私が三十数年前に大学に助手として採用されたとき,この機会を最大に活かし,自分だからこそできる研究に邁進しようと決意したことを今でも忘れない。その一方で,研究室での業務をこなしながら独自の世界を拓くことの難しさにも日々直面し,一日も早く,一つでもその端緒となる
放電を利用する立場からも,そしてその発生を抑制する立場からも,“放電内でどのようなことが起きているのか”正確に知ることは重要である。放電プラズマ内においては電界により荷電粒子が加速され,電離,励起,再結合など種々の基礎過程が生じている。そのため,プラズマの
1.はじめに
ラプラス場の電界分布は,数値電界計算により詳細に計算できるようになったが,放電が生じている系や,材料中に空間電荷が蓄積した系など,ポアッソン場の電界分布の把握には測定が必要不可欠である。理想的な電界計測法には,「その場を乱すことなく,高い時間・空間分解能で,
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電離気体とも称されるプラズマは,気体の原子や分子の一部がイオンと電子に電離して共存し,巨視的に見れば電気的中性を保っている。しかし,イオンと電子では質量が大きく異なり,その拡散速度は電子の方が大きいことから,固体との界面付近では電子が失われて正味の空間電荷
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放電プラズマ中の電界強度は電離や励起などの原子・分子過程を決める重要なパラメータである。静電プローブを用いてプラズマ電位の空間分布を測定し,それを空間微分することで電界強度を得ることができる。しかし,大気圧近傍の放電プラズマは静電プローブ計測が困難な場合が多
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種々のプラズマパラメータの中でも,プラズマを構成する粒子の温度は電磁熱流体的特性を支配する重要なパラメータである。本稿ではプラズマ中のガスの励起温度について解説し,二つの発光スペクトルのみで算出できる励起温度をもとにプラズマの導電率や電子温度といった他のプ
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放電プラズマの応用技術では,活性種の反応が重要である(1)。例えば空気中放電では,N2,O2,H2O分子が解離して生成されたN,O,OH,Hなどの活性種の反応で,環境汚染ガス処理や,材料の表面改質を行う。このほかにも水処理,医療応用,燃焼支援,着火など,活性種の反応を
1.はじめに
本稿のテーマは,放電プラズマの電子密度測定である。放電プラズマにおける電子密度測定の必要性を,図1を用いて説明する。放電プラズマの内部では,電界で加速された電子が雰囲気気体と衝突することで,電離・解離・励起・付着などの反応が起こる(1)。その結果,放電プラズマ
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Society5.0による安心安全な社会の推進には,高度に階層化されたセンシングデバイス群間の高速・低減衰異種信号伝送が必須である。その中で,信号発受信・中継点としての役割を担うことになる自動車などの移動体では,nm以下の単位構造を有する生体内部からμm・mmの加工ス
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ITS(Intelligent Transport Systems,高度道路交通システム)は,最先端の情報通信技術を活用して,より安全でより快適な道路交通を目指すとともに,道路交通が抱える事故や渋滞,環境汚染,エネルギー消費などのさまざまな問題の解決を図ろうとするシステムの総称である(1)。
1.はじめに
今後,私たちの生活や産業のあり方を変えてしまうかもしれない技術の中で,3Dプリンターが注目されている。3Dプリンターで出力可能な材料は元素周期表をほぼ制覇していると言われており,プラスチックはもちろん,金属,コンクリート,ガラス,さらには細胞や血管まで出力