園芸学研究
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9 巻, 4 号
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原著論文
育種・遺伝資源
  • 巣山 拓郎, 谷川 孝弘, 山田 明日香, 松野 孝敏, 國武 利浩
    2010 年 9 巻 4 号 p. 387-394
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    H. serrataH. macrophyllaの種間雑種の早期育成を図るため,胚珠培養および開花調節による育成年限短縮について検討した.H. serrataH. macrophyllaの種間交雑を6月に行い,得られた雑種個体を交雑翌年の6月より自然光下で,15℃,60日間の涼温処理を行い花成を誘導した.次に5℃,50日間の低温処理を行い休眠を打破した後,加温したハウス内で栽培した.雑種個体は交雑から約1年半後の12月に開花し,4組の交雑組み合わせにより得られた雑種個体の開花率は77~96%であった.この12月に開花した雑種個体‘04MaP1’とH. macrophylla‘墨田の花火’間で交雑を行い,交雑60日後に胚珠培養を行った.得られた雑種個体を25℃,16時間日長の培養室および順化室内で生育させ,7月より無加温のガラスハウスで栽培し,翌年2月より夜間最低気温15℃で加温した.雑種個体は12月の交雑から約1年半後の4~5月に開花した.本研究により,H. serrataH. macrophyllaの交雑から約3年で交雑第2世代の開花個体を獲得することが可能であることが明らかとなった.
  • 岡本 章秀, 嬉野 健次
    2010 年 9 巻 4 号 p. 395-401
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    クルメツツジの変異拡大を目的に,クルメツツジ品種の交雑相手としての有鱗片シャクナゲの有用性を検討した.ヒカゲツツジおよびゲンカイツツジ各1個体を花粉親に用い,クルメツツジ8品種に交雑した.交雑隔離の程度および得られた実生の特性を,以前に行なったキレンゲツツジを花粉親とした場合と比較した.ヒカゲツツジを花粉親としたとき,白子の発生が著しかった.ゲンカイツツジを花粉親としたとき,不発芽および白子の発生が著しかった.従って,これらの交雑では,キレンゲツツジを花粉親としたときよりも交雑隔離が強いと評価された.実施した16交雑組合せ中,クルメツツジ‘呉服’ × ヒカゲツツジから健全な生育を示す実生が12個体得られた.それらのうち,5個体が交雑5年後に開花した.花の大きさはクルメツツジ品種と同大であった.葉は革質で,両親よりも強い光沢を伴った.これらは,キレンゲツツジを花粉親とした交雑から得られた実生にはみられない園芸的利用価値の高い特性であった.雑種実生4個体についてPCR-SSCP分析を行った結果,色素体DNAは父性遺伝していた.
  • 村上 覚, 末松 信彦
    2010 年 9 巻 4 号 p. 403-408
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    伊豆地域の秋採りキヌサヤエンドウにおいて重要病害である先端黄白化症に対して抵抗性を持つ‘伊豆みどり’を育成した.先端黄白化症に対する抵抗性は,耐暑性を有する‘あずみ野30日絹莢PMR’から導入した.先端黄白化症抵抗性は,優性の核遺伝子によって支配される形質であった.‘伊豆みどり’は,‘あずみ野30日絹莢PMR’に伊豆地域で広く栽培されている‘伊豆1号’を交配したF1に対し,さらに‘伊豆1号’を2回戻し交雑することにより育成した.‘伊豆みどり’は,先端黄白化症に対して高度な抵抗性を持っていた.‘伊豆みどり’の草丈,節数,分枝数,第一着莢節位はいずれも‘伊豆1号’と有意な差はなく,生育特性は同等であった.莢については,長さ,幅,へた長,厚さ,重さ,緑色度のいずれも‘伊豆1号’と有意な差はなく,品質は同等であった.収量,早晩性についても‘伊豆1号’と同等であった.以上のことから,‘伊豆みどり’は先端黄白化症抵抗性以外の実用形質は‘伊豆1号’と同等であることが確認された.このため,‘伊豆みどり’は伊豆地域の秋採り栽培において普及することが期待される.
