園芸学研究
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4 巻, 4 号
DECEMBER
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総説
原著論文
育種・遺伝資源
  • 八幡 茂木, 佐藤 三郎, 小原 均, 松井 弘之
    2005 年 4 巻 4 号 p. 379-384
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    三倍体ビワの育種を進めるに当たり, ‘田中’ (二倍体), ‘田中’と四倍体‘田中’の交雑実生の三倍体および四倍体‘田中’の染色体数を確認し, その形態と結実性の差異を調査した. また, 四倍体ビワと二倍体ビワを正逆交雑した場合の結実性と三倍体ビワの出現率を調査した.
    1. ‘田中’ (二倍体), ‘田中’の三倍体および四倍体‘田中’の各倍数体間には, 葉の大きさと厚さ, 気孔の大きさ, 花器の大きさ, 花弁の大きさおよび花粉粒直径に関して有意な差がみられ, 倍数性が高くなるに従ってそれらの量的な形質が増加した.
    2. ‘田中’ (二倍体) ならびに‘田中’から作出された三倍体および四倍体系統の花房着生率はいずれもほぼ70%であり, 倍数体間に大きな差異はみられなかった. 花粉発芽率は, ‘田中’とその四倍体系統では95%と高かったものの, 三倍体系統では8%と著しく低く, その結実率も0.1%と極めて低かった.
    3. 四倍体ビワと二倍体ビワを正逆交雑した場合, 結実率は44~74%であった. また, 獲得された実生の三倍体率は正逆交雑間に大差はみられず, 92~100%と高かった.
  • 鄭 澤宇, 田村 義保
    2005 年 4 巻 4 号 p. 385-390
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    本研究ではハナハス花弁先端部の形状を定量的にデータ化し, 品種識別分析を行った. 花弁のデジタル写真から先端部の輪郭線を抽出し, P型フーリエ記述子を計算するためのソフトウェアも開発した. ハナハス花弁先端部分の輪郭線の特徴をP型フーリエ記述子で抽出し, 抽出した記述子に対し, 主成分分析を行い, 必要な主成分得点を用いてSVM及び2次判別手法によって品種識別を行った. 7種類のハナハスに関する認識率は78%に達した. フーリエ記述子の次元数により識別結果への影響も調べた結果, 認識率はフーリエ記述子の次元数によって必ずしも増加しなかった.
  • 岩本 英伸, 石田 豊明
    2005 年 4 巻 4 号 p. 391-395
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    雌雄同株を基本とするニガウリの‘青中長’系から雄花を欠く雌株が得られたので, 雌性型系統の維持法について検討した. 雌株の側枝への硝酸銀の葉面散布で両性花が誘起された. 誘起された両性花は雌花よりも子房や花弁が大きく, その花粉の機能は正常であった. 葉面散布については, 茎頂部を含む側枝先端の5葉に250mg・L-1の硝酸銀水溶液, または先端の3葉に400mg・L-1の水溶液を散布することで, 10個程度の両性花が得られることが確かめられた. 処理後の生育気温が昼間35℃, 夜間25℃でも昼間25℃, 夜間15℃でも両性花の開花数に違いはなかった.
繁殖・育苗
  • 高橋 和彦, 熊谷 寛, 石川 林, 荻原 勲
    2005 年 4 巻 4 号 p. 397-400
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    サギソウ自生地においてサギソウプロトコームの生存率と生育した個体の球根形成率を高め, 実生育成する方法を検討した.
    3.5号鉢内の非滅菌用土においてサギソウプロトコームの生存率および球根形成率を高めるには, サギソウプロトコームをゲル被覆し, 菌根菌を接種して一定期間培養した後に非滅菌用土に設置する実生育成法に効果が認められた. 菌根菌接種から設置までの培養日数は14日~42日間が適すると考えられた.
    そこで, 菌根菌を接種したゲル被覆サギソウプロトコームを菌根菌接種28日後にサギソウ自生地に設置して98日後の生育状況を調査したところ, 菌根菌無接種区では全く生育せず, 菌根菌接種区のみ生育が認められた. とりわけ, 設置したプロトコームの生存率は46.1%となり, 球根形成率も53.0%となった. このことから, 菌根菌接種ゲル被覆サギソウプロトコームによるサギソウの実生育成法は自生地においても高い効果を示すことが明らかとなった.
    しかし, サギソウ自生地で形成された球根重はかなり小さいことから, 翌年もこの球根から発芽した個体が順調に生育するかどうかをさらに検討する必要がある.
