園芸学研究
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4 巻, 3 号
SEPTEMBER
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総説
原著論文
育種・遺伝資源
  • 小仁所 邦彦, 南 峰夫, 松島 憲一, 根本 和洋
    2005 年 4 巻 3 号 p. 259-264
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    トウガラシ属4種 (C. annuum, C. frutescens, C. chinense, C. praetermissum) 87系統についてRAPD分析を行い, 種間および種内系統間の類縁関係を解析した. 13種類の10塩基プライマーにより再現性の高い99本の多型バンドを得ることができた. これらのバンドデータを用いてC. praetermissumを外群としてクラスター分析を行った. 4系統を除きC. annuum, C. frutescens, C. chinenseの3種は3つのクラスターに分離した. C. frutescensにおいてはアジアの系統とアフリカ・新大陸の系統のサブクラスターが分離し, 地域間変異が観察された. また, アジアには複数の遺伝的に異なる系統群が存在していることが示された. 種特異的なバンドを検索し, 3種に特異的なバンドを明らかにした. 種の分類と種特異的なバンドの有無が一致しなかった系統は, 形態的に特異性を示すとともに, 異なる種の種特異的バンドを併せ持っていたことから, 3種間の遺伝子移入が生じている可能性が推測された.
  • 福田 直子, 大澤 良, 吉岡 洋輔, 中山 真義
    2005 年 4 巻 3 号 p. 265-269
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    トルコギキョウの覆輪安定性の品種間変異を明らかにする目的で, 画像解析を用いて花弁の着色面積率を算出し, 品種の覆輪安定性を着色面積率の標準偏差として数量化した. この方法を用いてガラス温室における季咲きの作型と20℃一定条件とで栽培した紫覆輪のトルコギキョウ16品種の覆輪形質を評価した. 統計解析の結果, 覆輪着色面積率の品種間変異および栽培条件による変動は有意であり, 品種によって栽培条件の影響が異なることが明らかとなった. 多くの品種において20℃栽培区において着色面積率の平均値が増加するとともに個体間変異が顕在化し, 覆輪安定性が低下した. 供試した16品種を2つの栽培条件における着色面積率の標準偏差を基に分類すると, 標準偏差が10以下で栽培環境の影響が少なく覆輪安定性が高い品種群, 16以上で常に不安定な品種群, 20℃栽培条件で安定性が顕著に低下する品種群に類型化できた. 「色流れ」状の着色部の変形は1品種を除いて標準偏差が16以上の覆輪安定性の低い品種で生じた. 標準偏差が15~18でも「色流れ」が生じない品種が存在したが, このことは着色面積と「色流れ」は必ずしも強い相関があるとはいえないことを示している. 以上から覆輪形質の数量化によって統計解析を行い覆輪安定性の品種間差異の評価が可能であることが示された.
繁殖・育苗
  • 第1報 定植前の生育
    桜井 健二, 小川 敦史, 川島 長治, 茅野 充男
    2005 年 4 巻 3 号 p. 271-274
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    植物成分を原料にした生分解性鉢を用いて, 異なる灌水頻度でトマトを育苗し, ポリエチレン鉢 (ポリ鉢) を対照として, 定植までの苗の生育と養分含有率について調査した. ポリ鉢と比較して, 生分解性鉢での苗の生育は, 草丈, 根長, 葉数, 葉面積および乾物重のいずれの項目でも低い値を示した. 各養分含有率は, パーム鉢でのリンを除いて, いずれの鉢でも類似した値を示した. このことから生育量の差異は, 養分吸収能の差に起因するものではないと考えられた. コーン鉢では, 灌水量を増加することで苗の生育が改善されたが, ポリ鉢の生育よりは劣っていた. このことから, 生分解性鉢での育苗では, 灌水量以外にも生育を阻害する要因が存在することが示唆された.