  • 佐藤 義彦, 寺井 理治, 齋藤 寿広, 阿部 和幸, 西端 豊英, 壽 和夫
    2010 年 9 巻 4 号 p. 409-413
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    分子マーカーで推定されているニホンナシ‘筑水’,‘新世紀’,‘清玉’および‘豊水’の自家不和合性遺伝子(S遺伝子)の表現型(S表現型)を交雑試験により検証した.まず,交雑試験と後代検定により,‘菊水’ × ‘長十郎’の後代実生集団からS3S4遺伝子型の表現型を検定できる指標植物としてFC-14を選抜した.‘筑水’,‘新世紀’および‘清玉’はFC-14と交雑不和合性を示したことから,これらの品種のS表現型はS3S4であると確認された.一方,‘豊水’と交雑不和合性を示すナシ平塚24号のS遺伝子型の表現型は,その両親のS表現型解析および交雑試験によりS3S5であると推定された.さらに,‘豊水’のS遺伝子型の表現型は,‘豊水’ × ‘八幸’の後代検定によって確認された.‘筑水’,‘新世紀’,‘清玉’および‘豊水’のS遺伝子型の表現型は,分子マーカーで推定されたS遺伝子型といずれも矛盾しなかった.
  • 荒木 直幸, 山内 直樹, 執行 正義
    2010 年 9 巻 4 号 p. 415-420
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    数十種類のコンセンサスプライマーセットを用い,野菜34種類の葉緑体DNA上にみられるSSR領域の分析を行ったところ,野菜の種間多型分析への有効性が確認できた.また,ネギ属の栽培種と野生種の種間多型解析への応用を試みたところ,雑種起源の植物とその種子親の関係にあるワケギとネギを除き,近縁な栽培種や野生種がDNAマーカーのサイズで明確に識別でき,本法が種間判別に有効であることが明らかとなった.得られたDNAマーカーは,様々な野菜の育種技術や品種・系統識別技術へ応用されることが期待される.
繁殖・育苗
  • 佐藤 文生, 加藤 直人
    2010 年 9 巻 4 号 p. 421-426
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    籾殻くん炭(くん炭)の覆土が有機質肥料を用いた低温期の育苗におけるレタスセル成型苗の生育,窒素吸収および移植後の生育に及ぼす影響について検討した.くん炭覆土による培地温への影響は認められなかったが,くん炭を覆土した苗の育苗中の生育量や窒素吸収量は,バーミキュライトを覆土した苗および無覆土の苗に比べ高い値を示した.移植後の初期生育は,バーミキュライトを覆土した苗および無覆土の苗よりくん炭を覆土した苗で速かった.収穫時の結球部生重は,バーミキュライトを覆土した苗および無覆土の苗よりくん炭を覆土した苗で約20%大きかった.くん炭の覆土量が多いほど苗の窒素濃度は高まったが,くん炭の覆土量と苗の生育量の間に有意な関係は認められなかった.覆土と同量のくん炭を培養土に混和した苗の生育や窒素吸収は,くん炭を覆土した苗に比べ劣った.くん炭を覆土しても,セルトレイの表面をペーパータオルで包んだアルミ箔で遮蔽すると苗の生育や窒素吸収は促進されなかった.
  • 松本 和浩, 中田 昇, 鷹見 敏彦, 田村 文男
    2010 年 9 巻 4 号 p. 427-431
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    シンテッポウユリの高温時(24℃)に発生する発芽不揃いの原因を調査した.高温によりα-アミラーゼ活性が阻害され貯蔵デンプンの加水分解とグルコース含量の増加が抑制された.また,種子のエチレン生成量が増加し,発芽阻害物質であるABA含量の上昇もみられた.エチレンの作用阻害剤(STSおよび1-MCP)処理および翼除去処理は高温時の発芽不揃いの改善に有効であった.さらに,1-MCP処理はセルトレイに播種した種子の高温時における発芽率の向上にも有効であった.これらの結果から,高温時に発生する発芽不揃いは高温により種子のエチレン生成量と発芽阻害物質であるABA含量が増加すること,さらにはα-アミラーゼ活性の低下によりデンプンの加水分解が抑制され,グルコース含量が減少することによって発生していると推察された.
