園芸学研究
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6 巻, 4 号
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原著論文
土壌管理・施肥・灌水
  • 高野 和夫, 木村 剛, 山本 章吾, 森次 真一, 岡本 五郎
    2007 年 6 巻 4 号 p. 515-519
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/24
    ジャーナル フリー
    1997~1999年に,岡山県南部において‘清水白桃’を栽培する23園で,収穫果実の糖度とそれを生産した樹の葉中NおよびK含量並びに果汁中N含量との関連を調査した.糖度と葉中NおよびK含量並びに果汁中N含量との間にはそれぞれ有意な負の相関が認められ,その相関係数はそれぞれ−0.477,−0.677,−0.616であった.糖度と葉中N含量との相関係数は満開後60日が最も高く,生育時期が進むにつれて低下した.一方,糖度と葉中K含量との相関係数は生育時期による変動が小さかった.また,モモ樹の栄養状態の年次変動と糖度の年次変動との関係を解析した結果,当年の葉中N含量や果汁中N含量が前年よりも減少した樹ほど糖度が上昇する傾向が認められた.
栽培管理・作型
  • 前田 敏, 真野 隆司, 広田 修
    2007 年 6 巻 4 号 p. 521-524
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/24
    ジャーナル フリー
    葉面散布では散布液が短時間に乾くので,葉は充分に溶液を吸うことが出来ない.葉からの吸収量の増加を目的に散布のかわりに一部の葉を水溶液に浸けて吸収量を計測した.なお,葉からの吸収はアポプラスト吸収であり,試験の単純化のために溶液の代わりに水を用いた.
    葉面浸漬によって葉からの吸収量は顕著に増加した.
    また,葉面吸収の原動力の一部は蒸散にあると思われるので,蒸散と葉からの吸水との水分収支を同時測定した.穏やかに晴れた日には,まず蒸散が先行して高まり,吸水が後を追って増加し,夕方には,両者とも急減した.
  • 小池 安比古, 神山 憲嗣, 吉井 あゆみ, 鈴木 重俊, 今西 英雄
    2007 年 6 巻 4 号 p. 525-528
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/24
    ジャーナル フリー
    シュッコンスイートピーの‘ピンクパール’,‘レッドパール’および‘ホワイトパール’の種子および‘ピンクパール’の実生苗に低温処理を施し,最低15℃,16時間日長としたガラス温室で栽培して開花に及ぼす影響を調べた.催芽種子に対する1℃30日間の低温処理が開花に及ぼす影響は認められなかった.播種後200日を経過した‘ピンクパール’実生苗を用い,低温処理期間を8週間とし,処理温度を1,5,10および15℃と変えてその影響をみたところ,1および5℃の処理温度では開花までの日数が短くなり,1番花の着花節位は低くなり,花数の多い長い切り花が得られた.このような効果を得るのに必要な5℃の期間は8週間であった.また,低温に感応する苗齢は播種後110日以上であった.十分に自然低温に遭遇した苗でも,10または12時間日長では開花率は高まらなかったことから,長日条件が開花に絶対的に必要であることがわかった.
  • 奥田 均, 岩崎 光徳, 佐藤 景子
    2007 年 6 巻 4 号 p. 529-533
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/24
    ジャーナル フリー
    ウンシュウミカン樹の主幹と側枝の体積含水率をステンレス釘をプローブにして土壌用携帯型TDR水分計を用いて測定した.5月20日から6月24日に灌水したあとマルチした灌水→マルチ区とこの間マルチし6月24日から7月28日まで灌水したマルチ→灌水区の2区を設定し,両区とも7月28日以降はマルチした.主幹・側枝のVWCは,ともに測定を開始した5月20日から7月中旬にかけて上昇し,その後は安定して9月中旬から下降する季節変化を示した.その間,灌水・降雨・マルチによる土壌水分環境の変化に即して,主幹・側枝のVWCはいずれもよく対応する変化を示したが,測定値のバラツキは主幹で小さかった.6月24日から継続してマルチした灌水→マルチ区のマルチの効果は,7月中旬以降に枝のVWCの低下として現れ,マルチ→灌水区との差は収穫期まで継続した.また,このようなVWCの処理間差や季節変化は果汁成分の中で重要なBrixの差異と関連することが示唆された.
