全人的医療
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巻頭言
  • 永田 勝太郎
    2019 年 17 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/05/09
    ジャーナル フリー

    「心身医学は,全人的医療に展開しなくてならない」は,米国のシカゴ大学教授で,心身医学の先人フランツ・アレキサンダーや我が国の池見酉次郎(九州大学教授)に共通の展望である.全人的医療や患者中心医療は,耳あたりのよいことばであるがゆえ,多くの大学や病院がミッションとして掲げているが,実践している医療施設は少ない.我が国には,橋田邦彦が戦前から全機的医療を唱えたように,多くの蓄積がある.一方,総合診療医の育成が叫ばれている.総合診療医は,まず全人的医療が実践できなくてはならない.以下の要件が必須になる.教育・研究・実践のための大学院大学の設置が望まれる.

    1. パソジェネシス,サルトジェネシスの相互主体的鼎立

    2. 患者の生活者としての理解(intrapersonal communication)

    3. 誕生から死までの連続性の中での患者理解

    4. 機能的病態(機能性身体症候群:FSS)の積極的診断・治療

    5. 器質的病態の早期診断,専門医療への紹介,副作用低減のための補法の適応

    6. 致死的病態へのケア

    7. チーム医療のリーダーシップ

    8. 医師―患者関係の構築(interpersonal communication)

    9. 患者の行動変容のための患者教育

    10. 臨床研究

    11. 自己研鑽:健康哲学・医療哲学・死生学・医療倫理学

総説
  • 立垣 愛郎
    2019 年 17 巻 1 号 p. 8-19
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/05/09
    ジャーナル フリー

    昨今の健康志向の高まりに伴い,食品成分の持つ健康機能が注目されている.中でも乳酸菌の健康機能に対する認知度はきわめて高く,近年,ヨーグルトのほか,乳酸菌入りチョコレート菓子やカップ麺等の食品が増えている.このように,乳酸菌が今まで以上に身近な存在となった理由としては,乳酸菌が持つさまざまな健康機能が明らかになってきたことやこれらの健康機能が殺菌された乳酸菌でも発揮することが明らかになり,食品への配合が容易になったといった研究成果によるところが大きい.

    本総説では乳酸菌や腸内細菌について解説するとともに,筆者らの研究グループが保有している食品由来の乳酸菌株の中から選別された,3つの機能性乳酸菌(R037乳酸菌,LAB4乳酸菌,R30乳酸菌)を例に,乳酸菌の健康機能について紹介する.

    ●R037乳酸菌(Pediococcus acidilactici R037)

    抗アレルギー機能,中性脂肪低減効果を持つ乳酸菌

    ●LAB4乳酸菌(Lactobacillus delbrueckii LAB4)

    血糖値の上昇抑制効果を持つ乳酸菌

    ●R30乳酸菌(Enterococcus faecium R30)

    筋肉の毛細血管の血流を促進する乳酸菌

  • 大平 哲也
    2019 年 17 巻 1 号 p. 20-27
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/05/09
    ジャーナル フリー

    人は生まれてから亡くなるまでの生活習慣やさまざまなストレスが健康に影響してくる.しかしながら,実際にはストレスを減らすということは難しい場合が多い.一方,近年,笑いなどポジティブな感情や行動が心理的ストレスや否定的感情を緩衝することが報告されるようになった.笑いは感情ではなく行動であるため,修正可能な因子と考えられる.これまで,我々は地域住民男女4,780人を対象として笑いの頻度を男女別,年齢別にみた結果,笑いの頻度は男性より女性の方が多く,年齢とともに減っていった.また,笑いの頻度が少ない人ほど認知機能の低下傾向がみられ,糖尿病を発症するリスクが高かった.また,落語による笑いとストレスマーカーである唾液中コルチゾールとの関連をみた結果,ふだんから笑いが多い人ほど笑ったあとのコルチゾール値が低下していた.したがって,笑いはストレス関連疾患及び生活習慣病などさまざまな疾患の予防・管理に有用である可能性がある.

  • 吉津 紀久子
    2019 年 17 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/05/09
    ジャーナル フリー

    我々は病に対して,最初は少しでも早くその状態から逃れることを目指す.しかしそれが不可能となった場合は,何を思うだろうか.逃れようのない絶望や不安に襲われ,人生の災難として捉えてしまうかもしれない.

    ヴィクトール・E・フランクル(1993)は生きる意味と価値について「生きるとは,問われていること,答えること――自分自身の人生に責任を持つことである.」と説いている.筆者は患者との日々の対話の中で,「なぜ病気にならなければならないのか」という問いそのものの視点が変化するとき,すなわちフランクルのいう実存的転換が生まれる瞬間を患者といっしょに体験している.実存的転換とは,“病と闘う”から“病とともに生きる”という態度変容であり,それは病に新たな意味“苦悩から生みだされる希望”を加える力となってくれる.

