園芸学研究
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4 巻, 1 号
APRIL
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総説
原著論文
育種・遺伝資源
  • 霞 正一, 高津 康正, 鈴木 一典, 郷内 武, 野木 光子, 山田 哲也, 眞部 徹
    2005 年 4 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/28
    ジャーナル フリー
    グラジオラスの木子を無菌培養して得られた根片を外植体として, MS培地にNAAの単独添加区でカルスと不定胚, NAAとBAPの両方の添加区でカルスと不定芽が形成された. 5mg・liter-1NAAと5mg・liter-1BAPの両方を添加した区で最も不定芽形成率が高かった. この不定芽をMS培地に継代培養することで植物体が再生し, 球茎を形成した. この球茎を低温処理して休眠打破後, 圃場で栽培した結果, 再生個体の茎葉の形態, 開花様相は元植物と同一であった. また, 根片外植体からの不定芽形成には品種間差異が認められた.
  • 徳永 忠士, 新居 美香, 津村 哲宏, 山尾 正実
    2005 年 4 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/28
    ジャーナル フリー
    三倍体の無核スダチ育成を目指し, 1992年に四倍体スダチと二倍体スダチで297花の交配を行い, 50個体の三倍体を得た. 三倍体の選抜にはフローサイトメーターを用いた. 二倍体を種子親に用いた場合は不完全種子が形成され, 三倍体はほとんど得ることが出来なかった. 四倍体を種子親に用いた場合は完全種子が形成され, あるがある程度の三倍体を得ることができた. それらの中から‘徳島3X1号’を選抜し, 種苗法に基づき品種登録された. ‘徳島3X1号’の果肉は鮮やかな緑色で種子はなく, 果汁は豊富である. さらに, 今までのスダチで最も早く収穫することができ, 高品質果実生産が可能な早生スダチとして期待されている.
    三倍体の作出は, スダチのみならず他の香酸カンキツにおいても無核品種を育成する最も有効な方法の一つであると思われる.
繁殖・育苗
  • 後藤 丹十郎, 藤井 一徳, 元岡 茂治, 小西 国義
    2005 年 4 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/28
    ジャーナル フリー
    熱融着性ポリエステル繊維で固化した培地(固化培地)がシュッコンカスミソウの発根および移植後の生育に及ぼす影響を調査した. 固化培地は培地組成にかかわらず, 発根率に影響を及ぼさなかった. また, 固化培地は根鉢形成していなくても崩れなかった. 固化培地は土壌に押し込んでも崩れないので植えやすかった. 固化培地を用いても, シュッコンカスミソウの生育および切り花品質に影響を及ぼさなかった. 多肉根の形成も抑制しなかった. 以上から, 固化培地を用いることにより根鉢形成前のセル苗を移植でき, 結果として移植適期が拡大した.
  • 古谷 博, 細木 高志
    2005 年 4 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/28
    ジャーナル フリー
    サクラソウの組織培養による種苗増殖技術を確立するため, 葉および根組織切片からの植物体再生について検討し以下の結果を得た.
    1. 園芸品種の葉切片を, 4.44×10-6M BAと5.3×10-7M NAAを添加した1/2MS培地に置床して培養すると再生植物が得られたが再生率の品種間差が大きかった.
    2. 葉切片から得たin vitro再生植物の根組織切片を外植体とし, 10-6M BAを添加したMS培地に置床して培養すると高率にカルスが得られた.
    3. 形成した不定芽は, 植物生長調節物質を添加しない培地に移植して継代培養すると5~6本のシュートの伸長とともに発根が認められ再生植物となった.
    4. 培養条件は, 20~25℃が適温で, 暗黒下より照明下の方がカルスから形成した不定芽の伸長が良かった.
    5. 培養苗は, バーミキュライトを詰めた育苗器内に仮植した後, 培養土を用いてポット植えすることにより効率良く順化できた.
土壌管理・施肥・灌水
  • 島田 智人, 六本木 和夫, 浅野 聖子
    2005 年 4 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/28
    ジャーナル フリー
    高樹齢化により収量性が低下したニホンナシ‘幸水’園の収量と根重量の関係を調査するとともに, 省力的な穴掘り機械を用いた土壌中層への堆肥の局所施用が, ‘幸水’の収量性および根の生育に及ぼす影響を検討した.