  • 吉田 亮, 田辺 賢二, 田村 文男, 板井 章浩
    2007 年 6 巻 4 号 p. 535-540
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/24
    ジャーナル フリー
    ポット植えのニホンナシ‘ゴールド二十世紀’2年生樹を,主枝本数を2本に制限する2本主枝区と5~6本とする多主枝区の2群に分けた.これらの整枝法で4年生まで育成し,6月と8月に13Cをトレーサーとして炭酸同化させた後解体して,器官別の乾物分配および光合成産物の転流について比較した.2本主枝樹は新梢成長が旺盛だったのに対し,多主枝樹は新梢成長量が少なく,着果数が多かった.器官別の乾物分配率は,2本主枝樹では新梢で高く,多主枝樹では果そう葉,果実,太根および細根で高かった.各器官の13C分配率は,多主枝樹では果実,旧枝,主幹および細根で高く,2本主枝樹では新梢で高かった.以上の結果から,幼木の主枝数を少数に制限せず多主枝とすることで,光合成産物の新梢への分配を減らし,果実への分配を高めることが可能となり,1樹当たりの初期収量を高めることができると考えられた.
  • 星 典宏, 森永 邦久, 横井 秀輔, 浜出 絵理子, 草塲 新之助, 島崎 昌彦
    2007 年 6 巻 4 号 p. 541-546
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/24
    ジャーナル フリー
    ウンシュウミカンの適正な水管理に利用するために樹体の水分状態を簡易に視覚的に把握できる“水分ストレス表示シート”を開発した.これは素材に塩化コバルトを用いることで,蒸散により葉裏面から放出される水分に応じて色調が変化し,色調の変化度合いから樹体の水分状態とLWP(Ψmax)を推定できるものである.そのためにプレッシャーチャンバー法により測定したウンシュウミカン樹のLWP(Ψmax)と日中の蒸散速度との対応関係を明らかにした.
    その結果,夏季のウンシュウミカンに対して,おおよそ正午前後1時間の時間帯に十分直達日射を受けている春葉に対して水分ストレス表示シートを複数枚の葉の裏側に貼り付けることにより水分状態を把握できること,貼り付け後5分経過後の吸湿性素材の色が淡赤色に変色すると,LWP(Ψmax)は,−0.8 MPa程度の水分ストレス状態であることを明らかにした.また,5分経過後の吸湿性素材の淡赤色への変化が少ないほど,樹の水分ストレス状態が高まっていることを示し,樹体の水分状態の把握ならびに適正なかん水時期を判断する指標などに利用することも明らかにした.
  • 井上 勝広, 重松 武, 尾崎 行生
    2007 年 6 巻 4 号 p. 547-551
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/24
    ジャーナル フリー
    アスパラガスの半促成長期どり栽培において,立茎開始時期と親茎の太さが若茎の階級別収量に及ぼす影響について検討した.
    立茎開始時期が遅いほど春芽の収量は高かったが,夏芽の収量は減少した.全期間の収量性は春芽の収穫開始50~60日後に立茎した区で最も高かった.
    また,直径10~14 mmの親茎を立茎した場合に,夏芽,翌年の春芽,年間収量およびL級の収量が最も高かった.
  • 佐藤 景子, 杉原 巧祐, 岩崎 光徳, 奥田 均
    2007 年 6 巻 4 号 p. 553-557
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/24
    ジャーナル フリー
    NAAの早期加温型ハウスミカンの着花性と枝梢内成分に及ぼす影響を現在慣行的に使用されているエチクロゼート剤を対照として比較検討した.着花への影響では,枝挿しの結果からNAA区はエチクロゼート区と比較して生理的花芽分化が早いこと,満開時の着花調査から同区では有葉花を中心に着花が多いことが明らかになった.着花が多かったNAA区では,葉,枝ともにデンプン含量が高く,逆に,窒素含量は葉,枝とも低く推移し,C/N比も高くなったことから,生理的花芽分化量がエチクロゼート区に比較してNAA区で多くなることが栄養面からも示された.
