1.ニホントカゲの頭骨の形態,およびその発育に伴う形態の変化を記載した。
2.孵化直後には前頭骨と頭頂骨の間に泉門が開口している。この間隙は1才仔や若い成体ではまだ縫合線として,頭頂孔の前方に残る。
3.方形頬骨と板状骨は小さな退化的な骨で,成体において始めて現われる。
4.発育に伴う形態変化は雄において特に顕著である。雄成体では,頭蓋を構成する諸骨(前頭骨,頭頂骨,後前頭骨,後眼窩骨,鱗状骨)は肥厚し,頑丈になる。また,鱗状骨は側方にも成長し,頭蓋はこの部分で側方に張り出す。上部側頭窓は幼体において,狭い間隙として残っているが,雄成体では,骨の成長によって完全に閉鎖される。しかし,このような変化は雌においては認められない。
5.雌雄とも,次の諸点に発育に伴う変化が見られた。頭頂骨後縁部の横走稜,方形骨の稜および基底隆起の発達,脳函の諸骨の癒合。これらの変化は雄では雌に比べ早い時期に起る。
6.成体では,頭骨の成長率は雄の方が大きく,雄はより大きな頭骨を持つ。
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