園芸学研究
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5 巻, 3 号
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総説
原著論文
育種・遺伝資源
  • 稲葉 幸雄, 吉田 智彦
    2006 年 5 巻 3 号 p. 219-225
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/25
    ジャーナル フリー
    栄養繁殖作物のイチゴでは,限られた育種材料間での交配を繰り返すため近親交配が問題となる.そこで,近年育成されたイチゴ品種の近交係数を計算した.また,近交係数と収量との関係を調べた.近交係数の計算は推論型言語Prologとパーソナルコンピューターを利用した手軽な処理系で計算プログラムを作成した.交雑実生の近交係数と実生の選抜率との間に相関関係は認められなかった.栃木県農業試験場栃木分場の育成系統(3次選抜系統)の近交係数と収量の関係を調べたところ,−0.37(危険率1%)の有意な負の相関が認められた.また,イチゴでは近交係数が0.3程度までであれば,近交弱勢による収量の低下は見られないことが明らかになった.近年育成されたイチゴ品種の近交係数は,一季成り性品種では0.2を超えるものが多く,‘とちおとめ’,‘章姫’,‘さがほのか’,‘あまおう’,‘さつまおとめ’,‘ひのしずく’,‘やよいひめ’はそれぞれ0.261,0.222,0.257,0.213,0.257,0.247,0.346であった.一方,四季成り性品種では‘サマープリンセス’と‘きみのひとみ’ の2品種がが0.183と0.195でやや高い値であったが,それ以外はいずれも0.1以下であった.代表的な一季成り性品種15品種の総当たり交配による雑種の近交係数を計算した結果,自殖を除いた近交係数の値は0.067~0.440で平均は0.210となり,近親交配の程度が高くなることが明らかになった.
  • 前田 隆昭, 米本 仁巳, 萩原 進, 谷口 正幸
    2006 年 5 巻 3 号 p. 227-233
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/25
    ジャーナル フリー
    秋期のクリ観光農園を長期間開園していくために,同じ堅果類であるペカンが有利な樹種になると考え,25品種で雌・雄花の開花期を,16品種で収穫期および果実品質を調査した.雌・雄花の開花期について調査した結果,多くの品種で雌花が早く開花し,雌花の開花後期に雄花の開花期が数日間会合した.雄花穂長と雄花の開花期について調査した結果,開花期には年次変動があり,明確な相関が認められなかった.
    収穫期は9月上旬から11月上旬までの約2か月間で,極早生種から極晩生種までに分類された.果実の大きさは,極晩生種の‘CLS-61’と‘デス’が他品種より有意に大きかった.また,‘MISS-10’と‘CLS-61’の2品種は,新鮮仁重が7.0 g以上あった.品種による収穫時期の早晩と脂質含量の間には明確な関係は認められなかった.
    以上の結果から,雌・雄花の開花期が重なる品種の存在が明らかになった.また,極早生から極晩生の品種を導入することで,和歌山県におけるペカンの収穫期間を2か月間に延長できると考えられた.果実品質面から,可食部(仁)が大きく,脂質含量の高い‘パウニー’と‘MISS-10’が有望と考えられた.
  • 飯塚 正英, 西 祥, 木村 康夫, 鈴木 栄, 荻原 勲
    2006 年 5 巻 3 号 p. 235-240
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/25
    ジャーナル フリー
    ユキヤナギSpiraea thunbergii Sieb. ex BlumeとシモツケS. japonica L. fil.との種間雑種を育成し,雑種個体の花芽の発育特性,花器の形態的特性,花色の特性を両親と比較した.
    1) 雑種の腋芽の花芽分化は12月中旬から始まり,1月中旬に完了し,2月から花房分化が始まり,4月中旬に開花した.雑種の開花時期は両親の中間で,ユキヤナギよりも遅かったのは花芽形成時期が遅かったことと関係していた.
