園芸学研究
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8 巻, 1 号
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原著論文
育種・遺伝資源
  • 山岸 博, 山下 陽子
    2009 年 8 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/25
    ジャーナル フリー
    京都府舞鶴地方の在来ダイコンである‘佐波賀’の起源を推定することを目的として,‘佐波賀’および舞鶴市に自生するハマダイコンについて,オグラ型細胞質雄性不稔性の原因遺伝子であるorf138と,これに対する稔性回復遺伝子のorf687のタイプを,PCR-RFLPによって解析した.‘佐波賀’のorf138は,他の栽培ダイコンには見出されていないEタイプで固定しており,また調査したすべての個体が,稔性回復遺伝子として,すでに単離された‘園紅’型のorf687を有していた.舞鶴市で収集したハマダイコンの9集団97個体について,orf138orf687を解析したところ,orf138を持つ個体が25個体認められ,そのうちの3個体がEタイプであった.その一方で,‘園紅’型のorf687を持つ個体が,正常型細胞質のものに6個体,オグラ型細胞質のものに8個体観察され,後者のうち2個体はEタイプのorf138を有していた.これらのことから,舞鶴地方に自生するハマダイコンの中で,Eタイプのorf138と‘園紅’型のorf687を合わせ持つ個体が栽培化されて,‘佐波賀’が成立したと結論づけられた.
  • 福田 伸二, 吉田 俊雄, 稗圃 直史, 佐藤 義彦, 寺上 伸吾, 山本 俊哉, 富永 由紀子, 根角 博久
    2009 年 8 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/25
    ジャーナル フリー
    ビワの果肉色の遺伝様式を解明するために,32組合せから1,643のF1個体を育成し,果肉色の分離様式を調査した.黄白色タイプの品種同士の交雑後代では,黄白色タイプ個体のみが出現し,橙黄色と黄白色タイプの品種間の交雑後代では,すべてが橙黄色タイプ個体の組合せと橙黄色または,黄白色タイプ個体が1 : 1で出現する組合せが存在した.橙黄色タイプの品種間の交雑後代では,すべてが橙黄色タイプ個体の組合せまたは,橙黄色および黄白色タイプ個体が3 : 1の割合で分離する組合せが存在した.以上の結果から,橙黄色を支配する遺伝子は黄白色を支配する遺伝子に対して優性であることが明らかとなった.橙黄色を支配する遺伝子をCaと命名し,橙黄色タイプ品種はCa/CaもしくはCa/ca,黄白色タイプ品種はca/caの遺伝子型を持つと推定された.バルク法により280種類のオペロンプライマーを供試して,果肉色と連鎖するマーカーの探索を行った結果,‘麗月’ב天草極早生’のF1集団においてCa遺伝子と組換え価0.081(LOD値6.7)で連鎖するRAPDマーカー(OPH-01/1800)を取得した.OPH-01/1800マーカーは,供試した橙黄色品種の78%,黄白色タイプ品種の100%において果肉色タイプと一致し,マーカー選抜による効率的な育種の推進が可能となった.
  • 荒川 浩二郎, 南 峰夫, 中村 浩蔵, 松島 憲一, 根本 和洋
    2009 年 8 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/25
    ジャーナル フリー
    レタスに含まれる機能性成分であるセスキテルペンラクトン類(SLs)高含量品種の開発において,的確にSLs含量を評価し,選抜するための分析用試料採取方法の確立を目的として,レタス3品種を供試して,部位および生育ステージによるSLs含量の差異をHPLCを用いて調査した.外葉,結球葉(外),(内),芯の4部位間でSLs含量に有意な差が認められた.SLs含量の部位間の相関関係を見ると,外葉と収穫対象である結球部全体の間で有意ではないが高い相関係数が得られた.外葉は採取しても抽苔開花に影響せず,種子を得られることから,分析用試料として利用できると考えられた.結球開始期,収穫適期,過熟期における結球部のSLs含量は,生育ステージが進むほど有意に増加した.結球開始期から有意な品種間差が認められ,収穫適期の含量と有意な相関関係が認められたことから,結球開始期の試料による早期検定が可能と考えられた.