  • 第2報 定植後の生育
    桜井 健二, 小川 敦史, 川島 長治, 茅野 充男
    2005 年 4 巻 3 号 p. 275-279
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    植物成分を原料とした生分解性鉢で育苗されたトマト苗を用いて, 生分解性鉢を取り除かずに基肥量を変えた土壌に定植し, 定植後の生育および土壌中での鉢の分解程度について検討した. なお, 硬質ポリエチレン鉢で育苗し, 鉢を取り外して定植するポリ鉢区を対照とした. 定植後11日目までは, 生分解性鉢区はポリ鉢区よりも草丈および葉数の増加が劣っていたが, 定植後11日目以降は生分解性鉢多肥区とポリ鉢区の生育は同程度となった. 定植後26日目の各区における窒素, カリウムおよびリン含有率は, 生分解性パーム鉢のリン含有率を除いて生分解性標準区とポリ鉢区との間に差がなく, 生分解性多肥区はポリ鉢区より高かった. 定植後26日目に生分解性鉢が形状をとどめていたが, 鉢底穴や鉢がもろくなった部分から鉢外に根が伸張し新たな根系を形成していた. 以上のことから, 生分解性鉢区がポリ鉢区にくらべ初期生育が劣った原因は, 定植後, 鉢が分解されて根が鉢外に出るまでの間, 根域が制限され養分吸収が阻害されたことと考えられた.
  • 古谷 博, 細木 高志
    2005 年 4 巻 3 号 p. 281-286
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    ササユリ未熟種子から摘出した胚の生育に及ぼす培養温度, 培地内のショ糖濃度, 固形化剤および植物生長調節物質の種類と添加濃度の影響について検討した.
    自然開花時に授粉して結実したさく果を9月上旬に採取し, 長さ3~5 mmに生長した胚を無菌的に摘出し, MS培地に置床して45 μmol・m-2・s-1, 16時間照明下で培養した. 胚の発芽, 生育および小球形成に及ぼす培養温度は20~25℃が良く, 培地へのショ糖添加量は3%, 固形化剤は0.8%寒天あるいは0.4%ゲランガムが再生植物体の生育に適していた. 植物生長調節物質についてみると, 無添加培地でも植物体再生は可能であるが, KinetinおよびBA添加培地では胚の初期発育が促進された. IAA添加培地では再生植物の小球形成が進み, 1個の胚から複数の小球が形成された. 従来の実生繁殖に比べ効率的に再生植物が得られる本手法は, ササユリの持続的で安定的な種苗養成法として有効である.
土壌管理・施肥・灌水
  • 塚越 覚, 吉本 葉子, 佐藤 玲子, 篠山 浩文, 野田 勝二, 野間 豊
    2005 年 4 巻 3 号 p. 287-290
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    農業廃棄物の有効利用の一方法として, ナシ剪定枝を炭化し, 野菜栽培用土としての利用の可能性を検討した.
    市販栽培用土とナシ炭の混合試験では, ナシ炭はコマツナの生育にほとんど影響しなかった. 栽培期間中にポットから流亡したNO3-N量は, 粒径1 cm以下の炭を容積比で20%混合すると減少した. ナシ炭には水溶性N成分がほとんど含まれず, 水溶性Kは高濃度であった. 赤玉土との混合試験では, 粒径0.5 cm以上のナシ炭の混合により, CECの増大が認められた.
    したがって, ナシ炭の土壌への混合は, 土壌改良資材, K肥料としての効果に加え, NO3-N流亡の低減の可能性も指摘でき, ナシ剪定枝の有効利用が可能と考えられた.
  • 村松 昇, 平岡 潔志, 瀧下 文孝, 森永 邦久, 星 典宏, 草塲 新之助, 島崎 昌彦, 中尾 誠司
    2005 年 4 巻 3 号 p. 291-295
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    マルチ栽培したウンシュウミカン樹の夏期の水分動態について検討するために通気式蒸散測定システムを作成した. 9月の1樹当たりの蒸散量は22~25 literであり, 果実の収穫量と比較すると根から吸収されたほとんどの水は, 葉から蒸散し, 果実に蓄積された量は少なかった. 蒸散量と気象条件の関係を検討した結果, 日射量との間に高い相関が認められた. 本測定システム計測によって得られた蒸散量を基本とし, マルチ被覆をしたときの蒸散について検討した. マルチ被覆し土壌を乾燥させることにより蒸散量が減少し, その程度は栽培圃場では, 日によって異なり0~40%で, 平均15%減であった. また, 土壌面からの蒸発について検討した結果, マルチ被覆を行うと土壌から蒸発する水の量は, 裸地の場合の30%程度に減少した. これらの結果をふまえてマルチ栽培に関する注意点などを論議した.