  • 福岡 信之, 工藤 卓雄, 桟敷 孝浩, 増田 大祐, 金森 友里, 榎本 俊樹
    2007 年 6 巻 4 号 p. 559-564
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/24
    ジャーナル フリー
    異なる被覆資材を用いてダイコンを栽培した場合の内部褐変症の発生状況を調査し,これらのデータを基に内部褐変症の障害の進展に関与する温度条件をロジット・モデルにより解析した.その結果,日最高気温を35℃以上または日最高地温を29℃以上とし,その遭遇日数を説明変数とした場合に最もマクファーデンR2の値が高かった.このケースでの障害発生状況に関する正しい予測の割合は,「level 1以上発生モデル」と「level 2以上発生モデル」が約90%,「level 3以上発生モデル」と「level 4以上発生モデル」が80%以上であった.
  • 前田 隆昭, 米本 仁巳, 樋口 浩和, 奥田 均, 萩原 進, 谷口 正幸
    2007 年 6 巻 4 号 p. 565-569
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/24
    ジャーナル フリー
    ブドウサンショウ栽培においては,秋期の落葉による不時発芽の抑制や,有利販売のための早期出荷を目的とした加温栽培を行う上で,休眠期を明らかにする必要がある.そこで,10月以後の異なる時期に採取した枝を用いた枝挿し法により休眠期を調査するとともに,ポット苗を用いて1月以後の加温試験により休眠覚醒期を調査した.その結果,平均気温10℃以下,平均地温15℃以下になる11月下旬から自発休眠が深くなり,この時期に葉の黄化現象がみられ,1月下旬に休眠覚醒することが判明した.また,5℃以下の積算時間が1000時間以上になる頃が休眠から覚める目安であり,加温すると10日以内で発芽したので,この低温要求量が早期出荷を目的とした加温栽培において,加温を開始する時期の指標となると考えられる.
発育制御
  • 別府 賢治, 矢内原 碧, 池田 貴之, 片岡 郁雄
    2007 年 6 巻 4 号 p. 571-576
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/24
    ジャーナル フリー
    甘果オウトウの多雌ずい形成に関わる植物ホルモンについて検討した.
    1.‘佐藤錦’の花束状短果枝にNAA,ABA,GA3,BA,エセフォンをそれぞれ100 ppmで散布したところ,BA区やエセフォン区で多雌ずい花の発生率が対照区に比べて増加した.一方,NAA,ABA,GA3区では多雌ずい花の発生率が低かった.
    2.BAを50 ppmおよび100 ppmで,‘佐藤錦’および‘ナポレオン’の花束状短果枝に散布したところ,花芽分化が促進され,多雌ずい花の割合が増加した.
    3.エセフォンを100 ppmおよび200 ppmで,‘佐藤錦’の花束状短果枝に散布したところ,花芽分化の進行が遅れ,多雌ずい花の発生率が増加した.
    4.20℃,30℃,35℃の人工気象室に1週間置いた‘佐藤錦’の花束状短果枝のエチレン生成量は,処理温度が高いほど大きくなった.
    以上の結果から,BAやエセフォンの処理により多雌ずい形成が誘導されることが示された.エセフォン処理では花芽分化の進行が高温処理と同様に抑制されたこと,さらに,高温により花束状短果枝のエチレン生成量が増加したことから,高温による多雌ずい形成にエチレンが関わっている可能性が示唆された.一方,BA処理では高温処理と異なり花芽分化の進行が促進されたことから,BAによる多雌ずい形成の機構は,高温により誘導する場合とは異なることが考えられた.
  • 佐々木 和也, 西島 隆明, 本多 和茂, 嵯峨 紘一, 鮫島 正純
    2007 年 6 巻 4 号 p. 577-583
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/24
    ジャーナル フリー
    DIF(昼夜温度差),TD(短時間降温)およびTR(短時間昇温)がシネンシス系デルフィニウム‘ブルーミラー’の生育に及ぼす影響について調査した.草丈は,−DIF(暗期よりも明期の温度が低い)により,+DIF(暗期よりも明期の温度が高い)に比べ42~49%減少した.明期開始前後4時間,10℃のTDは,草丈に影響しなかった.一方,暗期開始後4時間,30℃のTRは,+DIFに比べ草丈を22~33%減少させた.−DIF処理した茎の髄細胞の長径と短径は,いずれも+DIFに比べ約20%減少した.髄細胞数は,垂直方向で+DIFに比べ26%減少したのに対して,水平方向での減少は5%にすぎなかった.シネンシス系デルフィニウムのシュートにおける内生GAとして,GA9とGA24が同定された.GA24濃度は,−DIFでは+DIFよりも低く,DIFはジベレリン代謝を介して茎伸長を制御していることが示唆された.
