日本保健福祉学会誌
Online ISSN : 2424-0036
Print ISSN : 1340-8194
28 巻, 1 号
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表紙
原著
  • 安 順姫, 芳賀 博, 新野 直明, 森田 彩子, 岩田 明子
    原稿種別: 原著
    2021 年28 巻1 号 p. 1-13
    発行日: 2021/12/31
    公開日: 2022/04/21
    ジャーナル フリー

    目的:ポジティブ心理学的介入の手法を取り入れたハッピープログラムが,地域在住高齢者の心理・精神的健康に及ぼす効果を検証することを目的とした.

    方法:2009年度に東京都 A市が 65歳以上の全住民に郵送で実施した,介護予防事業対象者把握のための基本チェックリストの回答者 27,760名(回答率 72.6%)のうち,うつに関する 5項目中 2項目以上に該当する者 6,225名に対し,ハッピープログラムを用いたうつ予防教室参加者募集のチラシを発送した.結果,ハッピープログラム(週 1回 120分,合計 12回)の参加希望があった 65名を介入群,介入群と性別,年齢,居住地域,基本チェックリストのうつに関する項目の該当数が一致する 195名を対照群とした.プログラム介入前後に質問紙調査を実施し,有効回答が得られた者のうち,精神疾患の既往があり,かつ事前調査時に「抑うつ状態(Geriatric DepressionScale短縮版,GDS;6点以上)」に該当する者を除外した 128名(介入群:n=41;平均年齢 71.4歳,対照群 :n=87;平均年齢 71.7歳)を分析対象とした.抑うつ状態(GDS),睡眠状況(Athene Insomnia Scale,AIS),不安状態(State-TraitAnxiety Inventory,STAI),主観的幸福感(Fordyce Emotions Questionnaire,FEQ)を評価指標とし,反復測定による二元配置分散分析を実施した.

    結果:GDS得点,AIS得点,SAI得点,TAI得点において,群と調査時期の 2要因間に有意な交互作用が認められ,いずれの評価指標も介入群でのみ事前事後で平均得点の有意な低下が認められた(いずれもp<0.001).

    結論:ポジティブ心理学的介入の手法を取り入れたハッピープログラムは,抑うつ状態,不眠,不安の改善に有用であることが明らかにされ,地域在住高齢者のうつ予防ならびに精神的健康の維持・増進に効果的であることが示唆された.

研究ノート
  • 伊草 綾香, 関 美雪, 上原 美子, 延原 弘章
    原稿種別: 研究ノート
    2021 年28 巻1 号 p. 15-25
    発行日: 2021/12/31
    公開日: 2022/04/21
    ジャーナル フリー

    目的:働く母親の育児支援にリカバリー経験の概念を導入するための予備的検討を行うことを目的として、働く母親のワーク・エンゲイジメント、リカバリー経験、自己効力感の相互の関連を検討した。

    方法:対象は関東地方 A市内の認可保育所に乳幼児を通園させている母親 1,702名とし、無記名自記式質問紙調査を実施した。ワーク・エンゲイジメント、リカバリー経験、自己効力感の測定には既存の尺度を用い、構造方程式モデリングによりこれらの尺度間の関連を検討した。

    結果:回収数 653通、有効回答数 570通(有効回収率 33.5%)であった。母親の平均年齢は 35.6歳、標準偏差は 4.8歳であった。3尺度間相互の関連を仮定したパス図により構造方程式モデリングを行ったところ、適合度は概ね良好であった。3尺度の間に有意な正の関連が見られたものの、ワーク・エンゲイジメントとリカバリー経験、リカバリー経験と自己効力感の間の関連はごく弱いものであった。

    結論:働く母親の育児支援にリカバリー経験の概念を導入することの意義は一定程度確認できたが、現行のリカバリー経験尺度は一般的な労働者を対象として作成されたものであるため、働く母親のリカバリー経験は適切に測定できなかった可能性がある。今後、働く母親のリカバリー経験を適切に測定し、仕事と育児で消耗した心理社会的資源の回復を総合的に評価する方法を検討していく必要がある。

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