  • 伊達 修一, 羽野 文雄, 那波 和志, 寺林 敏, 藤目 幸擴
    2005 年 4 巻 3 号 p. 297-301
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    培養液中に存在する次亜塩素酸ならびにクロラミンを消去することを目的として塩素濃度が0.5 mg Cl・liter-1となるように次亜塩素酸ナトリウムを添加した培養液に, 還元剤であるチオ硫酸ナトリウム, 亜硫酸ナトリウム, ハイドロサルファイトナトリウムおよびアスコルビン酸のいずれかを0.01 mMの濃度で添加して, サラダナを移植した. その結果, いずれの還元剤によってもクロラミンによる根部傷害およびこれに起因する植物体の生長抑制が回避された. また, 塩素濃度が0.5 mg Cl・liter-1となるように次亜塩素酸ナトリウムを添加した培養液にチオ硫酸ナトリウムおよびアスコルビン酸を0.1 mMまで過剰に添加した場合でも, 同様に根部傷害およびこれに起因する生長抑制が回避された.
栽培管理・作型
  • 鈴木 敏征, 辻 博美, 森川 信也
    2005 年 4 巻 3 号 p. 303-306
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    近年普及し始めた‘水ナス’加温栽培における温度管理技術を確立するため, 最低気温が, 加温栽培‘水ナス’の収量および果実品質に及ぼす影響について検討した. 最低気温14℃では, 葉に低温障害が現れるとともに, 総収量および可販果収量が16℃および18℃と比較して著しく少なかった. 最低気温16℃と18℃との間に収量差は認められなかった. 最低気温16℃および18℃で栽培された‘水ナス’の果実品質を比較したところ, 果色には差がなく, 16℃で果形が細長くなった. しかし, その差はわずかであり, 外観上の品質には差が認められなかった. 18℃では16℃よりも, 中果皮が有意に柔らかくなるとともに, 漬物加工時のNaClの浸透性が向上した. しかし, 現在‘水ナス’の価格は外観上の品質によって決定されているため, 16℃と18℃との間には果実の価格差がなく, 現状では‘水ナス’加温栽培の最低気温は暖房コストの安い16℃が適すると考えられる.
  • 小泉 丈晴
    2005 年 4 巻 3 号 p. 307-311
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    1. 群馬県在来‘水ブキ’ב八ツ頭’と群馬県在来‘水ブキ’ב系統4’の交雑系統ともに, 雄株は, 花穂の収穫量が雌株より優った. しかし, 雄株は雌株より, 花穂の苞が開きやすく, 商品価値の劣る花穂が多かった.
    2. 両交雑系統ともに, 雌株は雄株より, 花穂のしまりは良い傾向を示した. さらに, 雌株は雄株より, 耐寒性が高く, 凍害を受けにくいと考えられた.
    3. 群馬県在来‘水ブキ’ב八ツ頭’と群馬県在来‘水ブキ’ב系統4’の交雑系統から花穂需要期の2月に収穫する品種を育成するには, 苞の開いていない花穂の収量性および品質面から判断すると, 交雑系統の雌株から選抜した方が有利であると考えられた.
    4. 群馬県在来‘水ブキ’ב八ツ頭’の交雑系統において, 葉柄の収穫量および品質では差が認められなかった. この交雑系統から葉柄を収穫目的とした品種を育成するには, 雌雄の違いはあまり関係ないと考えられた.