  • 岩本 英伸, 石田 豊明
    2005 年 4 巻 4 号 p. 401-404
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    ニガウリの採種直後の新種子は出芽が不揃いになる. このような種子に対するエセフォン処理の出芽促進効果を水浸漬処理, ジベレリン処理, 種子割り処理および貯蔵種子との比較で調査した. ‘青中長’の採種2週間後の無処理種子は播種8日後から出芽が始まり, その80%が出芽したのは17日後であった. 一方, エセフォン200ppmあるいは1000ppm水溶液に12時間浸した種子は, 5日後から出芽が始まり8日後には80%が出芽し, 水浸漬処理やジベレリン処理, 種子割り処理よりも出芽が促進された. また, エセフォン1000ppm水溶液に浸した種子は7か月間貯蔵した種子と同様に出芽し, その後の苗の生長も正常で, 実用的効果が確かめられた. さらに, 特性の異なる5系統の新種子を供試し, エセフォン処理の同様な出芽促進効果を確かめ, ニガウリ新種子の休眠打破に及ぼすエセフォンの効果が系統特異的でないことを明らかにした.
土壌管理・施肥・灌水
  • 今井田 一夫, 中村 雅亘, 鈴木 亮, 高橋 明子, 福井 博一
    2005 年 4 巻 4 号 p. 405-410
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    循環式Ebb & Flow方式でのミニバラ鉢物生産において, 栽培期間の気温と生育との関係および植物体の窒素吸収特性について調査した. 栽培は2001年9月21日~1月15日 (秋栽培), 2002年2月5日~5月13日 (春栽培), 2002年6月17日~8月19日 (夏栽培) に行った. いずれの栽培区も栽培終了時の日積算温度は1700~1900℃とほぼ同じであり, 植物体乾燥重と日積算温度との間には有意な相関関係が認められた. 乾燥重増加量と植物体吸収窒素量とは一次回帰式で表現でき, ミニバラは栽培時期および生育ステージにかかわらず生長量に応じて常に一定量の窒素が吸収されていた. 植物体吸収窒素の総量は, 各栽培区とも80~95 mgの範囲で大きな差は認められなかったが, 施与窒素量は大きく異なり, 夏栽培区では130 mgであったのに対して, 秋栽培区では180 mg, 春栽培区では240 mgと著しく多かった. 各栽培区ごとの植物体窒素吸収効率は, 夏栽培区が68%と著しく高く, 次いで秋栽培区の41%, 春栽培区の34%の順であった. 鉢内の土壌溶液内窒素量は, 秋栽培区および夏栽培区では期間を通じて1鉢当たり8 mg前後および4~5 mg前後で一定していた. これに対して春栽培区では栽培初期から1鉢当たり12 mgと高く, その後15 mg以上に上昇し, 鉢内土壌への窒素集積が推定できた.
  • 白岩 裕隆, 鹿島 美彦, 井上 浩, 板井 章浩, 田辺 賢二
    2005 年 4 巻 4 号 p. 411-415
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    初夏どりネギ栽培において, 抽苔を抑制する肥培管理に資するため, 花芽分化の時期に窒素量を変えて液肥処理を行い, 植物体の窒素レベル, 抽苔および収量に及ぼす影響について調査した. 本作型では, 2月中旬頃に花芽分化が開始することが明らかとなった. この時期に窒素量を変えて液肥処理を行った結果, 処理濃度に伴い, 植物体の窒素レベルは高くなった. 植物体の窒素レベルは, 抽苔率および収量に影響を及ぼし, 花芽分化を抑制する窒素レベルには, 閾値があることが示唆された. 以上の結果, 本作型では, 花芽分化時期の肥培管理は, 抽苔抑制および多収のために重要であると考えられた.
栽培管理・作型
  • 浅田 武典, 堀田 拓人
    2005 年 4 巻 4 号 p. 417-421
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    リンゴ3品種‘ふじ’, ‘JG’, ‘SD’の無せん定樹とせん定樹を供試し, スパーを中心とする結果枝の長さ別および発生部位別構成割合に及ぼす品種とせん定の影響について検討した.
    せん定樹における長枝 (10cm<) とスパー (5cm≥) の構成割合は, ‘ふじ’, ‘JG’, ‘SD’でそれぞれ25.3%と66.3%, 26.0%と71.0%および13.0%と81.1%であった. ‘SD’のスパー率は他の2品種より高く, 無せん定樹では約90%に達した. ‘ふじ’と‘SD’では, スパー率はせん定樹の方が無せん定樹より低かった. 長枝の頂生とえき生別構成割合は, ‘ふじ’, ‘JG’, ‘SD’でそれぞれ13.0%と12.4%, 13.2%と12.8%および9.8%と3.7%であった. ‘SD’では, 他の2品種より頂生とえき生の長枝率とも低い傾向を示した. せん定樹における頂生スパーとえき生スパーの構成割合は, ‘ふじ’, ‘JG’, ‘SD’でそれぞれ18.3%と48.1%, 21.9%と49.3%および46.1%と35.1%であった. せん定樹は無せん定樹に比べ, ‘ふじ’と‘JG’では, 水平枝と下向き枝において, ‘SD’では下向き枝において頂生スパー率が低くえき生スパー率が高い構成になった. せん定作業が, 長枝率を高めることにより樹勢を維持し, また頂生スパー率を下げてえき生スパー率を高めるように行われていることが示唆された.
