鰛油は本邦に於ける無限の工業資源である。之を減壓處理して塗料基礎劑を作り,更に石炭酸系及びアルキッド系合成樹脂を配合し,トルオール溶劑にて絶縁塗料を試作する。150°C,1hの燒付塗膜に就き物理化學的諸性質を吟味して良好組成範圍を決定し,且その中心たる鰛油:石炭酸樹脂:アルキッド樹脂=5:4:1の配合率の塗料に就き燒付條件を檢討して,180°C,1hが最も適當なる事を認めた。良好組成のものを最適條件で燒付した塗膜に就き耐熱性を吟味する目的にて,更に1h加熱してその變質を檢討し,次の結果を得た。即ち270°Cにて全く絶縁性を失ひ,可撓性は218°Cにて不良となる。HClの侵蝕は215°Cにて甚だしく,HNO
3には250v,NaOHには225°Cにて著しき作用を受けた。變壓器油,トルオール及び沸騰水に對しては夫々280°C,292°C及び307°C迄抵抗性を示す。熱天秤によれば約250°Cの加熱にて重量の減少が始り,400°C近傍にて減少率が極大となつた。尚金屬顯微鏡にて塗膜の劣化状況を檢討した。
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