土壌管理・施肥・灌水
  • 石川 啓
    2009 年 8 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/25
    ジャーナル フリー
    ウンシュウミカン樹において春肥施用時期の月間差が樹体による施肥窒素の吸収・移行特性に及ぼす影響を明らかにするため,15Nトレーサー法を用いて圃場試験とポット試験を行った.春肥窒素は3月1日,4月1日,5月1日に施用した.圃場試験における春肥窒素施用後の樹体による吸収速度は,5月区≧4月区 > 3月区の順であった.旧葉の15N寄与率は,3月区と4月区は類似した増減を示し,施用後から5月上旬まで急速に増加し,5月下旬から漸減した.5月区は両者に比べて常に低く推移した.新葉,果実など春季新生器官における15N寄与率は,5月上旬~6月上旬までの間は3月区と4月区が5月区より明らかに高かった.しかし,6月下旬以降になると5月区が最も高くなり,次いで4月区,3月区の順で推移した.一方,12月上旬に解体したポット樹による春肥窒素の利用率は,3月区が31.5%,4月区で34.6%,5月区は37.1%であった.以上のことから,施肥効率向上のために,春肥の施用時期は萌芽期直前の4月上旬頃が適していると判断された.
栽培管理・作型
  • 鈴木 隆志, 野村 康弘, 嶋津 光鑑, 田中 逸夫
    2009 年 8 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/25
    ジャーナル フリー
    夏秋トマト雨よけ栽培において,放射状裂果の発生は,経済的損失をもたらす重大な要因となっている.放射状裂果の発生要因を明らかにするため,摘果および二酸化炭素施用処理によってシンク強度やソース強度を調整し,光合成産物の転流,分配の影響について検討するとともに,果房被覆処理によって果実表皮への日射の影響について検討した.放射状裂果の発生は,摘果や二酸化炭素施用によって増加し,果房被覆によって減少した.2004年の時期別の放射状裂果の割合は,8月下旬と10月下旬に明らかに上昇し,その時期の収穫果実は重かった.これらの結果から,放射状裂果の発生には,葉(ソース)から果実(シンク)への光合成産物の転流,分配が促進されることによる過度の果実肥大と果実に対する日射が大きく関与していると推察された.さらに,放射状裂果発生とコルク層の発達の間には関連性が示唆された.
  • 西山 学, 海老原 康仁, 金浜 耕基
    2009 年 8 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/25
    ジャーナル フリー
    低温に遭遇したイチゴの四季成り性品種‘夏芳’,‘大石四季成’,‘みよし’,‘大和四季成’を供試して,30/25℃の高温条件下において日長処理を16週間行ったところ,いずれの品種も質的長日性を示し,‘夏芳’は14時間以下,‘大石四季成’は13時間以下,‘みよし’は12時間以下,‘大和四季成’は15時間以下の日長で花芽分化が停止した.また,低温に遭遇していない‘夏芳’と‘大石四季成’も,低温に遭遇した株と同様に,それぞれ14時間以下,13時間以下の日長で花芽分化が停止し,質的長日性を示し,限界日長は品種間で異なることが明らかとなった.
  • 今村 仁, 須藤 憲一, 池田 広
    2009 年 8 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/25
    ジャーナル フリー
    トルコギキョウの種子登熟期に未熟な朔果(未熟果)に対する温度処理を行い,登熟時の温度条件が高温下で播種された実生の抽だいに及ぼす影響を調査した.登熟時の高温(38/28℃:昼/夜)は,涼温(23/18℃)と比較して抽だい率を低下させた.また,涼温条件と,暖地の雨よけハウスにおける夏から秋にかけての温度条件で登熟させた種子の抽だい率はほぼ同じになった.受粉後3週間の‘彩の桜’の未熟果を花梗をつけて植物体から切り取り,糖を含む切り花保存剤を与えながら10,15,20,25℃の温度に3~11週間置いた場合,10℃では3~9週間,15℃では7~9週間の温度処理をしたときに抽だい率が高くなった.受粉から7または9週間後に切り取った‘彩の桜’未熟果を,種子が乾燥するまで5.5,9.5,13.5,17.5,21.5℃の温度に乾燥状態で置くと,5.5~17.5℃の範囲で実生の抽だい率が高くなった.これらの結果から,種子は登熟中の温度の影響を発芽後も保持しており,登熟中に与えられた低温は抽だいを促進する効果のあることが明らかとなった.また,未熟果を植物体から切り離すこと自体にも抽だいを促進する効果があり,加えて植物体から切り離した未熟果は低温に感応して,その種子は高い抽だい率を示した.