    2) 雑種における雄ずい数,開花時期,1花序あたりの花数,花色,雄ずい長および花柱長は両親の中間的特性を示した.一方,花弁の形,花弁の長さ,花径はユキヤナギに類似し,花の着生状況や花序はシモツケに類似していた.
    3) 雑種の全アントシアニン含量はシモツケに比べて少なく,花色は桃色を呈していた.雑種にはシモツケの6つの構成色素(Unknown, Cy3Ga, Cy3G, Cy3Ara, Pg3G, Mv3G)のうち4つのシアニジン系色素(Unknown, Cy3Ga, Cy3G, Cy3Ara)の色素が導入され,Cy3GaとUnknownが主要色素であった.花弁の色相の変化にはPg3GとMv3Gの量が関係していると考えられた.さらに,雑種の花弁は老化すると花色が退化するが,これは主要色素であるCy3Gaの減少が関与していた.よって,Cy3Gaは雑種の主要色素であり,色の濃淡に大きく影響していることが明らかになった.
  • 八木 雅史, 小野崎 隆, 谷川 奈津, 柴田 道夫
    2006 年 5 巻 3 号 p. 241-245
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/25
    ジャーナル フリー
    これまでに得られた萎凋細菌病抵抗性に関与するQTLの近傍に存在するDNAマーカーの実際の萎凋細菌病抵抗性育種における有用性について調査した.これまで浸根接種により選抜してきた抵抗性戻し交雑系統のマーカーの有無を調査した結果,主働抵抗性遺伝子に連鎖したマーカーであるSTS-WG44は全ての系統が保有していた.一方,作用の小さい2つのQTL近傍のマーカーであるOQ12とSTS-WB66は戻し交雑を進めた系統で保有する割合が低下した.このことからSTS-WG44が抵抗性個体を選抜する上で有効であることが明らかになった.実際の育種集団を用いて,STS-WG44の有無と発病率を調査した結果,STS-WG44の有無による発病率の差は62.6%と大きく,発病率が20%以下の強抵抗性系統のほとんどはSTS-WG44を保有していた.本研究により,カーネーションの萎凋細菌病抵抗性育種においてSTS-WG44を選抜マーカーとして用いることで,強度の抵抗性を有する系統を含む平均発病率の低い集団へ絞込みが可能であり,DNAマーカーによるマーカー選抜育種が可能であることを明らかにした.
土壌管理・施肥・灌水
  • 杉山 泰之, 江本 勇治, 大城 晃
    2006 年 5 巻 3 号 p. 247-253
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/25
    ジャーナル フリー
    樹勢の弱い中晩生カンキツ‘不知火’に対して土壌改良資材の施用と窒素施肥量の違いが樹体生育,土壌物理性,果実品質,細根量に及ぼす影響を調査した.土壌改良資材であるバーク堆肥,ピートモス,パーライトを施用することで,土壌物理性が改善され,細根量が増加した.窒素施肥量を多くすると,細根量は減少し,果皮率と糖度が高くなる傾向であった.土壌改良資材を施用しても,窒素施肥量が多いと,細根量は減少し,その寄与程度は窒素施肥量が土壌改良資材施用の約2倍であった.これらの結果より,‘不知火’の細根を増加させ,樹勢を良くするためには,土壌改良資材を施用した上で,過剰な窒素施用は避ける必要があるものと考えられた.
  • 石川 啓, 木村 秀也
    2006 年 5 巻 3 号 p. 255-259
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/25
    ジャーナル フリー
    ナギナタガヤ草生ミカン園における,春肥窒素のウンシュウミカン樹とナギナタガヤによる吸収特性を把握するため,60 Lポット植え‘南柑20号’を供試し,15Nトレーサー法を用いて検討した.