  • 藤島 宏之, 白石 美樹夫, 下村 昌二, 堀江 裕一郎
    2005 年 4 巻 3 号 p. 313-318
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    比較的強樹勢な‘ピオーネ’樹の環状はく皮処理が成熟期の果実品質に及ぼす影響について経時的に調査した. 主枝処理では, 全調査期間を通じて果粒重に有意差が認められなかったのに対し, 果皮色と糖度ははく皮区が対照区よりも有意に高かった. 果皮アントシアニン含量の推移は, 果皮色と同様にはく皮区が対照区よりも有意に高かった. 遊離酸含量の低下とβ比 (酒石酸/リンゴ酸) の上昇については, 処理区間で有意差が認められなかった. 主幹処理では, 対照樹に比べてはく皮樹の着色が高く推移した. 盆前の8月11日における秀品率 (カラーチャート7以上の果皮色) は, はく皮樹で55~86%と高かったのに対して対照樹は7%で低かった. 果皮色, 果皮アントシアニン含量および糖度は, はく皮樹が対照樹よりも有意に高かった. 果房重, 果粒重, 遊離酸含量およびβ比には有意差がなかった. これらの結果から, ブドウ‘ピオーネ’樹における環状はく皮処理によって, 着色および糖度が向上することが明らかとなり, 夏季に高夜温となる西南暖地における果実品質向上対策としての有効性が示された.
  • 平井 剛, 後藤 英次, 中村 隆一, 大橋 優二, 小宮山 誠一
    2005 年 4 巻 3 号 p. 319-322
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    スイカ‘祭ばやし777’を用い, 北海道における4月下旬定植の裾換気型トンネル栽培において, 生育初期の換気方法と親づる摘心の有無が生育, 収量および果実品質に及ぼす影響について検討した. 定植後約4週間トンネルを密閉したところ, トンネル内の日最高気温は最高で約50℃に達したが, 開閉による換気を行った慣行区と比べ, 葉焼け程度に有意差は認められなかった. 生育は密閉区でやや優る傾向が認められた. 着果節位は慣行区で平均14節前後であったのに対し, 密閉区で18節前後と上昇した. 糖度および良果収量は密閉区で高くなった. 親づる摘心については, 処理間で一定の傾向は認められなかった. 密閉処理終了後の約2週間について, 裾部をわずかに開けた状態で固定した場合に, 慣行に比べ若干生育が促進される傾向が認められ, 糖度も高くなった. 個体当たりの総葉身重と果実重および糖度との間には正の相関が認められた. 本技術により, スイカの裾換気型トンネル栽培における定植から着果期までのトンネル換気作業の大半が不要となり, 全作業時間のうち約10%が削減可能と試算された.
  • 壇 和弘, 大和 陽一, 今田 成雄
    2005 年 4 巻 3 号 p. 323-328
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    光強度および赤色光 (R)/遠赤色光 (FR) 比を変えた光環境がコマツナ (Brassica campestris品種‘はるみ小松菜’, ‘楽天’) の硝酸イオン濃度および硝酸還元酵素 (NR) 活性に及ぼす影響について調査した. コマツナは, 異なる光強度 (PPFD 165, 290, 350, 510 μmol・m-2・sec-1) あるいは異なるR/FR比 (1.01: 対照区, 0.66: R抑制区, 1.50: FR抑制区) の光環境下で1/2単位および1単位の培養液を用いて養液栽培した. 異なる光強度でコマツナを生育させたところ, ‘はるみ小松菜’の硝酸イオン濃度は光強度の増加とともに低下し, 非リン酸化NR活性は光強度の増加とともに高まった. ‘楽天’では, 1/2単位の培養液を用いた試験区において, 光強度の増加とともに硝酸イオン濃度は低下し, 非リン酸化NR活性は高まったが, 1単位の培養液を用いた試験区では, 光強度が増加しても硝酸イオン濃度はほとんど低下せず, 非リン酸化NR活性も変化しなかった. R/FR比を変えてコマツナを生育させたところ, 1/2単位の培養液を用いたR抑制区でのみ硝酸イオン濃度の低下が認められた.
