学習にかかわる調整方略の組み合わせパターンは,学習者によって異なるであろう。そして,調整方略の組み合わせ方によって,授業へのエンゲージメントに対する効果も異なる可能性がある。学習者の授業に対する意欲を引き出し,学習を動機づけるためには,学習者の調整方略に関する指導・助言が有用である。そこで,本研究の目的は,学習者の授業に対するエンゲージメントを高めたり,低下させたりする調整方略の組み合わせを明らかにすることである。調整方略の複合的効果を明らかにすべく,質的比較分析(QCA)によって,学習にかかわる調整方略とエンゲージメントの関係性について検討した。分析の結果,行動的エンゲージメントを高めるうえでの感情的エンゲージメントの重要性が示されるとともに,感情的・行動的エンゲージメントを高めるための調整方略の組み合わせパターンが複数明らかにされた。分析結果に基づいて,理論的・実践的意義について議論した。
本論文の目的は,ドイツにおける大学への基盤交付金の制度を紹介することである。基盤交付金は,ドイツの高等教育の基幹をなす州立大学にとって,主たる財源をなすものである。基盤交付金は,固定的な基礎経費の部分と,アウトプット指標,業績協定のそれぞれから算定される成果連動的部分からなる。このうち,基礎経費は過去踏襲分と,インプット指標からの算定とで決定される。大学財政の安定性を考慮して,前者の比重が圧倒的に大きい。アウトプット指標による算定では,指標数を少数に絞り,かつ算定割当額を小規模にとどめるという方針がとられている。予算額の過度の変動を防ぐためである。大学政策の鍵になるのは業績協定である。これは政府と個々の大学が,大学ごとの特性やヴィジョンを踏まえて目標を定めて締結する。これにより,大学の個別性を反映することが可能になり,高等教育全体として,学術の多様性を担保する仕組みとなっている。
2004年度から導入された認証評価制度により,全ての大学,短期大学,高等専門学校が,7年以内ごとに文部科学大臣に認証された評価機関の評価を受けることが義務付けられた。2020年度で制度導入から17年目を迎え,認証評価は3巡目に入っている。本稿では,大学改革支援・学位授与機構で認証評価を受けた大学に対して行っているアンケートを用い,1巡目・2巡目における回答の推移に着目して統計的に分析することで,大学の認証評価に対する意識の変化について明らかにした。また,アンケートにおいて大学の意識の変化が見られた項目については,回答に変化が生じた理由について,認証評価制度の改善へ向けて望まれている,改善効果の充実,作業負担の軽減,社会からの理解と支持,との関連を中心に考察を加えた。
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