n重周波數ダイナトロン發振器に於てn=3の場合にも容易に三振動が獨立に發生する事を示し,n=2の場合に相當するMcLachlan氏の發振器と筆者の一人(林)の複合ダイナトロンとの優劣を論じ,次にn=2の場合の變調現象をオッシログラムに依つて明かにした。周波數變動の測定には前論文(2)のものと略同一の装置を用ひ,n=2の發振器に於て,アノード電壓,外部グリッド電壓,内部グリッド電壓の變化が再振動の周波數に如何に影響するかを測定した。高周波の方は377.4kc,低周波の方は8,500サイクルを用ひた。問題は單振動の場合の變動率と二重振動の時の變動率との比較にあるのであつて,Δfl',Δfl"を以て各々高周波振動が發振して居ない時及びして居る時の低周波振動の周波數變動,Δfh',Δfh"を以て低周波振動が發振して居る時及びして居ない時の高周波振動の周波數變動を表し,Va,Vg,Vr,Ifを各々アノード電壓,外部グリッド電壓,内部グリッド電壓,纎條電流とすれば規定値以上の僅かの變動の時には
Δfl'/ΔVa<Δfl"/ΔVa, Δfl'/ΔVa>Δfl"/ΔV0,
Δfl'/ΔVr<Δfl"/ΔVr, Δfl'/ΔIf>Δfl"/ΔIf
Δfh'/ΔVa>Δfh"/ΔVa, Δfh'/ΔVg>Δfh"/ΔVg,
Δfh'/ΔVr>Δfh"/ΔVr, Δfh'/ΔIf>Δfh"/ΔIf
規定値以下の僅かの變動の時には
Δfl'/ΔVa>Δfl"/ΔVa, Δfl'/ΔVg>Δfl"/ΔVg,
Δfl'/ΔVr>vfl"/ΔVr, Δfl'/ΔIf>Δfl"/ΔIf
Δfh'/ΔVa>Δfh"/ΔVa, Δfh'/ΔVg>Δfh"/ΔVg,
Δfh'/ΔVr>Δfh"/ΔVr, Δfh'/ΔIf>Δfh"/ΔIf
の如き結果となつた。即ちこれから直ちに理解される如く,一般的に見て,單振動の時よりも二重振動の時の方が變動率が少いと云ふ事になる。複合ダイナトロンに於ける結論と同一である。
次に相互周波數變動に就いての實驗をなし,複合ダイナトロンよりも獨立性が惡いと言ふ結果になつた。高周波振動の周波數を上げると低周波振動の周波數は高くなり,低周波振動の周波數を上げると高周波振動の周波數が下ると言ふ事が示された。
次に一極振勤の急激な停止に伴ひ,他振動に如何なる周波數變動を與へるかと言ふ事を實測した結果,高周波振動が停止した爲+1.81%の周波數變化が低周波側に生じた。低周波振動が停止した爲に生ずる高周波振動の變化ほ實驗が困難な爲に測定出來なかつた。
次に他の振動に依つて負性抵抗が如何に増加するかと言ふ事を實驗的に求めた。周波數が接近する程,及び振動電流が大になる程負性抵抗の増加が大になつた。本發振器を周波數の方から見るばかりでなく,エネルギーの方からも考察すべき事を述べた。
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