我國に於ける空電の妨害に就き大阪無線電信局に於て同局員に依り約一ヶ年間觀測せられた。此處には空電に關する一般的概念。測定に採用せる方法、機器及其の測定結果等に就て述べてある。
本測定に依り得たる結論は次の通りである。
(I) 空電は受信局の日没時より増加し夜間多く日出後著しく減少するものである。
(II) 大阪に於ける空電の妨害は大體に於て北東より南西に渡る一帶より來るものであるが此の事實は空電が海洋よりも大陸に多く其の起源を有することを證明してゐる。
(III) 夏期に在ては空電は北東より來り冬期は南西より來るが此の事實より見る時は太陽と空電との間に何等が重大なる關係が介在して居る樣に思はれる。即ち空電の發生は太陽の移動に伴ふて變化するやうである。又此の期節に於て岩槻にけ於る空電の方向は北方より北西に渡る一帶であるが此大阪岩槻兩所にての觀測の結果より見る時は所謂日本アルプス連峯が地方的空電の發生地と見らるべく、此結果夏期に於て此地方的空電の妨害が遠方より來る空電の妨害よりも強烈であると考へられる。
(IV) 十月及十一月支那北京に於て觀測せる所と大阪消線局で測定した結果とを合せて見る時は此の季節に於ける空電妨害は蘭領印度の熱帶地方に發生するものに起因するものと思はれる。
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