    草生区の樹体は裸地区に比べ,新葉の着生数が減少し,乾物重および全窒素量も少なかった.ナギナタガヤの乾物重は樹体の24%程度であった.樹体の春肥窒素吸収量は,草生区が裸地区の約47%と著しく少なく,特に新葉における差異が大きかった.草生区におけるナギナタガヤの吸収量は,樹体の約2倍であった.また,ナギナタガヤは吸収窒素の大部分が地上部に分配されていた.樹体の15N寄与率は,いずれの器官においても裸地区の方が高く,特に新生器官における差異が大きかった.一方,ナギナタガヤにおける15N寄与率は,樹体に比べ著しく高かった.春肥窒素の利用率は,樹体を比較すると草生区16.7%,裸地区35.3%であり,裸地区の方が顕著に高かった.しかし,ナギナタガヤによる吸収量を加えた草生区の利用率は51.6%となり,裸地区の約1.5倍であった.
栽培管理・作型
  • 坂本 浩
    2006 年 5 巻 3 号 p. 261-264
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/25
    ジャーナル フリー
    シンテッポウユリ(Lilium × formolongi hort.)8品種を,2003年5月12日の定植まで,15℃および25℃で培地加温してセル育苗した.25℃で育苗すると,6品種の開花が9月中旬まで遅れたが,ほとんどの品種でロゼット株の発生が多くみられた.唯一‘F1オーガスタ’では,ロゼット株の発生が少なく,切り花品質もすぐれており,秋季生産に適した特性を示した.‘F1オーガスタ’は,比較的少ない低温遭遇量で開花し,夏の高温の影響を受けてもロゼット化しにくい品種であると考えられる.
  • 石原 良行, 人見 秀康, 八巻 良和
    2006 年 5 巻 3 号 p. 265-270
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/25
    ジャーナル フリー
    培養液の排出による環境への影響を抑制することを目的として開発した養液栽培用の改良処方培養液が,培地内溶液濃度,トマトの生育および収量に及ぼす影響を検討した.養液栽培装置は培地にスギ樹皮を用いた毛管給液併用の閉鎖型養液栽培システムとした.培養液は大塚A処方と,これよりK濃度を高め,Ca,MgおよびSO4濃度を低めた改良処方とした.培地内溶液のEC,NO3−N,Ca,MgおよびSO4濃度は改良処方で低かった.収量は改良処方で多く,上段花房の茎径は太かった.本システムで改良処方を用いた場合,NO3−Nを全く排出せずにトマト1株12果房から18.2 t・10 a1の収量が得られた.
  • 岡田 正道, 高橋 哲也
    2006 年 5 巻 3 号 p. 271-276
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/25
    ジャーナル フリー
    ウンシュウミカン‘宮川早生’,‘繁田温州’,‘青島温州’において,着果負担を表すものと想定される生産性項目(着花程度,結実数,収穫果数,収量)および果実重,果汁の糖度と次年度の生産性項目(着花程度,結実数,収量)との間の関係について,特に果汁の糖度に着目して解析した.‘宮川早生’では生産性項目の変動が小さく,明確な関係はみられなかった.‘繁田温州’と‘青島温州’では,次年度の 生産性項目に対して,生産性項目は負の相関が,果実重および糖度は正の相関が認められた.重回帰分析により,次年度の生産性は主として着果負担の軽重に左右されるが,補足要因として糖度が有効であり,高い重相関係数が認められた.相関図より,次年度の着花程度は糖度が高くなるほど高く,結実数や収量も糖度12度程度までは増加すること,ただし,‘青島温州’において糖度が12度を超えて高まる樹では次年度の結実数や収量は減少する傾向であることが示された.以上より,‘繁田温州’と‘青島温州’では糖度は次年度の生産性を予測する指標として有効であり,収穫時の糖度12度程度までの高品質化は安定生産と両立することが推察された.
  • 杉山 泰之, 大城 晃, 濵﨑 櫻, 澤野 郁夫, 小原 均
    2006 年 5 巻 3 号 p. 277-282
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/25
    ジャーナル フリー
    着果量の異なるウンシュウミカン‘青島温州’について,秋季から春季の樹体内のデンプン含量(葉,枝,根)を調査したところ,いずれの部位も不成り年樹で成り年樹より高い値で推移した.また,根のデンプンは他の器官より早くから蓄積しはじめ,不成り年樹で11月から,成り年樹で収穫後の1月からそれぞれ含量が多くなった.着果量の違いが樹体内のデンプン含量に最も反映する部位と時期は,11~2月の根であった.このことから,これが冬季の炭水化物の栄養状態を把握するために適する時期および部位と考えられた.