  • 前田 隆昭, 米本 仁巳, 村田 達郎, 奥田 均, 萩原 進
    2005 年 4 巻 4 号 p. 423-427
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    ブドウサンショウの着果数の向上を目的とした技術開発に用いる基礎的データとして, 生理的花芽分化期を, 当年生未結果枝を穂木として台木に接ぎ木することにより調査した. すなわち, 6月以後の異なる時期に採取した枝を接ぎ木し, その後に発生する新梢の先端に着生する花芽を観察した. また, 形態的花芽分化期を6月から翌年3月までに採取した春芽の頂芽と腋芽を顕微鏡観察することで調査した. 2004年における和歌山県清水町の12年生樹の生理的花芽分化は6月下旬から7月上旬に起こっているものと考えられた. 同樹の形態的花芽分化は7月から8月に見られ, その後花房中の小花数は一定で推移し, 発芽直前の翌年3月に急増した.
  • 高田 大輔, 内倉 康幸, 今井 理夫, 福田 文夫, 笹邊 幸男, 藤井 雄一郎, 大塚 雅子, 久保田 尚浩
    2005 年 4 巻 4 号 p. 429-433
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    モモの成熟果の果肉が水浸状になって褐変する“あん入り症”について, その特徴ならびに障害発生の品種および年次間差などを調査した. 障害発生率は‘川中島白桃’, ‘紅清水’および‘華清水’で高かった. ‘華清水’では発生率が年によって変動した. 障害発生は, いずれの品種も縫合線の反対側に多く, 側面部がこれに次ぎ, 縫合線側で少なかった. 障害果は正常果よりも果実重が優れ, 全糖, スクロース, ソルビトール, 水溶性ペクチンおよび全フェノールの含量が多い一方, 果肉硬度, 全アミノ酸含量および塩酸可溶性ペクチン含量が少なかった. 糖含量は果実の部位によって異なり, 側面部で最も多く, 縫合線の反対側がこれに次ぎ, 縫合線側で少なかった. 障害果は果実が収穫熟度に達して初めて認められた. 以上の結果から, モモの“あん入り症”は他産地で報告されている“みつ症”や“果肉褐変症”と同一の障害であると考えられ, 共通の用語として“水浸状果肉褐変症”を提案した.
発育制御
  • 上町 達也, 西尾 敏彦
    2005 年 4 巻 4 号 p. 435-438
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    額咲き型品種における装飾花の着生の仕組みを解明するために, アジサイ (Hydrangea macrophylla) ‘純白ガクアジサイ’およびヤマアジサイ (H. serrata) ‘紅’を用いて, 額咲き型花房における花序構造と装飾花の着生との関係を調査した. 額咲き型花房の装飾花の着生数に影響を及ぼす花序構造の変化には2つの型が認められた. 1つ目の型では, 1花序あたりの小花の着生数が多く, さらに花序軸の節間が伸長していた. そのような花序では第3, 4節位の2次花序にも装飾花が着生した. 花序構造の変化の2つ目の型では, 第1, 2節位の2次花序に着生する3次花序において, 側生花序の着生パターンに変化がみられた. そのような花序では装飾花の着生が不安定となった.
収穫後の貯蔵・流通
  • 艾乃吐拉 木合塔尓, 壽松木 章, 小森 貞男
    2005 年 4 巻 4 号 p. 439-443
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    エチレン作用阻害剤の1-MCPが我が国のリンゴ果実の貯蔵性に及ぼす影響について, 早生品種の‘さんさ’, 中生品種の‘ジョナゴールド’および晩生品種の‘ふじ’の収穫適期の果実を用いて検討した. その結果, 3品種とも1-MCP曝露処理により果実のエチレン生成は顕著に抑制されたが, 貯蔵品質に及ぼす効果は品種により異なった. 早生品種の‘さんさ’では, リンゴ酸含量の低下はやや抑制したものの, 果肉硬度の低下は抑制せず, 鮮度保持効果は処理後1か月程度であった. また, 1-MCP処理は収穫後3日以内に行わないと効果が認められなかった. それに対し, 中生品種の‘ジョナゴールド’では収穫当日処理から収穫後7日目処理まで, 果肉硬度, リンゴ酸含量とも処理後2か月まで保持効果が認められた. 特に, 果皮の油あがりが顕著に抑制された. 晩生品種の‘ふじ’では, ‘ジョナゴールド’と同様, 1-MCP処理果実は貯蔵後2か月目まで収穫時の硬度を維持しており, また, みつ入りも当日処理では2か月後まで, 収穫後3日目および7日目処理でも対照区より多く維持する傾向にあり, 鮮度保持効果が認められた. この結果は, 従来CA貯蔵など長期貯蔵が困難であった暖地型の完熟‘ふじ’果実の長期鮮度保持が可能になることを示しており, 今後の貯蔵技術に大きな影響を及ぼすことが示唆された.
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