多相誘導電動機に於ける橢圓回轉磁界に對するヒステリシス鐵損を,同期速度に於ての勵磁人力の躍進的變化量より測定する。この鐵損が一次電墜從つて磁束密度と如何に關係するかを數個の電動機に就いて測定せる結果よりみて,一般的に一次電壓の上昇と共にこの回轉磁界ヒステリシス鐵損は増加するもその途中にて一度減少する如き特性を示す。之を次の如く考ふる。誘導電動機中の回轉磁界は一般的には橢圓なる故,之を圓回轉磁界と交番磁界とに分つて考ふる時,前者のヒステリシス損はある磁束密度に於て最高値を示して急激に零に減少するが,後者の夫は磁界の張度と共に(通常の交番勵磁に於ける如く)増加するものとせば,兩者の損失の和は實驗の結果の如き變化をなすべし。
一次電壓を靜止部にfeedすると之を回轉子に與へるとにより所謂Hysteresis motorの效果は著しく異り,實驗結果によれば後者に對するものが常に大である。この事實を次の如く説明する。部ちStator feedingに於ては回轉子が圃轉するもその中の磁界はすべてが滑周波數を以て交番するに非ずしてその一部分は一次周波數そのまゝの交番勵磁を受けるものであり,之れに反しRotorfeedingに於ては靜止部の磁路はすべて滑り周波數の勵磁中にある故斯くの如き相違がある。
回轉磁界鐵損と相關係してHysteresis motorの特性に就いて少しく考察し,次に誘導電動機の高調波磁界による準同期速度に於ける同期回轉力に關して一二の實驗結果を示す。
本稿を次の諸項に別つ。
I. 緒言
II. 勵磁入力の分配
III. 誘導電動機に於ける回轉磁界ヒステリシス損の測定
IV. 測定結果に對する考察
V. Hysteresis motor powerと一次電壓との關係
VI. ヒステリシス損による誘導電動機の同期回轉力
VII. 結語
抄録全体を表示