本研究は,火花放電に於ける放電開始より放電完成迄に於ける放電現象の順序を辿り,その經過に於いて,所謂コロナ線條放電及ひ所謂光溝が,如何なる役割を演ずるかを知らんとするものである。直流電源,緩急種々なる衝撃電源を用ひ,針對針,針對平圓盤,球對球等の種々の電極の組み合せを用ひたる場合の放電状況を觀察して,放電經過を辿つた。特に,線條及び光溝は,氣壓を下げると非常に擴大せられ,觀察に便利であつた爲め,且つ光溝は低氣壓に於いては相當安定に生ぜしめ得た故に,氣壓は大氣壓に限らず,徐々に下げ,數粍程度迄低くして,その場合に於ける放電状況を詳かに觀察した。
その結果,線條及び光溝が放電に及ぼす影響は相當明かになつたが,前者即ち線條については,已に多くの研究結果が發表せられて居つて,それ等の結果と大差なかつたが,後者即ち光溝については,空中放電に對しては,餘り秩序立つた研究結果がなかつた,爲に,特にこの點に重きを置いた。
結局,光溝は放電が相當進んだ程度に於いて現れ來るもので,種々の電極組み合せに於いて,常に陽極と間隙間に發達し,放電完成に大なる役割を演じて居ることがわかつた。且つ,これは低壓瓦斯放電に於いては,一種の正性光柱であることがわかった。この,光溝の發達を許さぬ條件に於いては,針對平圓盤の場合,針が正であつても負であつても,又球對球の場合に於いても,放電最後の完成期に於ける放電機構は,同樣なる經過を取り得るものであらうと想像して居る。
實驗結果は詳細に記述し,必要に應じて寫眞を以て説明を加へた。
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