関西学院大学先端社会研究所紀要
Online ISSN : 2434-4613
Print ISSN : 1883-7042
7 巻
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論文
  • 日独大学生の「幸福」についての評定
    Florian Coulmas, Wolfgang Jagodzinski, Rie Suzuki, Annelene Wengler
    2012 年 7 巻 p. 1-16
    発行日: 2012年
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー
    幸福に関する東アジア的理解は西洋的なそれとは異なり、これはアジア社会が集団主義的でありがちなのに比べて、西洋社会が個人主義を重視するからであるということ、そしてそれゆえに両社会における幸福の比較は難しいということがしばしば論じられる。幸福に関する人々の認識・評価・感情は東アジア社会と西洋社会とではどの程度異なるのか―これを調べるための一つの方法は、幸福のしろうと理論について検証することだろう。本稿は、日本人大学生とドイツ人大学生を対象に行った幸福に関する調査についての報告である。「幸福な人」“glücklicher Mensch”という二つの言葉の意味微分と質問票から得られた結果をもとに、各学生グループにどのようなことが幸福の要因になると信じられているのかについて述べる。また、調査結果は2つのグループ間には類似点と相違点の両方が存在することを明らかにしている。日本がドイツに比べて集団主義的な社会であるという概念に矛盾しないことを示す結果が見られたと同時に、これとは異なる見解を生む結果も得られた。日本とドイツにおける幸福の概念は、似ているとはいえ同一ではない。
  • A Case Study of Policy on Civil Society Media in Japan
    Gabriele Hadl, Stefania Milan
    2012 年 7 巻 p. 17-32
    発行日: 2012年
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー
    In many countries, organizations dedicated to socially engaged media making have pioneered local broadcasting, distribution systems for non-commercial print media, multi-lingual media, what is now called user-generated media, “narrow-casting”, and citizen's participation in media policy. However, almost everywhere in the world, policies have systematically distorted the mediascape in favour of governmental and commercial media. Media made by and for citizens continue to struggle for funding channels, legality, autonomous means of production and distribution, and against the commercial/governmental enclosures of creative resources. This article, at the intersection of political science and media studies, investigates how civil society engages in media policy. Specifically, it analyzes the democratic media activist movement in Japan in the 2008- 2010 organizing phase. What was the opportunity structure? What resources were available? What achievements were aimed at? Were they achieved? And what other, perhaps unintended outcomes? What does that tell us about the specific challenges of democratic media activism in Japan, and what can be taken from that for other contexts? The methods are qualitative, including a review of the literature on the media reform and civil society media movements and participatory observation in one of the main networks for media reform. The lack of progress on issues for civil society media, it is argued, can partly be explained by the poor political opportunity structure, but also by poor movement resources.
  • 高杉 公人
    2012 年 7 巻 p. 33-48
    発行日: 2012年
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー
    本研究では、フィリピンの先住民族タグバヌア族コミュニティにおける内発的発展型社会開発の可能性を探る為に、タグバヌア族自身が文化を再発見し、それを強みとしてコミュニティを発展させることを目的とした「文化再発見型アクションリサーチ」を実施した。アクションリサーチとして、長老の歴史を聴いて書き残す「ライフヒストリーリスニング&ライティングトレーニング(LHLWT)」、フィールドワークで発見された植物の活用法を分析して、将来の農業開発を考える「農業再発見フィールドワーク」、長老とのディスカッションを通じて現在の海産物の活用を再考し、経済発展と海洋資源保 全を模索する「持続可能な漁業開発再考ワークショップ」、という3つのアクションを複合的に実施し、その結果をトライアンギュレーションして分析・考察した。その結果、伝統的な農法や漁業のプロダクトの活用等、失われつつある文化的価値を先住民族の若者が再発見して後世に残す重要性を確認し、それを将来的なコミュニティ発展に繋げるきっかけ となる動きが見られた。更に外部者である研究者や学生が、文化を強みとしてコミュニティを内発的に発展させるプロジェクトの後方支援を行い、文化を基軸とした内発的発展を促す可能性も示唆された。
  • 建築家隈研吾の言説と作品をめぐって
    松村 淳
    2012 年 7 巻 p. 49-66
    発行日: 2012年
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー
    本稿は、これまでほとんど研究の対象として取りあげられることのな かった建築家に照準し、建築家の世界のリアリティに迫る試みである。公的な制度による 裏付けもなく、また、芸術/技術という二項対立を抱え込んだ建築家という難しい立ち位 置の職能の研究は、一面的なアプローチでは立ち行かないことは明らかである。「動的」に 把握しなければ彼らのリアリティに迫ることはできない。そこで、「動的」に把握するため の理念的な枠組みとしてP. ブルデューの「界」概念を援用し「建築家界」というものを理 念的に想定する。そして、その中で建築の本質を賭けて闘争する者として建築家を位置づける。本稿では具体的な事例として、日本を代表する建築家の一人である隈研吾(1954~)をとりあげる。彼のキャリアを1980年代からの第一期、1990年代の第二期、そして2000年代以降の第三期に分け、隈研吾の言説と作品の変容について記述分析を行っていく。
  • 国際交流基金(Japan Foundation)の「日本語教育事業」の評価調査
    真鍋 一史
    2012 年 7 巻 p. 67-97
    発行日: 2012年
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー
    質問紙調査のデータ分析においては、「質問諸項目間の全体的な関連の構造に焦点を合わせる」という行き方と、「特定の質問項目あるいはそれら特定の質問項目間の相互の関係に焦点を合わせる」という行き方がある。筆者は、比喩的に、前者の側面を「森を見る」、後者の側面を「木を見る」と呼んでいる。ここでは、国際交流基金の日本語教育事業の「評価調査」の事例を用いて、このような調査事例における、「森を見る」タイプのデータ分析の有効性を例証する。それは、具体的にいえば、単独あるいは複数の質問項目から「尺度」を構成し、それら「尺度」間の相互の関係を示す「相関マトリックス」を作成し、それをL. Guttman によって開発された多次元尺度構成法の系列に属する「最小空間分析(Smallest Space Analysis: SSA)」の技法を用いて2 次元の空間に視覚的に描写するという方法である。このような「森を見る」タイプのデータ分析によって、国際交流基金の海外拠点における日本語講座――および大学の日本語授業――に対する人びとの評価が、「日本語講座への満足度」を起点として、「日本語学習のもたらす自己変革の実感」、そして、「日本に対するオリエンテーションのポジティヴな方向への変化」へと広がっていく、その軌跡が見事に描き出せるのである。
  • 中国東北地域の朝鮮族村を事例に
    林 梅
    2012 年 7 巻 p. 99-113
    発行日: 2012年
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー
    本稿では、中国の朝鮮族村である山鵬村における「村民委員会組織法」に基づく村の村民委員選挙を通して、村の村民自治とその変容に焦点をあてた。そのために、第一に、村の村民委員の選挙形式やその内実を明確化し、第二に、選挙基準については集落形成時から存在した伝統組織におけるリーダー選出方法をもとに検討し、第三に、行政村と集落の関係を検討した。一連の考察分析からは以下のことが明確になった。第一に、村民委員選挙は集落主導で 行われ、伝統組織による選挙形態や基準が引き継がれたものであった。第二に、村民は、集落における自らの暮らしに根拠を持つ選挙基準を、生活を取り巻く環境変化に適応させる形で行政村および村民委員会に埋め込んできた。最後に、集落の権力構造において村民自治は、必ずしも民主的ではないことも浮き彫りにしたのである。
研究ノート
  • 空間の再編成と「阪急文化」のゆくえ
    山口 覚
    2012 年 7 巻 p. 115-131
    発行日: 2012年
    公開日: 2021/05/15
    ジャーナル フリー
    後期資本主義の時代における脱工業化の進展の中で、関西の産業界は厳しい状況に置かれている。また、資本や人のグローバルな移動によって「世界都市」としての東京の位置づけが強まっている。関西の衰退と東京一極集中という空間の再編成のもとで、もともと移動性が低かったはずの関西の私鉄系不動産資本による首都圏への進出という現象が確認される。1970年頃における近鉄不動産の先行例もあるが、2000年以降には京阪電鉄不動産、そして本稿で扱う阪急不動産が新たに首都圏への進出を開始した。鉄道沿線開発というビジネスモデルないし「阪急文化」を重視してきたはずの阪急不動産がなぜ、いかに首都圏進出を進めてきたかを明らかにする。
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