  • 福岡 信之, 金森 友里, 増田 大祐, 清水 恵美
    2007 年 6 巻 4 号 p. 585-590
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/24
    ジャーナル フリー
    スイカの果実肥大を機械的に抑制し,果実の糖含量や果肉細胞の大きさを調査した.一辺20 cmの立方体の容器にスイカ果実を開花後15日目から30日間入れて肥大抑制を行うと,果実中心部ではスクロース含量が低下し,皮境部ではスクロース含量が増加した.この果実の果肉細胞を観察したところ,中心部では維管束が発達し果肉細胞は小さかったが,皮境部では果肉細胞は大きかった.
    以上より,果実肥大の機械的な抑制処理を行うと,果実中心部の維管束が成熟期まで維持され,皮境部へ持続的にスクロースが供給されるため,果皮周辺部では細胞の肥大成長とこの細胞へのスクロースの集積が促進されるものと考えられた.
収穫後の貯蔵・流通
  • 水口 聡, 市村 一雄, 久松 完, 腰岡 政二
    2007 年 6 巻 4 号 p. 591-596
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/24
    ジャーナル フリー
    さまざまな濃度のスクロース処理液が蕾切りカーネーションの蕾生育および切り花品質に及ぼす影響を調査するとともに,蕾生育中の切り花の各部位における糖質濃度の変化を解析した.
    処理液のスクロース濃度は開花所要日数には大きく影響しなかったが,スクロース濃度を高くすると,花径が大きくなり花色発現が促進された.
    カーネーション切り花中には,スクロース,グルコース,フルクトース,ピニトールおよびミオイノシトールが検出された.自然生育区では,がく,葉,茎の糖質濃度はほぼ一定に保たれていたが,花弁では開花にともないグルコースとフルクトースの濃度が顕著に増加した.スクロース0%処理ではいずれの部位でもピニトール以外の糖質が開花にともない著しく低下した.スクロース5%処理では自然生育区と比較すると低い濃度で推移したが,糖質濃度の低下は抑制され,花弁中のグルコースとフルクトース濃度の上昇が認められた.自然生育区,0%区,5%区ともにピニトール濃度はほとんど変化しなかった.
    以上の結果から,スクロースは蕾切りカーネーション切り花中の糖質濃度を増加させ,花の大きさを増大するとともに花色発現を促進することが明らかとなった.
  • 増田 大祐, 福岡 信之, 後藤 秀幸, 加納 恭卓
    2007 年 6 巻 4 号 p. 597-601
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/24
    ジャーナル フリー
    ‘高系14号’の甘味の向上を図るため,3,5,10,13℃下で20日間の貯蔵が糖含量や甘味度におよぼす影響を調査した.その結果,スクロース含量は3℃と5℃の貯蔵温度で,グルコース,フルクトース含量は10℃,13℃の貯蔵温度で急速に増加した.また,マルトース含量は処理温度に関係なく,処理後の日数経過に伴って低下した.この結果,蒸しイモの甘味度は5℃と10℃の貯蔵温度で最も高かった.しかし,5℃以下の温度では処理後に腐敗の発生が顕著であったため,短期間で甘味の向上を図るには10℃で貯蔵することが有効と考えられた.
解説
  • 元木 悟, 西原 英治, 高橋 直志, Hermann Limbers, 篠原 温
    2007 年 6 巻 4 号 p. 603-609
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/24
    ジャーナル フリー
    アスパラガスのアレロパシー物質に対して吸着性能が優れた活性炭を,育苗培養土に混合し,その影響を調べた.その結果,育苗時の根から滲出されるアレロパシー物質を活性炭が吸着し,生育が早まり,育苗期間を短縮させる可能性があることが示唆された.本手法を8科30種の園芸作物に適用した結果,トマト,トルコギキョウ,レタス,キュウリ,キャベツ,ブロッコリーおよびアスパラガスなどで対照区に比べて育苗培養土に活性炭を混合あるいは添加した効果が認められた.なお,育苗培養土への活性炭添加の効果には品種間差異が認められたが,アレロパシー活性が高いと報告されている園芸作物に対しては生育を早めさせたことから大いに利用できる技術であると考えられた.
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