1966年11月に日本で MEDLARS 収録用雑誌論文の索引作成作業を開始してから今日までの入力論文数は6万件を越えている。現在の索引対象雑誌数は127, 入力対象論文の約75%は日本語で, 24%が英語で書かれている。雑誌受け入れから索引作成後加
Index Medicus として日本に到着するまでの所要期間は約2ヵ月, 入力対象論文の主題範囲は収録誌リストの主題索引の件名標目数で38主題にわたっている。
索引作業に用いられる tool 類は, 各種のMeSHを初めとして特定主題の索引作成のための典拠図書まで入れると, 主なものだけで20点を越える。
索引作成者の平均作業従事年数はNLMの5~20年に比し僅か2年であり, その内の一ヵ年は養成期間であるから, 被養成者を実際の作業に使える期間は非常に短かい。索引作成業務はあまり身体を動かさずに出来る仕事であるから身体障害者に適した職業の一つと考えることは, 身体障害者の社会復帰に益すると共に, 長い経験と広範な主題の知識を要求される索引作成者を確保する上にも有効であろう。索引作成者としての望ましい資質としては, 注意深さが第一に要求される。
索引作成者が主題分析と件名標目の付与を行なう際の注意点としては, MeSHから選ばれた語が, 1. Specificity 2. Multiplicity 3. 的確な重みづけ, の三点を索引対象に対して満足させているか否かによるが, 日本ではMeSHの使用方法の不慣れなせいもあって, 選ばれた語がMeSH中の最も適切な語でない誤まりが副件名の適当でない用法をも含めて一番多い。1論文当りの平均付与件名標目数は11.9で MEDLARS の平均をやや上回り, 一時間当りの処理論文数は2論文でNLMのそれの1/2程度である。
MEDLARS での索引作成作業上最も作成に困難を感ずるのは化学物質, 薬物の索引作成作業であろう。化学物質が的確にMeSHの件名標目で表現出来ない最大の原因は, 有機化合物のみで100万以上といわれる対象に2,000程度の用語をもって入力処理をせねばならぬことがあげられよう。また, 統制された用語集であるMeSHに対して各センターから件名標目として用いたい用語の申請, 登録が出来にくいため, 日本では補助MeSHとでも呼ぶ, MeSHや作業用 tool 中に存在しない語と件名標目との対応リストをNLMの担当者と協議の上作成し, イタイイタイ病, キノホルムなど時に応じて必要な索引対象に対応しているが, すでにこれらの語の集積は400語に達せんとしている。
今後日本での MEDLARS の入出力の一層の発展をはかるためには, 補助MeSHをも含めた語の加除, 訂正の出来るMeSHの日本語版を電子計算機を利用して早急に作成することが望まれる。
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