五十メートル以下の如き極短波長に於ては、之を眞空球増幅裝置に依て増幅し感度極めて鋭敏なる受信裝置を得んとするも、眞空球電極間の電氣容量が重大なる惡影響を及ぼすに至り、該眞空球は著しき自勵發振の傾向を生じ、而も増幅能が漸減するのみならず、其他種々の困難のために、從來斯かる極短波長の有効なる増幅は不可能として殆んど顧みられず、唯一の増幅法としては再生式増幅、即ち檢波用眞空球に再生結合を施したるもの及其の種々の改良形例へば超再生式等が使用せられたのであつた。
筆者は數年前から眞空球を利用する短波長に於ける同調型高周波増幅方式の研究に從事し、現今放送無線電話受信機に使用されて珍重せられてゐる一種の方式即ち眞空球電極間の靜電聯結防止方式を考案したが、今や更に右考案を擴張、改良して100-300米程度の普通短波長に用ひても、單なる所謂ニユートロダイン方式よりも能率よく、更に極短波畏に於ては最もよく其の特長を發輝し、極めて安定にして増幅能大なる同調型高周波増幅器を考案し之を實驗したので、其の概要を報告してある。
本裝置は之を一言にして言へば、高周波勢力を中繼する眞空球の電極間の電氣容量が、入力回路と出力回路との間に二個以上の複數に於て電氣的に直列に配置せられ、その直列に配置されたる數に反比例して電極間の靜電聯結が減少せらるる方式に於て上記眞空球に接續又は聯結せられたる各回路中の高周波勢力の位相關係を利用し、眞空球電極間の靜電聯結に關連して中繼せられたる電氣勢力の入力回路に轉位を生ずる傾向な此の轉移に對し之と同一量又は近似量にして、且つ反對之は之に近き位相に於ける高周波勢力轉移を行はしめ若くは行はるる如く構成し、上記の限度以上に一屬聯結を小又は零ならしむる如き眞空球電極間靜電聯結減少又は防止方式及之を利用する無線電信電話極短波長用同調型増幅器である。
本研究の詳細なる點の未だ研究の途にあるもの多く茲に發表を許されざるものあるを遺憾とする。
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