純生産量(t乾重/ha/年)とその樹体内分配に及ぼす栽植密度の影響を無剪定状態のわい性および半わい性台木利用リンゴ‘スターキング・デリシャス’樹を供試して検討した.個体年間生産量(⊿pn)と果実,葉,枝,幹および根の1樹当たり年間生産量(fd,ld,⊿pb,⊿ptおよび⊿pr)は,各台木樹とも栽植密度(ρ)の増加に伴って減少した.⊿pn,z(ld,⊿pb,⊿ptあるいは⊿pr)およびfdに関する密度効果は,それぞれ1/ ⊿pn = A
1ρ + B
1,1/z = A
2ρ + B
2およびfd = K' exp (−k'ρ)という関係式で表された.純生産量(⊿Pn)と葉,枝,幹および根の純生産量(Ld,⊿Pb,⊿Ptおよび⊿Pr)は,各台木樹とも栽植密度(ρ)の増加に伴って増加した.しかし,果実生産量(Fd)はM.26台木樹以外の台木樹では,それを最大にする最適栽植密度(ρ
opt)が存在した.⊿Pn,Z(Ld,⊿Pb,⊿Ptあるいは⊿Pr)およびFdに関する密度効果は,それぞれ1/ ⊿Pn = A
3 + B
3/ρ,1/Z = A
4 + B
4/ρおよびFd = H'ρ/(A
1ρ + B
1)
h'という式で表された.葉,枝,幹および根への分配率(Ld/ ⊿Pn,⊿Pb/ ⊿Pn,⊿Pt/ ⊿Pnおよび⊿Pr/ ⊿Pn)は,各台木樹とも栽植密度(ρ)の増加に伴って増加したが,果実への分配率(Fd/ ⊿Pn)は減少した.Z/⊿Pn(Ld/ ⊿Pn,⊿Pb/ ⊿Pn,⊿Pt/ ⊿Pnあるいは⊿Pr/ ⊿Pn)とFd/ ⊿Pnに関する密度効果は,それぞれ1/(Z/ ⊿Pn) = A
5 + B
5/ρとFd/ ⊿Pn = K' exp (−k'ρ)という式で表された.果実生産量(Fd)と純生産量(⊿Pn)の関係は,式Fd = −a
1(⊿Pn)
2 + b
1(⊿Pn) + c
1で表され,果実生産量(Fd)と果実への分配率(Fd/ ⊿Pn)の関係は,式Fd = −a
2(Fd/ ⊿Pn)
2 + b
2(Fd/ ⊿Pn) + c
2で表された.純生産量(⊿Pn)と果実への分配率(Fd/ ⊿Pn)の相対的関係を⊿Pn/(Fd/ ⊿Pn)と定義して,果実生産量(Fd)と⊿Pn/(Fd/ ⊿Pn)をlog~log座標に図示すると,両者の関係は(第6図)はlog Fd~logρ曲線(第2図)と同様のパターンを示した.以上の結果から,果実生産量に関する密度効果は,栽植密度によって⊿Pn/(Fd/ ⊿Pn)が変化し,それによって果実生産量が変化する現象と考えられる.
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