  • 伊藤 寿, 市ノ木山 浩道
    2005 年 4 巻 3 号 p. 329-333
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    三重県で栽培されているニホンナシ‘幸水’の生育相および果実糖度の年次変化と気象要因との関係を解析した. データを解析した1981年から2004年までの24年間で, 年平均気温は1年間に約0.07℃の割合で上昇していた. 気温の上昇は, 9月から2月の間で大きかった. 自発休眠覚醒期の推定値は, 1年間に0.49日の割合で遅くなった. 満開期は年々早くなっており, その程度は1年間で0.37日であった. 満開期は, 2月上旬から4月中旬の旬平均気温と負の相関を示し, これらの旬平均気温の中には年次と正の相関を示すものがあった. 収穫最盛期は, 満開期と正の相関を示し, また, 1年間に0.32日の割合で早くなった. 果実生育期間の長さの年次変動には傾向は認められなかった. これらのことより, ‘幸水’の生育相は, 地球温暖化の影響を受けていると推察された. 一方, 果実糖度は, 7月中旬から8月中旬の旬平均気温および日射量と正の相関を示し, 7月下旬から8月上旬の降水量と負の相関を示した. しかし, 果実糖度と年次との間には相関が認められなかった.
発育制御
  • 王 金印, 荒川 修, 浅田 武典
    2005 年 4 巻 3 号 p. 335-338
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    リンゴ‘ふじ‘と‘恵’を供試して着果程度と種子の有無の処理を施し, 果台枝頂芽の糖類およびGA含量と花芽形成との関係について検討した.
    果台枝頂芽における翌年の着花率は, 不着果および無種子果着果に比べ, 有種子着果の方が低かった. 果台枝頂芽の新鮮重は, 6月初めにどの処理も同じだったが, 7月初めに無種子が有種子の着果より大きくなった. 果台枝葉の同化産物の果台枝頂芽への分配は, 種子よりも果実の存在によって影響され, 果そう当たりの果実乾物重が大きいほど減少した. また, 6月初めにおける果台枝頂芽の糖類含量も, 着果の程度が強くなるほど減少した. 着果により頂芽内で減少する糖類は, ソルビトールとグルコースで, スクロースは変化しなかった. 6月初めにおける果台枝頂部のGA含量は, 不着果と無種子1果の果台枝の方が有種子1果と3果の果台枝より低く, 着果よりも種子の存在により増加した.
  • 須田 晃, 加藤 俊博, 酒井 広蔵
    2005 年 4 巻 3 号 p. 339-342
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    ウニコナゾール-Pおよびパクロブトラゾールがドゥランタ‘タカラヅカ’ (Duranta repens L. ‘Takaraduka’) の生長, 開花に及ぼす影響を検討した.
    茎の伸長抑制にはウニコナゾール-Pの効果が高く, 適濃度は12.5 mg・liter-1であった. パクロブトラゾールは, 300 mg・liter-1でもほとんど効果は見られなかった.
    また, 着花枝を増加させるため, ウニコナゾール-Pの処理時期を検討したところ, 12.5 mg・liter-1の濃度で摘心10日~14日後 (展開葉2~3対, 茎長3~4 cm) および, その2週間後の2回処理を行うことにより着花茎率, 開花株率とも向上し, 3~4号鉢での成品化も十分可能であると思われた. なお, 着花節は最も低い位置でも4.2節であった.
