量低減の可能性のある有利な形質と考えられる.
  • 梶原 真二, 勝谷 範敏
    2003 年 2 巻 4 号 p. 315-318
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    ロックウール栽培での同化専用枝を持つ切り花バラ生産用の仕立て法において,台木の種類,仕立て法および台木同化専用枝の有無が切り花本数および切り花品質に及ぼす影響について‘ローテローゼ’を用いて検討した.
    台木の種類および台木同化専用枝の有無にかかわらず,ハイラック仕立て法の総切り花本数がアーチング仕立て法よりも多い傾向にあった.総切り花本数は,オドラータ台木を用い,その台芽を折り曲げて同化専用枝とした場合には,ハイラック仕立て法およびアーチング仕立て法ともに挿し木苗よりも多くなった.しかし,ノイバラ台木で台木同化専用枝を持たせると,いずれの仕立て法ともに台木同化専用枝を持たない場合よりも総切り花本数が少なくなった.切り花長はオドラータ台木を用いて台木同化専用枝を持たせると,ハイラック仕立て法およびアーチング仕立て法ともに挿し木苗よりも大きくなった.しかし,ノイバラ台木の同化専用枝を持たせたハイラック仕立て法では,台木同化専用枝を持たせない場合よりも切り花長が小さくなった.
発育制御
  • 杉浦 広幸, 藤田 政良
    2003 年 2 巻 4 号 p. 319-324
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    夏秋ギクを露地で栽培するため,エセフォン処理が生育および形態に及ぼす影響を検討した.エセフォン濃度を0~1,000 mg・liter1と変えて散布したところ,‘窓辺’と‘サマーイエロー’は,エセフォン200~400 mg・liter1の低濃度で,花芽分化抑制効果が高かった.エセフォン散布により葉数が増加する期間の長さが,高濃度散布区が低濃度区に比べ延長する品種と変わらない品種がみられた.節間長の長い品種は,短い品種に比べ,エセフォン200 mg・liter1散布により長い切り花が得られた.花芽分化開始後のエセフォン200 mg・liter1と1,000 mg・liter1散布で,供試した品種の葉数と切り花長の増加はみられず,奇形の切り花がみられた.
    以上より,夏秋ギクを露地でエセフォン散布により採花するには,低濃度エセフォン散布により花芽の分化初期段階が抑制されやすい節間長の長い品種を用い,花芽分化開始後のエセフォン散布を避ける必要があった.
収穫後の貯蔵・流通
  • 長内 敬明, 元村 佳恵
    2003 年 2 巻 4 号 p. 325-328
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/02/19
    ジャーナル フリー
    リンゴ‘ふじ’の臭化メチルくん蒸処理による果実内褐変の発生を調べた.その結果,臭化メチル濃度を38 g・m3,48 g・m3 および58 g・m3 と変えてくん蒸処理した後に通気し,0 ℃7日間と15 ℃10日間の密閉貯蔵を行ったところ,果心内褐変がわずかに発生し,密閉容器内の二酸化炭素濃度は臭化メチルのくん蒸処理濃度が高いほど高くなった.果実を入れた密閉容器に21 g・m3の臭化メチルを注入し,15℃で10日間貯蔵したところ,すべての果実で褐変が発生した.この結果から,臭化メチルのくん蒸処理濃度にかかわらず,処理直後の通気が果実内褐変の軽減に有効であることが明らかになった.容器内の酸素濃度はやや減少したものの,二酸化炭素濃度の上昇が著しかった.滴定酸度と,リンゴ酸含量が有意に低下した.以上の結果,臭化メチルは呼吸に関わる有機酸代謝に影響を及ぼしていると考えられた.
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