  • 加藤 眞三
    2019 年 17 巻 1 号 p. 36-45
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/05/09
    ジャーナル フリー

    慶應義塾大学信濃町キャンパスにおいて,筆者らは2014年10月より公開講座「患者学」を開講し,2018年末には第50回目を迎えた.対象は看護医療学部や医学部などの学生だけではなく,医師,看護師,保健師,薬剤師などの医療者,そして患者や一般市民を含んでいる.学生や医療者は患者から学び,患者や市民も対話の中で医療について学んでもらうという趣旨で「患者学」としている.患者と医療者が対話をできる場を提供し,両者が対話力を身につけ,両者の関係性を見直すことを目標としてきた.患者と医療者の対話の必要性やその技術や態度は理論だけ教わって身につくものではない.本講座のような医療における共通の目標をもち対話をするという関係性を体験することにより,医療者も患者も学ぶことができる.社会が大きく変革する時期を迎えて,これからの医療には患者と医療者の協働作業が求められる.その一助になることを願って活動を継続している.

  • 橋本 裕子
    2019 年 17 巻 1 号 p. 46-53
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/05/09
    ジャーナル フリー

    医療が進んでも永遠のテーマであり続ける身体と心の痛み.線維筋痛症患者の痛みはなぜ理解されにくいのか.患者であろうとなかろうと,人は身体を使っての表現者である.患者はまず自分が表現者であること,そのためにはまず自分について知らなければならない.これまで,「1:患者の本音」「2:患者と医療者とのミスコミュニケーション」「3:患者の実態」について調べてきた.

    それらを踏まえ,本稿では「患者力」の要諦を以下の5つに分け,それぞれの段階について考察したい.

    1:表現者としての自分について学ぶ力.大事な情報(事実・Fact)と物語は当事者が持っていること,複雑性,多様性である以上,正解はないということを理解する.

    2:自分の症状を医師に伝えるコミュニケーション能力.

    3:周囲の人に自分の状況を伝え,助けを求める力.

    4:自分の状況を判断して,自分で乗り越える力.セルフマネジメント力と成長モデル.

    5:持続的に自分の状況を把握し,実存的意義を見失わずに生きる力.レジリエンス.

症例報告
  • 別部 智司, 今泉 うの, 佐藤 智一, 安田 美智子, 香川 恵太, 吉田 和市
    2019 年 17 巻 1 号 p. 54-62
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/05/09
    ジャーナル フリー

    ひきこもりとは,さまざまな要因の結果として社会的参加を回避し,原則的には6ヶ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念と定義される.極度の歯科恐怖症を有するひきこもり患者で,治療に対する警戒心が強い症例を経験したが,全人的アプローチを行うことで問題解決した一例を報告する.

    患者は20歳代,男性,数年前よりパニック障害,うつ,ひきこもりとなり精神科で加療中.歯痛があったが過去の歯科受診で強い恐怖感を抱き,PTSDとなった.痛みが極まりインターネットで全身麻酔下歯科治療を知り,当院に治療依頼があった.ひきこもりで外出できないため,最初は訪問治療を試みるも,拒絶反応として強い嘔気が起こり,口を開けることができなかった.

    患者を全人的に身体的,心理的,社会的,実存的に評価して,治療方法を検討した結果,家族の協力を依頼して歯科医院の見学から行い,ラポールの形成に力を注ぐことにした.

    その結果,患者は徐々に外出できるようになり,麻酔前検査にも来院できるようになった.ついに全身麻酔下での歯科治療を受けることができ,強い歯痛から解放された.現在はこの患者に予防歯科を啓発している.

    本症例から,極度の歯科恐怖症を持つひきこもり患者の場合には,一般の歯科治療の手法では治療が困難であるため,全身麻酔を用いるという選択肢を考慮する必要があることが考えられた.さらに,再び歯科疾患にならないように,絶え間ない予防啓発が必要と考える.

W.H.O.レクチャーシリーズ
  • 渡邊 昌
    2019 年 17 巻 1 号 p. 63-74
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2019/05/09
    ジャーナル フリー

    食生活が健康にかかわっていることは古今東西,共通であり,否定する人はいないであろう.筆者は食事を多方面から研究し,玄米,菜食,腹八分目が腸を整え,健康長寿に最もよいと確信を持つようになった.玄米と具の多い味噌汁で必要な栄養素はすべて賄え,さらに抗酸化作用をもつ多くの機能性物質も摂れる.人間は肉体的には老化していくが,精神的には成熟し続けることが可能である.正食(マクロビオティック)は玄米主体の日本食であり,菜食主義者に近い食事である.人間の腸内細菌叢の組成は食事によって変化する.玄米食は多くの酪酸産生菌の増殖を促すものであり,健康な腸内環境の維持に役立っている.長寿者の研究から,望ましい菌は大便菌(フェカリバクテリウム)やビフィズス菌などであり,酢酸や酪酸産生菌であるとされる.これら菌を養うには食物繊維を摂ることが重要で,肉を減らし野菜を多く摂る,玄米を食べるということで達成できる.筆者はコメの機能性に着目してMedical Riceのコンセプトを広めている.低たんぱく玄米は玄米の機能成分は残しつつ腎不全の進行を抑える食材としてほぼ理想的といえる.

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