    デンプン含量が増加した原因を解明するため,光合成速度を測定した.その結果,ウンシュミカンは冬季においても光合成を行っていたことから,根中デンプン含量の増加は,光合成に起因していると考えられた.
    一方,生産現場における‘青島温州’の冬季(12月)の根中デンプン含量と翌年の着花量との関係を調査したところ,根中デンプン含量と翌年の葉花比との間には負の相関関係がみられ,着花量の予測が可能と考えられた.
  • 増田 哲男, 工藤 和典, 別所 英男, 猪俣 雄司, 和田 雅人, 中元 陽一, 藤澤 弘幸
    2006 年 5 巻 3 号 p. 283-288
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/25
    ジャーナル フリー
    リンゴ‘ふじ’におけるギ酸カルシウムの摘花効果を明らかにするため,頂芽花の摘花に及ぼすギ酸カルシウムの処理時期,処理濃度の影響について,また,頂芽花の蕾に対するギ酸カルシウム処理の影響について検討した.
    人工受粉1時間前,人工受粉1および24時間後の1%ギ酸カルシウム処理により,頂芽中心花の結実は著しく抑制された.
    人工受粉後の1%ギ酸カルシウム処理では,頂芽中心花の結実は,人工受粉24時間後処理で最も強く抑制されたが,72時間後処理では抑制されなかった.48時間後処理における結実の抑制程度は,両者の中間であった.
    人工受粉24時間後のギ酸カルシウム処理では,頂芽中心花の結実は0.2~1%の濃度範囲の全濃度で抑制され,処理濃度が高い程結実は強く抑制された.
    頂芽花の蕾に対するギ酸カルシウム処理では,1~3.3%のギ酸カルシウム処理,および1%ギ酸カルシウムの1または2回処理による頂芽中心花の結実は抑制されなかった.
    以上のことから,リンゴ‘ふじ’に対する摘花剤としての ギ酸カルシウムは,人工受粉の前後から受粉後24時間までの期間に,1%程度の濃度で,開花した花の雌ずいを直接被爆させることが重要であり,そのことにより効果的な結実抑制が認められるものと考えられた.
  • 吉田 亮, 村尾 和博, 池田 隆政, 村田 謙司, 井上 耕介
    2006 年 5 巻 3 号 p. 289-296
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/25
    ジャーナル フリー
    ニホンナシ‘ゴールド二十世紀’間伐樹の幼木期の整枝法のちがいが乾物生産量と器官別の分配に及ぼす影響について比較を行った.
    永久樹の整枝法は3本主枝とした.また,間伐樹は6つの異なる樹形,すなわち3本主枝,4本主枝,6本主枝,改良二分8本主枝,8本主枝,改良二分12本主枝にそれぞれ整枝した.間伐樹は,8年生まで樹冠の拡大を続けた後,9年生以降,樹冠が縮小され,植え付け10年目の果実生産を最後に伐採された.
    地上部の乾物生産量は,各器官とも,主枝数の多い区ほど多く,この傾向は果実,葉で顕著であった.
    乾物生産量の果実への分配率は,主枝数の多い区ほど,高い傾向がみられた.また,葉への分配率は,処理区間の差が明かでなかった.
    新梢への分配率は,4~6年生時において,また,旧枝への分配率は6~8年生時において,それぞれ主枝数の少ない区の方が高い傾向が認められた.
    葉乾物重当たりの地上部乾物生産量は,処理区間での顕著な差が認められず,葉乾物重当たりの果実乾物重は,主枝数の多い区の方が,高い値で推移した.
    以上の結果より,主枝数が多い整枝法の樹体ほど,果実の乾物分配が多く,果実生産効率が高く,間伐樹として適することが明らかとなった.
