【目的】高齢者における骨折のリスク要因の一つに認知症がある。本研究では下肢関節障害のある認知症の高齢者について、歩行補助のための福祉用具の使用が転倒予防効果があるかを、他のリスク要因と合わせて検討した。
【資料及び方法】分析に用いたデータは西日本の一自治体の2012年4月~2017年3月の医科レセプト(国保、後期高齢者;調剤も含む)と介護レセプトである。両データを個人単位で連結し分析用データを作成した。このデータから2011年4月から2012年3月の間に介護保険サービスを受けている認知症のある要支援1~要介護2の在宅高齢患者を抽出し、さらに車いすを使っていない下肢関節障害の診断のある高齢者4,315人を抽出した。これらの患者について観察期間で最初に介護レセプトデータが出現した月を観察開始時点とし、2017年3月まで骨折発症をエンドポイントとして、月単位の生存状況を医療及び介護レセプトで把握し、骨折発症に関連する要因をCoxの比例ハザードモデルで分析した。
【結果】分析対象者の平均年齢は84.5歳(標準偏差5.2歳)で平均観察期間は24.5か月(標準偏差19.3月)、女性割合は81.5%であった。入院・入所後も含む観察期間中の骨折発生は3.0%であった。観察期間中に入院で打ち切りになった者が68.7%、入所で観察打ち切りになった者は13.0%で、80%以上が入院・入所になっていた。骨折の発生に関連する要因についてCox比例ザード分析によって検討した結果をみると、年齢、気分障害、腎不全は有意に骨折の発生を高め、通所系サービスの利用が有意に低めていた。歩行支援機器の利用は骨折発生に有意のハザード比は示さなかった。
【考察】通所系サービスを利用することが骨折のより低い発生ハザード比に関連していた。通所系サービスでは種々のアクティビティやリハビリテーションが転倒防止などに配慮された状態で行われるが、このような活動が心身の機能を向上させ骨折の過剰発生を予防していると推察された。他方で、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえなどの歩行支援機器や住宅改修は骨折の発生と有意の関連を示さなかった。むしろ、福祉機器貸与は単変量解析では骨折の発生と統計学的に有意に高いハザード比(1.53:95%信頼区間1.06~2.2)を示していた。この結果は、転倒の恐れがあるような虚弱な高齢者あるいは住環境に問題のある高齢者で福祉機器貸与や住宅改修がより選択的に行われることを示唆している。
【結論】通所系サービス利用が骨折発症に予防的に作用していることが明らかとなった。気分障害が骨折発生に有意に正のハザード比を示していることを合わせて考えると、認知症高齢者に対しては通所系サービスを中心とした閉じこもり予防策が、骨折予防の点からも有効であることが示唆された。
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