クリティカルケア病棟(以下A病棟)は,1日1患者当たりの手指消毒薬使用回数が低下傾向にあり,多剤耐性菌の検出も増加していたことから,交差感染の可能性が懸念された.そこで,A病棟に対してジョン・P・コッターの組織変革の8段階プロセスを用いて感染制御部が行った支援について,手指衛生回数の推移やA病棟職員の言動から分析を行った.
まず,推進チームをつくり,その推進チームがビジョンを掲げられるように,A病棟の手指衛生や耐性菌の現状について情報提供を行った.また,感染制御部はカンファレンスや勉強会の機会だけでなく,スタッフ個人に対しても直接指導した.推進チームはA病棟スタッフに対し,カンファレンスの機会でビジョンの周知徹底を行った.
危機的な状況であり,早急な改善が必要であったため,感染制御部が主体的に計画立案を行った.具体的には,推進チームとともに,手指衛生の知識習得を促す取り組み,手指衛生遵守率の調査,手指消毒薬使用量のモニタリング,行動の振り返りの実施を立案した.その結果,6段階までの実施であったが,手指衛生回数は増加した.
外部である感染制御部,内部である推進チームからビジョンを周知したことは,A病棟スタッフ全員の危機意識の共有につながった.感染制御部の支援は,手指衛生回数の改善に効果はあったが,定着させるには推進チームとスタッフの自発的行動を推進する支援が課題となる.
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