本研究の目的は,教師の学校危機遭遇体験の実際を明らかにし,今後の学校危機への備えのあり方に検討を加えることであった。B市から調査協力が得られ,分析対象としたB市の教員2,887名のうち,994名,34.4%が何らかの学校危機を経験しており,学校危機への遭遇は決して珍しくないことが改めて確認された。危機に遭遇した教師の約半数が臨床心理士チームの支援を受けていたが,事案によってその割合は異なり,児童生徒の自殺については臨床心理士チーム支援の割合が大きかった。種々の危機事案について,クラス内のケンカ以外は学校全体や教育委員会の指導の下での組織的対応が適切だという認識が共有されていた。90%近くの教師が何らかの学校危機対応研修を受けたと回答していたが,その内容は不明である。学校危機への遭遇は稀でないことから,今後,教師の学校危機遭遇体験を詳細に検討し,職位や事案に応じた体系的な研修プログラムを構築し,備えを強化することが求められる。
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