日本ヘルスサポート学会年報
Online ISSN : 2188-2924
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  • 松田 晋哉, 藤本 賢治, 大谷 誠
    2024 年9 巻 p. 1-8
    発行日: 2024年
    公開日: 2026/04/18
    ジャーナル フリー

    【目的】高齢者における骨折のリスク要因の一つに認知症がある。本研究では下肢関節障害のある認知症の高齢者について、歩行補助のための福祉用具の使用が転倒予防効果があるかを、他のリスク要因と合わせて検討した。

    【資料及び方法】分析に用いたデータは西日本の一自治体の2012年4月~2017年3月の医科レセプト(国保、後期高齢者;調剤も含む)と介護レセプトである。両データを個人単位で連結し分析用データを作成した。このデータから2011年4月から2012年3月の間に介護保険サービスを受けている認知症のある要支援1~要介護2の在宅高齢患者を抽出し、さらに車いすを使っていない下肢関節障害の診断のある高齢者4,315人を抽出した。これらの患者について観察期間で最初に介護レセプトデータが出現した月を観察開始時点とし、2017年3月まで骨折発症をエンドポイントとして、月単位の生存状況を医療及び介護レセプトで把握し、骨折発症に関連する要因をCoxの比例ハザードモデルで分析した。

    【結果】分析対象者の平均年齢は84.5歳(標準偏差5.2歳)で平均観察期間は24.5か月(標準偏差19.3月)、女性割合は81.5%であった。入院・入所後も含む観察期間中の骨折発生は3.0%であった。観察期間中に入院で打ち切りになった者が68.7%、入所で観察打ち切りになった者は13.0%で、80%以上が入院・入所になっていた。骨折の発生に関連する要因についてCox比例ザード分析によって検討した結果をみると、年齢、気分障害、腎不全は有意に骨折の発生を高め、通所系サービスの利用が有意に低めていた。歩行支援機器の利用は骨折発生に有意のハザード比は示さなかった。

    【考察】通所系サービスを利用することが骨折のより低い発生ハザード比に関連していた。通所系サービスでは種々のアクティビティやリハビリテーションが転倒防止などに配慮された状態で行われるが、このような活動が心身の機能を向上させ骨折の過剰発生を予防していると推察された。他方で、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえなどの歩行支援機器や住宅改修は骨折の発生と有意の関連を示さなかった。むしろ、福祉機器貸与は単変量解析では骨折の発生と統計学的に有意に高いハザード比(1.53:95%信頼区間1.06~2.2)を示していた。この結果は、転倒の恐れがあるような虚弱な高齢者あるいは住環境に問題のある高齢者で福祉機器貸与や住宅改修がより選択的に行われることを示唆している。

    【結論】通所系サービス利用が骨折発症に予防的に作用していることが明らかとなった。気分障害が骨折発生に有意に正のハザード比を示していることを合わせて考えると、認知症高齢者に対しては通所系サービスを中心とした閉じこもり予防策が、骨折予防の点からも有効であることが示唆された。

  • 松田 晋哉
    2024 年9 巻 p. 9-21
    発行日: 2024年
    公開日: 2026/04/18
    ジャーナル フリー

    【目的】高齢担がん患者は高齢に伴う心身機能の低下に加えて、がん治療に伴う心身機能の低下があり、継続的な医学的管理に加えて、日常生活の支援が必要となる。本研究では高齢担がん患者の医療介護の複合的ニーズについて検討する目的で、一般病棟退院後、訪問診療に移行した高齢担がん患者の医療介護サービス利用状況及び予後について検討した。

    【資料及び方法】分析に用いたデータは東日本の1自治体の2015年4月から2021年3月までの医科レセプト、介護レセプトである。このデータベースから2015年4月から2019年3月までの間に一般病棟退院直後に訪問診療に移行したがん患者で介護保険サービスを追跡期間中に利用した者を抽出して、訪問診療利用開始後24か月までの医療介護サービス利用状況及び生存率を検討した。

    【結果】一般病棟退院後、在宅医療に移行する高齢担がん患者の生命予後は悪く1年累積死亡率は82.8%、2年累積死亡率は87.5%であった。80%以上は退院直後から介護保険サービスを利用していた。利用介護サービスでは訪問介護の利用率が最も高く、次いで訪問看護の利用が多かった。がん治療以外で一般病棟に入院した者は誤嚥性肺炎や肺炎、心不全、尿路感染症などが治療対象であった。