土壌管理・施肥・灌水
  • 岩崎 光徳, 深町 浩, 佐藤 景子, 今井 篤, 野中 圭介, 平岡 潔志, 奥田 均
    2010 年 9 巻 4 号 p. 433-439
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    従来のTDR枝内水分測定法を用いてウンシュウミカンの水分状態を把握する際,温度依存性,プローブの挿入深度の誤差による測定開始時の値のバラツキが問題となっている.そこで,温度依存性は補正式を作成し,値のバラツキは年間の枝内水分状態が安定する時期を基準点とした相対値の利用を検討した.その結果,枝内温度とTDR値の間には高い相関が認められ,補正式を導き出した.基準点は測定時の気温が30℃以上で土壌が湿潤状態の場合,年間の枝内水分がピークとなる7月上中旬が適していることが明らかとなった.温度補正後のTDR相対値(Rrev)と葉内最大水ポテンシャル(LWP)との間には,強い相関が認められた.月別では7月の相関係数は0.888,8および9月は約0.7となった.10月以降は0.435と中程度の相関となった.一方,TDR値を枝内体積含水率(VWC)に変換した値は,いずれの月においても相関係数は0.3以下であった.さらに,Rrevと気温を用いたLWPの予測式の決定係数は0.712となり,高い精度で予測できる.以上より,本方法は従来のVWC変換値に比べLWPとの相関が高く,樹体の水分状態を一定程度把握できると考えられる.
栽培管理・作型
  • Phanpradith Phandara, 切岩 祥和, 遠藤 昌伸, 竹内 香, 糠谷 明
    2010 年 9 巻 4 号 p. 441-448
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    湛液循環式水耕で提唱された定量施与管理法を,ダブルトラフ構造ベッドを用いた固形培地耕のトマト栽培に導入可能か,またその場合NO3-Nを中心とする無機成分施用量を削減できるかを検証するため,2つの実験を行った.定量施与管理区ではロックウール粒状綿を詰めたダブルトラフ構造ベッド上に2本のチューブを配し,片方のチューブで所定濃度の培養液を毎日一定量施用し,もう一方のチューブでは水のみを与えた.濃度管理区では,一定濃度の培養液を施用する掛け流し栽培を行った.実験1では50 me/株/週のNO3-N施用して6段摘心栽培における定量施与管理を検討した結果,第5~6段では収量が低下したため,6段摘心栽培では生育後半にNO3-N施用量を50 me/株/週以上に増加させる必要性が示唆された.実験2では第1~2花房開花期,第3~4花房開花期,第5花房開花期~実験終了時にそれぞれ50,70,90 me/株/週および30,50,70 me/株/週のNO3-Nを施用した2処理区において,6段摘心栽培における生育段階別NO3-N施用による定量施与管理を検討した.その結果,定量施与管理50-70-90区の収量は濃度管理区と同等であり,無機成分施用量削減率はNO3-N 33%,NH4-N 56%,PO4-P 53%,K 41%,Ca 22%,Mg 76%となった.これらの結果から,固形培地耕でもダブルトラフ構造ベッドを用いることにより,定量施与管理が可能であり,NO3-Nを中心とする無機成分施用量を削減できることが明らかになった.
  • Phanpradith Phandara, 切岩 祥和, 遠藤 昌伸, 糠谷 明
    2010 年 9 巻 4 号 p. 449-453
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    固形培地耕におけるトマトの定量施与管理法によるカリウムの施用量を検討するため,ロックウール粒状綿を詰めたダブルトラフ構造ベッド上に2本のチューブを配した栽培システムにて,トマトを6段摘心栽培した.濃度管理区では,園試処方1/2単位培養液で掛け流し栽培を行った.定量施与管理区では,一方のチューブでは所定の濃度の培養液を毎日一定量施用し,もう一方のチューブでは水のみを与えた.定量施与管理区では3水準(15,30および50 me/株/週)のカリウム施用区を設け,定量施与管理・15,定量施与管理・30,定量施与管理・50区と略記した.その結果,収量は第1~3果房では処理による差はみられなかった.第4~6果房の収量は,濃度管理区に比べて定量施与管理・15区では有意に減少したが,定量施与管理・30区,定量施与管理・50区では有意差がなかった.しかし,定量施与管理・30区ではすじ腐れ果が第2果房から発生し,第6果房の発生率は16%にも達した.栽培期間中の積算カリウム施用量は,濃度管理区の653 me/株に対して,定量施与管理・15,定量施与管理・30,定量施与管理・50区ではそれぞれ濃度管理区の28,56,98%であった.以上の結果より,固形培地耕での6段摘心栽培においては,カリウムの施用量の著しい削減は果実の生理障害を引き起こすため,濃度管理区と同等の施用量を必要とし,第2果房の果実発達期である比較的早い時期に30 me/株/週~50 me/株/週に施用量をあげる管理が必要と結論された.