    1. 埼玉県内褐色低地土壌の‘幸水’成木園10園について, 収量と根重量を調査したところ, 直径1mm未満の細根重量と収量との間に有意な正の相関関係が認められた.
    2. 収量, 根重量が少なかった園の‘幸水’に対して, 穴掘り機械を用いて穴を掘り, 1穴当たり20 literの堆肥を土と混和せず局所施用したところ, 対照区と比較して処理1年目から果実肥大が良好となり収量が増加し, その後, 処理2年目, 3年目および4年目においても同様に対照区と比較して収量が高まった. また, 堆肥を施用した穴を翌年から4年後まで各年掘り返し, 採取した根の状態を根量解析ソフト‘RHIZO’を用いて調べた結果, 施用3年後までは堆肥を局所施用した箇所の根は, 特に直径0.5mm以下の細根の長さが対照区に比べて平均で3倍程度と著しく増大することが明らかになり, 施用4年後の細根長は前年より少なくなったが対照区と比較しては多かった.
    3. 堆肥を根域に直接投入することの有効性を調べるために, 10年生‘幸水’に対して上記と同様な位置に穴を掘り, 堆肥を施用した区とそのまま土を埋め戻した区の根の発生を調査した. 埋め戻し区では処理1年後, 2年後とも細根の根長は無処理区と同程度であったが, 堆肥局所施用区では処理2年後には大幅に増加した.
    4. 以上のことからニホンナシの収量と細根重量との間には相関関係が得られ, 収量性の低下した樹に対して, 穴掘り機械を用いて堆肥を局所施用することによって, 細根長が増加し, 果実肥大量の増加などの増収効果が継続的, かつ省力的に得られることが明らかになった.
栽培管理・作型
  • 東出 忠桐, 笠原 賢明, 伊吹 俊彦, 角川 修
    2005 年 4 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/28
    ジャーナル フリー
    傾斜地トマト栽培で問題となる土揚げ作業を省略し, 土壌病害を防ぐために傾斜地用養液栽培システムを開発した. 圧力補正機能付の点滴チューブを傾斜地において等高線方向に配置した場合, 給液中, 定常状態での吐出速度には位置的な差異はみられなかったが, 給液停止後チューブ内の水が低い位置から吐出した. 一定水圧以下になると吐出が停止する点滴器具を用い, チューブ間の高低差に起因するチューブ内水圧の差が停止圧以内になるように配管を逆止弁などで分割したところ, 給液停止後の吐出はなくなった. 傾斜地に等高線方向にロックウールベッドを配置し, 原水圧で培養液を給液する傾斜地養液栽培システムを試作して, トマトを栽培したところ, 位置的に高いベッドよりも低いベッドの方において果実収量が多かった. 同装置で原水圧を十分に高く設定してトマトを栽培したところ, 位置的な収量の差はみられなかった. この傾斜地養液栽培システムを改良し, 圃場の傾斜によって排液を回収し, アスピレーターにより無動力で再混入させる閉鎖系システムを作成した. 約7ヶ月間トマトを栽培し, 10aあたり12.8トンの収量が得られた.
  • 猪俣 雄司, 工藤 和典, 和田 雅人, 増田 哲男, 別所 英男, 鈴木 邦彦
    2005 年 4 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/28
    ジャーナル フリー
    カラムナータイプ‘メイポール’を用い, 台木の違いと樹体生育, 果実生産および乾物生産力特性について検討した.
    5年生の樹高, 樹冠幅, 幹断面積, 新梢本数および新梢長は, マルバカイドウ, M.26, M.27の順に大きく, M.27では4年生以降から生育が鈍化した. 花芽着生はM.26とM.27で多かった. 5年生樹の新梢中位葉の葉身長は, M.27で短くなった.
    高さ毎側枝長および葉面積は, マルバカイドウ, M.26, M.27の順で多く, 逆に相対光量子量は少なかった. 1樹および10a当たり収量はマルバカイドウ, M.26, M.27の順で多く, 果実生産効率はM.27, M.26, マルバカイドウの順で多かった. 果実重は, マルバカイドウよりもM.26, M.27で重かった.
    年間乾物生産量は, マルバカイドウに対して, M.26で40%, M.27で23%であった. 器官別分配率は, わい化度の強い台木ほど果実に高まり, 枝幹部や太根では減少した.
