從來發表せられた電波傳播の理論は殆ど總て長波,或は短波といふやうに挾い範圍だけを扱つてゐるために假定の撰び方に無理があるやうに思はれ,又其の中間に介在する中波の傳播機構が解決困難になる。筆者は長波から短波迄を一括して考へ,波長の大小に應じて如何に處理法を變へたら波動式を滿すかといふことをじ,幾何光學の用ひられぬ場合の近似解として階段的反射の方法を提示して中波の傳播樣式を示した。次に電離層内に於ける減衰作用を色々な場合に就て計算し,之等の結果から我々が從來經驗してゐる傳播に關する多くの現象を説明した。尚ほ第二章と第三章とは第四章以下の本論に必要な豫備知識として纒めたもので筆者の創意ではない。
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