  • 福岡 信之, 増田 大祐, 池下 洋一, 金森 友里
    2009 年 8 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/25
    ジャーナル フリー
    サツマイモ‘高系14号’の塊根の内部褐変症の発生に関与する組織形態的および生化学的要因について検討した.内部褐変症の発生は塊根成熟期に認められ,この時期の塊根重の急激な増加によって障害の症状が進展し,この時期に高温処理して塊根肥大を抑制すると,障害の発生が抑えられた.内部褐変症が発生した塊根と健全根で根部組織を比較した結果,障害根は崩壊した柔細胞の痕跡が随所にみられた.また,障害根は健全根に比べ,PPO活性が高く,GSHR活性が低かった.以上より,塊根成熟期の細胞崩壊によるアスコルビン酸グルタチオン回路での活性酸素の消去機能の低下が,PPOを介した活性酸素の消去系を活性化し,このことが褐変現象を誘起する一原因となったものと考えられた.
  • 塚越 覚, 畔元 明子, 北条 雅章, 丸尾 達, 篠原 温
    2009 年 8 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/25
    ジャーナル フリー
    オクラのイボ果発生に及ぼす朔果への細菌散布,副がく片接触および湿度の影響について検討した.イボの部分から細菌が検出されたが,細菌の果皮への散布はイボ果の発生に影響しなかった.副がく片を人為的に果皮に接触させると,イボ果率が増加した.殺菌剤の散布後に副がく片を接触させると,接触のみを行った場合に比べて,イボ果率が高くなった.そこで,殺菌剤散布と水散布を比較したところ,両者ともに高いイボ果率を示した.高湿度環境下では,副がく片接触を行わない場合でも,イボ果率が高かった.しかし,副がく片を除去すると,イボ果率は湿度環境にかかわらず顕著に低くなった.以上のことから,副がく片表面の毛じが果皮に接触することがイボ果発生の直接的な要因と考えられ,高湿度環境下で接触が助長される可能性も示唆された.
  • 梶原 真二, 延安 弘行, 勝谷 範敏, 後藤 丹十郎
    2009 年 8 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/25
    ジャーナル フリー
    熱融着性ポリエステル繊維で固化させた培地素材の種類が,閉鎖型養液栽培におけるバラの切り花本数,品質および培養液組成に及ぼす影響について‘アサミ・レッド(ローテローゼ)’を用いて調査した.切り花本数は,ロックウールと比較して,バーミキュライト(粒径1.5~2.0 mm,または6~7 mm)およびコイア(繊維長3 mm)では有意に大きかったが,パーライト(粒径0.6~1.5 mm,または2.5 mm)では有意に小さかった.切り花長は,パーライト小粒で小さかったが,切り花重に有意な差はなかった.定植18か月後の培地の大きさは,ロックウールおよびコイアで厚さのみわずかに小さくなった.定植18か月後の培地の硬度は,定植前と比較していずれの培地も同等であった.培養液のpHは,いずれの培地でも,ロックウールと比較して低く推移した.ECは,コイアで他の培地と比較して高く推移した.NH4-N濃度は,すべての培地で低下する傾向にあったが,他の無機成分濃度は,すべての培地で上昇する傾向にあり,コイアで特に高めに推移した.以上の結果から,バラの閉鎖型養液栽培におけるロックウール代替培地として,粒径1.5~2.0 mm,または6~7 mmのバーミキュライトおよび繊維長3 mmのコイアを固化させた培地が適すると判断された.