  • 北村 八祥, 中山 真義, 近藤 宏哉, 西川 豊, 腰岡 政二, 平塚 伸
    2005 年 4 巻 3 号 p. 343-346
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    ブドウ‘安芸クイーン’では, 果皮が深色化して品種特性の鮮赤色ではない暗赤色な果粒がしばしば出現する. 鮮赤色な適着色果房の生産性を向上させるために, 果色に着果量が及ぼす影響を調べた. 着色開始前の満開後32日に摘粒, 摘心および新梢基部の環状剥皮処理を行い, 1葉あたりの果粒数を0.14, 0.52, 1.53, 2.47の4段階に設定した. 0.14区と0.52区では, 果皮のアントシアニン総量は処理後, 著しく増加し, 満開後76日には深色化果粒が多く発生した. 一方, 1.53区では, アントシアニン生成が抑制され, 満開後96日に主に適着色果粒が生産された. 2.47区ではアントシアニンの生成が不十分であり着色不良となった. アントシアニン組成と果皮の深色化には明確な関係は認められなかった. 以上より, 着果量調整により果皮のアントシアニン生成を制御して適着色果粒を安定生産できると考えられた.
普及・教育・利用
  • 藤原 隆広, 熊倉 裕史, 大田 智美, 吉田 祐子, 亀野 貞
    2005 年 4 巻 3 号 p. 347-352
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    1. 京都府綾部市において, 2003年6月~2004年5月までの1年間に毎月2~3回の間隔で購入した市販のホウレンソウ (合計127サンプル) に含まれるL-アスコルビン酸 (AsA) と硝酸塩の周年変動を調査した.
    2. AsA含量は, 夏期 (7月~8月) に低く冬期から春先 (1月~3月) にかけて高い傾向が認められた. また, この傾向は可食部上部 (葉身側) で特に高かった.
    3. 硝酸塩含量は, 7月~9月に高く, 1月~3月に低い傾向が認められた. また, この傾向は可食部下部 (葉柄側) で顕著であった.
    4. 生体重および葉色 (SPAD値) と2つの品質成分 (AsA含量と硝酸塩含量) との間に有意な相関が認められたが, これらの相関関係は外観形質から品質成分の多寡を推定するには十分ではないと判断された.
収穫後の貯蔵・流通
  • 石原 和夫, 鈴木 裕行, 土田 早苗, 馬野 克己, 萩 幸男, 横山 泰裕
    2005 年 4 巻 3 号 p. 353-357
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/07
    ジャーナル フリー
    試料の雪下貯蔵ニンジンは1998年12月7日から1999年4月12日にかけ, ほぼ1か月ごとに積雪前あるいは積雪下の土中より採取した. 香気成分の分析はニンジン香気成分のジクロロメタン抽出物を用い, 常法に準じてガスクロマトグラフィー (以下, GC) およびガスクロマトグラフィー-質量分析 (以下, GC-MS) により行った.
    GCおよびGC-MS分析の結果, 各試料より100~124のピークが検出され, このうち, 雪下貯蔵ニンジンの香気成分として45化合物を同定した. 同定した化合物のうち, 26化合物は著者らが初めてニンジンの香気成分として検出した. ニンジンの香気成分量の指標となるピーク総面積値は, 1998年12月~3月 (以下, 12月~3月) の間ほとんど変化は認められなかったが, 1999年4月 (以下, 4月) には12月~3月に比べ約2.7倍に増加した.
    雪下貯蔵ニンジンの主なる香気成分は, β-caryophyllene, caryophyllene oxide, borneol, bornyl acetate, trans-α-bisaboleneなどであった. これらのうち, β-caryophylleneは雪下貯蔵に伴い大きく増加し, 4月には12月に比べ12.8倍に増加した. またこの化合物は4月の総香気成分の32.3%を占め, 12月に占めた割合の4.8倍であった.
    β-caryophylleneと同様, 雪下貯蔵に伴い増加傾向にあった香気成分はtrans-α-bisabolene, α-humulene, β-bisaboleneなどであった. そして, 12月~3月の間ほとんど変化がなく, 4月に急激に増加した香気成分としてcis or trans-γ-bisaboleneが検出された. この化合物は4月の香気成分のうち28.4%を占め, β-caryophylleneに次いで多かった.
    一方, 雪下貯蔵に伴い減少したのがcaryophyllene oxide, borneol, bornyl acetate, α-humulene oxide, p-methylacetophenone, 6-methyl-(E, E)-3, 5-heptadien-2-oneなどであった.
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