  • 亀有 直子, 堀内 尚美, 鈴木 栄, 小池 洋男, 荻原 勲
    2010 年 9 巻 4 号 p. 455-460
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    光強度(0~2,000 μmol・m−2・s1)と温度(15~35℃)に着目し,ファイトトロン内で測定したハイブッシュ種‘Weymouth’とラビットアイ種‘Tifblue’の光合成特性を比較した.両品種の個葉の光合成速度は,温度が高いほど大きくなった.低温条件(15~20℃)における個葉の光合成速度は‘Weymouth’が‘Tifblue’に比べて大きかった.一方,高温条件(25~35℃)におけるそれは品種間で相違がなかったが,‘Weymouth’は‘Tifblue’に比べて蒸散速度が大きく,水利用効率が小さかった.また,ハイブッシュ種‘Blueray’を用い,高温条件で行った実験でも同様の結果が得られた.これらの特性は,ハイブッシュ種が冷涼な気候に適していること,ラビットアイ種が高温,乾燥条件に対する耐性を持つことに関係していると考えられた.また,35℃の高温および1,000 μmol・m2・s1以上の光強度の条件で測定した水利用効率の大小は,耐暑性がある個体の選抜の一指標となると考えられた.強光,高温条件では蒸散速度が大きくなるため,夏季の高温時には水分の損失を防ぐために光飽和に達する光強度である1,000 μmol・m2・s1を目安に遮光を行うことが有効であることが示唆された.
  • 陳 玲, 遠藤 昌伸, 切岩 祥和, 糠谷 明
    2010 年 9 巻 4 号 p. 461-466
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    温室メロンの固形培地耕において,生育段階別の無機成分吸収量に基づく定量施与管理法の可能性を検証するため,培養液管理方法(濃度管理と定量施与管理)と培地の種類(ロックウール粒状綿または有機培地)の組み合わせにより,濃度管理・ロックウール区,定量管理・ロックウール区および定量管理・有機培地区の3処理区を設けた.2006年4月28日に本葉3枚の苗をダブルトラフ構造ベッドに定植し,7月14日に栽培を終了した.以上の結果,茎葉生体重は定量管理・ロックウール区より濃度管理・ロックウール区で大となったが,果実の生体重および可溶性固形物含有率は,定量管理・ロックウール区と濃度管理・ロックウール区の間で有意差は認められなかった.また,定量管理・ロックウール区の栽培期間中における全N,PO43-P,K,CaおよびMgの株当たり施用量は,それぞれ883, 362, 492, 398および157 me/株となり,濃度管理・ロックウール区と比較して49,86,58,47および37%となった.従って,定量施与管理法により収量・品質を低下させることなく,無機成分施用量を削減できることが明らかとなった.また,定量管理・有機区の収量・品質は,定量管理・ロックウール区より著しく劣ったことから,培地の種類により必要な無機成分施用量は異なることが示唆された.
  • 大谷 義夫, 八巻 良和
    2010 年 9 巻 4 号 p. 467-475
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    ニホンナシ‘幸水’における栽培方式と仕立て方が樹体生育,収量および乾物生産に及ぼす影響を検討した.栽培方式を地植栽培と根圏制御栽培の2処理,仕立て方を平棚栽培とY字仕立ての2処理として,平棚地植区,Y字地植区,平棚根圏区およびY字根圏区の4処理区を設けた.Y字根圏区はLAIが4.9で他の処理区の2倍程度と大きかった.また,Y字根圏区の着果数は栽植の割当面積1 m2当たり18.5果と他の処理区の約2倍となった.葉果比はすべての処理区で35程度と差がなかったため,10 a換算収量はY字根圏区で6.1 tで最大となり,慣行の平棚地植区の2.2倍と多収となった.糖度は根圏制御区で高かった.Y字根圏区の新梢発生程度は4処理区の中間値で樹勢は中程度であったため優良な新梢が多く発生し,m2当たり花芽数が最大となった.10 a換算の乾物生産量はY字根圏区で大きかった.また,果実への同化産物分配率はY字根圏区で43.0%,平棚根圏区で39.1%と高かった.細根も根圏制御した2区が地植した2区よりも高く,根圏制御により細根の発生が多くなった.これらのことより,根圏制御栽培では仕立て方をY字仕立てにすることにより,糖度が高く慣行の2倍の収量が得られることが明らかとなった.根圏制御栽培では細根の発生が多く樹体生育が良好になるとともに,Y字仕立てにすることでLAIが大きく乾物生産量が多くなること,コンパクトな樹形とすることで果実への同化産物分配率が高まり,収量および糖度の向上が図られた.