  • 地子 立, 田中 静幸
    2009 年 8 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/25
    ジャーナル フリー
    本研究ではハウス半促成春どり栽培における遮光フィルム被覆によるホワイトアスパラガス生産の可能性を調査した.その結果,若茎萌芽前に高さ2.0 mのトンネルを設置して遮光フィルムを被覆すると,ハウス内でアントシアニンによる着色がないホワイトアスパラガスを生産できた.また,グリーンアスパラガス栽培と比較すると規格内若茎本数は減少したが,規格内若茎重が増加したため,規格内収量に差は認められなかった.遮光フィルム被覆により生産されたホワイトアスパラガス若茎はグリーンアスパラガス若茎とは異なる特性を示し,若茎頭部のしまりが密で,若茎中央部の茎径が大きかった.さらに,10分間茹でた若茎の硬さはグリーンアスパラガス若茎よりも硬い傾向にあった.
発育制御
  • 池田 隆政, 田村 文男, 吉田 亮
    2009 年 8 巻 1 号 p. 73-79
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/25
    ジャーナル フリー
    開花期から約40日間の気温がニホンナシ‘ゴールド二十世紀’の新梢伸長および果実発育に及ぼす影響について調査した.側芽から発生する10 cm以上の新梢本数は昼夜温度差(DIF)が大きくなるほど増加した.同程度の平均気温の場合,果実の生育は,DIFの少ない方が早くなった.以上の結果,DIFを考慮することにより,生育予測技術の精度向上およびハウス栽培における10 cm以上の新梢本数や果実の生育速度制御の可能性が認められた.
  • 楊 学虎, 冨永 茂人, 平井 孝宜, 久保 達也, 山本 雅史
    2009 年 8 巻 1 号 p. 81-86
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/25
    ジャーナル フリー
    タンカン(Citrus tankan Hayata)‘垂水1号’の生理・生態的特性について明らかにするために,開花および生理落果(花)の波相ならびに結実について結果枝の着葉数別に調査した.開花は4月下旬に始まり,5月上旬にピークを持つ正規分布型の波相を示し,5月中旬に終了した.着葉数0枚(直花)~3枚の花の開花は早く,4枚以上では着葉数が多くなるほど遅れて開花した.生理落果(花)は4月下旬の開花開始期から始まったが,第一次生理落果(花)が極めて多く,そのピークは5月中旬であった.第二次生理落果の割合は低かったが,開花40~60日後の6月上・中旬に低いピークを示した.花蕾の落下は極めて少なかった.結果枝の着葉数が0枚の直花は開花した花の50%以上を占めたが,そのほとんどが落下し,結実率は1%前後であった.有葉花では着葉数が多くなるほど結実率が高かった.第一次生理落果(花)および第二次生理落果する果実は結実する果実と比べて発育が劣った.
  • 土橋 豊
    2009 年 8 巻 1 号 p. 87-91
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/25
    ジャーナル フリー
    栽培期間中の上白糖(スクロース98%以上含有)葉面散布が切り花用トルコギキョウおよびキンギョソウ花壇苗の品質に及ぼす影響を検討した.0.1%上白糖の4回葉面散布により,トルコギキョウの花数が有意に増加するとともに,切り花長と花数に基づく階級別品質指数が増加した.一方,0.1%上白糖の2回葉面散布により,キンギョソウ花壇苗の暗黒条件下の葉色の退色の軽減,および無加温ガラスハウスの開花数の増加が認められた.以上の結果,栽培期間中の上白糖葉面散布処理は,両植物の品質保持,または向上に有効であることが明らかになった.
  • 土橋 豊
    2009 年 8 巻 1 号 p. 93-99
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/25
    ジャーナル フリー
    数種類の花壇苗において,育苗期間中の遠赤色光透過抑制フィルムの処理時期および処理期間が生育・開花に及ぼす影響について検討した.遠赤色光透過抑制フィルム被覆処理を鉢上げから3週間行うと,サルビア,ニーレンベルギア,ニチニチソウ,マリーゴールド,パンジーでは無処理区に比べて草丈が有意に抑制され,パンジーでは花柄長が有意に減少することが明らかになった.なお,サルビア,ニーレンベルギア,マリーゴールドでは,鉢上げから3週間処理により,開花が遅延する傾向が認められた.また,キンギョソウでは遠赤色光透過抑制フィルムを鉢上げから4週間被覆すると,草丈が無処理区に比べ有意に抑制され,このことは第3節間より上の節間長の減少に起因すると考えられた.
