自動車事故対策機構(NASVA)による運転適性診断は、事業用自動車運転者向けに約50年間、運用が行われてきた。この診断は運転者の性格、心身機能、運転傾向を問診や作業性検査によって評価するもので、受診結果に基づいた助言を行うことで、運転行動をより安全なものに変容させることを目的としている。本稿では、この運転適性診断の概要と、現在議論されている運転適性診断の更新に関する諸問題について紹介する。
トラック輸送は、国内物流の基幹的役割を担っており、国民の生活(くらし)と経済のライフライン(命綱)として、国内の産業活動や国民生活に不可欠な存在となっている。物流業界は、今後も安定的かつ安全で安心な輸送サービスを提供し続けることが社会的使命である。本稿は、少子高齢化などによる若年ドライバー不足への対応や長時間労働抑制など、働き方改革関連法に係る輸送体制の再構築が迫られる物流業界における現状と課題について取りまとめたものである。
視野障害は自動車の運転に影響をもたらしうるが、その影響については意外なほど分かっていないことが多い。実際、視野障害があっても安全に運転できる人もある。本稿では、視野障害と運転免許の関係の現状を概説した上で、視野障害がもたらす自動車運転への影響の分析の現状を示す。さらに、眼科での運転外来や運転支援技術の活用、視野障害に関する理解を深めるための啓発等について、筆者が現在関わっている活動を中心に紹介する。
日本の道路交通法(道交法)は、令和4年4月27日法律第32号により一部改正され、自動運転の、いわゆるレベル4が許可されるに至った。そこでは、運転者がいない「運行」が特定自動運行として整理され、自動運行装置による自律的な運行の実施を、特定自動運行実施者(および特定自動運行主任者と現場措置業務実施者)が監視する制度が創設された。特定自動運行も、概念的には「運転」に含まれるから、誰が運転者であるのかが確認されるべきだが、日本では、この点への関心は乏しく、特定自動運行の妥当範囲という具体的な課題に議論が集中しつつある。特定自動運行が、高速道路上のトラックの隊列走行や、公道で個人等が乗り込む自動車の運行にも認められるのかが、今後の検討課題である。
近年、技術の進展等により、多様なモビリティが登場している。いわゆる電動キックボードについては、令和4年改正道路交通法の施行前にあっては、必要な運転免許を受け、その車両区分に応じた交通方法によって運転しなければならないこととされていた。一方で、大きさ、最高速度等の一定の要件を満たすものについては、規制の一部の緩和が可能と考えられたことから、令和4年改正道路交通法により、「特定小型原動機付自転車」という新たな車両区分を定めるとともに、全ての交通主体の安全かつ快適な通行を可能とするような交通方法等を定めることとした。
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