    葉乾重当たり総乾物重に差はなかったが, 葉面積当たり総乾物重, 並びに葉乾重および葉面積当たり果実乾物重は, M.27, M.26, マルバカイドウの順で高かった. 以上のことから, ‘メイポール’において, 5年生樹までは, わい性台木を使用した場合, 普通品種と同様なわい化効果が得られることが明らかになった. したがって, カラムナータイプ品種の場合でも, 台木を選択することによって目標樹高にすることが可能であり, 高品質果実や高生産効率を実現する栽培技術の開発が可能と考えられる.
  • 今川 順一, 杉村 輝彦, 脇坂 勝
    2005 年 4 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/28
    ジャーナル フリー
    カキ‘刀根早生’の早期加温栽培における翌年の着花数の減少を改善するための液化CO2および石油燃焼機によるCO2施用技術について検討した. 露地栽培, 早期加温栽培とも, 花芽の形態分化は満開5, 6週から8週にかけて急速に進行し, それ以降はほとんど発達しなかった. 開花期から加温停止時(着色開始直前)まで早朝5時間CO2 1,500 ppmを目標濃度としてタイマーや電磁弁を利用した液化CO2施用方式でCO2施用を行うか, 灯油燃焼方式で終日施用することにより, 翌年の着花数を増加させるとともに当年の1果重を増加させることができた. また, これらの方法は施用に要するコストを従来のCO2施用法の2分の1から3分の1程度に低下させるとともに, 所得を約10~30%向上させた.
  • 山崎 篤, 田中 和夫
    2005 年 4 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/28
    ジャーナル フリー
    ネギの花芽分化における窒素栄養の関与について明らかにするために, 窒素肥料の追肥量が, ネギ‘金長’の生育, および抽だいに及ぼす影響について調べた. その結果, 低窒素レベルによって生育は抑制され, 葉鞘基部の肥大が起こった. また, 低窒素レベルは窒素含有量だけでなく炭素含有量も低下させたが, C/N率は顕著に増加した. 低温処理によって花成誘導させると, 処理21日間では低窒素は抽だいを促進したが, 処理を35日間とすると窒素レベルの影響は認められなくなった. 以上のことから, ネギの花芽分化において低窒素は, 低温遭遇量が十分でないときにのみ促進的に作用する補足的な要因であると考えられた.
  • 平井 剛, 後藤 英次, 中村 隆一
    2005 年 4 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/28
    ジャーナル フリー
    メロン‘ルピアレッド’を用い, 地ばい作り, 子づる2本仕立て(1株4果収穫)のハウス抑制栽培における着果節位および整枝方法と果実糖度の関係について検討した. 着果節位を下げるほど糖度が高まったが, 収穫果数が減少する傾向が認められた. また, 6節から着果させた場合には, 果溝(果実表面の縦溝)が深くなるなど, 外観品質への影響が認められた. このため, 8~11節に着果させるのが最適であると考えられた. 整枝方法については, 子づるを25節で摘心することにより生育後半の草勢が著しく衰え, 糖度が低下した. 側枝を除去する節位を下げて多側枝とした場合, いわゆる「うらなり」が増加し, 茎葉の充実が妨げられたため, 収量および品質に効果は認められなかった. 糖度にもっとも大きな影響を及ぼしたのは, 着果節位以上の葉身重であった. ハウス抑制栽培においては, 着果節位以上の健全な葉の量を確保することが, 果実品質の安定化につながることが明らかとなった.
  • 持田 圭介
    2005 年 4 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/28
    ジャーナル フリー
    変則主幹形, 4本主枝の11あるいは15年生‘西条’を供試し, 軽度の発芽不良症状が認められる樹を, 優良なB型系統の腹接ぎによって更新することを試みた. 各主枝の主幹分岐部から約50cm上部2か所に, ‘西条’優良系統を腹接ぎした. 新系統主枝の早期拡張を目的として, 腹接ぎ直上部へ0.8~1.0cm幅で環状はく皮またははく皮逆接ぎを行った.
    1. 穂木からの新梢伸長は, 環状はく皮とはく皮逆接ぎ処理により促進した. また, 腹接ぎ初年度における穂木新梢中の全炭水化物含量は, 環状はく皮とはく皮逆接ぎ処理により有意に高まった.
