「心身医学は,全人的医療に展開しなくてならない」は,米国のシカゴ大学教授で,心身医学の先人フランツ・アレキサンダーや我が国の池見酉次郎(九州大学教授)に共通の展望である.全人的医療や患者中心医療は,耳あたりのよいことばであるがゆえ,多くの大学や病院がミッションとして掲げているが,実践している医療施設は少ない.我が国には,橋田邦彦が戦前から全機的医療を唱えたように,多くの蓄積がある.一方,総合診療医の育成が叫ばれている.総合診療医は,まず全人的医療が実践できなくてはならない.以下の要件が必須になる.教育・研究・実践のための大学院大学の設置が望まれる.
1. パソジェネシス,サルトジェネシスの相互主体的鼎立
2. 患者の生活者としての理解(intrapersonal communication)
3. 誕生から死までの連続性の中での患者理解
4. 機能的病態(機能性身体症候群:FSS)の積極的診断・治療
5. 器質的病態の早期診断,専門医療への紹介,副作用低減のための補法の適応
6. 致死的病態へのケア
7. チーム医療のリーダーシップ
8. 医師―患者関係の構築(interpersonal communication)
9. 患者の行動変容のための患者教育
10. 臨床研究
11. 自己研鑽:健康哲学・医療哲学・死生学・医療倫理学
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