  • 持田 圭介, 倉橋 孝夫
    2010 年 9 巻 4 号 p. 477-484
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    ブドウ‘デラウェア’における裂果軽減を目的としたGAおよび硫酸マンガン処理方法について検討した.1回目のGA処理を展葉7~8葉期に行うことにより,展葉9~10葉期処理と比較し,着粒密度は0.5~2.3粒・cm−1低下したものの,ほとんどの果粒が花冠不離脱果粒(ビックリ玉)になったことにより,果粉の着生や果皮強度が劣り,裂果軽減効果はみられなかった.ビックリ玉の多い果房では,2回目のGA処理を満開5日後に行うことにより,また硫酸マンガン処理を1回目のGA処理時および開花直前期に0.5~1.0%の濃度で重複処理することにより,果粉着生が優れ,裂果軽減効果が得られた.果粉着生程度は,果皮強度(破断エネルギー)との間には正の,裂果発生果粒率との間には負の有意な相関関係が認められた.
  • 前田 隆昭, 米本 仁巳, 樋口 浩和, 北林 利樹
    2010 年 9 巻 4 号 p. 485-488
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    ブドウサンショウ樹を切り返しせん定し,切り返し程度が翌年の発芽や着果に及ぼす影響を検討した.結果母枝長によって3段階に分け,3段階の各々に対してせん定程度を無せん定,弱せん定,中せん定および強せん定の4区を設けた.切り返しせん定処理を行った翌年の発芽率,着花穂新梢率,花数および果房当たり果粒数を比較した.その結果,弱せん定区で花数,果房当たりの果粒数および結果母枝当たりの果粒数が多くなった.結果母枝長に関しては中程度の長さで花数,果房中果粒数および結果母枝当たりの果粒数が多い傾向を示した.発芽率はせん定程度が強いほど高くなり,着花穂新梢率は中せん定区および強せん定区で高い傾向であった.
収穫後の貯蔵・流通
  • 中村 ゆり, 三好 孝典, 大嶋 悟士, 羽山 裕子, 立木 美保, 吉岡 博人
    2010 年 9 巻 4 号 p. 489-493
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    カピリンを主成分とするカワラヨモギ抽出物のモモ果実腐敗病の腐敗抑制効果について検討を行った.はじめに,モモの灰星病菌,フォモプシス腐敗病菌,黒かび病菌および炭疽病菌に対するカピリンの抗菌活性について調査した.その結果,灰星病菌に対するMIC値は0.25~0.5 ppmと判断され,極めて高い抗菌活性を示すことが明らかになった.その他の菌に対するMIC値は各々2~4 ppmであり,抗菌活性は認められるもののやや低いと判断された.続いて,実際にモモ果実を用いて収穫後にカワラヨモギ抽出物を処理した後,灰星病菌の接種を行った.処理果に形成された病斑の大きさは,無処理果に比べて有意に小さくなり,処理によるモモ灰星病の抑制効果が明らかになった.また,処理による果実品質への影響はほとんど認められなかった.
作物保護
普及・教育・利用
  • 七夕 高也, 山田 哲也, 清水 悠介, 篠崎 良仁, 金勝 一樹, 高野 誠
    2010 年 9 巻 4 号 p. 501-506
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    デジタル画像処理技術を活用した植物器官の形状計測を効率化するため,色情報(平均色差)を使った新たな領域抽出法を考案し,その手法による領域抽出とその後の面積計測を連続的に実行できる領域抽出ソフトウエア“Flower Shape Analysis System”(http://www.kazusa. or.jp/picasos/)を開発した.従来法との比較から,考案した手法は,被写体や背景の色が複雑な画像でも,植物器官の領域抽出を効率よく,正確に実行できることを明らかにした.また,開発したソフトウエアは,画像ファイルの選択や計測データの記録が自動化され,作業効率が大幅に改善されている.さらに,開発したソフトウエアを用い,アサガオ花冠の時系列画像を解析したところ,視覚的な比較では検出が困難な花弁老化の系統間差異を容易に検出することができた.以上の結果から,本研究で考案した手法および開発したソフトウエアが,植物器官の形状計測に極めて有用であることが示唆された.
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