    2. 接ぎ木2年後の主枝延長拡大率は, 環状はく皮とはく皮逆接ぎ処理区では70~80%であり, 無処理区より20~30%優れた.
    3. 環状はく皮とはく皮逆接ぎを比較すると, 穂木からの新梢伸長促進効果に有意な差は認められなかったが, はく皮逆接ぎ処理により旧主枝の果実肥大が有意に優れた. 4. 穂木からの新梢伸長促進効果を目的とする場合, はく皮処理時期は開花期頃(6月上旬)が適当と考えられた.
  • 礒崎 真英, 小西 信幸, 黒田 克利, 佐藤 法子, 古田 堅持, 田中 一久, 冨川 章
    2005 年 4 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/28
    ジャーナル フリー
    慣行的なかけ流し方式のロックウール栽培システムを用いたかけ流し区と, このシステムに我々が開発した排液再利用ユニットを取り付けたロックウール栽培システムとで, トマトを9月から6月までの9か月間栽培した. 培地内培養液の無機成分濃度は試験区によって異なり, 排液再利用区ではかけ流し区に比べて, P, K, Ca, Mn濃度が低く, B, Na濃度が高かった. しかし, 葉の多量成分濃度やNa濃度は試験区間に大きな差異がなく, 茎葉の生育や果実収量にも差異がなかった. 以上の結果, 排液再利用ユニットを市販のかけ流し式ロックウール栽培システムに取り付けることで, 培養液の廃棄量を著しく低減できる循環型の長期穫りトマトロックウール栽培が可能であることが示された.
  • 別府 賢治, 片岡 郁雄
    2005 年 4 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/28
    ジャーナル フリー
    暖地条件における夏季の遮光が, 甘果オウトウの光合成, 炭水化物の蓄積および結実性に及ぼす影響を調査した. 鉢植え樹を遮光率53%の遮光ネットで被覆したパイプハウスに搬入し, 葉の光合成と落葉時期を調査した. 遮光区では, 日中の葉のみかけの光合成速度は対照区よりもやや高く推移した. 遮光により落葉が遅延した. 次に, 同様の遮光処理が1年生樹の乾物重と貯蔵炭水化物含量に及ぼす影響を調査した. 乾物重には処理間で差異がみられなかったが, 樹体の貯蔵炭水化物濃度は遮光により増加した. さらに, 同様の遮光処理を5年生樹を用いて行い, 翌春の花器の発育と結実率を調査した. 遮光により胚のうの寿命が延長され, 結実率が増加した. これらのことから, 暖地条件における夏季の適度の遮光は, 貯蔵養分の蓄積を促し, 翌春の結実を向上させる効果があることが示された.
  • 鈴木 隆志, 柳瀬 関三
    2005 年 4 巻 1 号 p. 75-79
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/28
    ジャーナル フリー
    夏秋トマト雨よけ栽培において, 放射状裂果の発生の要因を明らかにするため, 潅水方法の違いによる土壌水分の変化や整枝法の違いの影響について検討した.
    茎葉や果実への日射量が少ない条件では, 土壌水分状態を変化させることによる放射状裂果の発生への影響は認められなかった. また, くず放射状裂果の発生は, 果実肥大の大きい果実が発生しやすい傾向が認められた. 一方, 潅水条件が同じであっても, 茎葉や果実に対する日射量が多い条件では, 少ない条件に比べて明らかに放射状裂果およびくず放射状裂果が発生しやすく, 果実肥大に関係なく発生した.
    これらのことから, 夏秋トマト栽培における放射状裂果の発生は, 土壌水分の変化の影響は比較的少なく, 茎葉や果実に日射が当たりやすい条件で発生すると推察された.
発育制御
  • 米本 仁巳, 高原 利雄, 奥田 均, 緒方 達志
    2005 年 4 巻 1 号 p. 81-84
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/28
    ジャーナル フリー
    コンパクトな樹冠形成による栽培管理の省力化と果実品質の向上を目的に, わい性台木のカラタチまたは‘ヒリュウ’台に接木した‘天草’と‘あまか’を用い, 両台木がこれら品種の定植後の初期生育, 収量および果実品質に及ぼす影響を比較検討した.