収穫後の貯蔵・流通
  • 小宮山 誠一, 加藤 淳, 目黒 孝司, 山口 敦子, 山本 愛子
    2009 年 8 巻 1 号 p. 101-107
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/25
    ジャーナル フリー
    野菜の品質向上を目指した品種・栽培・貯蔵などに関する研究の効率化には,客観的な品質評価法の確立が重要である.ここでは,異なるダイコン品種を用い,生および浅漬け加工後のテクスチャー(硬さ)について物性測定機器による評価法を検討し,官能評価による硬さ評価値と整合性の高い客観的評価法を開発した.すなわち,ダイコンの各部位から調製したディスク試料(直径10 mm,厚さ5 mm)について,テクスチャーアナライザーを用い,直径25 mmアルミニウム製円筒型プローブにより圧縮したときの破断時荷重により,硬さを評価できた.浅漬けの場合,この破断時荷重に試料間で約13 N以上の差があれば,官能により硬さの差を明確に識別できると考えられた.また,生および浅漬け加工後の試料の硬さに品種間差異が認められ,これらはペクチンおよびAIS含有率と密接に関係していた.
普及・教育・利用
  • 知野 秀次, 松本 辰也, 太田 祐樹, 児島 清秀
    2009 年 8 巻 1 号 p. 109-114
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/25
    ジャーナル フリー
    セイヨウナシ‘ル・レクチエ’における追熟中の果実の第2共鳴周波数および弾性指標(振動応答技術によって測定された剪断係数の相対値)を新規の非破壊測定装置でモニターした.さらに,果実重,果肉硬度および可溶性固形物濃度の変化を測定し,弾性指標と果実特性との関係を示した.収穫時の果実の弾性指標は48~65(×106)であり,追熟中に低下した.弾性指標の低下パターンは果実によって異なり,処理後40日に可食状態に達した時の弾性指標は18~25(×106)であった.個々の果実おける物性の変化を弾性指標によって連続的に追跡でき,収穫時の果実の品質や追熟中の軟化パターンの違いが完熟時(処理後40日)における熟度のばらつきの原因になることが示唆された.果実重および果肉硬度は追熟中に低下したが,可溶性固形物濃度は上昇し,これらの果実特性は弾性指標と相関があった.これらの結果は,追熟中の‘ル・レクチエ’果実の可食期を弾性指標によって推定でき,その弾性指標は含水率と可溶性固形物濃度の影響を受けることを示唆している.
新品種
  • 峯村 万貴, 泉 克明, 山下 裕之, 塚原 一幸
    2009 年 8 巻 1 号 p. 115-122
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/01/25
    ジャーナル フリー
    ‘ナガノパープル’は,長野県果樹試験場において四倍体ブドウの‘巨峰’と二倍体ブドウの‘ロザリオ ビアンコ’の交雑組み合わせから選抜された三倍体ブドウであり,2004年に種苗法に基づき品種登録された.1990年に交雑し,交雑胚は胚珠・胚培養により養成した.成熟期は育成地で9月上旬(満開後85日頃)である.果房は160~170 g程度の大きさ,果粒は円形で5~6 g程度の大きさであり,果粒の一部に種子の含有が認められる.果皮色は紫黒色である.果皮と果肉の分離は難で,果肉特性は崩壊性である.果汁の甘味は強く,酸含量は少なく,フォクシーフレーバーがある.裂果の発生がみられる.満開時と満開後14日頃の2回のジベレリン処理(25 ppm液)により480~490 g程度の果房と13~14 g程度の果粒が得られ,果粒は完全に無核となる.ジベレリン処理果では無処理果に比べて裂果の発生が少ない傾向であった.花穂の着生は良好であり,短梢剪定による安定的生産が可能と考えられた.
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