甘果オウトウの多雌ずい形成に関わる植物ホルモンについて検討した.
1.‘佐藤錦’の花束状短果枝にNAA,ABA,GA
3,BA,エセフォンをそれぞれ100 ppmで散布したところ,BA区やエセフォン区で多雌ずい花の発生率が対照区に比べて増加した.一方,NAA,ABA,GA
3区では多雌ずい花の発生率が低かった.
2.BAを50 ppmおよび100 ppmで,‘佐藤錦’および‘ナポレオン’の花束状短果枝に散布したところ,花芽分化が促進され,多雌ずい花の割合が増加した.
3.エセフォンを100 ppmおよび200 ppmで,‘佐藤錦’の花束状短果枝に散布したところ,花芽分化の進行が遅れ,多雌ずい花の発生率が増加した.
4.20℃,30℃,35℃の人工気象室に1週間置いた‘佐藤錦’の花束状短果枝のエチレン生成量は,処理温度が高いほど大きくなった.
以上の結果から,BAやエセフォンの処理により多雌ずい形成が誘導されることが示された.エセフォン処理では花芽分化の進行が高温処理と同様に抑制されたこと,さらに,高温により花束状短果枝のエチレン生成量が増加したことから,高温による多雌ずい形成にエチレンが関わっている可能性が示唆された.一方,BA処理では高温処理と異なり花芽分化の進行が促進されたことから,BAによる多雌ずい形成の機構は,高温により誘導する場合とは異なることが考えられた.
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