  • 吉村 正久, 佐々木 厚, 森山 厳與, 柴原 雄右, 勝田 敬子, 金浜 耕基
    2006 年 5 巻 3 号 p. 297-301
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/25
    ジャーナル フリー
    ストックの開花に及ぼす夜間照射用各種光源の種類と光量の影響について調査した.ストックの開花は,遠赤色電球形蛍光ランプと白熱電球を照射した場合に促進された.その効果は,遠赤色電球形蛍光ランプの照射光量が強くなるほど大きくなった.これらの光源による開花促進効果が大きい時期は,夏まき栽培が行われる開花期の日長が短く,温度の低い時期であった.遠赤色電球形蛍光ランプは,白熱電球と比べ電気代が安く,電球の寿命が長いという利点があり,ほ場で設置しやすく,普及の可能性が非常に高い資材であると考えられた.
  • 東出 忠桐, 青木 宣明, 木下 貴文, 伊吹 俊彦, 笠原 賢明
    2006 年 5 巻 3 号 p. 303-308
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/25
    ジャーナル フリー
    中山間傾斜地の気象特性を活かし,本研究室でこれまでに開発した傾斜ハウスや傾斜地対応型養液供給システムなどを有効に利用できる作目として,ブルーベリーの促成栽培を検討した.ブルーベリーは,移動できるようにコンテナに定植して養液栽培を行った.定植より10~17か月後,各品種の枯死率を調査したところ,‘Earliblue’が最も高く,養液栽培に不適であると判断された.促成栽培では,徳島県三加茂町の中山間傾斜地の露地圃場(標高約300 m)で低温に遭遇させた後,2月初旬に隣接の加温傾斜ハウスに搬入した.促成栽培の開花は,多くの品種で2月下旬から始まり,促成を行なっていない所内(香川県善通寺市)に比べると35日以上も早かった.促成栽培の収穫は,多くの品種で4月下旬~5月上旬に始まり,所内の6月上旬に比べて35日程度早かった.促成栽培では,初期収量は‘Patriot’および‘Weymouth’で多かったが,収穫期間中の収量は‘Northland’および‘Sharpblue’で多かった.‘Sunshineblue’は,収穫のピークが遅く,促成栽培には不向きであった.促成栽培の収穫果実の出荷単価は1 kg当り平均3,389円であり,他の時期に比べて高かった.本実験より,ブルーベリーの促成栽培は,四国をはじめとする中山間傾斜地の施設利用の作型として有望であると考えられる.
  • 于 文進, 荒井 健悟, 加藤 克彦, 今井田 一夫, 西村 直正, 李 蓮花, 福井 博一
    2006 年 5 巻 3 号 p. 309-314
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/25
    ジャーナル フリー
    ミニチュアローズの周年鉢物生産における計画的な生産体系の確立を目的として,1年を通じて日射量と気温などの環境要因と植物体の生育との関係を調査した.生育日数は夏栽培,春栽培,秋栽培の順に長くなった.植物体の生育に及ぼす環境要因の影響を明らかにするために,葉面積,生葉重,生体重,葉数および草丈の各生育指標について,日射量,気温に関する環境要因を説明変数として重回帰分析を行い,説明変数の有意性を検定した結果,積算日射量,積算昼間気温,積算夜間気温が主要な説明変数であった.各生育指標と積算日射量,積算昼間気温および積算夜間気温との関係をみた結果,いずれの生育指標においても有意な相関関係が認められた.各生育指標について,これら3種の環境要因を用いて重回帰分析を行った結果,有意な重相関係数を持つ重回帰式が得られた.重回帰式の変数項と定数項が有意であったことから,積算日射量,積算昼間気温および積算夜間気温を用いた重回帰式によって生育を推定でき,環境要因を制御することでミニチュアローズの生育を制御できることが明らかとなった.
