短波電界強度計算法,即ち地球上に於ける送受信點の位置,送信側の輻射電力,電波の周波數を與へて,一日中の時刻,季節により受信電界強度が如何に變るかを算定する方法に關しては,嘗て昭和7年に公表したことがあるが,其の後の研究により,理論的に矛盾を來さぬ範圍に於て實驗資料を基にして改訂を施したものが本論文の前半を成してゐる。
改訂の主眼點は,先づ書間に於ける減衰が距離に對して連續的に下降する如く改めたこと,並に夜間に於ける減衰を考に入れたことであつて,書間の減衰は從來の如く電波通路のApexを決めて算定するのであるが,夫等の値を平均して其の傳播路の單位距離當りの減衰量を求め,之に傳播距離を乘じて全通路の減衰とする。斯くの如く,距離に比例する減衰をA級減衰と名附けた。
次に夜間に於てはF層に於ける第二種減衰の外に,受信點に到來するMultiple rayの作用を考慮し,之等を一括して減衰の形式を以て表しB級減衰と名附けた。B級減衰は夜間のみに重要であつて,其の特徴はA級減衰の如く距離に比例するものではない點である。而して電波通路の各Apexに就て計算するのではなくて,數箇のApexの中で最も暗黒部に存在し最も大なる減衰を與へるApexのみに就て減衰量を求める。
此の新計算法による計算實例を示した。之等は前回の方法よりも實際によく合ふ。
入射角測定の實驗は電波の傳播状態を研究する上に重要であるばかりでなく,指向性空中線の設計並に運用の指針となるものである。之に就いて筆者等の行つた研究成績を述べた。
結果の要點は先づ入射角と電界強度の關係を明かにし,Multiple rayの效果の重要なることを指摘した。次に入射角と傳播距離との關係を取纒めた。最後に此の入射角測定法により得られる値を,指向性空中線の設計に對して利用するには如何なる考慮を拂ふべきかを論じた。
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