    樹冠容積は両品種で定植4年後にカラタチ台に比べ‘ヒリュウ’台で有意に小さかったが, 6年後に両台木とも台勝ち現象がみられ, その程度は‘ヒリュウ’台でより顕著であった. 果汁糖度と酸度は両品種でカラタチ台に比べ‘ヒリュウ’台で有意に高かった. ‘ヒリュウ’台で1樹当たり収量は低かったが, 樹冠1m3当たり収量は高かった. 以上の結果から, ‘ヒリュウ’台は‘天草’と‘あまか’のコンパクト樹冠形成および果実品質向上に有益な台木であると思われた.
  • 香西 直子, 別府 賢治, 望岡 亮介, 村尾 昭二, 片岡 郁雄
    2005 年 4 巻 1 号 p. 85-88
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/28
    ジャーナル フリー
    モモの胚珠と胚のうの発育を観察し, 双胚発生との関係について調査した. モモ15品種について, 双胚発生率を調査したところ, ‘寿星桃(赤花系統)’で5ヵ年平均が75.1%と著しく高かった. ‘白鳳’は11.1%とやや高く, ‘白桃’を含むその他の品種では5.2%以下であった. ‘寿星桃(赤)’, ‘白鳳’, ‘白桃’を用いて胚珠および胚のうの発育, 雌ずい内での花粉管の伸長を調査した. すべての品種において, 花粉管が珠孔に到達したのは受粉7日後以降であった. この時点での第1胚珠の退化率は極めて低かった. 一方, 第2胚珠の退化率は‘白鳳’および‘白桃’でそれぞれ85.7%, 100.0%と高かったのに対して, ‘寿星桃(赤)’では18.2%と極めて低かった. このことから, 双胚果の発生は受精前に潜在的に決定されていることが明らかとなり, 通常受精前に起こる第2胚珠の退化が起こらず, 受精まで両胚珠の寿命が維持された場合, 双胚となることが示唆された.
  • 清水 達夫
    2005 年 4 巻 1 号 p. 89-93
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/28
    ジャーナル フリー
    メロンの裂果発生を省力的に防止するために, ネット系メロン‘アムス’の2本整枝2果着果栽培において, ジベレリン生合成阻害剤ウニコナゾールP散布処理によるつる伸長抑制が裂果発生に及ぼす影響を調べた.
    ウニコナゾールP 30 ppm処理により着果後のつる伸長を抑制した場合, つるの伸長が早い段階ほど抑制効果が現れやすく, それにより明らかに裂果は減少し, 果実肥大も促進された. 特に子づる摘心直後から上位節に約20日おきに処理すれば最も効果的であった. それに対し従来の耕種的な遊びづるの整理のみでは裂果防止効果が劣った.
    施肥量の増加に伴い, 耕種的に遊びづる整理を行ってもその旺盛な伸長が続き, 裂果量は増加した. それに対し, ウニコナゾールPを用いて上記の方法によりつる伸長を抑制した場合, 窒素施与量として約20kg/10aまで増肥しても, 裂果発生はみられず果実肥大も促進された. しかしそれ以上に増肥すればつるの伸長復活と果重の減少がみられ, 裂果発生が著しかった.
収穫後の貯蔵・流通
作物保護
  • 國賀 武, 松尾 洋一, 津村 哲宏, 児島 清秀, 松本 亮司
    2005 年 4 巻 1 号 p. 99-103
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/28
    ジャーナル フリー
    紫外線照射で生成するカンキツ類のファイトアレキシンであるスコパロン(6,7-ジメトキシクマリン)の果皮および葉での生成量の品種間差異を検討した. カンキツ類26種・品種の果皮と29種・品種の葉に20分間の紫外線照射を行った. 発育期(8月)の葉および果実では成熟期(12月)のそれらより生成量が低かった. 幼葉では‘吉田ポンカン’, ‘ユーレカ’レモン, キンカン類などが, 成葉では‘セミノール’, ヒュウガナツ, ‘ユーレカ’レモンが, また, 幼果では, ‘ユーレカ’レモン, ネイハキンカン, 成果では, ‘津之香’, ‘ロビンソン’, ネイハキンカンの生成量がそれぞれ多かった. また種・品種間あるいは器官別でも, 紫外線によるスコパロン生成量には大きな差異があり, また生成量の変化にも差異が認められた.
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