アシュヴァゴーシャ (馬鳴) 作である釈尊の伝記
Buddhacarita (紀元後1~2世紀頃; 以下, BCと略) と, 仏教説話集
Divyavadana の第26~第29章を形成する一連のアショーカ王の伝記 (=
Asokavadana, 紀元後2~3世紀頃; 以下, AAと略) は編纂時期が接近し, 更に, 釈尊の今生の全生涯を覆う仏伝をまとまった形で内包するという共通点を有している. ここから, 相互の密接な関係を予測し得る. 実際, 一つの平行偈と幾つかの平行表現が存在することを, A. Gawronski 氏が指摘している. しかしその後, 両作品の比較は十分になされず, 相互の関係についての問題は放置されたままになっている.
そこで本稿では, 両作品の内に更なる三つの平行偈 (BC: 第28章第64~66偈, Johnston ed.,
Buddhacarita, 1936, Lahore [New Enlarged edition, Delhi, 1984]=AA: p. 380, 11. 26-29; p. 381, 11. 19-22; p. 381, 1.26-p. 382, 1.2, Cowell and Neil ed.,
Divyavadana, 1886, Cambridge [Reprinted 1987, Delhi]) が存在することを指摘し, これら両作品の関係が更に密接であることを示す. これらの平行偈は殆ど逐語的に一致するため, テキストの対照によって, これまで難解とされてきた語句の幾つかを理解可能な形に訂正し得る. 更に, BC当該箇所の梵文は失われているが, AAの梵文から, その殆どを復元することが可能となる.
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