本論文はポートフォリオモデルを用いてICT投資の観点でクラウドコンピューティングの位置づけを論じる。不確実性要素の多い今日、ICT投資のプログラムマネジメントの観点でクラウドコンピューティングの本質であるxAAS(x As A Service)適用条件を整理することはICT投資の根幹にかかわる判断である。従って、MITモデルのポートフォリオにおいて時代に敏感である企業独自のコアコンピタンス部分と社会と密着し生活基盤として安定な業務の部分とを両極端としていかにxAASを組み合わせるかを論じる意義がある。本内容はミッションクリティカルの観点から論じる。
新たなシステム導入をともなう業務改革や大規模研究開発では、現場に密着した課題の発見と創造的な解決策の提案が必要となる。このようなイノベーションを前提とするプログラムのマネジャーは、最終意志決定者に対する適切なフィードバックと、価値観の異なる組織の間の調整能力を持たなければならない。つまり、最終意志決定者のビジョンを実現する実行計画の策定と、フォロワーのインセンティブを高揚させる指導力の発揮が期待される。価値観の異なる組織の意識を統一し牽引していく"柔軟な指導力"の例として、NTTの総合プロデュース活動と産学官連携コーディネーション活動を紹介し、P2M Version 2.0においても、フォロワーに対するコーディネーション機能が重要であることを述べる。