    【考察】本分析により、一般病棟退院後、在宅医療に移行する高齢担がん患者の多くが、ターミナルステージにあり、早期に死に至ることが明らかとなった。ただし、核家族化の進んだ今日の状況では、短期間ではあるがターミナルステージの生活を支える介護サービスを80%以上の患者が利用しており、訪問介護サービス関係者を対象としたターミナルステージの高齢担がん患者の介護サービスの在り方に関する研修の必要性が示唆された。

    【結論】今後、在宅で看取られる高齢担がん患者が増加することは不可避である。こうした患者の人生の最終段階における療養生活の質を向上させるために、医療と介護の複合的なサービスが必要である。そのためのガイドライン作成、およびそれを用いたケアワーカーの研修体制の充実が求められる。

  • 松田 晋哉, 村松 圭司
    2024 年9 巻 p. 23-33
    発行日: 2024年
    公開日: 2026/04/18
    ジャーナル フリー

    【目的】国際的にみて、日本は自殺死亡が多く、その予防は公衆衛生政策上の重要な課題の一つとなっている。本研究ではレセプト情報を用いて、外来受診頻度や精神科医薬品の処方量の変化から、自殺企図の予兆を把握することの可能性を検証した。

    【資料及び方法】 東日本の一自治体のデータベースについて2014年4月から2019年3月までの間に、DPC対象病院に薬物中毒(DPC上6桁=161070)で入院した患者について、その前1年間の医療機関の受診状況、傷病の状況、処方薬剤の状況を分析する。経時的な変化については、受診前の期間を1~3か月、4~6か月、7~9か月、10~12か月に区分し、それぞれの期間における医療機関の受診回数、処方薬の状況(例えば、薬効分類上3桁が112(催眠鎮静剤、抗不安剤)および117(精神神経用剤)の処方量)の変化を分析した。

    【結果】 薬物中毒で入院した精神疾患を持つ患者において、6-18歳の男性及び75歳以上の女性を除いて、入院前に処方量が増加する傾向にあることが確認された。特に、6-18歳の女性では入院前に処方量が急増している。ただし、処方の絶対量は中高年層に比較して若年層では少なかった。

    【考察】 自殺予防のためには、精神科医薬品の処方量の変化について、診療や処方にあたる医師、薬剤師が注意することが重要であると考えられる。今後、わが国では電子処方箋が一般化していくと考えられるが、そのデータをもとに、処方量の変化を診察や処方を行う医師や薬剤師に情報提供するような仕組みを構築することが必要である。

  • 松田 晋哉
    2024 年9 巻 p. 35-43
    発行日: 2024年
    公開日: 2026/04/18
    ジャーナル フリー

    [目的]自殺は回避できる死であり、その予防対策を社会的に実装する必要がある。自殺には予兆があり、その一つが受診行動の変化である。そこで、本研究ではレセプトデータに教師付き機械学習を適用することで、過量服薬による自殺企図患者の再入院を予測するモデルの試作を行った結果について報告する。

    [資料及び方法]試作に用いた資料は、東日本の1自治体の2014年4月から2021年3月までの、国民健康保険、後期高齢者医療制度、生活保護のレセプトである。このデータから2015年4月から2016年3月までの間に神経症の診断があり、かつ過量服薬による入院がある患者を抽出した。これらの対象者について、初回入院時の精神疾患の診断の有無、経過観察期間中の月及びその特性(誕生月、休暇後)、初回入院時の年齢階級、精神科医薬品の処方量の変化をレセプトから把握し、過量服薬による再入院の有無を予測するモデルのCHAID(CHi-squared Automatic Interaction Detector)とランダムフォレストによって作成した。

    [結果]CHAIDにおける最初の分岐は休暇後の月であった。休暇後の月の群の場合、過量服薬による入院に区分されるの割合は71.695%とルートにおける59.387%から大きく増加していた。休暇後の月である分岐の次の層は年齢階級で分岐され、19-39歳で入院に区分される割合は78.229%に増加した。最初の分岐が休暇後の月でない群については、誕生月が当該月を含んで前後1か月以内の群で入院に区分される割合が69.379%と増加し、さらに入院有の割合は次の階層で年齢階級が6-18歳で86.842%、40-64歳で74.398%に増大していた。

    [考察]本分析の結果、レセプトデータに機械学習を適用することで、過量服薬による入院患者が、再度過量服薬で入院するリスクを予測するモデルが作成できる可能性が示された。ただし、レセプト情報は作成から把握まで2か月のタイムラグがあるため即時性のあるモニタリングには不適切である。したがって、現在、国が構築中のオンライン資格確認システムと連動して動く電子処方箋や電子カルテ上の情報を活用することが、より合理的である。また、自殺企図歴という極めてプライバシーレベルが高い情報を関係者間でどのように共有することが可能なのかという、法的および倫理的議論が必要である。

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