普及・教育・利用
  • 前川 健二郎, 前田 智雄, 大島 千周, 鈴木 卓, 大澤 勝次
    2006 年 5 巻 3 号 p. 315-320
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/25
    ジャーナル フリー
    数種アブラナ科野菜の高機能性スプラウト生産技術を確立するため,抗酸化活性成分含量および抗酸化活性に及ぼす照射光強度の影響について検討した.その結果,栽培中の光強度を高めることで,スプラウトの胚軸長は短くなるものの,フラボノール,アントシアニンおよび総ポリフェノール含量の増加が認められ,抗酸化能(DPPHラジカル補足活性,スーパーオキシド消去活性)も高まった.これらのことから,光を強めた環境で栽培することにより抗酸化活性が高いスプラウトの生産が可能であることが分かった.
  • 鶴永 陽子, 松本 敏一, 倉橋 孝夫, 持田 圭介, 板村 裕之
    2006 年 5 巻 3 号 p. 321-324
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/25
    ジャーナル フリー
    14年生カキ‘西条’を用い,成育中の柿葉におけるアスコルビン酸,イソケルシトリン,アストラガリン,ポリフェノール量含量の推移を検討した.その結果,アスコルビン酸とポリフェノールは6月から7月の含量がもっとも高く,それぞれ3700 mg/100 gDW,16100 mg/100 gDW(アストラガリン相当量)であった.また,イソケルシトリン,アストラガリン含量は5月葉が最も高く,それぞれ480, 520 mg/100 gDWで,その後新梢長の急激な伸長の伴い6月には激減することが明らかとなった.
  • 赤石 拓也, 中川 孝之, 鈴木 健司, 岩佐 博邦, 陳 文西, 小林 登史夫
    2006 年 5 巻 3 号 p. 325-329
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/25
    ジャーナル フリー
    1)2枚の鏡を用いたデジタル画像の解析により,ヤマトイモの立体的形状を簡易かつ定量的に分類・評価する手法を開発した.
    2)4種の形状分類指標を導入し,従来からの生産者の視覚による形状分類との一致率をロジスティック回帰分析により検討した.
    2-1)形状分類指標をそれぞれ単独で用いた場合には,平面重心度が4種の形状指標の中で棒形と扇形の平均一致率が80.6%と最も高い値を示した.
    2-2)ステップワイズ法を用いて有効な形状分類指標を比較・検討した結果,長短度,平面重心度と扁平度が選択され,この3種を組み合わせて分析を行うと棒形と扇形の平均一致率は91.3%と最も高い値を示した.
    3)その形状分類指標を用いて,連続した4年間における形状発現状況を追跡した.
    3-1)‘多古棒系’は年々棒形の発現率が減少し,形状が不安定であった.‘ふさおうぎ’は一定の割合で棒形が発現し,比較的形状が安定しており,それらの形状発現率は同じ栽培環境の下でも品種により異なることを確認した.
    4)三次元形状が重要視される広い園芸作物を対象にして,簡便で省力的な形状記録収集手法と多様な形状評価指標を比較評価した原型(1事例)が確立された.
解説
  • 村上 覚, 末松 信彦, 水戸 喜平, 中村 新市
    2006 年 5 巻 3 号 p. 331-336
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/25
    ジャーナル フリー
    伊豆半島を代表する早咲きザクラである‘カワヅザクラ’の南伊豆地域における開花期を調査し,開花日と気温との関係について検討した.
    4年間の平均開花日(2分咲き日)は,気温が高く推移していた地点では早く,気温が低くする地点では遅くなる傾向を示し,南伊豆地域内においても約1か月の差が確認された.年次間差では4年間の調査で約2週間の違いがあった.開花期間は2分咲きから満開までが平均18日と比較的観賞期間は長かった.開花日(2分咲き日)と気温との相関は,11月下旬から12月上旬にあたる開花前51~70日以降の気温との相関が高かった.河津町田中と南伊豆町青野川堤防における‘カワヅザクラ’の開花状況には個体差 が確認され,地域内で長期間連続して開花を続ける性質が認められた.
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