人間科学
Online ISSN : 2434-4753
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臨床心理学科
研究論文
  • 窪田 由紀, 樋渡 孝徳, 山田 幸代, 向笠 章子
    2025 年 7 巻 p. 1-8
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/22
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    本研究の目的は,教師の学校危機遭遇体験の実際を明らかにし,今後の学校危機への備えのあり方に検討を加えることであった。B市から調査協力が得られ,分析対象としたB市の教員2,887名のうち,994名,34.4%が何らかの学校危機を経験しており,学校危機への遭遇は決して珍しくないことが改めて確認された。危機に遭遇した教師の約半数が臨床心理士チームの支援を受けていたが,事案によってその割合は異なり,児童生徒の自殺については臨床心理士チーム支援の割合が大きかった。種々の危機事案について,クラス内のケンカ以外は学校全体や教育委員会の指導の下での組織的対応が適切だという認識が共有されていた。90%近くの教師が何らかの学校危機対応研修を受けたと回答していたが,その内容は不明である。学校危機への遭遇は稀でないことから,今後,教師の学校危機遭遇体験を詳細に検討し,職位や事案に応じた体系的な研修プログラムを構築し,備えを強化することが求められる。

子ども教育学科
研究論文
  • 田中 沙織
    2025 年 7 巻 p. 9-21
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/22
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    神経系の発達が著しい幼児期には,姿勢のコントロールシステムも同時に発達するが,保育者が保育の中で姿勢の保持に課題がある子どもへの支援に苦慮する場面も多い。本研究では4・5歳児クラスの「姿勢の保持」に焦点を当て,保育者が主観的に「姿勢の保持に課題がある」と感じる幼児の課題をカテゴリー別に検討することで,1・2歳児クラスの保育環境改善に資する評価を検討し,幼児期前期から姿勢保持のために取り組める支援につなげることを研究の目的とした。本研究は,4・5歳児の姿勢保持を担う重心動揺・足部および足趾形態・運動能力・1・2歳児の生育環境について,保育者が主観的に感じる姿勢保持に「課題あり群」「課題なし群」と2群に分け評価を行い,群間の明確な差異や課題あり群の共通点はみられなかったことを確認した。これらの結果を基に,1・2歳児クラスで用いる保育環境改善に向けた評価票(読み取りシート)を作成し,その効果について介入研究を行った。

スポーツ健康科学科
研究論文
  • 第一報:身体的ならびに精神的健康度の自己評価
    村谷 博美, 濱田 やえみ, 江田 佳子, 楠林 あかね, 辻 利恵
    2025 年 7 巻 p. 22-32
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/22
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    九州産業大学の1年生,4年生について,身体的ならびに精神的健康度の自己評価は,全体としてみると2003年から2024年まで改善していた。生活習慣に関する調査票が現在の表現に統一された2018年以降のデータを用いて,多重ロジスティック回帰分析を行っても経年的な改善は有意であった。性,学年によらず,一回30分以上の運動習慣や,週4日以上の朝食摂取の習慣を持っていれば,身体的,精神的な健康度を非常に~そこそこ良いとする自己評価が有意に増え,意識障害の経験があると非常に~そこそこ良いという自己評価が有意に少なかった。4年生の女性を除き,BMIが18.5未満か30以上であっても,身体的,精神的な健康度が非常に~そこそこ良いという回答が有意に少なかった。一度に飲酒する量が3合以上であれば,身体的健康度については非常に~そこそこ良いという回答が有意に少なかったが,精神的健康度については有意ではなかった。

  • 第二報:喫煙習慣と飲酒習慣
    江田 佳子, 濱田 やえみ, 楠林 あかね, 辻 利恵, 村谷 博美
    2025 年 7 巻 p. 33-44
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/22
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    2003年から2024年までの九産大生を対象に,喫煙率や飲酒率の経年変化や家族の影響,喫煙と飲酒の関連を調べた。さらに飲酒頻度と一度の飲酒機会に飲む量の関連についても調べた。喫煙率も飲酒率も全体としては低下してきた。1年生の喫煙率は2006年から明らかに減ってきたが,4年生の飲酒率の減少は2012,2013年までは明らかでなかった。2020年には女性で喫煙率,飲酒率ともに増えていた。学生の喫煙習慣にも飲酒習慣にも家族の影響が明らかであり,親も他の家族も影響を及ぼしていた。喫煙習慣と飲酒習慣が重複することも明らかであった。ほぼ毎日飲む学生は,一度に飲む量が3合以上である割合が有意に高かった。しかし,一度に3合以上飲む者の実人数を見ると,たまに飲むと回答した学生が最多であった。

  • 第三報:運動と朝食摂取の習慣
    濱田 やえみ, 江田 佳子, 楠林 あかね, 辻 利恵, 村谷 博美
    2025 年 7 巻 p. 45-53
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/22
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    九州産業大学の1年生,4年生について,2003年から2024年までの運動と朝食摂取の習慣について分析した。初期には運動サークルに限定するような質問をしたり,運動の継続期間や持続時間についての記載が不十分だったりした。現行の調査票になった2018年以降では,4年生の男性以外では運動習慣を持つ割合は不変である。運動が嫌いな学生と嫌いではないが運動とは無縁である学生は,いずれも男性よりも女性の方が,また1年生よりも4年生の方が多かった。朝食摂取の習慣については,2003年からの全期間を通じて同じ質問をし,男女ともに,あるいは1・4年生ともに,一定の経年変化を検出できなかったが,男性よりも女性の方が朝食摂取の習慣を持つ割合が高かった。在学中に朝食摂取の習慣を失うのは,男女ともに観察された。最後に多重ロジスティック回帰分析を行い,運動習慣と朝食摂取の習慣が性や学年によらず重複することを示した。

  • 第四報:体格指数(BMI)と意識障害の経験
    楠林 あかね, 濱田 やえみ, 江田 佳子, 辻 利恵, 村谷 博美
    2025 年 7 巻 p. 54-64
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/22
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    九州産業大学の1年生,4年生について,2003年から2024年までの体格指数(Body Mass Index:BMI)と意識障害の経験を分析した。BMI<22を示すのは男性より女性が多く,22≦BMIでは男性の方が多かった。しかし,経年変化を見るとBMI<18.5の男性が有意に増加していた。意識障害を経験した学生は,2003年から減少していたが,2014年からてんかんと非てんかんに分けて尋ねており,てんかんという具体的な病名を挙げたことが回答に影響した可能性を否定できない。非てんかんでは男女差があり,女性の方に多かった。非てんかん性の意識障害を経験した学生には18.5未満のBMIを示す人が多く,この両者とも朝食をほぼ毎日食べる割合が低かった。

論文審査・編集委員
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